(ミスター・バイク 2010.3月号掲載)

まんが

さて今月の事故です。

ある平日の通勤時間帯。気持ちよく晴れ上がった冬の空の下を、ジェンマに乗った大学生が、住宅街を走っていました。

合格発表の帰り道に立ち読みしたバイク雑誌に載っていたジェンマの姿に一目ぼれ。バイトを掛け持ちして免許を取り、憧れのジェンマを手に入れて数ヶ月。

まだまだ経験は足りませんが、通学にも乗り、バイトが休みの週末にはちょっと遠くまでツーリングに出かけたりして、ようやくリラックスして街中を運転できるようになってきたところです。

この日はいつものように授業に出ようとして、普通に起きて、家族と朝食を食べました。そこまでは良かったのですが、その時雲ひとつ無く晴れ上がった空を見てしまったのです。

バイクに乗り出して、慣れてきた頃にそんな天気。しかもある意味気楽な学生生活。普段真面目に授業に出ているだけに、この日1日サボったって何ら問題ありません。当然行き先は大学ではなくなりました。

「行ってきまーす!」と元気よく家を飛び出し、海の近くの温泉までツーリングに決定です。

通勤時間帯とはいえ、家を出てすぐの住宅街は、幹線道路から奥まったところにあるので交通量は多くありません。

「今日はあの山を越えて海に出て、食堂で美味しい地の魚でも食べて、温泉に浸かって……。お土産にアジの干物でも買って帰ったら母さん喜ぶかなー、でもそんなことしたらサボったのバレちゃうなー」

などと今日のツーリングプランを練りながら、最寄りの高速道路のインターチェンジを目指して、ワクワクしながらものんびりとした気持ちで、快調に走っていたのです。

走り慣れた住宅街をスイスイと進み、高速まであと少しという坂道に差し掛かりました。

この坂を上って下って、幹線道路を少し走ればインターチェンジというところ。勾配がきつめなので、坂の先は見えませんが、頂上に交差点があるわけでもないですし、飛ばしているわけでもないので、特に気を張るでもなく、あくまでのんびりとした気持ちで走っていました。