2018年7月31日

第60湯:山形・宮城湯巡りツーリング(後編)

MBFCC-B1 毛野ブースカ 湯めぐりみしゅら~ん

 山形・宮城湯巡りツーリング3日目。念願だった田代島(通称「猫島」)に上陸する日を迎えた。天候は曇り。雨の心配はなさそうだ。第59湯の冒頭でも書いたが、田代島に向かう船(網地島(あじしま)ライン)は午前9時00分に石巻港を出航し、午前9時45分に田代島着。午後2時12分に田代島を出航し、石巻港に戻ってくるのが午後3時00分という選択肢しかない。それに合わせて、午前7時30分に玉井カメラマンとともにホテルを出発。東日本大震災の傷跡が残っている海岸沿いを通り、網地島ライン発着所に到着。すでに田代島に上陸すると思われる人々が集まっていた。バイクを乗船させることはできないので、発着所にバイクを駐車してから乗船券を購入。石巻港から田代島の仁斗田(にとだ)港までは片道1230円。往復券を購入して乗船までしばし待機。すでに発着所に子猫がいて、みんな思い思いに写真を撮ったり、撫でたりしていた。

網地島ライン発着所

石巻港にある網地島ライン発着所。玄関前の段ボールに子猫が数匹いて、早くも猫好きを魅了していた。

田代島

石巻港から40分ほどで「猫島」こと田代島に到着。面積3.14平方km、周囲11.5km、人口82人(平成27年度)の小さな島だ。

 午前9時00分、定刻どおりに出航。船内はほぼ満席。地元の方もいるが、やはり私たちのような観光客が多い。意外と目立つのが、私くらいの年齢の男性や若い女性がひとりで乗船していること。猫と同様、マイペースな方が多いのかもしれない。のんびり揺られていると田代島が見えてきた。メロンパンのような島の全景は、NHKで放送された人形劇「ひょっこりひょうたん島」のモデルになった島と言われている(諸説あり)。仁斗田港に着岸し、いざ上陸。港に常駐(?)している猫たちから出迎えを受ける。

 そもそも田代島で猫が多いのは、豊漁の神様として猫を大切にしていることに端を発しているとのこと。島民の協力の元、猫たちは暮らしているので、特に道端での餌やりはご法度となっている。なついてほしいがためについ餌を与えたくなるが、そんな必要がないほど人懐っこいのは、歩いているうちにわかってきた。それほど広い島ではなく、道も限られているので、左回り(港→仁斗田の町→マンガアイランド→島のえき→猫神社→島のえき→港)で進むことにした。

一手作りの看板

港から仁斗田地区と大泊地区の分岐点に立っていた手作りの看板。私たちは左方向(猫が多い仁斗田地区)に向かった。

 緩い坂道が続く町中を歩くと、早速猫が現れる。カメラを向けても逃げない。いや、むしろポーズを取ってくれる。軽自動車が走ってきてもここは猫が主役。猫が通り過ぎるまで待機している。昭和感が漂う漁村の雰囲気と猫のゆる〜い動きが絶妙にマッチしている。なんとも和やかな時間が流れる。普段、エアガンばかり撮っている玉井カメラマンも楽しそうだ。やがて見晴らしのいい高台にある「マンガアイランド」に到着。マンガアイランドは漫画家のちばてつや氏や里中満智子氏がデザインした「マンガロッジ」をメインにした市営の宿泊施設(現在は休業中)。そこには10匹以上の猫が集っていて、念願だった「ネコがたくさん集まっている光景」を見ることができた。近づいても猫たちは逃げようとしない。警戒心のない猫たちを見てこっちが心配になってしまう。

猫たちは出迎えてくれる

坂の多い町の至るところで猫たちは出迎えてくれる。しっかり決めポーズをしてくれた貫禄が漂う長髪の黒猫。

黒猫

マンガアイランドに向かう途中の空き地にいた黒猫。「早く撮って!」とカメラを設定する玉井カメラマンに視線を送る。。

玉井カメラマンに視線を送っていた黒猫

玉井カメラマンに視線を送っていた黒猫は、私にもジッとレンズを見つめてポーズを決めてくれた。

マンガアイランド

開放感のある見晴らしのいい高台にあるマンガアイランド。猫をイメージした宿泊施設が建ち並んでいる。

マンガアイランドに集結していた猫たち

マンガアイランドに集結していた猫たち。こう見ていると毛色が似ている猫がいるので、家族や兄弟なのだろう。

 マンガアイランドを後にして、島のえきと猫神社を目指す。道端で寝ていたり、人家の塀の上にいたり、藪の中にいたりと、ところどころに猫がいる。やがて廃校した小学校を改装した「島のえき」に到着。ここに辿り着くまで何匹の猫を見かけただろうか。島民よりも圧倒的に多かったのは事実だ。島のえきはお土産や食事ができる島内唯一の休憩ポイント。もちろんここにも猫がいる。一服後、最後の目的地である猫神社に向かう。猫神社には豊漁の神様として猫が祀られており、ここにも常駐していると思われる猫たちがいた。人のいるところ猫がいるではないが、とにかくタイミングよく猫が出現する。

ちょっとドヤ顔の猫

ちょっとドヤ顔の猫。多くの猫が無防備なまでに寄ってくる。

ロマンスグレーの毛色の猫

ロマンスグレーの毛色のこの猫は、ちょっと警戒心が強かったが、カメラを向けるとしっかりカメラ目線をくれる。

道端で堂々と横たわっている

こちらが近寄ってカメラを向けているのに、道端で堂々と横たわっている。

今回撮影した猫たちの中でも可愛かった子猫泉

今回撮影した猫たちの中でも可愛かった子猫。道端で横たわっていた猫はもしかしたら親猫かもしれない。

 猫神社を参拝後、ここからは来た道を引き返して港に戻る。島内には島のえき以外の観光施設がないので、港近くの公園で乗船時間が来るのを待った。島内に散っていた観光客が続々と港に戻ってくる。港にいる猫たちは、観光客に愛想を振舞った後、船が来るタイミングで町に帰っていった。なんとも心憎い猫たちだ。定刻どおりに船が出港。船中、何匹の猫に遭遇したか玉井カメラマンと数えてみたところ、50匹以上はいたのではないかという結論に達した。そして、数もさることながら驚きだったのは、カメラを向けると自然とポーズを取る猫が多かったこと。ここで載せた写真はすべて彼らのサービス精神(笑)によって支えられたものだ。都会で猫を撮ろうとするとこうはいかない。

島のえき

廃校になった小学校を活かした島内唯一の観光施設である「島のえき」。ここでしか手に入らないお土産が売っている。

ポンプ小屋

町内にある通称「ポンプ小屋」は猫が多く集まるスポットとして紹介されている。この日も猫が思い思いの時間を過していた。

 今回は温泉よりも猫の写真が中心になってしまったが、実はこんなに猫に遭遇できたのはラッキーだったようだ。おそらく天気が曇りで暖かかったためだと思われる。真夏や真冬だと都会の猫と同様、日中は出歩かないだろう。なので、もし田代島に行って猫と触れ合いたいという方は、春先から初夏、初秋がいいのではないだろうか。あと、島内には食事できる場所が島のえきしかないので、お弁当などを持参していったほうがいい。

猫神社

島のえきから歩いて数分のところにある猫神社。ここでも常駐スタッフ(猫?)がお出迎えしてくれる。

ドヤ顔でカメラに近寄ってくる

ドヤ顔でカメラに近寄ってくる島のえきにいた猫。一日でこれだけ猫の視線を受けたのは初めてかもしれない。

 無事、石巻港に着岸。本日の2番目のメインイベント「春の集会」の開催場所である宮城県登米市迫町の「長沼フートピア公園」に玉井さんと向かった。田代島では曇りで時折薄日が差していたが、雨が降りそうな雲行きになっていた。長沼フートピア公園に到着すると、先発隊が公園内のキャンプサイトに場所を確保していた。サイト利用料は500円。キャンプサイトはすり鉢状になっており、中央のサークル広場付近にテントを張った。近くのスーパーまで食材を買いに出かけた後、3分ほど走ったところにある長沼温泉「ヴィーナスの湯」にみんなで向かった。ここは4年前に入湯したことがあり(第43湯で紹介)、入湯料は500円。眺めのいい場所にあるのだが、この日は夕方過ぎだったので景色を見ることができなかった。

 キャンプ場に戻ってみんなと夕食を摂っていると、ポツポツと雨が降ってきた。久しぶりのキャンプで雨とは、我ながら雨との相性がいいと実感してしまった。朝方まで雨は降り続き、出発する時間になりようやく雨が上がり始めた。最終日は渋滞を避けるべく、どこにも寄らずに東京に戻る予定だったが、やはり朝風呂だけは入っていくことにした。選んだのは「加護坊温泉さくらの湯」だ。「加護坊温泉さくらの湯」は東北自動車道・古川インターから15kmほどの宮城県大崎市田尻小塩にある日帰り入浴施設だ。入湯料は500円(休日600円)。浴室は天井がかなり高く、開放感のある作り。建物そのものも立派でキレイ。内風呂は源泉風呂や打たせ湯などがある。露天風呂は広々としており、寝湯ができるスペースもある。お湯はかすかな白湯。湯加減はちょうどいい感じだった。加護坊温泉さくらの湯に入った後は、東北の地を後にして東京を目指した。

 今回の湯巡りは入湯数はそれほど多くはないものの、田代島に行くという目的が達成できたので大満足だった。5月から7月半ばにかけては仕事が詰まりに詰まっているので、次に行けるとしたら7月下旬だろう。次はどこに行こうかな…。 

長沼フートピア公園

春の集会場所となった「長沼フートピア公園」。園内は広々としており、キャンプサイトがすり鉢状になっているのが特徴だ。

加護坊温泉さくらの湯

宮城県大崎市にある「加護坊温泉さくらの湯」。建物、浴室ともに立派で、内風呂、露天風呂ともにちょうどいい湯加減だった。

●ブースカ的独断温泉評価(5段階評価)


加護坊温泉「さくらの湯」

★★★★

立派な施設と広々とした露天風呂が魅力。


※あくまで個人的な評価ですので、ご参考までに。

毛野ブースカ

月刊アームズマガジン』の編集ライター。バイクに乗り始めてから温泉が好きになり、現在までの温泉踏破数は779湯。湯巡りツーリングの相棒はホンダ・400X。ちなみにマイカーはスズキのエスクードだ。

ブースカ

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