2017年6月13日

KTM 1090 ADVENTURE/1290 SUPER ADVENTURE S試乗

■試乗&文:松井 勉 ■写真:KTM ■協力:KTM JAPAN http://www.ktm.com/jp/

 
2017年、新環境基準ユーロ4の発効を機に、多くのニューモデルがリリースされている。KTMの看板アドベンチャーモデルも同様で、昨秋ヨーロッパのショーでお披露目された新型アドベンチャーシリーズに乗れる日がやって来た。オーストラリア、シドニーへと飛ぶ。

 
ユーロ4 の号令のもと……。

 現地で待っていたのは、1290スーパーアドベンチャーS、1290スーパーアドベンチャーR。さらに1090アドベンチャー、1090アドベンチャーRの計4台だ。1290シリーズは排気量1301㏄の水冷Vツインを、1090シリーズは1050㏄の水冷VツインエンジンをKTM謹製のスチールトレリスフレームに搭載する。
 
 一言で表現すれば、1290シリーズが上級機種、1090シリーズがアドベンチャーモデルのエントリーレベルとなる。が、そこはREADY TO RACEを標榜するKTMのこと。走りに隙はないはず。
 
 また、それぞれのファミリーで、フロント19インチ+リア17インチのタイヤを履くロードコンシャスなモデルと、フロント21インチ+リア18インチを履き、よりオフロードでのアジリティーを上げたRモデルを用意するところがKTMらしさ。

 
スッキリ、クッキリさせたラインナップ。

 2016年モデルまでは、1050アドベンチャー、1190スーパーアドベンチャー、1190スーパーアドベンチャーR、1290スーパーアドベンチャーTという展開だった。
 
 その内訳は……。
 1050は95馬力エンジンと、フロント19、リア17インチというキャストホイールを組み合わせ、サスペンションはフロント185mm、リア190mmのストロークを与えている。燃料タンクは23リットル。価格は150万円というキャラクター。兄貴分に比べると控えめに見えるものの、各メーカーのエントリーレベルのアドベンチャーモデルのサスペンションストロークが前後170mm程度だから、充分「オフ」も視野に入れているのがKTMらしかった。
 
 1190は1200クラスのライバルに向けたモデルラインだった。150馬力とパワフルなエンジンを搭載。スポークホイールのフロント19+リア17インチで、前後200mmのストロークを持つサスペンション(電動でイニシャル、ダンパーの調整式)、もう一台のRモデルは、フルアジャスタブル(手動)かつ前後220mmのストロークと、フロント21インチ、リア18インチのホイールを履き、オフロードでの走破性を高めたモデルだ。両車ともにスポークホイールながらチューブレスとして、バネ下重量を軽減。燃料タンクは23リットル。価格はアドベンチャーが184.5万円、Rが199万円。トラクションコントロール、コーナリングABSなどを装備した。
 
 1290は160馬力のエンジンに、スポークホイールのフロント19インチ+リア17インチホイールを履き、セミアクティブサスを装備。そのストロークは前後とも200mm。トラクションコントロール、コーナリングABSを装備。燃料タンクは30リットル入り。クラッシュバー、コーナリングランプも装備。230万円。
 
 バリエーション展開は広く、価格帯で選ぶ、パワーで選ぶ、タンク容量で選ぶ、RシリーズのいかにもKTMらしいオレンジ色で選ぶ……とういことになるのだろうか。
 正直、それぞれの機能、キャラの集合円における部分集合をとりながら絶妙な距離感で5台を仕上げていた。乗ってみると、あっちを立てればこっちが立たず、というスゴク些細なところが気になるほど明確なキャラクターだけに、アドベンチャーバイクに多様性を求める僕には「絶対にこれだな!」と買うとしたら太鼓判を押せずに逆に選びにくいのでは、と思っていたのも事実。贅沢な悩みなのだけど……。

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 そして2017年モデルは、モデルラインごとのキャラクターを整えることで、魅力を発散する形になっている。
 
 1090アドベンチャーは前後キャストホイールを履き、フロント19インチ、リア17インチ。エンジンは水冷Vツイン、排気量は1050㏄ながら125馬力を発生。30馬力アップとなる。キャラクターは1050のまま、エンジンなどに魅力を高めた仕様となっている。また、価格も145万円となる。
 
 そして1190に代わりトップレンジとなったのは1290シリーズ。1190はラインナップから外れ、エンジンは1301㏄の1290エンジンに統合される。
 1290ファミリーは、スーパーアドベンチャーSに前後200mmのストロークを持つセミアクティブサスペンションを搭載。コーナリングランプ内蔵のLO/HIともに待望のLEDヘッドライトを採用。また、アドベンチャーシリーズ共用だったメーターパネルも、1290ではTFTモニターとし、カラフルに。キーレスとなったのも新しい。
 
 そのほか、クルーズコントロールの装備や、トラベルパックのオプションを選べば、すでにPASCスリッパークラッチを装備するが、リアタイヤがグリップを失った時のために備えたシフトダウン時のリアホッピングを防ぐモータースリップレギュレーション、ABSセンサーを流用したヒルホールドコントロール、Bluetooth通信でメーターパネル、スマホ、ヘッドセットなどを繋ぐKTM MY RIDE、さらに発進停止以外クラッチレバーの操作をせずともシフトができる、クイックシフター+が装備される。この辺は1290スーパーデュークRと同様の仕立てだ。
 
 2017年モデルのライン造り、1290は真っ向から装備でも価格でも比べて選べて、クッキリとしたキャラクターも打ち出せている。

 
1090アドベンチャーに見た、
身近なる「底力」。

 1090アドベンチャーは、言わば、このビギナーからエキスパートまで幅広い層を狙ったアドベンチャーモデルだ。そのルックスは前作1050と同様だが、跨がればすぐにKTMのバイクだと解る。エンデューロバイクと共通する比較的タイトなハンドルバー、ステップとペダル類のクリアランス、そのストロークなど、操作性がオフロードブーツを許容する設計など、跨がるだけで「さすがKTM」と唸る部分が多い。
 
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 シートは細身で足付き感をしっかりと考慮した形状。足元の幅もしっかり絞られている。タンク回りのボリューム感はあるものの、その他の部分から威圧的にサイズを振りかざすことがなく、程よいバイク、という印象だ。
 
 1090は強烈なアピールはないものの、パワーユニットは一気にパワーアップ。新規制対応で痛めつけられた感などみじんも無い。しかも、1050同様、エンジンはとてもスムーズ。スペックからすると開けるのをためらう部分があるのでは、と思う人もあるかもしれないが、それは思い過ごしだ。アイドリングの少し上からスルスル走れるし、開け始めのガツガツ感がない。
 パワフルでトルクフルだが、ライダーに包容力ある操作感を持っている。兄貴分の1290アドベンチャーSも同時に試乗したが、乗り換えた時のホッとする感は大きな武器。裾野の広いモデルだなぁ、と思った。
 
 ハンドリングはとても素直。アスファルトでもフロントに19インチを履いているような大柄感はない。市街地レベルの速度から一体感があり、ガツガツしないスムーズで振動の少ないエンジンも手伝って、安心感ある走りを楽しめる。
 
 試乗車はメッツラーのツアランスネクストを履いていたが、前後の重量配分と、シャーシ、サスペンション、重心の位置など、よくまとまっている、というのが第一印象だ。
 
 この一体感が一番活きたのは、山岳路。センターラインが消えた細い道。アップダウン、ブラインドカーブ、荒れた舗装。舗装林道のような道で加速、減速、右、左、へと動かす質量感がとても軽快。リッタークラスのバイクとは思えない動きを見せる。コスト的に仕方がないのだろうが、唯一、フロントブレーキの横押しタイプのマスターシリンダーと、レバーの形状の兼ね合いか、グリップに近い位置にアジャスターでレバーを調整すると、初期の無効ストロークが大きくなり、減速一発目がどうしてもカックンブレーキになってしまう。
僕とはその点が唯一マッチングしなかった点だ。
 
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 重箱のスミをつつくようだが、そうした部分の煮つめを望みたい。言葉を換えれば、それ以外、走るのが楽しくて仕方がないバイクだからだ。

 ストックのスリムな印象も良いが、試乗から帰国して先代の1050アドベンチャーにツアラテック製純正オプションのパニアケース、クラッシュバー、そしてオフロード系タイヤを履いたオーナー車を見かけたが、そうした装備を付け足すと、なるほど、KTMらしい、冒険バイクのできあがりだ。当然、1090アドベンチャーにもそうしたオプションが豊富に用意されている。

 アドベンチャーバイクの走りの肝は舗装路。その上で、どれだけ楽しくダートでのアジリティーをバランスさせているか。僕はそこが一番気になる。その点で、意外にもこのベーシックな1090アドベンチャーは、フラットダートで存分に楽しめる才能を持っている。さらにオプションなどでの拡張性に優れ、イニシャルコストの低い「逸材」だ、とも言えるのだ。
 

 
1290スーパーアドベンチャーS

 こちらも2017年モデルとしてユーロ4対応の環境性能を持つと同時に、待望のLEDヘッドライトの採用や、エンジンをスーパーアドベンチャーと同じ、1301㏄を搭載するなどしたほか、TFTフルカラーモニターのメーターパネルの搭載、セミアクティブサスペンションの搭載、その他電子制御のアップデイトなど、実質上、マルチパーパスモデルとしてのアドベンチャーシリーズのフラッグシップとなるモデルだ。
 
 1090同様、モデルラインの中で立ち位置をハッキリさせたのも特徴で、先代の1190スーパーアドベンチャーではチューブレスのスポークホイールだったものをキャストホイールへ。減衰圧などを電動調整式だったサスペンションは、セミアクティブとなるなど、装備でライバルと比肩するものが与えられた。
 
 シルエット的にサイドビューなどは先代と同様だが、フェイスは印象的。左右に分かれた縦長のヘッドライトは、コーナリングランプを含め、全てがこのライトユニットの中に集約されている。あわせてフェアリング形状もダイナミクスをより考慮したスタイルとなり、快適性をアップさせている。
 
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 会場となったホテルの前に佇む1090アドベンチャーと1290スーパーアドベンチャー。ぱっと見、重厚感やフロントマスクの押し出し感は圧倒的に1290が強い。これは好みが分かれる部分だろう。2017年モデルの1290スーパーデュークRと同じライトを持つというこのスーパーアドベンチャーS、その実力は夜を待たずして語るべからず。LEDの威力はさすが。クルマでもHIDやLEDが増えているが、すでにそれを体験している人が次のクルマを買うのに、ハロゲンライトに戻れるだろうか。それはきっと、ETC経験者がETCナシのバイクに乗ったり、ナビを日常的に使う人がナビを装備しないバイクに乗るような「ま、いいか……。」なのだが、それを何度も積み重ねるストレスにさらされることになる。
 
 特にアドベンチャーバイクは遠出をするバイクだ。帰宅が遅くなることもあるだろう。その点で、本音を言えば、1090だってどうしてLEDにしなかったのだろう? とも思う。悩む必要はないだろう。アフリカツインがLEDライトなのだから。それに、ミニデュークだって125や390がLEDだ、と聞いたら1090がハロゲンで良いはずはない、と思う。
 
 しかし、R1200GSやその他の機種からの代替や、他のミドルクラスからのステップアップ層を狙うKTMのフラッグシップとしての魅力を考えれば、1290の装備はマストだし、正しい選択だと思う。
 

 
排気量拡大がもたらした物。

 エンジンはスーパーアドベンチャーが搭載するものと同型、1301㏄のLC8エンジンとなった。1190エンジンと比較してボアを3mm、ストロークを2mm延長し12.5:1から13.1:1へと圧縮比もアップ。出力は、110 kW(150ps)/9500rpm→118 kW(160 ps)/8750rpmへ。トルクは125Nm/7500rpm→140Nm/6750rpmへとパワー/トルクともにアップし、その発生回転数は下げられている。
 
 スクリーン、タンク部の外装パネル、シート、サスペンションなど上級機種として相応しいパーツの集合体となる1290。KTMのアドベンチャーモデルとしての系譜は継承するが、そうした部分のコスメティックはさすがに巧い。
 
 跨がった印象はシート高があるアドベンチャーモデルにして意外とスリム。足着き感は1090同様、悪くない。メインスイッチオフ状態ではセミアクティブサスが作動せず、オイル通路がほぼ閉じている状況だから、サイドスタンドから起こす時に必要な力は軽い。車重だと1290のほうが1090より10キロは重たいが、スッと起きる感覚は1290が軽い。
 
 新たにキーレスとなった1290ではキーをポケットに忍ばせ、右スイッチボックスのボタンを押せばバイクが起動する。カラーとなったTFTモニターはカラフルにその内容を表示する。昼間は白バック、夜間は暗色バックとなる。左のスイッチボックスにある方向キーで機能を呼び出し、選択し、決定という作業は先代1190同様だが、ガラケーとスマホぐらい操作感や拡張性が違う気がするし、クラス感がある。
 
 エンジンを始動しても排気量が大きい分、ややその回転に質量感はあるが、1090同様、軽快かつ振動の少ないフィーリングが魅力だ。ライディングポジションはタイトな印象だ。ライバル比ではKTMのバイクはハンドルバーはタイト目、腕の開き角が少なく、腕を前に出す印象で、ネイキッド的でもある。太陽光下でも見難さが少ないTFTモニターは素晴らしい。さらに角度を調整できるため、多くの体格、スタンディング時にも完璧ではないが、かなり補正でき見やすい角度を探せる設定だ。
 
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 動き出しに重みはないが、1090とは異なる重厚感がある。前輪の分担荷重がしっとりと増えているような落ち着きある。ステアリングダンパーやサスセットの影響もあると思うが、ハンドリングキャラはあえて軽快さを前面に出さずとも、というもののようだ。
 
 1290にはピレリのスコーピオントレイルⅡが装着されている。フロント120/70ZR19、リア170/60ZR17というアドベンチャー向けラジアルの、最前線サイズだ。このタイヤの性格もあって市街地レベルから乗り心地がしっとり、旋回時、左右へのロールもナチュラルな寝方をしていくので、大柄なバイクを手の内で転がしているような一体感がある。
 1190で体験したKTMアドベンチャーとコンチネンタルトレイルアタックの組み合わせだと、市街地速度などの低荷重時、軽快だけど直立から左右10度ぐらいまでフワっと寝るような印象とは異なり、常に一体感があるハンドリングになっている。タイヤだけの仕業ではないだろうが、ラゲッジケース、パッセンジャーを乗せたときのコトを考えると、このほうがライダーとしては楽ができそうだ。そして乗り心地もよい。
 
 エンジンはむしろ1190時代より低い回転のトルクバンドで楽に走れることが解る。クランクウエイトを増量した、と技術者は言っていたが、狙い通り開ければ即座に強靱なパワーとトルクで増速体制をとるが、手首の繊細な動きや、高めのギアでスルスル走りたい時の滑らかさも巧くまとめている。
 

 
ツーリングでは最高のパフォーマンス。

 郊外に出てオーストラリアの直線路を走る。クルーズコントロールを入れ、スイッチボックスの小さなスイッチで増速、減速をしながら速度を調整し、丘を越えながら進む道を走る。頑固でも軽すぎることもないハンドリング。一定速度で走り続けるには良質な走りを楽しませてくれる。
 
 左右のノブを緩めてから調整しないとならないスクリーンが手間を取らせるが、気になるのはその程度。このモニター、太陽が昼になりトップに来ても、視認性に変化なし。見やすい。
 
 ワインディングに来た。先代よりも柔軟なシャーシの印象になった。1190ではプッシュした乗り方でバイクとバランスしている印象だったが、1290は流すレベルから弱アンダーでしっかりと旋回してくれる。プッシュしたペースへと上げても、前後のピッチングが穏やかに制御されている印象で、プリセットの減衰が強めだった1190時代よりも、ブレーキング、倒し込みからの旋回という流れがシームレスな印象だ。左右へのリーンの切り返しの場面でも自然な走りが楽しめる。
 
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 それでも物足りない場合、ライディングンモードをロードからスポーツへとシフトする。足回り、スロットルレスポンスが総合的にスポーティーになり、足回りも減衰圧が効いた足回りになり、カッチリした印象なる。前後200mmのストロークがあるバイクとは思えないロードコンシャスなシャーシとなり、なるほど、160psもの出力が楽しめるわけだ。
 
 トラックデイに参加しても、これならロードスポーツをカモれそうだ。ここまでの走りを見ると、市街地、ツーリング、攻めても、快走をしてもワインディングは楽しめる。
 さて、ダートではどうなのだろう?
 

 
電子制御の進化でダートもハナマルに。

 1290アドベンチャーSの試乗グループは、牧場の間を縫うようなダート路に入った。やおら先導ライダーがペースを上げる。埃をさけ、こちらもアクセルを開ける。オフロードモードにシフトしてみる。パワーは100psに絞られるが、開ければ無駄なく路面にパワーを伝えることが解る。トラクションコントロールの緻密さも先代以上。そして、オフロードモードにすると、先代はリアのABSが自動的にカットになったが、1290では前後ABSが残るので、安心感は高い。
 1190の減衰圧の高めのサス、回せば即応するレスポンスの良いエンジンと盛り上がるパワーをフラットダートで操るのは正直右手を抑えるのに神経を使い、スゴク良く走るのにどこかフラストレーションが溜まったのを覚えている。
 そしてリアのブレーキタッチがエンデューロバイクなみにシビアなため、ロックの限界を掴む前に、リアがロック、テールを振る、ということもあってむしろ、開け放題でトラコンとABS任せにできるロードモードのほうが気楽だったことを思い出す。
 
 1290はその辺がエンジン特性、サスのセットアップ、そして電子制御の進化で巧くバランスしている。スタンディングポジションで前後タイヤへの荷重バランスを巧くとり、速度で得た慣性を組み合わせれば、トラコンやABSを活かしたまま絶妙な慣性スライドからのパワースライドを楽しめる。ノーマルタイヤのグリップバランスも満足度が高い。しっかりとトラクションを掛け、バイクが前に進む感じ、これはファンだ。
 
 確かにトラコンオフでは豪快な走りを楽しめるが、右手の理性が無いと、タイヤに縦方向にカットが入ったりする。ロングディスタンスマシンでは持てる制御を使ってどれだけ楽しいかが必須課題。その点、1290アドベンチャーSは文句ナシ、合格だ。
 
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 価格も異なるので1090か1290か、は語りにくいが、どちらも走りは良質。僕ならば1290を選ぶ。アドベンチャーバイクならば1日700キロ程度の移動の中にダート路をまぜ、走ることも珍しくない。クルーズコントロールや、KTMマイライドなるオプションで、Bluetoothのヘッドセット、バイク、スマホを繋いで、ナビ、音楽、そして携帯へと掛かってきた情報がTFTモニターに表示されること、また、オプションリストにはアップ、ダウンともクラッチ操作を省けるオートシフターの用意もある。価格は張るが、拡張性の点、面白い点からも1290がいいと思う。
 
 結局、ダートでの所作が決め手なのだが、また一歩、KTMのアドベンチャーがクロスオーバー性を高め、2017年モデルとして登場したのである。
 
(試乗・文:松井 勉)

 
1090 ADVENTURE
 

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ハロゲンライトとLEDのデイライトを組み合わせる。1190から継承した部分だ。ウインカーもコンベンショナルな電球を使う。1090のスクリーンはレバー2本でロックを緩め、パンタグラフ上のフレームを上に持ち上げるようにして高さ調整をする。

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フロントは185mmのストロークを持つWP製倒立フォークを採用。キャストホイールには110/80-19のタイヤを履く。ラジアルマウントの4ピストンキャリパーをダブルで装備。

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イニシャルプリロード調整付きリアショック。190mmのストロークが与えられた。

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2ピストンキャリパーを装備するリアブレーキ。ダイキャスト製のスイングアームは、リブを剥き出しにしたユニークな形状。

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1090のエンジンはバルブタイミングの変更などでパワーを大幅アップしている。クラッチレバーの操作力を軽くするPASC(パワー・アシスト・スリッパー・クラッチ)を装備。実際、クラッチ操作量はとても軽い。これにより、シフトダウン時のチャタリングを防ぐことができる。吸気系ではスロットルバイワイヤーの採用や、トラクションコントロールの装備もあって雨、ダート、舗装路などでも安心して走らせられるのが特徴だ。

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LEDを採用したテールライト。ウインカーは従来通りのバルブを採用。

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試乗車はオプションとなるアクラポビッチのサイレンサーを装備していた。ブラックサテンのボディーが精悍。

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ハンドガードもがっちりした肉厚でオフでの立ちゴケぐらいしっかり守ってくれそうなマテリアルだ。

 
1290 SUPER ADVENTURE S

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φ320mmのディスクプレートとラジアルマウントの4ピストンキャリパーを装備するフロントブレーキ。φ48 mmのインナーチューブを持つフロントサスペンションのストロークは200mm。ストロークセンサーとサスペンションコントロールユニットがリアルタイムにダンピングをコントロールするセミアクティブサスだけに、ごく初期作動からボトム域までシームレスに良好なダンピングを提供する。

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φ267mmのディスクプレートと片押し2ピストンキャリパーを組み合わせるリアブレーキ。

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KTMのラインナップ中最大の排気量となる1301㏄のLC8エンジン。クランクウエイトを増加させることで回転の滑らかさを、1190RC8をベースにして、3㎜拡大されたピストンながら、スカートの短い形状の鍛造ピストンの採用で単体では軽量化がされている。また、シリンダーヘッドも新形状となりバルブトレインのローフリクション化など徹底。ロッカーアームもDLCコーティングを施し、スムーズネスを追求した。燃焼室形状の見直しで低中速回転でのトルク特性も改善。理想的なパワーユニットとしている。クラッチにはPASCを採用するが、オプションでモータースリップレギュレーションも装備できる。スリッパークラッチは路面とタイヤのグリップを前提としているが、グリップが悪い場面でも電子制御でエンジンブレーキをコントロールし、後輪のホッピングを軽減するというもの。

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オプションのアクラポビッチ製サイレンサーを装着していた試乗車。2017年規制に対応しているだけにサウンドは良質ながら控えめ。決して音疲れするようなタイプではないのが嬉しい。

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LEDライトユニットは左右シンメトリーの実は二分割されている。中央のグレーの部分はダイキャスト製のヒートシンクになっていて、LEDが発する熱を吸収、走行風で冷やすのが目的だ。外枠にランニングライト、ロー/ハイ、そしてバイクを傾けると点灯するコーナリングランプを含め、全てLED光源を使う。快適性に貢献するフェアリングのレイヤーが解る。ウインカーもLED。ライト脇から導かれるフレッシュエアは、吸気エアボックス手前で雨粒などがダイレクトにクリーナーボックスに入り込まないよう経路を曲げる工夫もされている。

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前端部を絞り、ヒップサポート部は広くなるシート。前後セパレート式となる。

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テールランプはLED式を採用。ウインカーを含め、被視認性に関わる光源を全てLEDとしているのが1290スーパーアドベンチャーSの特徴でもある。

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セミアクティブサスの他にも、電動調整式のイニシャルプリロードアジャスターを備える。パーソナライズも出来る。ライダー一人、ライター+ラゲッジ、ライダー+パッセンジャー、ライダー+パッセンジャー+ラゲッジとプリセットの中から4つを選択できる。


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