ライダーたちのシーズンオフ 泥だらけになってロードでも速くなる!

文・写真──中村浩史
協力──ホンダモーターサイクルジャパン http://www.honda.co.jp/motor/

 モトGPも開幕し、いよいよレースシーズンもスタートしました。けれど全日本選手権ロードレースは、開幕が4/10筑波大会と、世界的に見てもちょっと遅めのスケジュール。これは、路面温度が上がらない寒い時期にむりやり開幕したって、お客さんに楽しいレースが見せられないじゃないか、ってことで決まったこと。3月下旬と4月上旬では気候もかなり違うから、これはこれでいい日程だと思います。

 このところの全日本といえば、11月から翌年3月までがほぼオフシーズン。ではこの時期、ライダーは何をやってるかと言うと、新しいシーズンへ向けての体制づくりのためにスポンサー回りをしたり、仕事を頑張ってシーズンを戦う資金を作ったり、がメイン。全日本選手権ライダーで、レースだけで生活している人って、まだまだほんの一握りですからね。
 もちろん、新しいシーズンに向けてのトレーニングも欠かせません。ロードレースの選手とはいえ、なかなかロードコースを走り込む機会もそう多くないってことで、この数年は、ロードレースのライダーたちもダートでトレーニングすることが増えています。モトクロスはジャンプが伴いますから、ロードレースとはちょっと違ったテクニック。やはりダートトレーニングと言えば、ダートトラックを選ぶライダーが増えてますね。

 とはいえ、アメリカで盛んな本家ダートトラックは、専用路面で、フロントブレーキなし、左回りコースをぐるぐる、が正式ルールですから、そこはロード用にアレンジして「TT」と呼ばれる右にも左にも曲がるコースを、フロントブレーキつきのマシンで走る、というスタイル。Youtubeなんかで探すとすぐ出てきますけど、バレンティーノ・ロッシもイタリアで自分の専用コースを作って、ライダー仲間を集めてトレーニングしていますね。
 日本のライダーとTTトレーニングといえば、アメリカのケニー・ロバーツさんちでの修行もおなじみ。ケニーランチで一日中、右に左にぐるぐるぐるぐると、ケニーさん自ら、日本のライダーを鍛えてくれるもので、毎年ではありませんが、高橋巧や津田拓也、生形秀之なんかが行っていたし、今年もMoto3レギュラーの鈴木竜生が行っていたはずです。

 そのノウハウを持ち帰ったか、日本にもTTコースがいくつかできつつあります。代表的なのが、埼玉県川越市にある「オフロードビレッジ」(通称オフビレ、またはオフビ)のTTコース。これは、オフビレのメインモトクロスコースとなりにあった、元は駐車場的な広場だったところを、オーナーの福本敏夫さん(1981年の全日本モトクロスチャンピオン!)が開放、造成してくれて、TTコースとしてくれているのです。
「ダートのトレーニングっていったって、左回りでブレーキなしで走るより、ロードのライダーはブレーキレバー付きで右にも左にも曲がった方が良いと思ってね。とにかくシーズンオフだろうが、レースの空き期間であろうが、とにかくいつもバイクに乗ってるのが一番。ホントはロードコース走るのが良いんだけどね、ダートでトレーニングするロードのライダーが増えてくれて、頼もしいね」と福本さん。福本さんご自身も時々走るんですが、これがめっぽう上手いし、速い! 全日本チャンピオンの腕は衰えていません!

 そして今回は、このオフビでトレーニングする、というライダーにくっついて密着取材。ライダーのシーズンオフのトレーニングを教えてもらいました。この日、参加したのは元GP250ワールドチャンピオン青山博一をはじめ、2015年ピレリカップチャンピオンの國川浩道、モトマップS-サプライの今野由寛、2015年全日本スーパーモト・ランキング3位の濱原颯道、2015年のスズキアジアンチャレンジに参加した齊藤魁、チームプラスワンからエリア選手権を走る福嶋佑斗といった錚々たるメンバー。ここに49歳になったばかりのライター中村が参加させてもらう、って……えぇ、邪魔しないように走りましたとも(笑)。

 みんなのトレーニングの特徴は、とにかくみっちり休みなく走り込むこと。僕なんか、5周で息もウデも上がりますが、ライダーのみんなはほっておくと1回30分くらいをめどに走り続けます。誰かがコースインすれば、それに誰かがついて行って、自然とバトルになる、ってスタイル。時にはマシンぶつけあったり、攻めすぎて転倒もしますが、そこはオフロードのいいところ、笑って済ませます(笑)。転ぶまで攻めて、きちんとプロテクターしておけば大けがしない、っていうのもダートトレーニングのいいところでしょう。
 マシンはXR100/CRF100で、國川はCR80改85を持ち込んで走り込みもしていました。ライダーみんな、トレーニング用に100ccクラスのオフ車を持っているケースが増えているんだそうです。そうそう、私も編集部にあったCRF125を持ち込みましたが、いやぁ空冷単気筒125ccが、こんなにモンスターバイクだなんて思いませんでした! ぜんぜん思った通りにコントロールできないもん。

「ダートのトレーニングを始めたのは、この3~4年ですね。ダートのメリットは、いつもバイクに乗ってる勘をキープするのと、タイヤのすべる感覚を体で覚えることですかね。あとはブレーキングはロードレースにも直で役立つと思います」と國川。彼は、4月はじめにスペイン・アラゴンで行われるワールドスーパースポーツに、2015年のピレリカップチャンピオンとしての招待参加が決まっていますから、直前までのトレーニングに余念がない、って感じでしょうか。「出るからにはなんかツメ痕残してきます」って燃えてます。

 実際、僕も35歳も下の齊藤カイに教わりながら(笑)、参加させてもらったんですが、僕なんかだとまず、泥の上でフロントブレーキかけるなんてことが信じられないもんね。だって転ぶじゃん!(笑)。まっすぐの状態でブレーキかけたってズルッ! バンクさせてもフロントタイヤ切れてばたん、立ち上がりでアクセル開けてジャーッ。ま、転ぶまで攻めるまでがまず大変なんだけれど、1回でもちゃんと減速できたり、クルッと回れたり、立ち上がりでスライドうまく収まると、た~のしぃんだよねぇ!(笑)。これって、なにかに似てるな、と思ったら、サーキットで初めてヒザ擦れたときの感覚に近い! ひとコーナーごとにテーマ持って挑戦して、失敗して、時々成功して、っていう、気持ちのいいスポーツでした、ダートトラック♪

 ちなみに都心から一番近いオフロードコース(だと思う)であるオフビレは、まる1日走って4000円! 半日は3000円、女子と小学生は1日3000円で半日2500円です。レンタルもあって、CRF100だったら、ウエア&ヘルメットなどの装具込みで男性1日15000円です。まる1日へろへろになるまで遊べるんだから、高くはないな、って思います。詳細はhttp://www.westpoint.co.jp/へどーぞ。

「あと大事なことは、1回だけじゃなくて、何度か通って体に覚え込ませることな」って福本さん。う、見抜かれてる(笑)。またお邪魔しに来ます!



CRF125
僕が持ち込んだホンダCRF125。F19/R16のフルサイズで、CRF100の後継モデルと言えるコンペ用マシン。何度も転ぶ僕には、セル付きが本当にありがたかった(笑) 価格:30万7800円(受注生産モデル)


すぐバトル勃発!


すぐバトル勃発!


すぐバトル勃発!
誰かが走り始めると、そこに誰かが加わってすぐバトル勃発! しかし、元ワールドチャンピオン、ヒロシの速いこと! 速いライダーはオンでもオフでも速いってことだね!


走りの合間


走りの合間
走りの合間には、アドバイスし合ったり、次のバトルのルール決めたり(笑)。


ヒロシ
この日、ヒロシしばらく整備しっぱなし。愛車CRF100の燃料系がおかしかったらしいです。マシン酷使しすぎなんじゃ(笑)。


青山博一


國川浩道
青山博一 ご存じ、元GPライダー、元ワールドチャンピオン。現在はHRCのテストライダーで、現役時代以上に走り込んでいるそう。その走り、一切衰えず!※写真をクリック! 國川浩道 2015ピレリカップチャンピオン。16年はまず、ワールドスーパースポーツ・アラゴン大会に招待参戦が一大事。WSSへの継続参戦、叶うといいなぁ!※写真をクリック!


今野由寛


齊藤 魁
今野由寛 モトマップSサプライから全日本JSBクラスに参戦する今野。今年の鈴鹿8耐には青木宣篤、ジョシュ・ウォーターズとトリオを組んで参戦します!※写真をクリック! 齊藤 魁 2015スズキアジアンチャレンジに参戦していたカイ。NSF100トロフィ、アジアンチャレンジ、そして今年はCBRカップやJP250へ参戦予定!


濱原颯道


福嶋佑斗
濱原颯道 モタードのトップランカーにしてロードレースも速いソードーは、2016年には鈴鹿8耐にチャレンジ予定! いよいよロードレースに本格参戦!※写真をクリック! 福嶋佑斗 チームプラスワンに所属するユウト。筑波選手権開幕戦はマシントラブルだったのかな、リタイヤしちゃったけど、もてぎ選手権開幕戦は2位に入りました!


中村浩史


中村浩史
筆者:中村浩史です 49歳になりました。オフは未経験ではないけれど、ブレーキひとつコワイです。バックプロテクターと両ひじ、両ひざプロテクターは必需品だね(笑)。※写真をクリックすると違う画像が現れます。