2017年3月30日

MBHCC E-3レースカメラマン楠堂の全日本ちょこちょこっと知っとこ

第38回 シーズン一発目のレースは全日本トライアル選手権

全日本ちょこちょこっと知っとこ

全日本トライアル選手権

 近頃、ロードレースの名だたる選手たちがこぞってトレーニングに取り入れているトライアル。山口辰也選手をはじめ、関口太郎選手、小山知良選手、アジアの伊藤勇樹選手など、若手の注目ライダー、濱原颯道選手なんかも熱心に練習していますね。

 プロのロードレーサーたちもマスターしたがるトライアルの全日本選手権が、2017年3月12日、茨城県の真壁トライアルランドで開催されました。筑波サーキットからも近く、筑波山のふもとにあるんです。

 トライアルは、セクションと呼ばれるエリアを、規定時間内にマーカーの指示通りに足をつかずに走破する競技、1度も足をつかないで走り抜けると0点、1度ついてしまうと1点、2度つくと2点、コーステープを切ってしまったり落車すると5点となり、そのセクションは失格という、いかに減点されずに走破するかを競います。ちなみに、0点は「クリーン」と呼びます。このセクションたちを通常2ラップするのですが、すべてのセクションを回るのにも持ち時間があり、オーバーしてしまうと減点の対象になります。 
 ルールを説明しても「?」でしょうけど、まずは「足をつかない」というところだけ、覚えればいいかと。

 バイク競技ですが、速さを競うものではなく、じっとバイクとライダーの動きを見守るていなので、一見マニアックな競技と思われがちですが、選手との距離がモトクロス以上に近く、トライの時にも応援の声もかけやすいです。一人ひとりの真剣勝負をじっくりと見ることができ、クリーンしたときの歓声はむしろエクストリームスポーツに近い盛り上がりだと思います。 

 そんな全日本トライアル、現在トップに君臨しているのは総合優勝6回・4連覇、昨シーズンチャンピオン#1小川友幸選手、そして総合優勝11回の#2黒山健一選手。とりあえずこの2人だけ覚えて、あとはMFJのプロフィールから、顔の好みとか出身地で見ればいいと思います。この2人と、#3野崎史高選手が2016シーズンは表彰台を独占しました。

この角度から人間が戻ってこれる気がしない

この角度から人間が戻ってこれる気がしない・・・


登り切ったあたりも傾斜が。こんなところを登ちゃうのがトライアルの凄いとこ!

登り切ったあたりも傾斜が。こんなところを登ちゃうのがトライアルの凄いとこ!

 そんな全日本トライアル、現在トップに君臨しているのはV6・4連覇、昨シーズンチャンピオン#1小川友幸選手、そして#V11の黒山健一選手。とりあえずこの2人だけ覚えて、あとはMFJのプロフィールから、顔の好みとか出身地で見ればいいと思います。この2人と、#3野崎史高選手が2016シーズンは表彰台を独占しました。

GATTI(ガッチ)ことシーズンチャンピオンの#1小川友幸選手

GATTI(ガッチ)ことシーズンチャンピオンの#1小川友幸選手(CLUB MITANI・HRC・RTL260F)。昨年のインタビュー記事はこちらで。

黒山健一選手

11回のチャンピオンを獲得している#2黒山健一選手(ヤマハファクトリーレーシング・YAMAHA・TYS250Fi))。

野崎史高選手

昨年ランキング3位の#3野崎史高選手(YSP京葉×KEN OKUYAMA・SHERCO ST300)。

 朝方はマイナスに近い冷え込みのなかでスタートした開幕戦。のっけからテンション高くいくのは黒山健一選手。ひときわ声も大きく、観客を惹きつけます。昨年の後半から新型になったバイク(TYS250Fi)との相性もよく、マインダーとの息もあって順調にセクションを進んでいきます。

 対するチャンピオン小川友幸選手、冷静に慎重に進めていくのですが、少しミスが目立つ展開だったか。コースレイアウトも大幅に変更され、難易度が上がり、セクションによっては大半のIASのライダーが5点に終わるところもありました。

 明暗をわけたのは、身長より高い石の壁に挑む第9セクション。なんと、ここをクリーンできたのは黒山選手のみ! 観客からは惜しみない拍手と歓声があがりました。それが小川友幸選手のトライで一気に悲鳴に・・・稀に見るビッグクラッシュ。バイクは崖下、本人はしばらく動けず。着地で左足首を痛めたようで次の10セクションも5点。
 ここで追い上げてきたのは#4小川毅士(つよし)選手。2ラップ目も黒山選手の勢いは衰えずポイント差を離してひとり旅、足を庇いながらのレースとなった小川友幸選手と小川毅士選手の攻防戦が続きます。

第9セクションでガッチさん、まさかのクラッシュ。すごい悲鳴が。

第9セクションでガッチさん、まさかのクラッシュ。すごい悲鳴が。

「つよぽん乗れてんなぁ〜」と各方面で声があがっていた小川毅士選手

「つよぽん乗れてんなぁ〜」と各方面で声があがっていた小川毅士選手。

 2ラップを終えて、IASのトップ10人だけがチャレンジできるSS1、SS2を残してトップは黒山選手、2位は小川毅士選手35Pt、3位に小川友幸選手37Pt。結構な斜度をかけ上がる難セクを、先に小川友幸選手がトライし、両方のセクションでクリーン。小川毅士選手がSS1をSSクリーン、SS2で惜しくも3点となってしまったため、小川友幸選手が逆転2位。毅士選手は3位で2015年の第5戦以来の表彰台。黒山選手は見事開幕優勝を飾ったのでした。

コースの下見。SSはこんな傾斜を上ったり下りたりのコース設定でした

コースの下見。SSはこんな傾斜を上ったり下りたりのコース設定でした。

SSの最後の登りの黒山選手、目ぢから!

SSの最後の登りの黒山選手、目ぢから!。

IASの上位10人だけで争われるSSでは大勢の観客が見守ります

IASの上位10人だけで争われるSSでは大勢の観客が見守ります。

SS2をクリーンで笑顔の小川友幸選手

SS2をクリーンで笑顔の小川友幸選手。

黒山健一選手 
「価値ある一日でした。調子が良かったわけではないのですが、普段通り、練習通りの走りが出来たと思います。バイクは絶好調でしたが、それよりも“乗り込み”だったと思います。去年最終戦が終わってからこのシーズンオフはたくさんバイクに乗ったんです。練習の多さが勝ちを引き寄せたんだと思います!! まだ、7戦あるうちの1戦が終わっただけなので、結果はどうであれ今後も自分の走りができるように頑張りたいと思います」

小川友幸選手 
「最低限のリザルトですが、2位で良かったです。セクションが難しかったので後半で挽回できると踏んでたんですけど、挽回どころか自分がミスしてしまいましたね。第3以外のセクションはクリーンを狙えるセクションでした。マシンのトラブルも少しあり、トライアルは感覚で乗るところがありますから、ちょっとのズレでかみ合わなかったですね。最後は、ミスできない状況でしたが、狙い通りにいきました。今回はライバルを気にするどころか、自分のことでいっぱいでした。クラッシュは痛かったですけど、足首は日にち薬で治るので“我慢!”」

小川毅士選手
「今年から、フィジカルトレーニングに力を入れていて、今日もトレーナーさんが来てくれたこともあり、良いコンディションでレースに入っていけたと思います。身体がよく動いてくれたので、セクションで足をつきそうになったときにも踏ん張れたり、落ち着いていくことができました。今回のコースは難しかったけど、頃合いのいい難しさっていうのかな? 頑張ればクリーンできる“走りごたえがあって楽しそう”という感じの難しさでした。最後は、SSなかったら、2位やったのに!」

開幕表彰台。小川毅士選手は久々の3位表彰台

開幕表彰台。小川毅士選手は久々の3位表彰台。

 昨年から始まったレディスクラスでは、チャンピオン西村亜弥選手がぶっちぎりの優勝。メディアに度々登場する小玉恵梨香選手は3位表彰台でした。

亜弥様のトライにはIA選手以上に注目が集まってました

亜弥様のトライにはIA選手以上に注目が集まってました。

チャンピオン西村亜弥選手、妹の萩原真理子選手はモトクロスやエンデューロでも活躍していました

チャンピオン西村亜弥選手、妹の萩原真理子選手はモトクロスやエンデューロでも活躍していました。

レディスPR代表の児玉えりか選手

レディスPR代表の小玉えりか選手。

 今年のモーターサイクルショーでは、大阪も東京もトライアルバイクの展示がありました。みんな、トライアルに注目しているんですね!
 トライアルは、バイクの上で静止しているだけで楽しい(笑)、低速でグルグル回るだけで楽しい(笑)、アクセルをあけてスピードを出さなくても、自分でちゃんとバイクをコントロールしている楽しさを感じることができるのです。これは、音とか速さに恐怖心を持ってしまう初心者や女性ライダーにもっと体験してもらいたいし、腕に自信がある人達は、スピードで誤魔化せないテクニックの向上に役立ててほしいと思います。
 トライアルをちょっとかじって、ふつうのバイク乗ると操作に余裕がでてもっとたのしくなるんじゃないかと思うのです。トライアル、おススメ!

ぐぐ姫の旦那様、バックフリップの#7野本佳章選手(モトベント&Beta・Beta・Evo2T 300)

ぐぐ姫の旦那様、バックフリップの#7野本佳章選手(MotoViento&BETA・Beta Evo2T)

他選手のトライを見ながらラインを見定める上位のライダーたち

他選手のトライを見ながらラインを見定める上位のライダーたち。

ルーキーの久岡孝二選手は昨年のIAチャンピオン、18歳

ルーキーの久岡孝二選手(Vertigo with MITANI・Vertigo COMBAT ICEHELL)は昨年のIAチャンピオン、18歳。

仲の良い二人です

仲の良い二人です。


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