YAMAHA TRICITY 155 ABS試乗

グローバルモデルとして世界で販売、スポーティな走りと安定感を両立させたTRICITY 125に続き、”Leaning Multi Wheel”の第2弾として登場した「TRICITY 155」。高速道路での走行も考慮した車体やエンジンなどを引っ提げ、今、日本で販売台数が増えている150ccクラスでどのように受け止められるのか?

■撮影:依田 麗 ■問合せ:ヤマハ発動機 お客様相談室 TEL0120-090-819
http://www.yamaha-motor.co.jp/

 
LMW の安定感に加え、155は快適性、ユーティリティも向上

 
 2013年7月、ヤマハ発動機は「事業説明会」にて突如、「Leaning Multi Wheel(LMW)」 なる三輪コミューターを開発中であることを発表、同年秋に開催された東京モーターショーではコンセプトモデルを参考出品した。市販モデル「TRICITY 125」は、翌2014年4月よりタイ市場で、日本は9月から販売が開始され、その後ABSモデルや新色ボディなどが追加され、現在に至っているのはご承知の通り。
 
 新しいシティコミューターとしての役割を担って開発された TRICITY、日本では経済性などの面で大きなメリットをもつ原付二種(原二)クラスのバイクとして高い支持を得ている一方、二輪車に対し転倒リスクの不安を抱いている人々への支援にヤマハは力を入れている
 
 そんな TRICITYシリーズの新バリエーションとして30ccほどエンジン排気量をアップした「TRICITY 155」を2016年に発表。旧市街地などに石畳の路面が残る欧州の市場をターゲットとしたこのモデル、日本でも軽二輪車(126~250cc以下)として2017年1月20日より販売が開始されている。
 
 これまでの150ccクラスというイメージから想像すると、TRICITY 155は単なる125のスケールアップ版かと思いきや、新設計のフレームや装備面など、多くの部分で原二モデルから造りを変更。欧州や日本では自動車専用道路(高速道路)での走行を可能としているだけに、走りの質に対するこだわりが感じられる。ちなみに開発コンセプトは”もっと行動範囲を広げ、さらに所有感を満たすNew Standard City Commuter” としている。

28.jpg 30.jpg 32.jpg
TRICITYの155を市街地から郊外まで持ち出してみた。山道でパワー不足は感じず、リーンを駆使してコーナーを楽しむことができるなど、様々なシチュエーションでライダーの期待に応えてくれる。ちなみにTRICITYは三輪ですが、二輪車のスペースに駐車していいのでしょうか? もちろん、枠内には余裕で収まります。※以下、写真をクリックすると大きく、または違う写真を見ることができます。

 
 言うまでもなくTRICITYシリーズ最大の特徴は、 フロント二輪の独自の動きによる操縦フィールで二輪車のように車体を傾けて旋回する機能に安定感をプラスしているLMW機構。今回、最後に125モデルを乗ってから約2年ぶりのLMW体験となった。最初はフロントに備わるパラレログラムリンクと片持ちテレスコピックサスペンションという独自の機構により二輪車(スクーター)より若干重さを感じる。これも最初の取り回しの時だけで、走り出してしまうとあっという間に身体に馴染んでくるのは相変わらず。特別な操作は必要としない。全幅も同クラスの二輪車と変わらないので、細い道や駐車スペースも変わらない。ただ、フロントに車幅近くまで二本のタイヤが備わるため、縁石などがある場所での取り回しの際にタイヤが当たることだけ注意が必要だ。
 
 毎回TRICITYに乗るたびに思うのだが、どこまで車体をリーン(バンク)させていいのか、一般公道で探るのは難しい。ただし、荒れていたり滑りやすい路面での安心感は誰でも感じることができるだろう。濡れた路面で、場合によってはブレーキによるフロントロック→転倒という不安からの解放は大きな恩恵だ。TRICITY155にはABSを標準装備しており、μが低い路面でもバイク任せで制動力を最大限に引き出してくれる。

04.jpg
05.jpg 06.jpg
07.jpg 09.jpg 11.jpg 13.jpg
ライダーの身長は173cm。見た目にあまり違いは感じられないが、125とは異なる部分が多い155。マット調ボディカラーも155専用色。

 
 今回の155はヤマハが次世代高性能小型エンジンとして推し進めている”BLUE CORE”思想に基づくユニットを搭載。可変バルブシステムや4バルブヘッドを採用する水冷エンジンは、LMW機構の重量増があるものの同クラスの二輪車に対し互角以上のパフォーマンス。
 
 軽二輪車ということで自動車専用道路を走ってみたが、メーター読みで100km/h位まで引っ張ることはできた。都市部の郊外などにあるバイパス道路などでは特に問題はないが、いわゆる高規格の高速道路で周りの流れと同じ速度での巡行は他の150ccクラスのコミューター同様、少々厳しいかもしれない。ちなみにリアタイヤは1インチアップの13インチとなり、リアショックはツインチューブ式とするなど足周りをグレードアップ。高速走行時でも不安は感じられなかった。
 
 また155は快適性、ユーティリティも向上。125に対し新開発フレーム(ホイールベースが40mmほど長くなったが、フレームによるものかは不明)により、フットスペースは125に対し広くなり、シート下スペースも約3.5L容量アップを果たし、電源ソケットが備わる小物入れも新設となった。リアに専用のドラムブレーキが備わるパーキングブレーキも便利な装備だ。燃料タンク容量も125に対し0.6リットル増え、航続距離を伸ばしている。

15.jpg 16.jpg 18.jpg
155のフロント灯火類はポジションに加え、ヘッドランプもLED(ロー3灯、ハイ2灯)に。 トグルレバー式のパーキングブレーキも155専用装備。リアにはパーキングブレーキ用のドラムブレーキが備わる。 こちらも155専用装備となるフタ付の小物入れ。中にはDC電源ソケットも備わる。
19.jpg 20.jpg 21.jpg
フロント両輪それぞれにディスクブレーキを装着。155はABSを標準装備する。 高効率燃焼、高い冷却性、ロス低減を照準に開発した “BLUE CORE”の水冷155ccエンジンを搭載。 リアにもディスクブレーキを装備。155は125に対し1インチアップの13インチタイヤを履き、マフラーも跳ね上がる。
22.jpg 23.jpg 24.jpg
シート下の収納スペース容量は約23.5L。暗いときに便利なLED照明も備わる。 タンデムステップの形状も125とは異なる。 125と表皮が異なる大き目のシートは長時間の乗車でも疲れにくい。サイドカウルのデザインも155専用に。
25.jpg 26.jpg 27.jpg
パラレログラムリンクと左右それぞれ独立した片持ちテレスコピックサスからなるフロントのLMW機構。 時計、外気温計、2つのトリップが備わる液晶デジタルメーター。 街灯の少ない夜の山道を走行中、眩しく感じられたハイビームのインジケーターは要改善ポイント。

 
 125の時も思ったが、四季のあらゆる天候に遭遇する通勤ライダーにとって、TRICITYは路面変化に対し柔軟性をもつ恰好の乗り物と言えるだろう。加えて今回の155は、軽二輪登録による行動範囲の拡大で積極的に出かけたくなるような、通勤ライダーのみならずより多くのライダーに向けた乗り物に昇華。ツーリング先でもLMWの安心感とスポーティな走りを味わってもらいたい。
 
(報告:高橋二朗)

34.jpg
●TRICITY MW150A(TRICITY 155 ABS )主要諸元
 
■型式:2BK-SG37J ■全長×全幅×全高:1,980 ×750 ×1,210 mm■ホイールベース:1,350 mm■最低地上高:165 mm■シート高:780 mm■車両重量:165 kg■燃料消費率:43.4 km/L(国土交通省届出値 60km/h定地燃費値 2名乗車時)41.7 km/L(WMTCモード値 クラス2、サブクラス2-1  1名乗車時)■エンジン種類:水冷4ストロークSOHC 4バルブ単気筒■総排気量:155 cm3■ボア×ストローク:58.0 × 58.7 mm■圧縮比:10.5 ■最高出力:11 kW(15 PS)/8,000 rpm■最大トルク:14 N・m(1.4 kgf・m)/6,000 rpm■燃料供給:フューエルインジェクション■始動方式:セルフ式 ■点火方式 :TCI(トランジスタ式)■燃料タンク容量:7.2 L■変速機形式:Vベルト式無段変速/オートマチック ■タイヤ(前/後):90/80-14 M/C 43P /130/70-13M/C 57P ■ブレーキ(前/後):油圧式シングルディスク/油圧式シングルディスク■懸架方式(前/後):テレスコピック/ユニットスイング■フレーム形式:アンダーボーン■車体色:マットブラック 2(ブラック)、ホワイトメタリック 6(ホワイト)、マットビビッドパープリッシュブルーメタリック 1(ブルー)■メーカー希望小売価格(消費税8%込み):453,600円

| 新車プロファイル「TRICITY 155 ABS」のページへ |

| 『リーニング・マルチ・ホイール』第一弾 TRICITY MW125を試乗 |

| ヤマハのWEBサイトへ |