KAWASAKI Night Together

終わりの見えない夏を台風が追いやり、この時期に珍しい激しい雷が秋を連れてきた。粘りのある夜気は何処にもない。今年もちゃんと冬が来る。そう確信を持てる秋の夜だ。

秋の夜はバイクで走るのに最高の瞬間だ。昼の賑わいが窓の明かりに変わり、窮屈だった道路は遠くまで見渡せる。

夜空を雲が流れる。その塊が月にかかると、月は雲を射るように照らす。ER-4nのメーターは今宵の空だ。月のように明るい速度計。そして影のような塊だった雲が月明かりで透かし絵のようにタコメーターのグラフを描き出す。まさに秋の夜空だ。

短く切れ上がったテール、個性的なライト周り、デザインの綺麗なフレームやリアサス、それにスイングアーム。愛でたい部分が実に多い。分類学上ネイキッドかもしれないが、ネイキッドという言葉が持つ、桐箪笥から出したての衣装のようなちょっと古くさい匂いがない。それでいてストリートファイターほど飛び道具さを振りかざすこともない。いい塩梅。秀逸なスタイルだと思う。

KAWASAKI Night Together

兄弟モデルであるニンジャ400Rと比べ、むしろハンドリングが街で重厚感を感じさせるのはこちらだ。400という数字からくるほど軽々しさはなく、ニンジャ400Rがスポーティーだとするなら、こちらはシック。そんなハンドリングだ。それでいてダイレクトにバイク感が詰まっている。

走る、曲がる、止まる。それらを程よく混ぜ合わせる街乗りは正にER-4nの独壇場だ。後退したステップとシート、そしてハンドルバーが造るポジションは街にいて峠を走る姿を想像できるし、高速道路でもラクちんな設定だ。それでいて街ではいささかのしんどさも感じさせない。

kawasaki night

大きな通りを流す。高級な繁華街は夜になってもどこか良い匂いを漂わせ、その先のオフィス街にはビルの1階がオープンカフェになっていて、照度を落とした照明の奥にけっこうな人達が座っていた。石畳調の路面でやや角のある乗り心地を見せる4n。なんだかミッションも渋いような気がする。しかし流れをリードしながら走ると本領発揮とばかりに全体がしっくりくる。小気味良い。外観にも気を遣ったペダルディスクは、実はとても扱いやすい。速度調整、減速、停止、そのどれをも意のまま。400ツインのエンジンを速度に合わせて積極的にシフトして使いこなすのがこれまた楽しい。

6000回転以下限定で走っても相当にトルクフル。3000回転ぐらいからグイっとアクセルを開けて加速するとき、このエンジンは街の景色の中で最上の加速感を楽しませてくれる。もちろん1万回転+まで力は衰えないが、中回転域でこれほど走ると出番は多くはない。信号が待ち遠しいのだ。

秋の夜。それはそこにあるライディングゾーンだった。なんて思いに駆られるほどER-4nの出来映えは素晴らしかった。バイクで走り出した頃とはまた違うワクワク感を夜の街で見つけたのである。

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