タイトル


「ずらーっとならべた展示館だろ?」


やっぱそう思っちゃいます?

静岡県は浜松のスズキ本社前に2009年4月1日にオープンしたスズキ歴史館。すでに行かれた方も多数いることと思う。

まだ行ったことのない方や、恐れ多くもご存じない方にしてみれば「スズキ歴史館=スズキの古い車やバイクが展示してある博物館」という認識ではないだろうか。

それは正しくもあるが、間違ってもいる。

スズキ歴史館にはもちろん貴重な歴史ある(中には歴史を作れなかったものもあったりするが……それもまた楽しみ)車やバイク、織機が多数保存、展示されている。

今まで公開されていなかった歴代のスズキ車がきちんと整備した形で(残念ながらすべてが動態保存ではないが、主要車輌は動態保存されており、イベントなどで走らせることもあるという)一堂に会している施設は他に無い。

これだけでも見に行く価値は十二分。というか、我々の場合こちらがメインとなることは否めない。

世界一のバイク生産国と言われながら満足な施設がなかった1980年代までを思えば、4メーカーの展示施設が揃った現代は、なんという幸せな時代だろう。

まあ、そのかわりと言うのもなんだが、かつてのバイク大国は中国、インドに追い抜かれ国内需要も全盛期の8割減では見る影もない。

『二番じゃダメなんですか』なんて平然と言い放ち、子ども手当だ個別保証だと小金をばらまく未来を見据えていないな政治が行なわれているようでは、日本もお先真っ暗……

今こそ日本古来の伝統である「ものを作る」ということの意義と楽しさをしっかりと未来を担う子供達に伝えていくことが絶対必要不可欠じゃないかと思う。

だって土地も資源もない日本には、生み出す、作り出す頭脳と技術以外、生き抜いていくすべはないのだから。


「もう遅い」ではなく「まだ間に合う」

スズキ歴史館には、それがある。

と、そこまで話を大きくすることもないのだが、もの作りの精神うんぬんを説いたところで、子供たちには釈迦に説法じゃなくて、馬の耳に念仏。

スズキ歴史館は子供たちのリピート率が結構高いそうだ。

先にも述べたように、大人(特に我々のような)の興味は車輌展示に向かいがちだが、子供たちにとっては単なる古いバイク、古い車にしか見えないかも知れない。

「おっ! フロンテSS」とか「なんだこのインパルスのカウルは!」と興奮している濱矢フミヲのような子供がいたら心強いが、二輪四輪離れが止まらない昨今の子供にはまずいない(余談だが濱矢家の長男はフェラーリのミニカーがお気に入りという。さすがだ)。

なのに、子供達がなぜ? 

その秘密というか理由のひとつは、入館料無料ということ。

国が運営する人気の某施設が、事業仕分けという大義名分によって閉鎖されたり有料化されてしまったが、こちらは駐車場までもが無料という太っ腹。

節減節約合理化が第一義となりつつある風潮の中で、これはとてつもない大英断である。無論、無料だからという理由だけで、10万人近くが来場するはずもない。

子供達に大人気の2大スポットが、組み立てロボットと3Dシアターだそうだ。たしかにすごい。子供よりも大人の方がハマるかもしれない。こればかりは口で説明するよりも、実際に自分の目で確かめて欲しい。

さらに、ユーモアあり、なつかしさあり(子供にとっては新鮮さかも)ミニシアターが多数。

そして実際に自動車が作られるまでの行程を体験できるコーナーは、企画会議、造形、設計、テスト、そして組み立てラインまでも再現されており、一通り遊んだ小学生高学年のリピーターに次の知識欲を刺激する。

説明や解説といった理屈だけではなく、一歩も二歩も踏み込んで、いかに多くの人が関わり、製品が作られていくのかが立体的に感じられる展示や説明の仕方の工夫が人気の秘密に違いない。

「この次をどのように発展させていくのか、これからの考えどころです」と広報部部長の山村さんはおっしゃっていた。

この不況下、運営していく側の苦労は並大抵ではないはず。しかしさらに先を考えていてくれるとは心強い。

あっちを見ても、こっちを見ても閉塞感ばかりのこんな世の中で、一企業が管理運営する心意気も含めて、子供達に「ものづくりの楽しさ、喜び」が芽生えてくれるんじゃないか、そこまでいかずとも「ものつくり」の本質的な部分を感じてくれれば、何十年後大きく花開くかも知れない。

「技術者になろうとしたきっかけは、小学生の時に行ったスズキ歴史館です」

「歴史館で歴史観を変えた」世代が活躍するまで、もうひとふんばりしなければなりませんぞ。ご同輩。

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タイトルカットの落書きだらけのスイフト、なんだと思います?

これ、実は「車をキャンパスにして好きな絵を書いてね」というイベントがあったそう。

大人から見ればなんでもないことでも、子供達が車に関心を持つきっかけになること間違いない

でも、キッズたち、そこらに停まっている車には書いちゃダメだよ。

それから館内を走ってはいけませんからね。大人もね。

玄関

子供でなくとも心が先走る。いざゆかん。でもその前に予約を忘れずに。予約方法などは最後まで読んでくれい。

1F

展示車両に触れることはもちろん禁止。今回はクリスマスのお子様向けイベントということでキッズ専用DR-Z50が記念撮影用として特別に用意されていた。ただしあったら超ラッキーくらいの確率なので期待しないように。キッズマシンに無理に跨ろうとすると……ツキが底抜けなら大島広報課長さんが止めてくれるぞ!(これも超天文学的数値の確率だけど)

織機

3階ではめったに見られない貴重な織機群がお出迎え。見れば見るほど不思議な機械だ。

わが家のフロンテ

ミニシアターの中でも一番人気が「わが家のフロンテ」。ドリフとサザエさんを合わせたような昭和感は最高!

スズキの名車が一同に

スズキの名車が一同に。貴重な映像も放映されている。夢中になって気がつくと浦島太郎状態になりがちなので要注意。

車が出来るまで

2階の「車が出来るまで」のコーナーも随所に工夫が。最初にある企画会議は参加している気分になれるぞ(意外にも?)。

産業ロボット

キッズも大人もとりあえずは驚く産業ロボットの動き。しかも自分で操作できるとなれば必見、必操縦!

生産ライン

生産ラインもコンパクトに再現。その昔季節工をしていた濱矢くんは「はんちょ〜っ!」と叫んでしまう納得のリアル感。


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