帰り道。アッキーの走りが変わっていることに気づいた。
緊張してガチガチに固まっていたのが、力が抜けて、身体がよく動いている。
人生の師の中のひとり、偉大なる李小龍先生が言った「Don't Think Feel」の境地に近づいたようだ。
おどおどと怖からず、走るペースも上がった。いわゆるひとつの「慣れ」ってやつだ。
指南本や、人から習うより、いちばんの勉強はやっぱり、まず走ることなんだな。
アッキーの感想文
時間はそろそろ日没、ラストあたりでハマちゃんが後ろにべったりとついてくるという、なんとも恥辱的なマネを!こうなりゃヤケだ!!
多少ぶっコケたって、セローを快く貸していただいたヤマハさんなら笑って許してくれるはず(自分が責任者でないのでいいかげん←※許してもらえません。編集部注)とばかり、アクセルを開けて未知の領域へと踏み込んだのだが、その矢先の左コーナーで明らかに(オレ的には)オーバースピードで突っ込んでしまった。
ブレーキは使えない、スロットルを戻してトラクションを抜くのも危険、なら! もっとバンクさせてアクセル開けるっきゃねえっ! とばかり、思いっきりセローを寝かすオレ。
リアタイヤはすべる、フロントもすべる、しかし、確実にマシンは出口を向き、見事コーナーをクリア!この爽快感はちょっとやみつきになるぞ。
後でこのことを後ろで見ていたはずのハマちゃんにどや顔で話したら、「そんなにすごいことあった?」とのこと・・・…。
いいのよ。丸一日走っただけで、最初はクロマニヨン人だったオイラは、終わり頃にはなんとか人間にまで進化できたって感じだし、ハマちゃんも「朝とは全然走りが違うよね」と言ってくれたし。
景色も楽しめてちょっとしたスリルも味わえ、しかもバイクのコントロールが上手くなる。むむ、林道って、実はバイク乗りにとって絶好の遊び場なんじゃない?
マジでセローを買って、自分でも走りに行こうかなあ。
P.S. このツーリングの数日後、足の甲から手の指まで全身が筋肉痛になるという恐ろしい事態に! 中高年のみなさんは体力をしっかりつけてから行きましょう。
街でキレイなセローでもいいけれど、やっぱりセローにはこういう土化粧姿がしっくりくる。見かけ以上にタフなやつだからね。
はっきり言って、3回に分けた今回の旅で走った林道は、それほど難易度は高くない。初心者でも、それほど苦労せずに行けるだろう。
林道経験が豊富な人や、ここを走ったことがある人は「あれくらいで冒険かよ」と鼻で笑うかも知れない。
感じ方はそれは人それぞれ。ちょっとした経験者であるボクとしては、トレールバイクを手に入れれば、こんな世界があるというのを、アッキーに、そしてまだ林道を走ったことがないみなさんに伝えたかった。
「私にできるのは、“冒険の扉”を示すこと。扉の向こうには危険が待っている。扉を開くのは君だ」と言ったのはパリ・ダカールラリーの創始者である故ティエリー・サビーヌ。
そこまで立派でも、危険でもないけれど、向いている方向は同じだ。やっぱり林道は楽しい。
また行こうぜ、アッキー! 今度は山中泊もいいね(熊のいないところで)。 でも頼むから走りは初期化しないでね……。