順逆無一文


『澆季混濁』

 先日、ニュースで『自動車総連が、2013年度税制改正でエコバイク減税などを政府に要望』というのがあった。

 自動車総連(全日本自動車産業労働組合総連合会)というのは、「自動車産業に関わる労働者を網羅する全国組織で、メーカーおよびその系列部品製造、販売、輸送、その他の労働者を単位とする連合の総連合体として発展してきた」団体なのだそうだ。

 この自動車総連が、2013年度の税制改正要望として、環境性能に優れた二輪車に対する減税、補助金制度を盛り込んだバイク版“エコカー減税”の導入を打ち出した、というニュースだった。

 ご存じの通り、クルマへのエコカー減税、補助金政策は、見事に需要回復につながったことから、二輪車にも同様の制度を導入することで需要拡大を図り、関連産業の雇用確保を目指すのが狙いなんだとか。

 ま、理由はともかく、多くのライダーが感じ取っていた「クルマなんかよりバイクの方がよほどエコじゃないか!」という現実を、初めて公に認められた有力団体が声に出した、という点を評価しておきたい。実現するかどうか、はまた別の問題ですが。

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 相変わらず警察の“呆れた事件”報道が多いですね。

 先月には、京都府警がミニバイクと車が衝突し、女子高生らが死傷した事故について、現場の警察官が事故を目撃しながら「見ていない」とウソの報告をしていたことが分かったという。「少年らがたむろしている」との通報があり、パトカー2台が駆け付けたが、少年らは数台のミニバイクで逃走。そしてパトカーの報告では「追跡中に見失い、事故はその後に起きた」としていた。

 しかし実際には、パトカーに乗っていた警部補ら2人は一時、逃走したミニバイクを見失ったが、その後、そのうちの1台が走っているのを見つけ、パトカーで追いかけようとした際に事故が起きたと判明。明らかに責任逃れのためのウソの口裏合わせ。子供の頃に「ウソは警察の始まり」じゃなかった「ウソは泥棒の始まり」と教えられなかったのだろうか。

 ちなみに京都府警といえば、違法駐車が常態化していた問題で、運転者が乗車していても停めていれば違反切符を切るという“強権取締り”を実施したことでおなじみ。「違法駐車をゼロにする」ためには手段を選ばず、の典型的な成績重視の警察だ。人様の悪事を問う前に、身内の教育を徹底すべきなのでは。

 岡山県警はシートベルト装着義務違反で、規制対象外の車両のドライバー56人に間違えて反則切符を切った。それも2009年から今年5月まで気づかなかったというのだから恐れ入る。高速道路や自動車専用道路では、後部座席の乗員もシートベルト装着が義務だが、後部座席を折り畳んで収納可能なライトバンなどの貨物車は、その後部座席のベルト取り付けが免除されている(道路運送車両法の保安基準)。その場合、ベルトが装備されていても装着義務は適用されないことになっているのだが。ま、高速道路取締り隊員の勉強不足でキップを切りまくった、ということでしょう。

 県警は対象者に謝罪し、違反点数の1点を抹消。中には誤処理で免許証停止となった男性も1人いたとか。また、運転免許証の書き換え時にゴールド免許証ではなく、青色帯の免許証を交付された男性1人を含む計4人には正しい点数を反映した免許を再発行。こんなイージーミスで免停にされたとしても、精神的苦痛面などは何も補償してくれないのでしょうね。警察のやることですから。

 間違いキップといえば、栃木県警もやってくれます。栃木県警宇都宮東署が、今年5月までの約10カ月間、速度違反の取り締まりで何と4,184件で誤測定。そのうち、その後の人生を狂わせた可能性もある刑事罰を科す赤切符の交付と一部事件送致も含め444件に上ることが判明。

 どのような“誤測定”があったのか、具体的な内容はニュースでは分からなかったが、取り締まられた方からの問い合わせや苦情で判明したらしい。誤測定の対象者全員に対して、謝罪と今後の処理について関係機関と協議し決めていきたい、といった文面の通知書を郵送したというが、善良な市民が“前科者”とされてしまう赤キップを切られた時の精神的ショックなどをどの程度認識できているのだろうか。

 犯罪者と常に接している警察にとっては、人を取り締まり検挙することなど“大したこと無い”日常茶飯事かもしれないが、善良な一般市民にとっては、交通違反でキップを切られることなど、一生のうち何回あるかないかの大問題。一遍の“謝罪文”で済むような話ではない。

 群馬県警はやる気のなさが光りました。群馬県は太田市の市道脇で、ひき逃げで死亡したとみられる男性の遺体が見つかった事件で、群馬県警太田署は、通行人からの通報があったにもかかわらず事故を約8時間も放置していたことが分かったそうな。

 事故現場近くの交番に、通りがかった人から「道路脇の草むらに自転車が倒れている。タイヤがへこんでおり、事故ではないか」との届け出があったが、応対した警察官は重大な事故ではないと勝手に判断し、現場に向かわなかったという。

 その後、8時間も経ってから、通行人が男性と後輪が曲がった自転車が倒れているのを発見。110番通報でやっと現場を確認。すでにその男性は死亡していたという。事故直後に対応してくれていれば助かった可能性はないのでしょうか。

 呆れる事件ばかりですが、逆にこういった警察の“不祥事”が表に出てくるだけマシな世の中になったと言えないこともないですね。ネット化社会で“事件”を隠し通すことがどんどん難しくなってきているのでしょう。

 常々言っているように、警察官も勤務する時には必ず“ドライブレコーダー”のような記録装置を着用してもらって、行動の一部始終を記録するようにすべきでしょう。すでに市民側には、警察に対しての“信頼”という2文字はありません。

 最高裁まで持ち込まれた“白バイ事件”など、白バイにドライブレコーダーさえ装備されていれば、不毛な裁判など起こさなくて済んでいたはず。

 人間はウソをつく生き物。警察といえども、ウソをつく個々の人間で構成されている団体、という前提で組織を律し、活動することで、初めて市民に信頼される警察になるでしょう。まずは己を疑うことから。

 些細な交通違反で「違反は違反ですから!」などと偉そうに言える資格がありますか。「警察官も人の子ですから」に成り下がってしまった今の警察に。

(小宮山幸雄)

小宮山幸雄小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は“閼伽の本人”。 


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