前回の東京モーターショーに参考出品され注目を集めた摩訶不思議な乗り物U3-X。
アシモで培ったバランス制御技術を応用した自立する一輪車で、ハンドルやボタンなどの操作系がなく、動く、加速、曲がる、止まるという制御は自分自身の重心移動で行なう、乗りこなす以前の、乗るのにコツが必要であった。
技術面の詳細は未だ明かされていないが、2個のモーターをモナカ合わせにした主輪には、横方向のガムテープの芯のような小径車輪がぐるっと配置されている。この特殊構造の全方位駆動車輪で、前後左右どちらでも一輪(正確に言えば一輪車+多輪車ということになるが)で動く事が出来る。
今回お披露目されたUni-Cubは、U3-Xの進化版である。
動かし方や乗り方よりも、そもそも何なのかさえ解らない奇抜な形状から強いインパクトを与えたU3-Xとは異なり、車輪状の動力ユニット部の上にバックレスト付の椅子と、肘掛けを前に倒したようなバー、足下にはフットレストが付いている。バー先端には小さなジョイスティックも付いており、これだけで乗り方も動かし方も容易に想像できる、いわばフレンドリーな形をしている。
前作U3-Xの面影はまったくなく、すべてが大きく変わったUni-Cub、その中でも一番の変更点は後部に補助輪のような車輪が追加されたこと。
素人目には安定感を増すため本体にがっちりと固定された自転車の補助輪のようなものをイメージするが、実際には本体に連結されているものの、物理的に安定させる為の車輪ではなく、スムーズな方向変換のために追加された言わば操舵輪とのことだ。それでも、完全な一輪車ではなくなったことが、見た目の安定感や安心感に寄与していることは間違いない(だからファーストインプレッションのインパクトが少ないとも言えるが)。
- 3X-Uに比べれば「動く椅子」というイメージが強くなったUni-Cub。名称はuni=「ひとつの」=一輪。Cubはもちろん「万人に使いやすくフレンドリー」なスーパーカブから。今回試乗させていただいUni-Cubには現行のバイクに付いている丸カコミのホンダウイングマークが付いていたが、依田 麗カメラマンは試乗してすっかり舞い上がり本体写真を撮っていなかった。しょうがないのでいただきものの広報写真を掲載。しかし、こちらはごらんのような赤ウイングマーク付。この違いに深い意味がありやなしや?
見た目だけではない。あまりに簡単にあまりにスムーズにすんなりと乗れて動かせてしまうため、一輪車であることをまったく感じさせず、自立して人を乗せて自在に動くUni-Cubが、実はどれほどすごいことなのかが実感として伝わってこない……そんなことをいうと開発者は嘆き悲しむかもしれない。
いやいや、そんなことはないだろう。ニヤッとするに違いない。
技術力の高さを声高らかにアピールするのは、最終目標を失念したただの研究者バカ。Uni-Cubの行く先に求められていることは、いつでもどこでも誰でも簡単に扱えることなのだ。
- こちらで動画が見られない方は、YOUTUBEのサイトで直接ご覧ください。
誰でも簡単に乗れるUni-CubとU3-X。どちらがいいとか悪いとか、楽しいとかつまらないという問題はさておき、わずか2年でここまで商品化に近づけたホンダの底力に素直に驚く。
Uni-Cubが商品化されるのは遠い未来の話ではないはず。その時はバイクと同じように「乗りこなす楽しみ」のあるU3-X的なバリエーションも大いに期待したいところ。そんなことは今更いうまでもないことで、走る楽しみを提供してきたホンダには釈迦に説法か。
編集部インプレ その1 「何じゃこりゃーーーっ!す、す、すんごい!」
ワタクシは、一輪車に乗れない。
先日テレビを観てたら、かの芦田愛菜ちゃんが一輪車で登場した。
チクショーッ!
だけど、ワタクシはUni-Cubには乗れちゃう。
簡単に乗れちゃった。
愛菜ちゃんは乗ったことがないだろう、ザマミロ(大人げないな……)。
以前、U3-Xを体験したことがある。
小さくブ~ンと唸りながら「立って」いるのだ。スタンドなんかないよ。
健気にも、一人で、いや一台で立っているのだ。
で、おそるおそる座った。ステップに足を載せた。
小さくブ~ンと唸って、文句も言わずワタクシを乗せている。
転びません!
別にバランスを、懸命にとる必要もない。ワタクシ、バランスボールも無理ですが……。
体重を前に移動すると、前に進んだ。
何じゃこりゃーーーっ!
体重を後ろに移動すると(ちっと恐いけれど)、後ろに進んだ。
す、す、すんごい!
体重を右に移動すると、右へ。左へ移動すると、左へ。
ホンダにしてみれば、セグ○ェイなんて目じゃないんだろな、きっと、と思った。
Uni-Cubは、U3-Xの進化版だ。
誰にでも乗れるように、ってことでレバー操作で前進後進左右旋回できるのだ。
この“誰にでも乗れる”ってゆーのが、実は一番難しいのだ。これがホンダの挑戦であり、夢なんだな。
ちょっとスピード感とゆーか、クイックリーレポンスじゃなくなって、U3-X使いのワタクシとしちゃ、もう少し速くしていただいてUni-Cubレースなんかやりたいなと思う今日この頃なのだ。(本誌編集長 中尾祥司拝。)
編集部インプレ その2 「ちょっと……残念」
ホンダ・ミーティングで「Uni-Cub」というパーソナル・モビリティ・ギアに乗らせてもらった。以前に乗せてもらった「U3」という名称だったっけか、 あの“自立式一輪車”のアイデアを発展させたモデルなのだそうだ。
前回のモデルでは、斜め方向に移動したり、定地旋回が苦手だったが、ニューモデルではもう一輪加えたおかげで格段にコントローラブルとなり、斜め方向(といっても旋回で向きを変えて前進)やその場での旋回も簡単になった。
ハンドルも付いた。そのハンドルに付いたジョイスティックタイプのコントローラーで操縦するようになった。
で、乗りこなすのは格段に簡単になったのだが…。
ハンドル付けたり、補助輪付けたりしてまで使いやすくしたいなら電動車椅子でいいじゃん。誰でも簡単に乗れてしかも楽ちん。
前回のモデルは一輪でありながら自立し、腰掛けて体重を移動するだけで行きたい方向に動いてくれた。確かに乗りこなすのは慣れが必要だったが…。ホンダの技術に感動した。
前回のモデルがバイクだとすると、最新作はクルマになってしまった。
ちょっと残念。(本誌新車担当キャップ 小宮山幸雄)
編集部インプレ その3
ウイングマークは二輪の証?
不謹慎ながら、Uni-Cubに乗った美しい女性(研究員?)にまず惹かれた。
いわゆる自動的にバランスをとり、全方位駆動車輪がそなわる進化版一輪車・Uni-Cubは、前回の東京モーターショーに出展され度肝を抜かれたU3-Xに対してインパクトは薄れ、すっかり洗練された印象に。 ジョイスティックのおかげで、より自分の行きたい方向へ進むことができるようになったが、相変わらず体重移動でも行きたい方向へ転ぶことなく進む独特の感覚には驚く。
これぞ「ホンダの、日本が誇る技術!」と思うと嬉しくなってしまった。気になったのはボディに取り付けられた“ウイングマーク”。朝霞生まれということ? ホンダ・モーターサイクルの仲間ということ?(本誌最後の防衛線 高橋二朗)
編集部インプレ その4
「一輪じゃなきゃダメなんです」
センセーショナルなデビューを飾った先代U3-Xとは真逆、カラーを含め見た目がちょっと地味過ぎやしませんか?
と心配したが、これは間違いなく想定内、あえての選択に違いありません。姿形のインパクトはU3-Xで卒業。次の驚きは実際に乗って体験してくださいという、Uni-Cubの完成度に対する強い自信表明とお見受けいたしました。
ただ、あまりに乗りやすくなってしまったので、気になるのが一輪車であることの意義。
「二輪じゃダメなんですか?」と仕分けられないような一輪車ならではの用途やアドバンテージが次なる課題でしょうか。
ところで東京モーターショーに出展しなかったのは、なぜ? その理由を考えると夜も眠れなく……。(本誌大ザル 青山佳峰)
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