インプレッション


気軽で気楽に乗れる万能バイク型決戦兵器

シート
デザインは"古典"でも技術の進歩の恩恵はここら辺に。昔は鉄のシートベースで錆や破れに悩まされることが多かったが。シートの横のグラブレールには荷掛けフックが左右各2ヵ所に。シートを外すとヘルメットホルダーが2ヵ所。
メーター
CB750FOURを彷彿とさせるメーター周り。220㎞/hまでのスピードメーターと、8,500rpmからレッドのタコメーター。中央にはオド/トリップ、燃料計、時刻を表示する液晶ディスプレイを配置。メーターの縁はステンレス製バフ仕上げ。
テールランプ
これまたCB750FOURやCB400FOUR時代のテイストを感じさせるテールランプ周り。ウインカーもずいぶん頑張って小径化している。クロームパーツは下地の段階で面を研ぎ込み、アルミパーツはバフをあてる方向まで指定したという。
Type2
シートレールをCB1300より17㎜低く設定することで、乗り心地に貢献するクッション厚を犠牲にすることなくシート高をCB1300比-15㎜、サイドカバーの幅も同-40㎜とし、良好な足つき性を実現している。750サイズのコンパクトなボディと合わせて普段の使い勝手を大幅に向上。
Type2
CB750Fのフレーム、エンジン、といっても通用しそうな"古典的"な構成を持つCB1100。ばれてしまう点があるとすればPGM-FIを採用していることぐらいか。まあ、当時の技術ではキャストホイールのスポークもここまでは細くは出来なかったはず(CB750Fはコムスターだったが)。

空冷4気筒+PGM-FIのエンジン。前後18インチホイール。クラシカルと言えるスタイルなど、いろいろ見所はあるけれど、個人的に気になっていたことが2点あった。


「ネイキッドのCB1300SFがあって、それに近い排気量に、水冷と空冷の違いはあれど、同じく4気筒エンジンを積んだネイキッドモデルが出てきてどうやって棲み分けるんだろう」ということと、「絶版車の仲間入りしたCB750と同じようなものが欲しい人は必然的に成り立ちが似ているこのモデルになるのだけれど、少し大きくなってしまったことで、CB750のような気軽さが無くなってしまったんじゃないか」ということ。


開発コンセプトは『大人の所有感を満たすエモーショナルな空冷直4ネイキッド』で、所有する喜びがあるルックス、味わいのあるエンジン、構えないで乗れる走って楽しいシャーシという3つの狙いを入れ込んだ古いニオイのする新しいバイク。だからCB1300があるからどうだ、とか、CB750の受け皿とか、どうだっていいのかもしれないが、気になったものはしょーがない。


跨ると、燃料タンクの両端から、美しく見せるために2㎜という薄さに仕上げた冷却フィンが見える。ちょっと昔の空冷直4を知っている世代としては懐かしい。知らない世代は新鮮に感じるだろう。シリンダーとシリンダーヘッドを止める袋ナットが外側に露出した4気筒モデルは過去のホンダ車にはなかったんじゃないかな。フィンは薄いだけじゃなく深いのも印象的。バルブの挟み角を広げてまでDOHCらしいルックスにこだわったそうだ。


足つきはよくて、CB1300SFと比べるとずいぶんコンパクトだ。乗り出して、すぐに狭い路地でUターンを2回してみた。普通に、くるり、くるりっと出来た。試乗したのは千葉県だったから、くるり、くるり、久留里! ─────というオヤジギャグは今思いついた。当然、初めて乗ったんだけど、いつも乗っているように思わせるとっつきやすさ。


走りはじめてすぐに気になっていた2点が杞憂だってことがすぐに判った。CB1300SFとはまったく性格が違う。CB1300SFのエンジン腰下を流用した排気量の近い直4エンジンネイキッドだけどまったく別のバイクに仕上がっている。


18インチの、前110、後140という細いタイヤを採用したことで、左右の倒し込みがひらりひらりと軽い。万能バイク型決戦兵器とも言える、生真面目で全科目で高得点を取る、CB1300SFより、ずいぶん気軽で気楽。そしてCB750から乗り換えても大丈夫。走っていると排気量が大きいことがまったく気にならなかった。扱いやすさはバツグンだ。少しだけ窮屈だったCB750よりポジションが自然な分、こっちの方が楽だとさえ思った。愚かなボクは取り越し苦労をしていたというワケだ。


コーナーでは'70年代、'80年代的な腰で曲げる感じがありながらも、サスペンション、ブレーキ、タイヤ、開発した人は現代のものだから、古き時代より安定感はバツグンにいい。連続するタイトターンでも楽しく走れた。


エンジンはトップ5速でもバイクが動いてさえいれば、人間が走るような速度に落ちてもエンストしないで、スロットルを開けるだけでスピードをのせていけるほど下の粘りがあった。さらに開けていくと、このエンジンは意外と迫力がある。「速い」というのではなく、音と振動、回り方が「頑張って回っているぜ、べらんべえ」といったもの。 

試乗後に、「普通に作ったら、シューンと軽く回ってしまって、深みのある味がないということになり、バルブタイミングをあえてちょっとずらして味付けをしたんです」という話を開発スタッフの方から伺った。


ネイキッド、スーパースポーツ、メガスポーツ、ストリートファイター、スーパーモタード等々、同じロードモデルでも最近のバイクはジャンルが細分化してしまっている。そう言えば、ボクが免許を取ってバイクに乗りだした'80年代前半まで、ロードモデルという大きなくくりだけで、得意とするジャンルなんて分かれてなかったよなぁ。ツーリング、峠、彼女とのタンデム、買い物、通勤通学をなんでも1台でこなしたし、こなせた。CB1100はそういう使い方を思い出させてくれる。


走りを含むバイクとしての機能的なものをちゃんと考慮していて、ただの懐古的モデルになっていないところに好感が持てる。


旅先の狭い田舎道を走っていて、通り過ぎながら目にしたそば屋が気になって、すぐにUターンして戻る、ということがめんどくさくならないバイク。カジュアルな服装で乗っても絵になる。

※CB1100のカスタマイズパーツについては公式webサイトで。

インプレッション

[前のページへ ][目次へ]


[空冷4気筒CB伝説第一章 1 2 3 ]
[第一章・ミドルクラス編 1 2 ]
[空冷4気筒CB伝説第二章 1 2 3 4 ]
[第二章・ミドルクラス編 1 2 ]
[空冷4気筒CB伝説第三章 1 2 3 ]
[空冷4気筒CB伝説第四章 1 ]
[空冷4気筒CB伝説第五章 1 2 3 ・ 4 ]