2017年12月26日

MBHCC D2 バ★ソ 幻立喰・ソ

第89回「胸騒ぎの午前」

第89回「胸騒ぎの午前」

 みなさま、今年はどんな一年で、いかほど立喰・ソをお召し上がりになられたでしょうか。「前回で年内は終了。来年もまたよろしくお願いいたします!」と1回ごまかすつもりでありましたが、「今年もお世話になりました」の注入を失念したため、改めて「今年も一年ご愛読いただき、まことにありがとうございました。みなさまにおかれましては、くれぐれも年越しそばの食べ忘れには十分ご注意いただき、来たるべき戌年も、『ハッピー・ニュー・ばそ〜』になりますことを祈念しつつ、来年もどうぞよろしくお願いいたします」ということで、どうぞよいお年を。

 私事ではございますが2017年の戦績は、1月23杯(未訪問の訪問17店・以下同)、2月15杯(8店)、3月21杯(10店)、4月19杯(5店)、5月23杯(8店)、6月21杯(9店)、7月14杯(6店)、8月21杯(5店)、9月21杯(9店)、10月17杯(5店)、11月19杯(4店)、12月8杯(4店)、総計222杯(90店)という結果になりました。
 未訪問店訪問率はまあまあではないかと思いますが、まだまだたくさんあります。総杯数はイマイチどころか、イマニの哲ちゃんもあきれるイマサンの18.5杯/月。一日換算だと0.6082191杯/日とは情けない限り。来年は1杯/日を目標に精進したいところです。ちなみに最多訪問店はもちろん一由かと思ったら、通勤経路の変更の影響により、品川駅前のFじ(あの大チェーンではない)が16杯で優勝(何の?)。しかし最多でも16杯というは、立喰・ソ人としては、かなりとほほな訪問回数と言えるでしょう。と、どうでもいい個人情報でダラダラマス目を埋めている場合ではないのです。

 あれは12月14日金曜日のことでした。所用で大江戸線に乗車中、突然の胸騒ぎ(というよりも、激しい空腹感が正解)が。「そうだアヅマに行こう」と、所用はとりあえず荷物棚に放り投げ新御徒町駅で途中下車。ホームに降りて階段を昇り改札を抜け、また階段を上がると、「しまった、ひさしぶりなもんで対角線上側に出ちゃった」ので、信号を待って交差点を横断、さらにもう一回信号を待って横断歩道を渡って到着。
 が、様子がおかしいのです。平日の午前10時前ですから、まだ営業時間のはずなのですが、閉まっています。どうしたことかと、訝しんでみましたが、いいおっさんが道端で訝しんでいると、おまわりさんに訝しがられ、「防犯警戒で、声かけさせてもらってます。危ないモノ持ってないね?」となるのです。そこで「私の趣味嗜好はちょっと危ないかもしれません。しかしアカではありません」と正直に答えても、ワシントンのように大統領になれるわけもないので、踵を返し所用へと向かいました。 

アヅマ

アヅマ

大江戸線新御徒町駅出てすぐのアヅマ。でっかいテント看板が目印です。久々に来てみたら、ぶ厚いカーテンが……。(2017年12月撮影)

 どうしたことかと、すっかりごぶさたしっぱなしの師匠に、調子こいて聞いてみました。さすが大物の師匠、普段の不義理など意にも介さず、すぐに返信がありました。「アヅマは12月20日朝8時で閉店です」え?、はとに豆鉄砲の返信。なんとも寝耳にみみずな展開です。
 そういえば全ソ連の巡業部長(急遽昇格)AB君は、週一ペースでアヅマで朝稽古をしていたことを思い出し早速訪問。すると玄関先で「次からはFAXにしてください」という展開になるかもしれませんが、めんどくさいので、メールしました。すればなんと、「医者からきついお達しがあり、断酒、断ソ114日目で、朝稽古は断念無念中。ネット検索したところ、アヅマは早々に麺売り切れで昼までやっていないようでごんす」とのことでした。
 そういうことでしたか……ぽつんぽつんと立喰・ソが並ぶ都バスの都02系統沿線の中でも、大きなテント看板でひときわ存在感の大きなアヅマ。2つに分かれた店内で供されるソは、パンチの効いた関東正当派で、豊富な自家製天ぷら、さらにうれしいていねいに刻んだねぎ入れ放題。早朝からの営業で、ガテン系の方々や地元の常連さんに愛される名店なのに……。

アヅマ

アヅマ

アヅマの自家製天ぷらは、種類が多くて目移りしまくりなのですが、人気の品は早々に売り切れが多く、中途半端な時間に行くとしょんぼり状態になることもありました。(2016年撮影)

 最終日、ふたたび巡業部長からメールがきました。
「おはようございます、アヅマご報告。5時45分に現地到着。くしくも、ついに119日ぶりの朝そば解禁が、アヅマ号のサヨナラ運転となりました。ニンジン、ソーセージのせ。オロシ別盛り。店内は、ガテン系の方ばかりで、静かでした」

 最終日でも淡々と常連さんがやってきて、さっと注文し、さっと食べて、「ごちそうさん」と席を立つ。その一瞬、店員さんと目を合わせ軽く黙礼。その一瞬だけがいつもと違う……そんな光景が目に浮んでは消えて。行列もなく、テレビニュースになることもなく、しかし凜とした空気感さえ感じる最終日のアヅマ。それこそ、関東正統派立ち食いそばの矜恃だったのではないかと、思ったりする平成29年の師走でありました。

アヅマ

アヅマ

アヅマの最終日。いつ見てアヅマの最終日。いつ見てもずんと落ち込む悲しいお知らせ。昭和の味がまたひとつ幻立喰・ソになってしまいました。長い間、おつかれさまでした。(2017年12月撮影)

 

●幻立喰・ソ 2017・レクイエム 

残念ながら今年も多くの名店が幻立喰・ソへと旅立てしまいました。お疲れ様でした。
















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