2017 NEW YEAR MODEL Press Launch & Testride in Hokkaido

ハーレーダビッドソンジャパン
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ALL NEW MILWAUKEE-EIGHT

 2017年ハーレーダビッドソンの最もエキサイティングで注目するニュースは、なんと言っても新エンジン、「ミルウォーキーエイト」のデビューである。OHV の45°Vツインという今のハーレーエンジンの基本構成は1936年のナックルヘッドから継承されてきたものの、今回のミルウォーキーエイトはハーレーの歴史に名を刻む大きな変更が加えられた、いい意味で現代的な高性能エンジンだ。
 膨大なテスト期間をかけて開発されたこのエンジンは、ハーレーも「今まで以上にパワフルで、冷却効率が高く、滑らかで、力強く、屈強な新エンジン」とそのパフォーマンスを高らかに謳う。(Vロッド系を除いて)初の4バルブを採用し、ツインプラグも新たに導入することで高効率を追求。圧縮比を高めたこともあり10%のトルクアップを果たし強力で滑らかな加速を実現している。また新しいシングルバランサーを採用したことで振動を75%カット。25%はあえて残しながら、ラバーマウントエンジンとすることで適度なバイブレーションを楽しみながら快適なライディングを演出している。
 発表時に耳に残ったキーワードは「ハーレーがなくしていた魅力を、このエンジンは取り戻した」というもの。近年の排出ガス規制や騒音規制でハーレーに限らず内燃機エンジンはみな規制に対応しながらフィーリングも演出することに苦労しているのはわかっていたが、ハーレー側から「なくしていた魅力」と言われると改めて聞きたくなり「なくしていたものは何ですか?」と質問してみた。返答はなんと「ショベルの頃の魅力」ということ。ショベルヘッドエンジンと言えば、ツインカム、エボリューション、の、その前。1966年~1984年まで使われた名エンジンだ。
 ミルウォーキーエイトでは4バルブやツインプラグといったハイテク化を進めた一方で、バルブ駆動をツインカムからシングルカムに戻すなどフィーリングの面も決しておざなりにはしていない。こういったアプローチからアイドリング回転数はわずか850RPMに設定することができ、ハーレーの魅力で語られることの多かった「3拍子のアイドリング」を追求。またそこからクラッチを繋いだ時のツットンツットコとついてくる感覚も、確かにいい意味でどこか古臭さというか、かつてのハーレーのテイストを感じることができる。
 そのテイストがショベルの魅力と共通のものかどうかは経験値が足らずに判断しかねるが、しかし近年感じていた規制対応に苦慮したように思えるエンジン特性からは完全に脱したような印象があり、ハイテク化により現代の事情に対応しながら逆によりハーレーらしさを取り戻した、というように理解、及び試乗後には納得することができた。

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ダイナファミリーはより大きなエンジンを獲得

 新型ミルウォーキーエイトエンジンに注目が集まるが、もう一つの歓迎すべき変化はダイナファミリーの新エンジンだ。ミルウォーキーエイトエンジンはツーリングファミリーを中心に採用されておりダイナファミリーには大きな変化はないかと思われたが、しかし実はこれまでのツインカム96エンジンからツインカム103エンジンへとチェンジされており、排気量は1689ccへと拡大。こちらは新設計エンジンというわけではないが、モデルチェンジを機にリファインされているようでメカニカルノイズやフリクション感が減ったような印象がある。
 発表時にエンジン排気量を指して「大きいことは良いことだ」とアナウンスがあった通り、コンパクトな車体によりパワーに余裕のあるエンジンが搭載されたことでダイナはさらに魅力が深まった印象。今回の試乗にはハンドルの高いストリートボブ及びハンドルの低いローライダーが用意された。


「商品」と「体験」を切り離せないブランド

 2017年モデルのプレスローンチは北海道で2日間にわたって行われた。網走や知床といった道東エリアの気持ちの良い直線路やワインディングといった最高のツーリング環境が用意されたわけだが、わざわざ北海道で行うその理由は? 「ハーレーダビッドソンというブランドは商品(プロダクト)だけでは語れない。体験(エクスペリエンス)とセットとなってその魅力が倍増するのだ」とはハーレーダビッドソンジャパン社長のスチュワートさんの言葉だ。
 味見するだけでなく、ハーレーの魅力を肌で十分に吸収するには北海道のような環境が理想的であるというわけであり、2日間にわたってたっぷりとした試乗コースが用意された。贅沢にも感じる「体験」ではあるが、ハーレーに限らずそのバイクの持つ特性が最も活きる場面で試乗するのは大切なことであり、ハーレージャパンの計らいに感謝である。

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9種類13台の2017ハーレーを存分に味わった2日間

 新型エンジンミルウォーキーエイトを搭載するモデルを中心に、今回の試乗に用意された2017ハーレーラインナップは合計13台(9種類)。ハーレーは細かな仕様違いで名前が別れているため大まかに説明するが、まずはどれもミルウォーキーエイトエンジンを搭載するツーリングファミリーから。ハンドルマウントの大きなフェアリングと左右のサドルバッグ(ハードケース)がついたストリートグライド。シャークノーズフェアリングと呼ばれる特徴的なカウルがフレームマウントされているロードグライドスペシャルと、それに大型スクリーンとトップボックスなどがついたロードグライドウルトラ。ロードグライドウルトラと似た仕様ながらフェアリングがハンドルマウントのウルトラリミテッドと、そのローダウンバージョンであるウルトラリミテッドロー。よりクラシカルな雰囲気の大きなスクリーンが装着されフェアリングはないロードキング。ここまでが新たなミルウォーキーエイトエンジンを搭載するツーリングファミリーだ。
 このほかに新たにツインカム103エンジンを搭載したダイナファミリーからは、アップハンドルのストリートボブとローハンドルのローライダーの2台。そして異色だが注目したいフリーウィーラー(トライク)もミルウォーキーエイトエンジンを搭載して用意された。
 試乗はこれらモデルを自由に乗り換えながら雄大な北海道の大地を満喫しつつ、ハーレーダビッドソンの「商品」を理想的な環境で十分に「体験」する機会となった。

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フリーウィーラーにハマる

 ここまであまり触れてこなかったが、今回の試乗で最も笑顔になったのはトライクの「フリーウィーラー」だったように思う。トライクは時として少し神経質であったり運転に気を使ったりする場面があることもあるため二の足を踏む人もいるが、しかしハーレー純正で用意されたこのトライクは完成度が高く非常に楽しい。
 停車時に足を付かないことや、コーナーでバンクさせないこと、ハンドルは力を入れずに手を添えるのではなく積極的に前後に押し引きしてコントロールするなど、バイクから乗り換えると頭を切り替えなければいけないこともあるが、走り出してしまえば安定感がありパワフルで機敏だ。大きく車重もあるが、パワフルなミルウォーキーエイトエンジンのおかげで動力性能に不満を覚えることはなく、むしろ3輪であるが故の安定感で重さを感じさせない。発進でもふらつきなどとは無縁で遠慮なくクラッチをズバッと繋ぎアクセルをガバッと開けられるため、停止状態から加速するたびにまるでドラッグレース気分だ。レーンチェンジも機敏にこなし、巨体からは考えにくいミズスマシのような軽快で高い機動力を持っている。
 コーナリングが苦手かと言えばそんなこともなく、曲がりたい方向のハンドルを手前に引き、逆側のハンドルを奥に押せばとてもクイックに向きを変える。知床の峠道に差し掛かった時には「頑張りすぎてはひっくり返るのではないか」とトライクならではの不安もあったが、実際にワインディングを走っているとどっしりとした安定感がありそんな不安は解消。バンク角に制限のある2輪と同等以上のペースで走り抜けることができた。
 この乗り物が4輪免許で乗れるというのはとてもありがたいこと。しっかりとハーレーらしさが味わえるだけでなく、2輪のハーレー仲間と走っても決して引けを取らないばかりか、注目度という意味では1枚も2枚も上手でとても気持ちが良い。今回のプレスローンチの中で一番笑顔が出たのはこのフリーウィーラーだろう。臆することなく味わえるハーレーらしさと、2輪にはない独自の操作性などとても楽しめたモデルだ。

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巨体を軽々と引っ張る新エンジン

 フリーウィーラーの印象が強かったため先に書いてしまったが、2017のメインとなるのはミルウォーキーエイトエンジンを搭載したツーリングファミリーだ。今回は6機種10台が用意され存分に試乗することができた。
 車種の紹介のところにも書いたが、ツーリングファミリーはボックスの有無やカウリング点数の増減およびデザインなどが主な相違点であり、購入する人は見た目の好みや積載予定の荷物の量やタンデムの予定などで選ぶことだろう。もちろん、オーディオシステムがつくウルトラ系やグリップヒーターの存在なども重要な選択基準となるはずだ。しかし乗り比べるとどれもどっしりとした車格に素直なハンドリング、快適な巡航性という意味ではとても似た印象であり、長距離を快適に走るという意味では「ツーリングファミリー」の名に恥じるようなモデルは一つもない。
 あえて違いを挙げるならばフェアリングのマウント方法だ。大きなフェアリングがハンドルにマウントされているかフレームマウントとなっているかによってハンドリングは確かに違う。しかしその差はツーリングファミリー全体が持つ共通の魅力の多さに比べれば些細なことであり、今回のように直接乗り比べなければ明確に気づける差ではないように感じるし、サスペンションの設定やタイヤ銘柄で起きる変化と大きくは変わらないという印象であった。あえて取り回しやハンドリングの好みを挙げるとすれば、個人的にはウルトラリミテッドローだろうか。いかにもツーリングファミリーらしい堂々としたプレゼンスと十分な積載性、快適なタンデム性を確保しながら、ローダウン仕様とすることでより安定感が増しているように感じた。
 車体の差異は少しに感じたが、どれも重たいツーリングファミリーを強力に引っ張っていくミルウォーキーエイトエンジンはどの車体においても素晴らしい働きを見せる。一言で言うならば良い意味で「洗練された」エンジンは低回転域がパワフルなだけでなく、アクセル操作に対する忠実さや回転数の上昇・下降などが非常にスムーズで素直。さらにメカニカルノイズは確実に少なくなっておりフリクション感もとても少ない。発熱もエギゾーストパイプの取り回しを見直すなどして、ライダーに感じさせない工夫がされているためとても快適だ。
 また特筆すべきは高回転域でのパワーだ。低回転域や常用回転域でのリッチなフィーリングと十分なトルクに惚れてしまうが、しかしパワーバンドも明確に存在し、振動がスッとなくなりレッドゾーンまで驚くほどのパワーを発揮しながらビューンとストレスなくフケ切る。この領域はまさに4バルブ! というもので、しかもレブリミッターへの当たり方がマイルドでこの領域を使うことに全くストレスがない。このパワーを使えばツーリングファミリーの巨体も想像以上にキビキビと走らせることができ、その意外性には思わず笑顔が出てしまう。
 総じてとてもいい印象の新エンジンだが、「洗練された」と書くとハーレーのように歴史のあるメーカーにおいてはマイナスの印象を持つ人もいるかもしれない。しかし冒頭に書いた「失われた魅力を取り戻した」というのは試乗後には「全くその通りだ」と感じさせられた。近代の環境に合わせた抜本的な進化が必要だったのだろう、その結果ミルウォーキーエイトは各種規制対応に苦心していない、もしくは場合によってはスポイルされていない、ハーレーらしさを取り戻したとさえ感じさせてくれた。このエンジンがより軽量なモデルに搭載されればまた新しいハーレーの世界が開きそうだ、と今から楽しみである。

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アップハンドルが装着されているダイナ「ストリートボブ」は今回最も自分にマッチしているように感じ、本気で購入を検討したいほどである。 プレゼンで新型ミルウォーキーエイトエンジンについて話すハーレーダビッドソンジャパンのスチュアートさん。


BIG IS BETTER ダイナファミリーの魅力

 今回は2台しか用意されず立場的にはオマケ感のあったダイナだが、ここまでミルウォーキーエイトエンジンを褒め倒しておいて言うのも苦しいものの、個人的にはストリートボブが今回のラインナップで最も新鮮な楽しさを提供してくれた。巨体のツーリングファミリーばかり乗った後に乗るためその軽快さが楽しく感じてしまう部分もあるだろうが、しかしストリートボブのフィーリングは最高だったと言わざるを得ない。
 小さくて軽い車体は取り回しが容易で気軽に走りだせ、かつステップのポジションなどからも操作がしやすく低速からワインディングまで幅広くカバーできる。それでいて延々続く直線路では安定感が足りないなどということもなく、ツーリングファミリーのドッシリとした魅力とはまた違ったハーレーの楽しみ方を見せられた想いだ。
 新しく搭載された1689ccのエンジンがまたとてもいい印象なのだ。高回転域では4バルブのミルウォーキーエイトに敵わないものの、アイドリング+αの領域ではむしろこちらの方が潤沢なトルクがあるように感じられ、ズッダッダッダダダ……ズッダッダッダダダ、と各ギアで極低回転から開けていく楽しさがあった。これは車体の軽さによる部分も大いにある事だろうが、このトルクの出かたはとてもハーレーらしくて楽しめ、BIG IS BETTERの言葉をかみしめることとなった。
 ハンドルの低いローライダーも印象としては似ているのだが、ハンドルが低いことで操作はより積極的になるものの、気持ちはエンジンを楽しむことよりも車体の操作を楽しむ方へと向いてしまうような気がした。それももちろんよいのだが、より「ハーレーを楽しむ」という意味では、少なくともこの北海道の環境においてはストリートボブの方がリッチな体験ができたように思う。

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業界最若手にレコーダーを向ける業界の長老。「ダイナ、やたら良いよな!」とは共通の認識。 最終日の女満別空港にて。あまりに素晴らしい体験をさせていただき、思わずスタッフさんと固く握手。ありがとうございました。


2017、ハーレーデビューの年

 告白しておくが、筆者はこれまでハーレーを所有したことがない。さらにここ数年は各種規制対応の関係か、試乗する機会のあるハーレーの中には「?」の印象を持つものもあった。「これでは伝統的なフィーリングを表せていないんじゃないだろうか……」「さすがに基本設計が旧いんじゃないだろうか……」。失礼ながらそのように感じたこともあった。しかし今回の試乗はこれらの気持ちが一掃され、新型ミルウォーキーエイトエンジンも、排気量が拡大されたダイナも、そしてフリーウィーラーも、どれも心から楽しめ、個人的には2017年が「ハーレーが本気の購入候補になった」元年となりそうだ。
 ハーレーに興味のある人はもちろんのこと、古くからのハーレーファンで「最近のハーレーはね……」と思っていた人も、筆者のようにこれまで所有する候補にはなっていなかった人も、2017ラインナップはぜひとも試乗に足を運んでほしい。2017年、ハーレーの魅力が再構築された記念すべき年になるように思う。

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新エンジンを搭載するダイナは、ツーリングファミリーから乗り換えると軽快さも手伝ってとても楽しい。 新鮮な操作感と、普通免許で味わえる確かなハーレーエクスペリエンスですっかり気に入った「フリーウィーラー」。臆せず新型ミルウォーキーエイトエンジンのパワーを楽しめる。
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知床周辺は北海道らしい直線も素晴らしいワインディングも存在し、まさにツーリング天国。信号も少なく、ハーレーを楽しむにも最高の環境だった。


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