11月11日──エンセナダのホテルを出発しプレランをするために南に移動する。この日が初走行となるKTM350XCF-W。走行前(汚れる前に)に記念撮影をする。

 今日から数日間にわたって行うプレランは、レースコースの下見をするプラクティスのようなもの。今回、2台のバイクに2名ずつが組み、レースを走る。そのため、レースコースにサポートがアクセスしやすい場所でライダーを交代することにする。そのポイントを確認するなど、チームにとって作戦準備行動ともいえるのがプレランなのだ。

 もちろん、バハの道、レースの距離感、スピード感を自分に慣らしていく大切なプロセスでもある。でも一番の楽しみは、レース中はイッキに走るコースを楽しみながら走れること。

 僕はこのプレランが最高のツーリングだと思う。バハのコースは主催者によってコースマークがつけられているから、迷う心配がほとんどない。そして牧場など私有地を抜けることもあるから、この期間中限定のルートだって少なくない。だからとっても楽しみなのだ。

 この日、プレランを2つのエリアに分けて行った。まずバイクの調子を見るための短い区間。そしてクルマに積み移動をして2つ目は、全体の中間地点から南に向かう区間。合わせて125マイルほど。後半の部分ではヘッドライトのテストも兼ねているから、日暮れから日没後に初日を終える計算だ。

この日からサンフェリーペというコルテス湾側の町に4泊。ホテル到着後、駐車場でバイクのメンテナンスを開始。アメリカのホームセンターで入手した園芸用の噴霧器でバイクの汚れを落とす。これ、簡易洗車機として大活躍。

さあ、バイクが綺麗なウチに記念撮影を! エンセナダから約30マイル移動してきたオホスネグロスという町の外れからプレランを開始する。 さあ、11年ぶりのバハへの挑戦がこうして始まった。プレランだけど気持ちは引き締まるし、嬉しくて踊り出しそうな気分になる。

 11月12日──ホテルの駐車場に折りたたみ式の机を出し、サンドイッチを作って朝食をすませる。食事に関して戸井さんはきめ細やかに買い物をしてくれている。ありがたい。

 プレラン二日目はサンフェリーペの町から13マイルほど北上。舗装路からレースコースにアクセスするダートロードでバイクをクルマから下ろす。今日は快晴。参加者達が同じようにアクセスルートから15マイルほど先のレースコースに入って行く。この日は再びサンフェリーペに戻るルートを走る。昨日の続きで南に向かう大きなループを回ってくるのだ。途中、燃料補給のためにサンフェリーペの町から20マイルほど悪路を入った場所をサポートは目指す。レンタカーの2駆のバン。ギャップじゃ跳ねるし、速度を落とすと砂の道にスタックしそうになる。午後3時、そのポイントにライダー達が戻ってくる。想像以上に荒れたコースに体力を使い疲れている。まだ二日目。バイクを乗せてホテルに戻る。帰りはもっと早く舗装路にアクセスできる道を進む。短いけど、もっと荒れていた(汗)。

サンフェリーペから13マイルほど北上。国道からダートの道に入る。この先、15マイルほど入るとレースコースがある。バンで揺られていくよりバイクを下ろして自走してもらった方が断然速い。半マイルほど舗装から入り、バイクを下ろす。2人は飛ぶようにして走って行く。楽しそうだ。 2台の排気音が入り乱れ荒野の風に消えて行く。ホント、そうでした。

 11月13日──昨日、本当はもう少し走る予定だったコースを朝イチからプレラン。夜明けとともにホテルを出発。昨日苦労して舗装路に出た場所でバイクを下ろす。ライダーは今日も飛ぶように走り出す。午前7時。まだ低い太陽が照らす長い陰を率いて走るバイク。ここから3時間。2人とサポートチームは、10時過ぎにサンフェリーペの町外れにある合流地点で予定通り再会した。昨日のルートよりも今日のルートの方が比較的楽だったという。

 この日は引き続きプレランを続行。レースコースガイドに“ダンプロード”と名付けられた砂の引き締まった道をサンフェリーペの町を背に走り出す。この先の道には文字通り、ゴミ捨て場があった。そこまで快適なダートだったが(ちょっと臭さかったけど)、その先からウォッシュボードの連続がまっていた。“パワーラインロード”と呼ばれる電柱沿いのその道は、延々とウォッシュボードなのだ。ついついギャップが少ない方の轍を選ぶが、知らぬ間にコースから外れることも。コースの目印はサボテンや木などに吊されたオレンジ色のテープ。コレを頼りに走る。

 この日、通称トレス・ポソスと呼ばれるカフェまでをプレラン。バイクはどのライダーからも好評。走りやすい、乗りやすい、疲れない、戸井さんも「転びそうな場面でしっかり立ち直ってくれるね。転ばせてくれないよ(笑)。楽だね」とご機嫌。

早朝、プレランのためにコースに入って行く2人。オフに放たれた瞬間、走る楽しさがにじみ出る感じが見ていても伝わってくる。 トレス・ポソスという名称でお馴染みの場所までプレランをした。“三本のポール”を意味するこの地名の由来がこれ。かつてはこの場所にガソリンスタンドがあった。以前からあるティピカルなレストランというかカフェは今も営業中。チョリソと卵の炒め物とトルティーヤで遅めのランチ。サルサを掛けて食べる。乾いた空気のせいか、ペプシがやたら旨い。
コースマーク同様、レースコースには5マイルおきにマイルマーカーが設置されている。435マイル地点、つまりスタートから696キロ走ったことを伝えている。今回は710マイル(1135キロ)だったので、残すは275マイル。近いような遠いような……。 ちなみにそのコースマークを裏から見るとこうなります。何となくグリーンのサインでこれはこれであり? と思うかもしれないが、WRONG WAYを意味するWが。そう、ミスコース、逆走するとこのように見える。グリーンですが、「間違えてます!」というメッセージを発している。オレンジ、グリーンとも蛍光色で昼間はもちろん、夜も目立つ。砂漠には両方とも無い色だ。 ネコとすぐに仲良くなる戸井さん。