(ミスター・バイク 2010.4月号掲載)

まんが

さて今月の事故です。

春と冬が日ごとに変わる季節の変わり目。ある日曜日の夕暮れ時。KLX125に乗った若者が、片側1車線の住宅街を抜ける道路を、家路に向けて急いでいました。

この日、朝方は気持ちよく晴れ上がって暖かく、待ちに待った春の到来を感じられました。

ただ、夜になると冬がぶり返したかのように冷え込んだ上、天気が下り坂になって雪になることもある、という予報ではありました。

一瞬だけ、どうしようか迷いましたが、目の前に現れた春の陽気に勝てるはずもありません。

せっかくの日曜日。しかも庭には買って間もない初めてのオフ車、KLX125があるのですから。

「雪が降る前に帰ってこよう。まあ降り出すのは夜になってからだっていうし、大丈夫だろう。いや大丈夫に決まってる」と決めつけ、家から2時間もかからない近場の林道に、ツーリングに出かけたのです。

バイクに乗り出したのは高校生の時。仲の良い友達に影響されたのが始まりでした。

16歳の誕生日を迎える前に、何度か後ろに乗せてもらっているうちに(その友達も免許を取って間も無いので、2人乗りは違反でしたが)、この乗り物にぞっこん惚れ込んでしまったのです。アルバイトに明け暮れ、誕生日を指折り数えた末に教習所に通い、晴れてライダーの仲間入りをしたのです。

初めて買ったバイクは中古のCB400SF。もともとカッコイイと思っていた所に、教習所でその乗りやすさを知り、年式が古いと値段もこなれていたので、これしかない! と決めました。

乗り出してからはお約束通り、日曜日は当然として、毎日のようにバイクでどこかに出かけ、春夏冬の休みにはロングツーリング、というバイク三昧の生活です。

今では、CBでの走行距離も20万キロを超え、ベテランと言っても差し支えないライダーに成長しました。

大学を出て、晴れて社会人1年目。これまではCBにぞっこんで考えなかったのですが、ふと自分がオフロードをまともに走ったことが無いことに気付きました。

幸い冬のボーナスが手つかずだったので、それを頭金にしてKLXを買ってしまった次第。

遠出はCBでしますし、父親のクルマのファミリーバイク特約で安く保険に入れるので、排気量は125㎤にしました。若いのにオンとオフの2台体勢という、とても贅沢な環境を手にした、幸せ者のライダーなのです。

オフロードは初心者ですが、軽くて小回りがきき、扱いやすいKLXはそのことを感じさせません。

林道を行ったり来たり楽しんでいると、あっという間に時間が過ぎました。

バイクも自分も泥だらけになりながら、ふと空を見上げると、嫌な感じの雲が広がってきています。

「こりゃやばい。予報より早く降るかも。降る前に帰ろう」と慌てて帰途についたのです。

急いで帰ってくる途中、気温はどんどん下がり、身体の芯から冷えてきました。

しかも予感が的中して、雲が空を覆ったかと思うと雪が降り出したのです。

降り出したら積もるのも早く、家まであと少しとなった住宅街にさしかかるころには、道路のクルマが通らない場所は白くなっていました。

とはいうものの、タイヤが滑るほどではありません。

「うー、あと少し。とっとと帰って風呂に入りたいぜ」と、気持ちが焦っていたところ、遅いクルマに引っかかってしまったのです。