2017年8月2日

「バイクと共に生活する」長期テスト予告 新型CB650F編

 
この春、ホンダのミドルクラススポーツモデルのCBR650F/CB650Fが新型に生まれ変わった。
2014年4月に登場して以来、バイクは実用的な速さと使い勝手で選ぶというライダーたちを中心に支持されてきたミドルクラスCBR650F/CB650Fシリーズだったが、モデルチェンジサイクルを迎えるにあたって、今後のこのクラスの普及を期待して新型へバトンタッチとなりました。で、本誌の長期テスト車両も初期型CB650Fから新型CB650Fへ、テスターもノア セレンさんに新たに担当していただくことになりました。今後のテストレポートをご期待ください。

■文:小宮山幸雄 ■撮影:依田 麗
■協力:Honda http://www.honda.co.jp/motor/
 

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 バイクって楽しいですね!

 夏は暑い。冬は寒い。不意の雨に降られりゃずぶ濡れ。準備万端カッパ着ててもいつしかパンツの中まで浸水。止まるたびに支えなけりゃならない。押してあげるのも一苦労。プラスで乗ることができるのは一人。原付一種だと本人だけしか乗れない。荷物を積むといったってせいぜい頑張っても人一人分くらいの重さが限界。ちょっと長距離を乗ろうと思ったら常に燃料補給のスケジュールを頭の隅に入れておかなきゃならない。油断すると即盗まれる。汚れたら洗車機なんてシロモノはないので自ら手洗い。無いといえば二輪車の駐車場。高速道路のサービスエリアや観光地、ごくごく一部の公共施設以外では稀有の存在ですから、いざバイクでと乗り出したはいいが、グルっとあるはずのない二輪車駐車場を探して帰ってくるだけ。たかだか駐車違反で犯罪者になるほどいい加減に生きているワケじゃなし。用事があるなら公共交通機関やクルマを利用か、インターネットで1時間かけて探し出した奇特な二輪駐車場まで止めに行かなけりゃならない。そこから目的地まではひと汗、ふた汗のウォーキング。それも運よく満車じゃなかったら、の話。早い話が都市部の二輪ライダーは確実に用事を済ませたかったら「バイクは自分の家の駐車場に停めて出かけなさいね」ってこと。これじゃ二輪車の使い道は、暴〇族とかの兄ぃちゃんたちがぐるぐると迷惑をまき散らして地回りするのと大して変わらない。極めつけは二輪車を敵対視してるクルマのドライバー。でも彼らは意識してくれるだけましで、まったく端からガン無視する傍若無人なドライバー相手では生命の危機と隣り合わせ。締めはあきらかに差別的な二輪車取り締まりでしょうか。

 それがバイクと生活するということです。

 ならなぜバイクと共に生活するんですか? と聞かれても困ってしまう。それがバイクだから、でしょうか。有形無形の存在に守られていることの多い今の時代に稀有となりつつある「あぁ、自分は今この一瞬も生きてるんだな」と実感させてくれる数少ない存在。そして操る人間の精神性、その時の感情、生き方まで、すべてを表にさらけ出してしまう存在でもある。まあ、それを自覚されている方は少ないようですか。面白いですよバイク乗りを観察すると。
 
 さて、この春、ホンダのミドルクラススポーツモデルのCBR650FとCB650Fが新型となりました。
 
 2014年4月に登場して以来、バイクは実用的な速さと使い勝手で選ぶというライダーたちを中心に支持されてきた初代650シリーズでしたが、モデルチェンジサイクルにあたって今後も地道な販売が期待されて新型へのバトンタッチとなりました。
 ネイキッド版のCB650Fも新型となって引き続き活躍する機会が与えられたのですね。モデルチェンジを機にラインナップ落ち、など杞憂だったかとちょっと嬉しく思いました。やはりこの650シリーズがグローバルモデル故なのでしょう。CBR650Fはともかく、CB650Fの国内での評価は不当に低い、というのが初期型と長期にわたって生活してきた人間の正直な感想です。「良いバイクだからって売れるわけじゃない!」を体現していた感がありましたからね。まずはめでたしめでたし。
 
 さて新型への変更点は、さらなる力強い走りを実現するために、エンジンの吸排気が見直されたのが中心で、吸気系ではより多くのエアを導入するための吸気流路を新設し、エアファンネルも短縮。排気系ではマフラーの内部構造を3室から2室へとシンプル化。これら吸排気系の見直しにより最高出力で5kW(7PS)アップ。トランスミッションも2速から5速の変速比をローレシオ化することで加速フィーリングもより向上させています。
 
 足周りでは、新たにフロントフォークに減衰力特性に優れたSHOWA製“デュアルベンディングバルブ”を装着することで、よりしなやかで路面追従性に優れた乗り心地を実現。
 CBR650FではLEDヘッドライトを採用してよりシャープで先進的な顔つきとなった新形状のカウルを採用。CB650Fでは同じくLEDヘッドライトの採用と、より小型となったシュラウド周りが特徴の新デザインとなりました。
 
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 初代CB650Fを長期テストした経験から新型CB650Fを見ると、シュラウド周りが小型になったのは大いに結構。いっそ無くなっても良かったくらいなのですけど…。それはともかく、フロント周りの眺めがすっかり軽くなりました。より動きの良くなったフロントサスと合わせて、フロントの軽快感は格段に向上してます。従来モデルではドッシリと路面を掴まえていた感覚でしたが、より自然にライダーの意思を反映するスポーティなハンドリングに近づいたなと感じました。新型に乗った直後の印象は、出力の向上よりもこの足周りのグレードアップの効果の方を顕著に感じました。初代はハンドリングだけはリッタークラスの重厚な味付け、って感じでしたものね。安心感は十分だったのですが、都市部のちょこまかとした交通環境下ではナナハンクラスのパワーとヨンヒャククラスを思わせる軽快なハンドリングの組み合わせが理想です。
 
 よりフラットな形状となったバーハンドルも、私のような使い方では同様の理由で従来型の方が扱いやすかったのですが。まあそれほど極端に変わったわけではない(グリップ1本分くらい下がった感じです)ので慣れの問題でしょう。かつてCB750Fourのノーマルハンドルで25年間都内を走り回っていた人間の言うことですから、ここら辺は参考になさらず、です。現在の愛車、CRF250Lのポジションは年寄りには実にありがたいですね。
 
 これからノア セレンさんがこの新型CB650Fの長期テストを担当してくれるそうですからレポートが楽しみです。
 
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フロントサスには新たにショーワ製“デュアルベンディングバルブ”を採用して減衰力特性をグレードアップ。キャスター角25°30′、トレール101㎜は変わらず。

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あえてスチール製を採用したツインチューブフレームに変更無し。搭載されるエンジンは吸排気系の改良で5kW(7PS)のパワーアップ。

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リアは7段階にプリロードが調整可能なアジャスターを採用と従来モデルと変わらず。フロント320mmのダブル、リアに240mmのシングルのウェーブディスクも変わらず。

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LEDヘッドライトを採用。前後方向の厚みもより薄くなってスッキリ。

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グリップ部分で約1本分くらい低くなったバーハンドルを採用。Gathersナビはオプション装着。

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ラジエター側面の整流版を廃止したことで軽快感がアップ。シリンダーとヘッド周りをブラックに、ヘッドカバーとクランクケースカバー周りをブロンズカラーに変更。フューエルタンク、シュラウド、シートカウル、フロントフェンダー、ホイールリムにストライプグラフィック。

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シートはロックを解除すれば全体がスポッと外せる構造。

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外見から想像するよりも広いシート下。ETC本体の設置用スペースは十分。

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●CB650F 主要諸元
■型式:2BL-RC83■全長×全幅×全高:2,110×780×1,075mm■ホイールベース:1,450mm■最低地上高:150mm■シート高:810mm■車両重量:208kg■燃料消費率:31.5km/L(国土交通省届出値 60km/h定地燃費値 2名乗車時)、21.4km/L(WMTCモード値 クラス3-2 1名乗車時)■エンジン種類:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒■総排気量:648cm3■ボア×ストローク:67.0×46.0mm■圧縮比:11.4■最高出力:66kW(90PS)/11,000rpm■最大トルク:64N・m(6.5kgf・m)/8,000rpm■燃料供給:電子式PGM-FI■始動方式:セルフ式■点火方式 :フルトランジスタ式バッテリー点火■燃料タンク容量:17L■変速機形式:常時噛合い式6段リターン■タイヤ(前×後):120/70ZR17M/C 58W×180/55ZR17M/C 73W■ブレーキ(前×後):油圧式ダブルディスク×油圧式シングルディスク■懸架方式(前×後):テレスコピック/スイングアーム式■フレーム形式:ダイヤモンド■メーカー希望小売価格(消費税8%込み):855,000円


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