2017年3月16日

MBHCC-D3 小宮山幸雄・順逆無一文

第76回『準中型運転免許』

順逆無一文

 3月12日、平成27年6月17日に公布された改正道路交通法が施行されました。“準中型免許”の新設と、“高齢運転者への臨時認知機能検査と講習の実施”、というライダーの皆さんにはあまり関係ないニュースかもしれませんが、一応頭の片隅にでも入れておいてください。
 
 まずは“準中型運転免許”の新設。従来の免許制度では、車両総重量5トン未満なら普通免許、11トン未満なら中型免許、そして11トン以上は大型免許が必要で、さらにそれぞれ18歳以上で普通免許、普通免許等保有通算2年以上、20歳以上で中型免許、普通免許等保有通算3年以上、21歳以上で大型免許が取得可能という条件になっていました。
 
 新設された“準中型免許”は、貨物自動車などに限定した新区分で、車両総重量3.5トン以上7.5トン未満(最大積載量2トン以上4.5トン未満)のトラックを対象とした免許区分です。これまでなら車両総重量5トン未満、最大積載量でいうと3トン未満までの「かなり大きめの」トラックまで普通免許で運転できていたのですが、改正後は普通免許で運転できるのは、車両総重量3.5トン未満、最大積載量2トン未満に限定されてしまいました。
 
 その代わりに誕生したのが“準中型免許”で、従来の中型免許のうち7.5トン未満と、普通免許のうち3.5トン以上の部分をカバーする免許が新設されたました。車両総重量11トン以上の大型免許に関しては従来通りで変更無しです。まあ、今までがずいぶんと大きなトラックまで普通免許で運転できていたんだな、とも思いますが、運送業界や宅配業界にとっては、それでなくともドライバーの確保に頭を悩ませているところでしょうから影響はかなり大きいのではないでしょうか。
 
 ただこの“準中型免許”の年齢条件は普通免許と同じ18歳以上からとなってますから、本人のやる気次第で、34時間から41時間と、7時間余分に教習所の技能講習を頑張れば取得可能ですからそんなに難しい免許ではないですね。とはいっても、成年男子にとって取得はマストともいえる普通免許だけで、これまでなら運転できていた状態からすれば、新たに“準中型免許”をゼロの状態から取っておこうなどと考える若者はほとんどいないでしょうから、人材確保はさらに難しくなってしまったのは想像に難くないですね。
 
 ちなみに3月12日の改正道交法施行の前日までに普通自動車免許を取得していた方は“既得権”として5トン未満の中型自動車まで運転できる“5トン限定準中型免許”が“おまけ”で付いてくることになりました。また、普通免許を所持していた方なら、4時間の技能講習で“限定解除”のへ道も用意されてはいます。
 
 続いてもう一つの改正ポイントは“75歳以上の高齢運転者への対策”です。ニュースでもたびたび報道される高齢運転者による事故多発。その対策が急がれていますが、まずは法制度面から歯止めをかけようという改正です。
 
 従来の、3年に一度の運転免許更新時に行われていた“認知機能検査”だけではなく、新たに75歳以上の高齢運転者にみられる認知機能の低下に起因すると思われる違反行為のうち18点を選び、そのいずれかの違反を起こした場合、“臨時認知機能検査”を受けなければならなくなりました。その検査により「認知症の恐れあり」(第一分類)、「認知機能が低下している恐れあり」(第二分類)、「認知機能が低下している恐れなし」(第三分類)に判別され、第一分類の対象者には“臨時適性検査”、または診断書提出命令が出され、医師の診断で認知症とされた場合は、免許の取り消しまたは停止の対象となりました。
 
 ちなみに“臨時認知機能検査”の対象となる違反行為は、
 
 ○信号無視(点滅信号を含む)
 ○通行禁止違反(一方通行道路を逆行する等)
 ○通行区分違反(逆走や歩道の通行等)
 ○指定横断等禁止違反(禁止場所で横断・転回する等)
 ○進路変更禁止違反(黄線を越えてのレーン変更等)
 ○踏切での違反(踏切前不停止、しゃ断踏切への立ち入り等)
 ○交差点右左折方法違反(徐行せずに右左折)
 ○指定通行区分違反(直進レーンから右折する等)
 ○環状交差点安全進行義務違反(徐行しない等)
 ○優先道路通行車妨害(交差する優先道路の車の通行を妨害する)
 ○交差点優先車妨害(対向車の直進を妨げて右折する等)
 ○環状交差点通行車妨害
 ○横断歩行者等妨害(横断歩道で一時停止しない等)
 ○横断歩道のない交差点で歩行者横断を妨害
 ○徐行場所違反(徐行しない等)
 ○指定場所一時不停止(標識で止まらない等)
 ○合図不履行(ウィンカーを出さない)
 ○安全運転義務違反(操作ミス等)
 
“臨時認知機能検査”の結果、第一分類の「認知症の恐れあり」と判断された場合は前述の通り臨時適性検査、または診断書の提出命令が出されます。第二分類の「認知機能が低下している恐れあり」と判断された場合は、認知機能検査の結果が前回より悪化していると判断されると実技指導や個別指導など約2時間の“臨時高齢者講習”を受けなければならなくなりました。これまでも医師の診断で認知症と判断されれば免許停止や取り消しの処分が行われていたのですが、一定の違反をした場合にも認知機能の低下の有無を調べ、事故を起こす可能性のある高齢運転者を判別できるシステムに整えた、ということですね。
 
 ますます高齢化していく日本です。切り札は完全自動運転車ですか。
 
(小宮山幸雄)
 


小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は、“閼伽の本人”。 


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