KAWASAKI Night Together

グルルルルルル。一番古いルパン三世のエンディングでシルエットの不二子ちゃんが走らせるバイクの音だね、これは。懐かしい。十代の頃、400と言えば並列2気筒が当たり前だった。並列4気筒は鰻重でいえば特上。ヨンフォア、FX、XJ、GSX400F、CBX、と続く怒濤のマルチ攻撃。その吹け上がり、滑らかさ。すべて誘惑的だった。でも根っこに染みついているのはパラツインだ。180度クランクのパラツインにしか出せないこの音は21世紀の今日、超少数派。音だけであの日に飛べるタイムマシンだ。でもZ400は360度だったんだよね。

もとい。浜崎橋から夜の首都高速1号線を横浜方面へ向かう。レインボーブリッジを左手にやり過ごし、天王洲あたりを抜ける。羽田に舞い降りる飛行機が見えてくる頃、左側には瀬が黒く広がる。1号線はそこで巨大なモノレールの路線が併走する。変化の激しい東京でここだけは40年近く変わっていないんじゃないだろうか。特に背景を夜がぼかした今の時間は特にそうだ。

KAWASAKI Night Together

タンタン。この路線は継ぎ目とカーブが多い。この路線でニンジャは見事な足さばきを見せる。低速ではやや硬いのはご愛敬だが、高速走行では接地感、乗り心地とも申し分なし。どの回転域でもアクセルにリニアなトルク特性のエンジンはぶん回す必要がない。流すだけで充実の時間を過ごせる。赤く光るデジタルメーターが午後10時を告げた。

グルルルル……、タンタン、タンタン。 ニンジャは多摩川を渡り、工場地帯を抜ける。オレンジの光の点がタンクの上を滑って行く。

加速する。ダッシュは想像以上だ。回転が上がると“グ”と“ル”の間隔をぎゅっと短くして迫力のダッシュをする。快感だ。シフトダウンするより、むしろこの中速域から持って行かれる息の長い加速のほうが心にしみる。400並列ツイン180度クランクにしかできない技だ。しかも記憶にあるGPZ400S、EX-4といった歴代カワサキの並列400ツインスポーツの「未対策」世代のバイクと比べてもニンジャ400Rの力感は一歩も引かない。それどころか、トルク感と回転上昇から来る盛り上がり感が綺麗に心に寄り添ってくる点でホントに400? という疑惑が沸くほど。

快適なフェアリングとバーハンドルの組み合わせは、一見物わかりの良さを印象づける。でもステップはけっこう後退していてしっかり前傾姿勢のやる気ポジションだ。頼もしいがどこか愛嬌のあるグルルルルと回るエンジンで、夜の首都高速1号線をスイスイ切り取って行く。カウルの快適性もかなりのもの。このまま神戸ぐらい走れそうだ。

kawasaki night

大師料金所を過ぎると1号線は横羽線と名前を変える。工業地帯を抜けると身近に異国を感じさせる街、横浜はもうすぐだ。横羽線から湾岸線に入る。港を大きく左に回りながらベイブリッジを渡る。左手にみなとみらい。ランドマークタワーをはじめ街の明かりが港に映る。いつ見てもあの観覧車は「クイズ・タイムショック」だ。この峠のような橋を越えると横浜にサヨナラである。ニンジャ400Rは心を揉みほぐす。帰りの湾岸線は唄でもうたってこっと。あっという間の80キロだった。

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