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いままでに何度もお伝えしているとおり、欧州で盛り上がっているカスタムバイクカルチャーは、簡単に言うところの“バイク”というプロダクトのパーソナライズ化。大衆に向けて製作されたバイクを、個人の好みにアレンジしていくというものです。もちろんそのアプローチは多様であって良いと思うのですが、いかんせん“流行”とはある種の盲目であり、一本の大きな流れのみに注目が集まってしまいます。

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しかしそこに、じつにドゥカティ的な手法でアプローチしてきたのが「XDiavel」だと感じたのです。モダンさとエレガントさ、そしてマッチョさを持ち、その同じベクトルでリッチ&ラグジュアリーな、それでいてワイルドなアフターパーツをすでに、そして数多くラインナップしていました。それらを総合して、じつにイタリアンブランドらしいアプローチでプロダクトが構築され、さらにはパーソナライズされている。これはドゥカティでしか創造できない世界観だと感じました。

そう、なにもバイクを通してライフスタイルを語るとき、アメリカ的な古き良きものを愛でる必要も無いし、英国的にストイックなファッションと音楽にまみれなくたって良い。そのブランドがもつ世界観を広げたところでライフスタイルを語ったって良いのです。ドゥカティのXDiavelは、そのことを明確に語っていると感じました。

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以前から「R nineT」の廉価版が出る、と噂があったために「R nineTスクランブラー」が発表されたとき“やっと出たか”と言うのが正直な印象でした。しかしここにきて、いろんな噂をまとめるとちょっと印象が変わってきました。「R nineTスクランブラー」はR nineTの廉価版じゃないかもしれません。

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廉価版が出るということは、R nineTを頂点においたピラミッド型のモデルカデゴリーが構築されると考えていました。価格や装備が異なる、複数のモデルがラインナップされると。BMWカスタムワールドを牽引してきたR nineTですが、世界各国で一様に車体販売価格が高く、カスタムベースにするにはハードルが高い。そのハードルを下げた低価格車両がまっ先にモデル拡充されると予想していたのです。しかしR nineTと同価格帯で販売されるのではないかという噂が、海外サイトなどで囁かれていました。それはどういうことなのか?
 
R nineTシリーズをピラミッド型のモデルカデゴリーにせず、伝統的な空冷水平対向エンジンを抱く“ヘリテイジシリーズ”とし、さらにドラスティックに変化するであろうBMWのモデルラインナップの扇の要にするのではないか。というのが僕の妄想です。

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これはR nineTの発売によってカスタムシーンにアプローチしてきたときにも妄想したのですが、カスタムシーンへのアプローチは、その後過激に変化するBMWワールドを中和するための、少し苦めの薬=緩衝剤だったのではないでしょうか。R nineTが存在しないまま水冷単気筒エンジンの小排気量モデル「G310R」がリリースされていたら……すでに欧州では試験的に導入されていますが、EVスクーター「C エボリューション」が市販化されたり、さらにはEVバイクがリリースされたら……バイクを取り巻く環境の変化&マーケットの変化に合わせBMWが変化の時期を迎えているとしたら、ベテランライダーからもビギナーからも、がんじがらめの古いイメージに縛られていたままでは、なんとも動きづらい。そう考えればR nineTが造り出した新たな価値観は、既存のBMWイメージをシャッフルする良い起爆剤となったし、「R nineTスクランブラー」という朋友を得て“ヘリテイジカデゴリー”を構築できたならBMWのモデルカデゴリーの“軸”を提示できるのではないでしょうか。

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そこからさらに想像を膨らませると、BMWは軸を得たことで、さらに大胆な振る舞いに出るのではないでしょうか。たとえば新たなカデゴリーにリーチする斬新なニューモデルとか、想像を超えるプロモーションとか……次にBMWは何をやって来るのでしょうか……だから妄想は楽しくて仕方ないのです!

●DUCATI SCRAMBLER Sixty2 と BMW G310R

ご存じのとおり、EICMAで発表されたアンダー400のマシンです。そしてご想像の通りアジアマーケット、なかでも日本のマーケットにとってとても重要なモデルです。
 
日本でも再び注目を集めているアンダー400カテゴリー、僕が重要だと感じているのは販売台数ではありません。だって販売台数では、他のアジアマーケットに敵うわけがありませんから。では、何が重要なのか。それはドゥカティ・ジャパンおよびBMWジャパンの販売施策と、それを受けての日本のマーケットの反応です。

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アジア各国の二輪マーケットは、それぞれの道路環境や生活習慣、そしてそこに住む人々の気質によって独自の進化を遂げています。しかし一様に、日本のマーケットに注目しているのです。なぜなら日本は、世界を牽引する4メーカーのお膝元であり、バイクの先進国だから。彼らにとって日本は、バイクを楽しむうえでの先輩的存在なのです。だから日本のバイクライフを参考にし、日本のライダーを参考にしています。かつて僕たちが欧州やアメリカのライダーたちの真似をしたように。

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ということは、同じ車両が導入される日本で「DUCATI SCRAMBLER Sixty2 」と 「BMW G310R」がどう料理されるか、大いに注目されているはずなのです。そしてもしこの期待に応えられなかったら、日本市場はアジアのなかでの存在価値を失ってしまうでしょう。だってマーケットの規模的には、他のアジア諸国に敵わないんですから。
 
そんなこと、ユーザーには関係ないじゃん。はい、その通りです。これは我々、二輪業界に携わる人間にとって重要案件なワケです。ということで、自戒の意味も込めて、ココにまとめてみました。皆様、巻き込んでしまってスミマセン。
(レポート:河野正士)



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