2017年11月17日

『バランスの取れた装備、価格。さらに低いシート Street Triple R Lowは新型Street Triple シリーズの日本市場における中心機種に』

■文/濱矢文夫 ■撮影/富樫秀明
■トライアンフモーターサイクルズジャパン http://www.triumphmotorcycles.jp/

 
“トライアンフ史上最高にパワフルで俊敏、直感的なパフォーマンスを誇るストリートバイク”と称される「ストリートトリプル」シリーズに、この秋新たに「ストリートトリプルR Low」が追加導入された。これにより「ストリートトリプル」シリーズは、「S」、「R」、「RS」という3タイプのモデル群で構成されることになった。今回、その中でも日本向けといえる「ストリートトリプルR Low」に試乗する機会を得たのでレポートしよう。

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 Street Tripleに追加された新グレード、Street Triple R Lowを思いっきり楽しむには残念すぎるくらいの雨だった。この日の富士スピードウェイのショートサーキットは気温も低く、空から落ちてくる水の量が走り出す前に一段と増加。池のように見える路面は、舗装が荒れていた箇所もあり、私の腕ではタイヤを温めるのも躊躇するほどグリップ感が乏しかった。これはStreet Triple R Lowのせいではない。なぜならその中でも、常にタイヤのグリップや路面の状況を伝えてくれコントロールしている感覚は失わずにいてくれたからだ。スロットルを大きく開ければ車体が直立していてもトラクションコントロールシステムが忙しく働くのが分かった。
 
 薄氷を踏むように小川みたいな帯状に流れているコーナーに恐る恐る入っても、前後のサスペンションにしっかり仕事をさせている限りいきなり不安定な挙動にはならず、思うように走れた。ストレートから下りの1コーナーの進入で思いっきりブレーキをかけるとABSがしっかり効いて、荷重の抜けたリアタイヤが横に動き出しても、自分の手足になったように感じるコンパクトな車体と軽快な動きは気持ちに余裕を与えてくれる。スポーツモデルを試乗するには最悪な状況なれど、悲観的にならず、それを楽しめる気持ちを持って乗れた。速い、遅い、という二元的なものではなく、ミズスマシのような気分を味わっている中で、面白がって運転できたというのが重要。これは、Street Tripleが初代から現行モデルに通じる伝統的な魅力である。
 
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 今年の春に登場した新型の直列3気筒エンジンは、DAYTONA 675をベースにしながらブラッシュアップ。排気量を765ccに拡大したもの。スロットルを開けると、低回転域から力強くグイグイっと加速する。スロットル・バイ・ワイヤ、電子制御スロットルのおかげもあって、パワー特性に角がないから神経質にならなくていいのが、グリップの低いこういう場面ではありがたい。春に登場した新型のStreet Tripleにはベーシックモデルの『S』と、サスペンションからブレーキの強化だけでなく、エンジンもSより最高出力を10PSも増やした123PSのホットバージョン『RS』がある。この2台、この装備やエンジンパワーの差と同時に間に約30万円という価格差も大きい(S=109万円、RS=142万円)。
 
 ショーワ製のフルアジャスタブルビッグピストンフォークにオーリンズ製フルアジャスタブルリアショックの足に、ブレンボ製M50モノブロックフロントキャリパーのブレーキ。5インチのフルカラーTFT液晶メーター、5種類のライディングモードのRSはそれは魅力的だが、少し手が届かないなぁ。RSまではいかないけれど、ベースのSよりちょっと装備が豪華で、RSよりもう少し安いのがあれば……という人にStreet Triple R Lowはドンピシャ。価格は125万円からとその間で、最高出力もちょうど間の118PS。キャリパーがブレンボのM50からM4.32モノブロックキャリパーになって、リアショックがオーリンズではなくショーワのフルアジャスタブルに。RSのブレンボ製レシオ調節式ラジアルマウントブレーキマスターシリンダーは付いていない。ライディングモードがRSより1つ少ない4つ(トラックが省かれた)。手元で角度調整できる5インチTFTフルカラー液晶メーターは標準。装備も絶妙な設定だ。
 
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 そして、車名から分かる通り、低いのである、シートが。RSと比べると45mmも低くなっている。これは前後のサスペンションによってそう調整されている。だからRSのフロント115mm、リア131mmのホイールトラベル量より少ない、フロント95mm、リア98mm(ちなみにSは110/124mm)。乗り比べると、身長170cm、体重69kgで足が短いライダー(私)で、RSの場合、両の足では拇指球は届くけれど、カカトは浮いている。このR Lowはほぼカカトまで届いてしまう。個人的には力の入れられる拇指球がしっかり届いて、片足をステップに置けば余裕でもう片方は足裏全面で地面を捉えるRSの足つきでもまったく問題がない。車体もコンパクトで軽いし、パイプハンドルは力が入りやすい。それでも、シートが低くなったことは、より多くのライダーが喜ぶファクターである。自然にフロントに荷重がかかるようなやや前下がり気味なRSのポジションより、より後ろに重心がある感じのR Low。この印象の違いと、ホイールトラベルの違いを走り比べてみたかったけれど、RSの試乗車が履いていたタイヤがよりドライ向けのものだったので、用心の為に乗らなかった。現実としては、それほどペースは上がっていないけれど、本人的には雨でもセーフティーに楽しんで乗れたというのは事実である。
 
 バランスの取れた装備、価格。さらに低いシート。Street Triple R Lowは新型Street Triple シリーズの日本市場における中心機種になりそうだ。「ちょうどいい」……この表現がしっくりくる。贅沢なわがままを言うならば、欧州などにある、シートが低くないStreet Triple Rも欲しくなってしまう。
 
(試乗・文:濱矢文夫)
 

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リアはSHOWA製ピギーパックタイプモノショック。ホイールトラベル98mm。プリロード(ロックリング)、コンプレッションダンピング調節可能。


 
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水冷並列3気筒DOHC4バルブ、排気量765㏄のエンジンは「S」、「R」、「RS」タイプとも基本構成は共通。「S」の113PS、「R」の118PS、「RS」の123PSとチューンの度合いが異なっている。


 
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SHOWA製φ41㎜倒立式セパレートファンクション・フルアジャスタブル・ビッグピストンフォーク(SF-BPF)を採用。フロントホイールトラベルは95mm。


 
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新デザインのヘッドライト。LEDポジションランプを導入。従来タイプと比べ4.6倍の明るさを得た。


 
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「R」と「RS」タイプにはフルカラー5インチTFTディスプレイ。ギアポジションインジケーターが表示される。角度調整も可能。


 
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「R」タイプはスリップアシストクラッチ、4パターンが選べるライディングモード、5方向ジョイスティック式スイッチ、自動停止機能付き方向指示器なども装備。


 
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刷新したボディワークに合わせてスポーティに生まれ変わったツインシートを採用。


 
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Daytonaのエンジンをベースに完全新設計されたエンジンはサウンドも重厚感をアップ。


 
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リアフレームは2ピース高圧成型ダイキャスト。


 
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新型Street Triple3兄弟。写真右から最高出力123馬力のスポーツタイプ、「RS」、シート高を45mm低くしたストリートファイター「R Low」、そしてベーシックタイプといえる「S」。国内にはノーマルの「R」は導入されず、ローシートの「R Low」のみ。


 
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●TRIUMPH Street Triple R Low 主要諸元
■ホイールベース:1,410mm、シート高:780mm、車両重量:166kg■エンジン種類:水冷直列3気筒DOHC4バルブ、排気量:765cm3、ボア×ストローク:78×53.4mm、圧縮比:12.65、最高出力:87kw(118PS)/12,000rpm、最大トルク:77N・m/9,400rpm、始動方式:セルフ式、燃料タンク容量:17.4L、変速機形式:常時噛合式6速リターン■タイヤ(前×後):120/70ZR17 × 180/55ZR17■メーカー希望小売価格:1,250,000円(10月14日発売)


 


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