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DAEGというネーミングの由来から、エンジンやフレームの進化までの「25の質問」に続いてお送りするのはデザインに関するお話。

 ZRXとして三代目。シリーズが生まれてから12年目のモデルチェンジ。そしてカワサキビッグネイキッドの看板を背負うZRX1200DAEGの造形は、 “変えずに換える”という意味で難易度が高かったはずだ。

 そこでZRX1200DAEGのデザインを担当した川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニー  技術本部 デザイン部 スタイリング課 河内 薫さんに、デザインのこだわりをうかがった。




Q1

国内専用──これです。つまりデザインにブレがない。

 ZRX1200Rまでは海外仕様が存在し、輸出地の国別の志向を意識したデザインを盛り込む必要がありました。

 しかし、ZRX1200DAEGは国内専用。つまり日本のお客様に喜んでいただけるカタチにする、という意味で妥協なく創れました。

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Q2

スタイリング初期段階ではもちろんありました。

 その段階で描いたイメージスケッチが3点あります。まず、ZRX1200Rをベースにマッシブさを加えたイメージのもの(写真下右)。

 次にZ1000に見られるストリートファイター的ネイキッドで、近代の大型車デザインに見る先進性を前面に出したスタイルのもの(写真下左)。

 3点目は水平基調のオーソドックスな中に、力強さと男らしさ、カワサキらしさを秘めたもの(タイトルカットのイラスト)。

 ZRX1200DAEGのベースになったのが3点目のスケッチです。ゼファーにも通じるコンセプトであり、 水平基調を重視した日本的なスタイルともいえるでしょう。その中でZRXらしさをさらに追求してゆくことになりました。

  • スラントノーズが特徴的な、Z1000などストリートファイター系スーパーネイキッドにインスパイアーされたイメージ。

  • こちらは先代モデルZRX1200Rをベースに、マッシブ(=大きい、重い、どっしりとした)さを加えたイメージスケッチ。




Q3

全てです。中でもビキニカウルは正直、苦労しました(笑)。

今や「ローソンレプリカ」というよりZRXの顔でもあるこのビキニカウル、 ファンの皆さんに喜んでいただけるような新しさとZRXらしさを打ち出すために、 造形していく段階は一進一退でした。やはり絵と現物は違いますから。




ローソンレプリカの二代目にあたる1982年モデルのZ1000R2。似ているようでも、やはりDAEGとローソンレプリカはデザイン的にも別物。

Q4

ZRX1200Rと比べ、ビキニカウルは17mmベースを下方に移動させています。

 さらにハンドルバーの取り付け位置を見直した関係で上方にボリューム感を持たせた、アグレッシブさを演出しています。




Q5

まず、タンクとの兼ね合いがあります。ZRX1200DAEGのタンクは前方へ“ウワっ”とムーブメントを感じさせるような造形にしています。 それでいて、ニーグリップのしやすさにもこだわりました。

 おそらく目をつぶって跨れば、ZRX1200Rと同じに感じていただけるはずです。 しかし、目を開けるとタンク上面へと続く背中のラインに躍動感があるのを感じられると思います。

 そのタンクとビキニカウルのつながりを同調させるために、カウルのシャドウ部分(スクリーン下に走る左右の溝)と 面の完成度を上げていくため、クレイモデルを前にモデラーと共に時間を掛けて仕上げていきました。

 またビキニカウル前部の下側にはGPZ900Rにも用いられたデザインをアクセントにすることで、カワサキのDNAを感じていただけるものと考えています。

  • ZRX1200R・2008年モデル
  • ZRX1200DAEG・2010年モデル



Q6

スクリーンの取り付けナットなど舞台裏が見えないように、上質感とシンプルさを打ち出すようにデザインしています。

 インナーカウルを取り付けたことで、現代的な演出もしています。

 メーターとパネルも、黒を使いながら、艶有り、艶消しでコントラストを付けています。

 メーターのデザインスケッチ段階ではタコメーターを中心にしたデジタルを配したものも存在しましたが、このスタイルにまとまりました。

 オプションの取り付けキットを使えばスマートにETCランプなどをインストール出来るのも大きな特徴です。

 また、スクリーンの内角や取り付けボルトの穴位置をZRX1200Rと同じにすることで、豊富なカスタムスクリーンを、 新車時から選ぶ楽しみも付加しています。

大型のアナログメーター+デジタル速度計を組み合わせたスーパースポーツ系によく見られるパターンのデザインスケッチ。採用は見送られたが、これもなかなかいいかも。




Q7

まず、リアから見て一目でZRXだ、と分かることにこだわりました。また、使い勝手の面でも拘ったデザインとしています。

 それから、テールカウルの長さ、厚みのバランスを整え、跳ね上がり過ぎないように水平基調を大切にしました。 これで「落ち着き」と「カワサキらしさ」を引き出し、アグレッシブなイメージも持たせています。

 LEDの薄いテールランプの上側、テールカウルには「Kawasaki」のロゴを入れる伝統を踏襲しています。

 また、タンデム性向上を考慮して、タンデムグリップの形状を変更しています。掴みやすい位置にしたのはもちろん、 グリップ片側をオープンエンドにすることで、積載時に使う荷掛けヒモを通しやすい設計としています。

 リアフェンダーを細身としスタイルを引き締めると同時に、シート下ラゲッジスペース部分のパーツから別体とすることで、 リア周りのカスタムの自由度を上げています。これはカスタムにより拡大されたリアラゲッジスペースへの埃や水の侵入を効果的に防ぐ目的でもあります。




Q8

スクリーン同様、数多くあるカスタムシートをそのまま利用出来るように、 シートの底板をZRX1200Rと共通化しています。そのため、シート下端のラインが従来モデルと同じになっているのです。

 そのラインにフィットさせつつ新しいサイドカバーからテールカウルまでの造形を提案しています。

  • ZRX1200R・2008年モデル
  • ZRX1200DAEG・2010年モデル



Q9

ZZR1400と同意匠のホイール、ペタルディスクプレートなど、足周りには最新のものを入れることで、かっこよさと、走りの予感、 それにアグレッシブさを演出しています。

 リアスイングアームは「ZRXはモデルチェンジの度にデザインを換えている」という伝統もふまえ、太くシンプルで力強い、 というイメージのものに仕上げています。




Q10

例えばヘッドライトのバルブシェイドです。これもディテールに凝ったプランをいくつも考えました。 その中には川崎重工のマークを家紋のように中央に入れたものもありました。最終的にはシンプルな物に落ち着いています。

マルチリフレクターライトのバルブ。こういった細部までデザインは見直された。先端中央部に川崎重工業のマークを入れる案もあったそうだ。国内専用というネイキッドに厳しい目を持つ日本のユーザーに、 どれだけ本気を叩き付けているか。これでお解りいただけたと思う。

 

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