2018年11月2日

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ツーリングを断ってでも参加したい 警視庁クイーンスターズと腕を磨く、 刺激的な3時間

■取材・文:中島みなみ

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クイーンスターズ(=QS)は警視庁約4万3000人の職員の中から選ばれた女性だけの白バイ隊だ。交通安全運動などソフト対策で事故防止に取り組む役割が多いが、男性白バイ隊員と同じ練習を積み、競技大会でも優れた成績を残す。安全運転のために研鑽を積んだ精鋭が実施するライディングスクールだから定評がある。体験者の一人は「教習費用が保険料だけで格安。教え方が適格、親切丁寧」と絶賛する。その理由はどこにあるのか。おカネの話で恐縮だが、参加料は0円、保険料の200円だけと格安な点も見逃せないが、それだけじゃない。10月19日に蒲田駅に近くにある自動車教習所「ラヴィ・ドライビングスクール蒲田」(大田区西六郷)で開催された現場で、その理由を確かめた。

 

今回は「低速走行」がテーマ

 ぜいたくな教習陣、これが第一印象だった。指導員となる白バイ隊員は、千代島紫那巡査長を中心とするQS6人と男性マネージャー役の保谷健一警部。この7人で12人の受講者を指導する。持ち込まれた白バイは6台あり、1台で担当するのはわずか3人。全体を見渡す指導員もいて、目が行き届いている。
 例えば、「ネンオシャ、チエブク、トウバシメ」(燃料・オイル・車輪・チェーン・ブレーキ・クラッチ・灯火類・バッテリー・ボルトなどの締め付け)で知られる走行前の日常点検では早速、保谷警部がタイヤのサイドについた染みを見つけ出した。
「チェーンにオイルを切らさないようにするのは重要ですが、付け過ぎると別の問題が起きる可能性があります」
 車体を傾けた瞬間、付着したオイルが転倒の原因になるかもしれない。
 教習時間は3時間と短いが、その中にぎっしりと安全運転が学べる工夫が詰め込まれている。白バイの直後を走る車両を1周ごとに入れ替え、白バイのコース取りやブレーキのタイミングを参加者全員に見てもらう配慮もその1つだった。
 

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千代島紫那巡査長を始め6人のクイーンスターズが指導に当たる。


 
 教習内容もユニークだ。
「取り回しが重いと思っている人がいると思いますが、ポイントを押さえて軽いと思って帰ってもらいたいと思っています」という千代田島巡査長の言葉で始まったのは、エンジンをかけずに取り回しで、できる限り早く1周すること。車体と自分の距離、ブレーキレバーの細かい調節ができないと、車体の動きに人が追いつかなくなる。
「車体を立てるとタイヤ接地面が少なく軽くなります。怖いと思って車体を自分のほうに寄せると車体の傾きが大きくなり、タイヤの接地面が広くなり重たく感じます」
 なんだ、そんなこと知ってる、と思うかもしれないが、さらに続きがある。
「ハンドルを左に切ると右に、右に切ると左にバイクは倒れやすくなります。これを利用してサイドスタンドを払って乗る時に右にハンドルを切ると、自分のほうにバイクが倒れてくるので乗りやすくなります」
 逆操舵のことだが、一般のライディングスクールで、コーナーリングのために知っておくバイクの特性として説明されることが多い。
 

レベルや車種に合わせた個別指導

 QSのライディングスクールは、胸部プロテクターを着用した上で、車両を持ち込むことが条件だ。低速での安定した走行は、動き出しが重要になるが、今回の参加車両は排気量125cc~1300ccまでのスポーツバイクやスクーターで、両者のでは車両の挙動が違うので、練習方法も違う。しかし、この対応も完璧だ。
 動き出しの感覚を養うために、アクセルを開けずにクラッチをつないで走る練習では、QSが親愛を込めて「おじさん」と呼んだ保谷警部が担当。
「スクーターはスロットルを開けて動き出すまでに時間差がある。車両には負荷がかかるが駆動を与えながらリアブレーキで挙動を調整してどこまで低速で進めるかに挑戦しましょう」と、受講者を励ました。さらに、ハンドルを一方に切った状態で、同じ動作を繰り返すことで、低速で小さく旋回することも体験。スクーターでも車格を問わず技量を磨ける工夫があった。
 
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クイーンスターズひとりが、3人の受講者をしてくれるから、個別指導に近い充実度だ。


 
 このスクールの狙いは、初心者や女性ライダーだが、特に参加条件はなく、乗り始めて間もない人からバイク歴10年以上の経験者までさまざまなで、それぞれが腕を磨ける。
 指導員が参加者の技量を見極めて、特に自信のない人向けには、マンツーマンで女性隊員が指導をしてくれる。休憩をはさんだ後半には、俗に一本橋や波状路といわれる練習もあり、厳しい指導も時にあるが、警察官なのに(と言っては失礼だが)、とても教え上手な上に、盛り上げ上手で、参加する女性ライダーも、おじさんライダーは、なおのこと張り切ってしまう雰囲気を醸し出してくれるところも、いい意味で予想を裏切った展開だった。これらのカリキュラムは、なんと女性隊員が毎回、教習場所にあわせて手作りしている。
 
 警視庁交通部が開催するスクールだから、サーキット走行体験が付いた走り込み中心のライディングスクールとは大きく違うが、安全運転=安定した公道走行を実現するための多くの経験ができる。充実した教習の最後には、ちょっとした抽選会もある。クイーンスターズ・ライディング・スクールは「年に数回、2か月に1度を目安に開催するスクール。教習所など民間施設を借りるため不定期ですが、12月にもう1回開催したい」(保谷警部)という。平日の開催ためやりくりが必要かもしれないが、いろいろなライダーにも、ぜひ一度は経験することをおすすめしたい。
 
(取材・文:中島みなみ)
 
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