2019年6月7日

話題がいっぱい今年の8耐、第一回合同テストとKRT復活記者会見

鈴鹿8耐まで2ヶ月あまりとなった6月3・4日、2日間にわたり4メーカー合同テスト、タイヤメーカーテストが鈴鹿サーキットで開催されました。先日TECH21レーシングの参戦発表があったヤマハ、チームHRCのトライアウト、そしてカワサキが今年はファクトリー体制となるKRT(カワサキ・レーシング・チーム)として出場し、ジョナサン・レイ&レオン・ハスラム両選手が来日という、見どころありのメーカー合同テストとなりました。

8耐はチーム戦というところもあり、3名のライダーのライディングポジションやセッティングの妥協点を探ることや、最高速や最速ラップというより、燃費を高めてアベレージを保った走行が重要視されます。鈴鹿で2分3秒台のベストタイムをもつ高橋巧選手が今回のテストでは5秒台での走行でした。ここで手の内を明かすわけにはいかない各チームの攻防もあると思われ、現時点でのタイムで判断するのは時期尚早。合同テストはこの後6月末と、7月にも予定されており、実際の戦闘力を占うのはこの先のテスト。今回の結果をもっての各チームの今後の展開に期待が高まります。

(レポート&撮影:楠堂亜希)

YAMAHA
いち早く参戦発表をしたヤマハは中須賀克行選手のみのテスト。初日は2分5秒409、2日目は2分5秒992とトップタイムをマーク。また、8耐参戦は予定されていないが全日本でランキング2位の野佐根航太選手、昨年は怪我で欠場したが今季JSB1000参戦の前田恵助選手もテストに参加した。

中須賀克行
野佐根航太

Kawasaki
Kawasaki Team GREENからKawasaki Racing Teamとワークス参戦となったカワサキチーム。昨年もジョナサン・レイ選手、レオン・ハスラム選手(トプラック選手は次回以降のテストに参加予定)が走行した。現場スタッフをみると昨年と大きく変わりはなく、ジョナサン曰く「一番の違いは名前」とのこと。週末のイタリアテストからの鈴鹿、そして今週末のへレスという強行軍。SBK(スーパーバイク世界選手権)ではピレリタイヤを履いているが、8耐はブリヂストン。新しいエンジンでのセットアップでタイムはジョナサン選手が2分6秒523で5番手、レオン選手は2分6秒745だが初走行の手ごたえは十分。

スーパーバイク世界選手権の合間をぬってテストに参加したジョナサン・レイとレオン・ハスラム
マシンは鈴鹿8耐仕様としてゼロから作られる2019年型ZX-10RR

HONDA
HRCの参戦ライダーは現在のところ高橋巧選手以外は未定。清成龍一選手との噂も囁かれるが、今回のテストは1日目にステファン・ブラドル選手と巧選手が走行、2日目はMoto2参戦中の長島哲太選手が急遽来日して初走行した。

ブラドル選手は2日間のテストでのタイムは2分6秒118。長島選手は週末にムジェロで開催されたイタリアGPで予選7番手からスタートしたが、追突により14位。疲れた身体での1本目の走行は2分7秒台。「もっと乗れると思ったけど難しかった」と語ったが、2回目の走行ではぐっとタイムを縮めて2分6秒385。実は2回目の走行が始まった直後に、ピット出口でアクシデントがあり、修復に貴重な時間が費やされてしまった。「今回トライアウトに呼んでもらえたことが嬉しい。飛行機で全然寝られなかったし、身体は超つらいけど、チャンスをもらえただけでも幸せです。HRCでの8耐参戦となれば本当に嬉しいが、もしそうでなくてもこの経験は今後に生かせることだと思う」

HRCのマシンは、スプリント仕様をベースに基本的に巧選手に合わせる形で進めらている。ブラドル選手または長島選手が、この仕様を上手く乗りこなせるかも重要なポイントになってくる。

巧選手が「明らかに遅いとなれば別だが、8耐未経験のブラドルに対し、8耐を知ってる哲。たとえ7秒でも色々なことを考えると……」と話すと「俺、泣いていいですかっ」と哲太選手。8耐には8耐の走り方があると話す巧選手。常に周遅れを意識しながら、スピードを落とさずに、リスクを負わずに走るのが大事だと。2008年(18歳)からの8耐経験があり今年で12回目の出場、初参戦では3位表彰台、通算3勝を記録している。鈴鹿では2分3秒台を出している巧選手、燃費を考慮し絞られた鈴鹿8耐仕様のマシンで2日間のベストタイムは2分5秒710。

高橋 巧
ステファン・ブラドル
イタリア・ムジェロから駆け付けた長島哲太


モリワキ

モリワキでは高橋裕紀選手と小山知良選手。2人はMotoGP時代ほとんど行動を共にしていたというが、ペアを組むのは初めてのこと。ピット内の雰囲気もよく、サイズ感もピッタリの、息の合ったチームに注目。

ヨシムラ

ヨシムラは加賀山就臣選手と渡辺一樹選手、シルバン・ギュントーリ選手を予定。スプリント仕様のままでの走行。

RS-ITOH/TONE



カワサキのサテライトチーム、RS-ITOHからは柳川明選手、マーク・アチソン選手、そしてKawasaki Team GREENの新星・岩戸亮介選手が出場する。 全日本に参戦のTONEチームは、改造範囲が狭いSSTクラスでトップタイムをマーク。全日本でレギュラー参戦の星野智也選手と渥美心選手が走行。

レーシングサプライ/桜井ホンダ



レーシングサプライは青木宣篤選手にダン・リンフット選手、ジョシュ・ウォータース選手。 あなたの街のバイクやさん、桜井ホンダは、伊藤真一選手、全日本に参戦中の濱原颯道選手のサイズ的ツートップに作本輝介選手。

おまけ

宇川HRC監督と柳川選手は鈴鹿4耐優勝コンビです。

2001年以来、18年ぶりに鈴鹿8耐にKRTが復活!

ライダーはスーパーバイク世界選手権で4年連続チャンピオンを獲得しているジョナサン・レイとレオン・ハスラム、トプラック・ラズガットリオグルのSBKトリオ。

2014年にKawasaki Team GREENが鈴鹿8耐に復帰して以来、2016年には2位、2017年も2位、そして昨年はジョナサン・レイを招集し、レオン・ハスラム、渡辺一馬で参戦、予選でポールポジションを獲得し、トップ争いを繰り広げるが、突然の雨によりセーフティカーが入り、ジョナサンが転倒。波乱のレースで3位と3年連続表彰台を獲得しています。

そして今年、カワサキファクトリーとしての参戦を発表、鈴鹿サーキットで行われた8耐テストに、KRTのジョナサン・レイとレオン・ハスラムが参加。そこで記者会見形式での合同インタビューが行われました。

●今回参戦することになった経緯を教えてください。

ジョナサン:「自分にとって一番大事なのはSBKです。今年は大変に難しいシーズンですので集中して取り組みたいところでしたが、川崎重工業とカワサキレーシングチームから今回の8耐プロジェクトへの要望があったことはとても嬉しいことでした。昨年出場して、8耐はとても暑くて過酷なレースでした。今年も8耐に来ることができて光栄です。もちろん、目標は勝つことです! 2019年、最善を尽くします」

レオン:「3年間8耐に参戦してきましたが、昨年はポールポジションを獲得することもでき、表彰台の一番上まであと少しのところまで来ていました。ジョナサンもいう通り、勝つことを目標に頑張りたい」

●幼馴染で仲が良いと言われる2人で出場することに関してどう思いますか。

ジョナサン・レイ

ジョナサン:「僕とレオンは子供の頃からモトクロスを一緒にしていて、14年間同じチームでレースをしていたんだ。レースを始めたころからレオンとお父さんのロンは凄く自分を迎え入れてくれて、たくさん助けてくれた。2年間同じチーム(2013・2014年)でレースをしたのもいい思い出。8耐に関しては、2008年に2人ともホンダで出場しています。今年はSBKでチームメイトになり、チームの雰囲気もとても良く、2人で協力して、バイクをいい方向に開発できていると思います」

●SBK的には重要なシーズン中ですが、8耐に出場するリスクは考えませんでしたか?

レオン:「レースで戦っていくことはいつでもリスクを伴うもので、シーズン中はいつでも忙しく、4日前にも2人でイタリアでテストでした。その後日本で8耐テスト、そして今週末はヘレスでレースという忙しいスケジュールです。体力的にもかなり辛いというのが本音ですよ」

ジョナサン:「そう、このままヘレスに直行するスケジュールで、厳しいところではあるのだけど、8耐は2019年型のZX-10RRの新しいエンジンにブリヂストンタイヤという、SBKで使用するピレリとは違うパッケージ。このバイクをゼロから作り上げるために、どんなにタイトなスケジュールでもこのテストはとても重要な意味を持ちます。今回のテストは、マシンを知る第一段階としては良い手ごたえを感じています」

●8耐に関して一番思う事は何ですか?

ジョナサン:「8耐は世界でもっとも過酷で難しいレースで、レース中は肉体的にも精神的にもとても厳しいんだけど、チェッカーの後に観客がコースサイドで迎えてくれすぐそばを走る感動や、大きな挑戦をやってのけた達成感はとても大きいのです」

レオン:「ジョナサンもいうとおり、8時間で220周する8耐は過酷。1スティント20数ラップを全力で走ることも厳しいが、一緒にレースをするチームスタッフも、毎回タイヤ交換や給油するのも暑い中での戦い。だけど、8時間戦って夜になり、レースがフィニッシュを迎えたときの景色、ファンの暖かさ、レースを終えたときの感激は素晴らしく、世界中のどのレースでも得られないんだ」

●今回のテストの手ごたえはどうですか?

レオン・ハスラム

レオン:「初日のテストとしては満足しています。ベースのZX-10RRが良く出来ているので、8耐本番までに煮詰めていけばOKです。ヤマハはこの4年勝っているし、ライバルとして気にならないわけではないけど、まだ1回目のテストだからね」

ジョナサン:「新しいエンジンでゼロからの組み立て、川崎重工業の技術者、KRTのスタッフと一緒に取り組んでいるところで、今回のテストはバイクを知る上ではとても重要な2日間でした。スタッフと様々な情報を共有して、8耐ウィークには十分に戦闘力のあるマシンになる。今回のテストで言えば、ヤマハもホンダも自分たちよりも良いタイムですが、今回はゼロからバイクを作り上げるのが一番の目的なので、ライバルは考えず、本番にむけて一歩づつ仕上げていきます」

●8耐のテストはあと2回予定されているが、ジョナサン選手がテストをするのは今回限りと言われています。今後はレオン選手がマシンを作り上げることになるようですが。

レオン:「基本的に2人のバイクの方向性は同じなので、今回のテストで得られた情報で本番に向けて作り上げていくので問題ないよ」

ジョナサン:「そう、基本的にレオンがBOSSだ!(笑) 8耐はチームでのレース、トプラック選手とチームを組めることも楽しみにしているし、次のテストでは彼にもバイクの情報を共有してもらいたいと思っている。僕は100パーセントレオンを信頼しているから全く心配ないよ!」