2018年7月23日

優勝を狙うチーム、世界チャンピオンを狙うチーム。 Honda鈴鹿8耐ファンミーティングで、抱負を語る。

 

鈴鹿8耐の決勝レースを1週間後に控え、ホンダ本社・ウェルカムプラザで「Honda鈴鹿8耐ファンミーティング」が開催されました。これは、鈴鹿8耐に出場するホンダ系トップチームの、鈴鹿入りを前にしたファンのみなさんへの顔見世イベント。残念ながら、Red Bull Honda with 日本郵便の宇川徹監督は所用で欠席したものの、F.C.C.TSRホンダフランス、KYBモリワキMOTULレーシング、MuSASHi RT ハルクプロホンダ、そしてRed Bull Honda with 日本郵便の各チームマネジャー、ライダーが出席しました。

 

 

このイベントの直前には、TeamHRCライダーが、当初予定されていた高橋巧/中上貴晶/レオン・キャミア組から、キャミアの負傷により、パトリック・ジェイコブセンに変更されることが発表されました。さらに、ジェイコブセンが参加する予定だったハルクプロホンダのライダーは、ホンダ全体のリザーブライダーだったランディ・ドゥ・プニエに決定。4チーム10人のライダー(モリワキホンダのダン・リンフット、ハルクプロホンダのドミニク・エガーターが欠席)が顔をそろえることになりました。

この日、ウェルカムプラザに詰めかけたファンは、約300人。壇上、あいさつに立った桒田哲宏レース運営室室長は「Red Bull Honda with 日本郵便のライダーも、いろいろアクシデントはありましたが、無事決まりました。新しく加入してくれることになったジェイコブセン選手は、我々のチームでは1回しかテストしてもらう機会はなかったんですが、人柄の良さもあって、もうチームに溶け込んでくれている。壇上の4チームをはじめ、ホンダユーザーチーム一丸となって好成績、優勝を目指します」とあいさつ。

イベントは、各チームがそれぞれ、レースへの抱負を語ることになりました。

 

F.C.C. TSRホンダフランス

藤井正和監督

「我々は、この鈴鹿8耐だけではなく、世界耐久選手権にフル参戦し、ここまでル・マン24時間耐久と、ドイツ・オッシャースレーベン8時間耐久で優勝、鈴鹿にランキングトップで帰ってくることができました。ですから、この鈴鹿8耐は、レースの優勝ではなく、世界耐久チャンピオン獲得のためにレースをしたい。どのチームがトップに立とうが、我々が何位を走っていようが、いつも気にしているのは(現・世界耐久ランキング2位の)GMT94ヤマハだけです。鈴鹿で世界チャンピオンになってみせます!」

 

KYBモリワキMOTULレーシング

森脇 緑マネージャー

「昨年、9年ぶりに鈴鹿8耐の舞台に戻ってきました。その8耐は、新しい体制、新しいマシン、新しいライダーという環境で、なにもかも手探りの中でのレースになりました。それも、今年の鈴鹿8耐に向けての貴重なデータ蓄積の場、貴重な体験だったと思います。私が1歳になった年に鈴鹿8耐がスタートして、物心ついた時から鈴鹿8耐があったんです。だから、鈴鹿8耐は私の人生そのもの。モリワキは、これまで数10回と鈴鹿8耐に出場していますが、まだ優勝したことがないんですね。いつか、表彰台の一番高いところに立ちたい」

 

MuSASHi RT ハルクプロHONDA

本田重樹総監督

「今年のライダー編成は、JSBデビューイヤーの水野 涼と実績ある外国人ライダーがふたり。面白い組み合わせになったと思っています。水野はまだまだ新人、今年は勉強の年、来年は大きく羽ばたいてほしいと思っています。ハルクプロはこれまで40回開催した鈴鹿8耐の半分弱に出場して、完走したのが8割強、その半分は表彰台に上がって、優勝は3回しているんです。今まで通り、自分たちのペースを崩さず、表彰台を狙って、最終的にいちばん高いところにいられたらいいな、と思っています」

 

Red Bull Honda with 日本郵便

桒田哲宏 HRCレース運営室室長

「我々は10年ぶりのワークスチームとしての参加。強いHRC、強いホンダを見せたい、と思っています。ここに来てくれた、高橋、中上、ジェイコブセン選手の3人で戦う今回の鈴鹿8耐は、高橋選手が全日本選手権を通じて8耐マシンを作って来てくれて、ここまでやってきた。中上選手は、日本人唯一のMotoGPライダーとして、多忙なスケジュールを縫って日本とヨーロッパを往復してくれた。ジェイコブセン選手は、急なチーム編成変更を受け入れてくれて、もうチームになじんでくれている。まだまだ準備は完全ではないし、ライダーのみんなは、どんどん要求を高くしてくるので、絶対マシンに満足してはくれないんです。我々チームも、それにしっかり応えて、優勝を狙っていきます

ライダーの負傷もあって、レース直前まで準備がバタバタとしたRed Bull Honda with 日本郵便も、10年ぶりに鈴鹿8耐に参戦するホンダワークスチームとして、優勝は絶対使命。対して日本代表として世界耐久選手権にフル参戦してきたTSRホンダは、鈴鹿8耐の優勝より大事な「世界耐久タイトル」獲得を目指しています。同じレースに出場するにも、チームごとの目指すところは違うのです。

さらに、本田重樹ハルクプロ総監督のこの言葉。

「私個人は、本当は鈴鹿8耐なんて大っ嫌いなんだ(笑)。つらいし、暑いし、キツい。でも、やった後は、勝っても負けても達成感がある。ヤバいよね、やめられない、それでもう私なんか68歳だもん。それでも、終わるとすごく美味しいビールが飲めるんだ。たまに苦いビールだってあるけれど、今年も美味いビールを飲めたらいいな、と思うよね

何度も鈴鹿8耐に出場してきた名監督の、正直すぎるひとことでした。

イベントは各チームの紹介の後、ファンのみなさんへのプレゼント抽選会や、マシンを前にしてのプレピットウォーク、そして来場者全員そろっての写真撮影と、なごやかに進行。本番1週間前に、最後のリラックスした時間を過ごしたのかもしれません。

それぞれの8耐。1チームだけに与えられる優勝カップ。ひとつの世界タイトル。心構え、戦略は違えども、鈴鹿8耐は、各チームの大事な目標としてレース界が回っています。その8耐は、いよいよ7月29日午前11時半にスタートします。

レポート:中村浩史 写真提供:Honda