2019年3月25日

EICMAミラノショー2018をじっくり振り返ってみよう! Part4 『やっぱりEVの時代なのか? ヘルメットも気になるし……』

●レポート・撮影:河野正士

すっかり遅くなってしまいました。申し訳ありません。日本のバイクシーズン到来を前に、EICMAで発表されたニューモデルやニューアイテムをお復習いさせてください。今回はアイテム編「その2」、最終回です。

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■EVとe-Bike

 今回のEICMAでは、ハーレーダビッドソンが市販バージョンのEVモーターサイクル「Live Wire」を発表しました。いよいよか! と思ったのですが、とっても気になることが……それは充電方法です。
 

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ハーレーの「Live Wire」。そのパフォーマンスはもちろんですが、市場での反応が気になります。


 
 自動車のように急速充電器を使用する場合、その充電形式は何をチョイスするのか。いまこの充電形式の覇権争いが熾烈を極めています。これまでアメリカではCOMBOと呼ばれる形式が主流でした。また日本ではCHAdeMOという形式。この両者、互換性がありません。現在CHAdeMOは中国を巻き込み、さらには欧州と北米で猛攻勢掛けています。

 自動車のように車体が大きければ両方の充電ソケットを装備することも考えられますが、バイクの場合、そういうワケには行きません。で、「Live Wire」はCOMBO形式で北米および欧州で販売するそうです。これは何を意味しているのか……

 現在、EVスクーターは高圧の急速充電器を使用せず(低圧の急速充電器の普及が始まるのは少し先になります)、バッテリー交換式がポピュラーになりつつあります。都市部での短距離移動をベースに考えれば、大きなバッテリーや長い航続距離はさほど重要ではなく、それよりも充電済バッテリーにすぐに交換できるバッテリーステーションの普及とそのシステム作りが先決。そうなると台湾で大きなシェアを持ち、すでに欧州に進出してシェアEVスクーター事業を展開している台湾のGOGOROが抜け出しているでしょうか。

 そして今回、そのバッテリー交換式のEVモーターサイクルを発表したブランドがありました。それが「Pursang(プーサン)」です。元GASGASのエンジニアで、そこで進めていたプロジェクトが頓挫したことで独立。Pursangブランドを起ち上げ、EVのフラットトラッカー製作に着手したそうです。アイディアはまさに、EVスクーターが採用する交換式バッテリー。もちろんEVスクーターのような利便性を求めるならバッテリーの共通化などが必要ですが……現在は車体からバッテリーを取り外して自宅内で充電できることから日常的にも使いやすい。またこのスタイルからも分かるとおりフラットトラック遊びをするときは、離れた場所でも電源が確保できれば充電が可能なので、遊びのフィールドが広がるとのことでした。
 
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スチールフレームにモーターの出力を抑えた廉価モデル(ブルーボディ)と、アルミフレームにフルパワー仕様のモーターを持つフラッグシップモデル(ブラックボディ)。シートカウルを開閉し、バッテリーにアクセスできます。


 
 それと今年からEVモーターサイクルによる世界選手権、MotoEが始まるわけですが、そのワンメイク車両を提供するイタリアのEVモーターサイクルブランド、ENERGICA(エネルジカ)が、SAMSUNG社とパートナーシップを結び、その通信ユニットを採用しました。2020年に5G通信網がスタートすると、バイクそのものがあらゆるネットワークと繋がり、その情報を車体はもちろん、ヘッドアップ・ディスプレイやインカムと連動させることも可能になります。うーん、凄い世界になりそうです。
 
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メインモニターにさまざまな情報が表示されるほか、バックカメラを持ち、撮影した後方画像をメインモニター左側に表示します。


 

■ヘッドアップ・ディスプレイ(HUD)

 EICMAではヘッズ・アップ・ディスプレイ(Heads Up Display)のトップブランドがブースを構えていました。韓国の「SENA(セナ)」、アメリカの「SKULLY(スカリー)」と「LiveMap(ライブマップ)」、日本の「CROSSHELMET(クロスヘルメット)」です。この4社はシステム後付けのHUDではなく、ヘルメットとのセットで開発および販売する(販売を予定している)メーカーです。彼らは独自のフィロソフィーにより、後部カメラによるモニター機能、NAVI情報、スマートフォンと連動した音楽や電話、メールなどのコミュニケーションツールの情報をヘルメット内に設置した小型モニターに投影。その投影項目はメーカーによって異なります。
 
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CROSSHELMET。開口部上側に見えるH型のプレートがモニター。システムからヘルメット帽体まですべてを自社開発しています。


 
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LiveMap。さまざまな情報がシールド内側に表示される戦闘機用ヘルメットの技術を応用。試作ヘルメットにはシールド内に小さなモニターがセットされていましたが、本来はシールド内側に直接情報を表示。バックモニターは使用しないとのこと。


 
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SKALLY。チンガード内側の、この小さな突起物がモニター。このモニターの台座はチンガード下側まで貫通していて、それを操作して高さ調節が可能。モニター自身も左右に角度変更できる。


 
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SENAのみ、話を聞くことができず、実機を試すこともできませんでした。


 
 SENA以外の各メーカーと話をし、試作機を試すことができましたが、各メーカーともにディスプレイのサイズやヘルメットへの搭載方法が違い、それによって使い勝手が大きく違う印象でした。具体的には、モニター内の情報を見るために視点を動かす必要があり、その焦点移動距離や方向が違います。たとえばSKULLYはチンガード上に小さなモニターがあり、その画面内の情報を見るためにはバイクのサイドミラーを見るようなイメージで視線と焦点を移します。CROSSHELMETは開口部上部にモニターがあり、ちょうどクルマのバックミラーを見るイメージ。LiveMapはシールド内側にモニター情報を直接投影するシステムを構築していますが、僕が試した試作機は四角い後付けモニターがシールド内側にセットされていました。これがもっとも視線と焦点の移動距離が少なかったです。ただしどのブランドを使うにしろ、慣れは必要だなぁと強く感じました。

 また2020年よりサービスがスタートする5G通信網との連動や、EVモーターサイクル&コミューター、さらには内燃機モーターサイクルが搭載するであろう、通信メーカーが提供する通信ユニットやクラウドサービスとの連動によって生まれる新たなサービスや乗車体験を、HUDを使用することでよりリッチに提供できるのではないでしょうか。
 
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その個性的なEVモーターサイクルが大いに話題となった「ARC Vehicle」。でも僕は、HUD付きヘルメットや、バイブレーター通知機能付きバックプロテクターに興味津々です。


 
 また英国レンジローバー社から出資を受けて、今EICMAでワールドプレミアされたEVバイクブランド「ARC Vehicle」は、EVモーターサイクルとともに、HUDシステム内蔵のヘルメット(帽体はHEDON製、HUDシステムはSENA製)や、それと連動したライディングギアを発表しました。

 自動車では一般的となった「後方車両検知警報」システムを流用し、ヘルメットに内蔵したHUD用後方カメラで接近する後続車を確認すると、HUDユニットと連動した、ジャケット内バックプロテクターに内蔵したバイブレーターが振動し、後方車接近をライダーに知らせるというもの。ディスプレイ表示内容を抑えながら、またはディスプレイに頼らずライダーにさまざまな情報を提供する、新しいライダーの安全性や快適性を高める方法だと感じました。

 

■ヘルメット

 ヘルメット好きなので、会場で見かけた気になるヤツを紹介します。
 
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1ヶ月前に起業した「NACA」ヘルメット。そもそもサーフボードのフィンやボートを造っていた会社が、その技術を活かしてヘルメット開発に着手したそうです。したがってその素材は、ウォータースポーツ周りでも使用されているものがベース。そしてハニカム構造をカーボン素材でサンドイッチした独自構造の素材を生み出し、それを帽体として使用。もちろんEUの規格はパスしているそうです。しかもそのスタイルは70~80年代がモチーフなのです。


 
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今年の「SCHUBERTH(シューベルト)」はとってもポップなカラーリングでした。この感じ、好きです。


 
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こちらはイギリスのヘルメットブランド「HEDON(ヘドン)」。クラシカルなデザインが人気。2019年は、BMWのヘリテイジ系純正ヘルメットにも採用されています。


 
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オフロードに特化したヘルメットブランド「JUST1 Racing」。


 
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フランスの「SHARK(シャーク)」。これは、今季からKTMファクトリーに移籍したフランス人MotoGPライダー、ヨハン・ザルコのレプリカ。


 
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オンロードでもオフロードでも、勢力を伸ばしている「LS2」。イエローのアゴ紐や、カラフルな内装など、いままでのヘルメットの常識を覆していながら、でもグッと惹かれちゃいました。


 
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イタリアのヘルメットブランド「VEMAR(ベマー)」は、スイスの会社の資本が入り再スタート。デザインが、グッとポップになりました。また「SIMPSON(シンプソン)」ブランドのヘルメットの生産も開始したそうです。


 


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