2017年8月8日

MBHCC D3 小宮山幸雄 順逆無一文

第79回『EURO5の先に見えるものは』

順逆無一文


第79回『EURO5の先に見えるものは』

 このところマイナーチェンジモデルのラッシュですね。それもカラー&グラフィックの変更で気分を変える“イヤーモデル”ばかりじゃなく、「平成28年国内排出ガス規制」に対応、という変更理由の項目が入ったモデルチェンジが目につきます。
 
 というのも、その平成28年国内排出ガス規制へのタイムリミットが迫ってきているからなんですね。「新型車」(いわゆるニューモデル)への規制スタートは、平成28年の10月1日だったのに対して、「継続生産車及び輸入車」は、平成29年9月1日から適用と約1年間の猶予があったのですが、そのリミットが目前に。この平成28年国内排出ガス規制に対応させなければ、継続車でも9月1日以降は販売できなくなってしまいます。そこで相次ぐモデルチェンジラッシュという状況になっているのですが、残念ながらこの規制強化を理由にラインナップから落ちてしまうモデルの方も目に付くようになってしまいました。
 
 ちなみにこの道路運送車両の保安基準等の改正が公布されたのは平成27年7月1日。2年前のことでした。国土交通省が、中央環境審議会の「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」の第10次答申(平成22年7月)、および第11次答申(平成24年8月)などを受けて、二輪車の排出ガス規制強化を図るため道路運送車両の保安基準を改正。
 

H28_Emisson.jpg

※国土交通省発表資料より

 排出ガス規制の内容は上の表を見ていただくとして、この改正では排出ガス規制だけでなく、
1)燃料タンク等から排出される燃料蒸発ガスの測定方法及び規制値を定める
2)排出ガス関連部品の故障を運転者に知らせるための車載式故障診断装置の義務付け及びその技術要件を定める
 という2項目も発表されました。クルマではおなじみの燃料蒸発ガスへの対応ですが、二輪車では初めての規制です。特に燃料タンクのキャップには空気抜きの穴が存在するのでここから外に漏れる気化ガソリンに対応しなくてはならない。スペース的に余裕のあるクルマに対して二輪車の場合はチャコールキャニスターといった浄化装置の取り付け場所の確保は難しい問題です。もう一点は、OBD(On-Board Diagnostics)いわゆる車載式故障診断装置の導入ですね。とりあえず基本的な電気系統の断線等による機能不良を監視するシステムを義務付けました。技術的な要件は国連の世界統一基準をベースとしています。
 
 さて、このモデルチェンジラッシュで各社も一息か、というとそうでもないんですね。この平成28年国内排出ガス規制の元となっているのは、欧州の二輪車排出ガス規制である“EURO4”規制と歩調を合わせたモノでした。国際基準に合わせることで、多くのメリットが得られるようになりましたが、同時に規制強化にも同調していかなければならなくなったということです。
 で、その欧州の二輪車排出ガス関連の規制には次なるハードルといえる“EURO5”が待ち構えています。こちらの導入時期が我が国にとっては特別な年、2020年なんですね。排出ガスの規制値が一段と強化されるのはもちろん、燃料蒸発ガスの規制値の強化や、より高度なODBの導入が義務付けられる、とされています。
 

EURO2020.jpg

※国土交通省発表資料より

 このさらに一段と厳しくなる新たな排出ガス規制によりまたラインナップから落ちてしまうモデルが現れるのは必定でしょう。ですが、それ以前に視点を変えてみると、まったく別な未来が見えてきます。それは、程度の差こそあれ排出ガスの存在から逃れることのできない内燃機関自体に見切りをつけて、バイクもすべて電動化しましょう、という大波が来る可能性はないのでしょうか。クルマに関してはご存知の通り「2030年以降は内燃機関のクルマは走らせない」などといった過激な規制を実施しようという国などの話題すら入ってきています。
 
 我が国でも都市部のコミューターとして電動バイクを普及させようと、ホンダとヤマハが地方自治体に協力する形で手を組んだというような話題も入ってきています。まだまだ先の話とされているバイクの自動運転なども電動バイクなら相性は抜群でしょう。電動バイクへの切り替えは意外に早いような気もします。
 
 半世紀の繁栄を謳歌してきた内燃機関のバイクを楽しむ最後のチャンスですよ、若者の皆さん。
 
(小宮山幸雄)
 


小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は、“閼伽の本人”。 


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