KTM 250DUKE試乗

■試乗&文:松井 勉 ■撮影:富樫秀明 ■協力:KTM JAPAN http://www.ktm.com/jp/

こちらの動画が見られない方、大きな画面で見たい方はYOU TUBEのWEBサイトで直接ご覧下さい。https://youtu.be/Rj1noO2Q884 KTMのスポーツモデル試乗会では恒例となった“メディア対抗レース”も開催された。常勝ミスター・バイク・チームは、今回ペアを組んだ松井/ノア組も…。YOU TUBEのWEBサイトで直接見るなら、こちら。https://youtu.be/P2q3dP3vSRY

 
このあたりまでだろう--、そう思わせておいてひと伸びするエンジン。パワーもトルクもなだらかに増え続ける。スムーズかつ振動の少ないエンジンがサーキットを遊び場に変える実力に、コンパクトな250の面白さを知る。

_TOG4917.jpg
_TOG4923.jpg _TOG4956.jpg _TOG4932.jpg _TOG4941.jpg
ライダーの身長は183cm。写真の上でクリックすると片足時→両足時、両足時→片足時の足着き性が見られます。

 
 本当は「健在!ホットハッチなKTMの魅力全開」的タイトルを390向けに考えてサーキット入りしたのだが、実際、125、250、390と乗ってみると、ホットハッチポジションは250こそそれに相応しい。

 ホットハッチってなんだ? という声が聞こえそうだが、ヨーロッパ発祥のコンパクトカーにパワフルなエンジン、引き締まったサスペンション、そしてスポーティーなパーツを奢ったクルマのことだ。初期型ゴルフのGTI が元祖、というのが定説だ。まあ、大人しいファミリーカーのアイコン、カローラ(のクーペ)にDOHC+2連ソレックスの2T-Gを載せ、オーバーフェンダーで武装したTE27レビンのような「元ネタ」あってのスポーツカー的比較級のようなものも、広義ではホットハッチだと私は思う。250デュークはそもそもスポーツネイキッドだから、飛躍した解釈かもしれない。
 でも、スモールデュークの中で間違いなくホットハッチ的良質なバランスを持っている。

 ポジションはシリーズ共通。シート高が30mm上がって、830mmとなったものの、シートの造りがよく、低くどっかり座る印象だった前作と足着き性は変わらない印象だ。しかし、ハンドル、ステップ、シートで造るポジションは、1290スーパーデュークRにも似た、前傾姿勢のやる気ポジションとなった。

 そして、シートとステップのクリアランスが変化した結果、前作のようなシートが前、ステップが後ろ、というどこかちぐはぐなポジションが是正されている。気持ちが良い。

 エンジン下だったマフラーエンドは、パイプとサイレンサーを装備してさらに後方に伸び、耳に届く刺激は少々減ったが、単気筒らしいサウンドは健在。そのエンジンは、スムーズで振動が少ない最新モードという印象は従来通り。良いフィーリングだ。
 

_TOG5277.jpg

 走り出す。ピットレーンを加速する。やっぱりトルク、パワーとも程よく、それでいて、国産モデルのような「こんなモンで充分でしょ?」という見切りがない。走り屋が造ったエンジンだ。加速とエンジン上昇の間にスキが無くエンジンの心地よさが高回転まで続く。とにかく小さな体躯が見せるダッシュ力に口元が緩む。つながりのよいギア比により、6速に入るまで加速力に減退が無い。このあたりがホットハッチ感覚なのだ。

 日本のバイクカルチャーにある250は価格が安く、入門編で、ビギナーが乗りやすく、維持費が安い……、というものを踏襲しながら、そんなこと知らない異文化の250として存在感がある。57万円という価格が安いのか高いのか。それは意中の国産他機種と比較してみて欲しい。

 ちなみに、KTMデュークは、WPサスペンション、ブレンボがプロデュースしインドで生産するブランド、バイブレ製のブレーキシステム、KTMが連綿とオフロードバイクの世界で培ってきた4スト単気筒技術が直球入魂されていると感心することしきりのエンジン。そして、軽量鋼管を使ったトレリスフレーム。これらコンパクトデュークシリーズのパッケージは、ロードスポーツの最小公約数としてもいいだろう。

 メーターパネルの中央に赤く光るシフトタイミングライトの存在意義がよくわかる。シフトタイミングだけ解れば、あとは感覚的に何回転とかあまり頓着する必要がない。このバイクのエンジンは何処までも扱いやすいフラットトルクだ。履いているタイヤも上質。グリップ感やハンドリングの手応え、そしてリーンしてゆく過程もこのバイクにマッチした特性だ。
 

_TOG5224.jpg

 ブレーキの性能とタッチはリッタースポーツバイク並、といったらホメ過ぎだけど、ブレーキを掛けた時、減速を受け止める車体の反応は上質なバランスをもっている。1コーナーに向けてのハードブレーキングでも、間合いを取るようなブレーキングでも、同様に扱いやすい。速度コントロールに自信が持てること。これはスポーツバイクにとってもっとも大切なファクターだ。

 コーナリングでの反応もコンパクトながら、安定感があり、小柄な体躯を忘れそうな安心感がある。もちろん、狙ったラインに載せるのが難しくなく、持てるパワーを存分に叩きつける面白さに40分以上あった試乗時間は、休む間もなく走り続けてしまった。

 前後の荷重バランスを変えてみようと、イニシャルプリロードを2段ほど掛けてみた。旋回時にGがかかって沈み込んでいたリアの車高が上がったことで、さらに寝かし込みに入りやすくなり、楽しくなった。

 ただし、リアタイヤの接地面がコーナリング中にぐりぐり路面に押しつけられるようなつま先立ち感がちょっと出てしまったが……。そんな変化も即解るってスゴイ! 取捨選択ができる。旋回初期の気持ち良さを採り、フルバンク時のヌメリ感はコチラで受け持つ、とかね。

 とにかく、6速全開まで思いのままに走れるパワフルさは病みつきになる。走り出す前、兄弟達のように、メーターがTFTじゃない、LEDライトはどうして着かない? という外枠からだけでは見えない本質をサーキットランでたっぷりと味わい、ホットハッチと呼びたくなるバイクをピットレーンに戻すのだった。
 
(試乗・文:松井 勉)
 

_TOG5324.jpg
_TOG4753.jpg _TOG4742.jpg _TOG4721.jpg
タンクのサイドパネルは2017年モデルから意匠を変更。斜め下に伸びやかかつ鋭く突きだした。タンクのキャラクターラインをそのまま前方に流す。 鋼管トレリスフレームにマウントされたエンジン。水冷DOHC4バルブ単気筒ユニットは、国産同種の単気筒よりも明らかにパンチがある。伸びやかな高回転、トルク感を伴って滑らかな低中速回転と、どの回転域でもつややか。また振動が少ないのも特徴。EXC-F等、オフロード系で高性能4ストを造っているメーカーらしいエンジン。日本市場に特化した排気量というのも嬉しい。
_TOG4747.jpg _TOG4758.jpg _TOG4764.jpg
DUKEシリーズでは250のみがハロゲンバルブを使用。ランニングライト部分は付加される。どこかスズメバチの強靱な顎のようにも見えるライトシェルもインパクト充分。高い位置にあるLEDウインカーが印象的。 2016年モデルと同様のメーターパネル。シフトライト付きが嬉しいのは、回転グラフバーの数字が小さいから。サーキットでは高回転の常用にストレスなし。シフトインジケーターがメーター中央上部に光る。ハードな走りではメーターを見ているより、エンジンのフィーリングを掴んで走るほうがこのバイクとの相性がよさそうだ。

_TOG4749.jpg _TOG4727.jpg _TOG4743.jpg
サブフレーム別体式となった2017年モデルのスモールデューク。シート形状は座面前部が細身に肩をシェイプした形状で足着き性良好。パッセンジャーシートは小ぶり。シートカウルの外皮面積は最小限。フレームを通す丸穴風意匠はカスタム的でグッと来る。

サテンブラックのボディーにステンレスのエンド。ヒートガードもステンレスと、パーツ一つ一つにクオリティーが感じられる。歯切れのよいサウンドも魅力的。 前輪は110/70ZR17。メッツラーM7RRを履く。フロントサスは、φ43mm径のインナーチューブを持つWP製倒立フォークを採用。コンプレッション、リバウンドのダンピングを左右のフォークで分けた造りで特性をしっかり出しやすい構造。フロントブレーキはφ300mmのディスクプレートに対向4ピストンキャリパーをラジアルマウントする。メーカーはバイブレ社。
_TOG4731.jpg _TOG4737.jpg _TOG4729.jpg
φ230 mmのディスクプレートと、フローティングマウントされた1ピストンキャリパーを備えたリアブレーキ周り。バイブレ製となる。リアタイヤはメッツラー製、150/60ZR17を履く。 スイングアームはコの字断面形状のもの。交差する薄肉のリブ、肉厚が変化するスイングアーム本体など、機能美を感じさせる造り。高い鋳造技術が感じられる。リアサスはイニシャルプリロード調整を新たに加えたWP製サスペンション。そのストローク量は150mmだ。 LEDを使ったテールランプ。まるでカスタムパーツに交換したかのような小ぶりなウインカー。こちらもLEDの成せる技。テールエンドのナンバープレートホルダーを兼ねるフェンダーも細身でシンプル。
_TOG4950.jpg
●KTM 250DUKE 主要諸元
■ホイールベース:1,357(±15.5)mm、最低地上高:185mm、シート高:830mm、乾燥重量:147kg■エンジン種類:水冷4ストローク単気筒、総排気量:248.8cm3、ボア×ストローク:72×61.1mm、最高出力:22kW(30hp)/9,000rpm、最大トルク:24Nm/7,250rpm、始動方式:セルフ式、点火方式:Bosch製EMS、燃料タンク容量:13.4L、変速機形式:常時噛合式6速リターン■フレーム形式:スチール製トレリスフレーム、キャスター角:65°、ブレーキ(前×後):φ300㎜油圧式シングルディスク × φ230mm油圧式シングルディスク、懸架方式(前×後):WP製倒立φ43㎜ × WP製モノショック
■メーカー希望小売価格 570,000円

| KTM ニュー・アドベンチャー試乗のページへ |

| KTM 125DUKE試乗のページへ |

| KTM JAPANのWEBサイトへ |