EICMA Report 01

今年もEICMA/ミラノショーの季節がやってきました。偶数年である今年は、10月上旬にドイツ・ケルンでINTERMOT/インターモトが開催されたので2ヶ月連続での欧州モーターサイクルショーの開催となりました。EICMAは11月7日(火)と8日(水)がプレスデー、9日(木)~11日(日)が一般公開となるのですが、昨年同様、4日(日)にドゥカティが、5日(月)にヤマハがEICMAとは別のミラノ市内の会場でプレスカンファレンスを開催しました。ということで、今年もワタクシ、ライターの河野正士が、イタリア・ミラノから5日から7日までのプレスカンファレンスの様子をお届けします! まずはドゥカティとヤマハから!

■レポート・撮影:河野正士

 

■Ducati ── パニガーレV4R、そして電動アシスト自転車・MIG-RRエンデユーロが登場!

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 さてさてドゥカティです。今年のプレスカンファレンスは、昨年同様、巨大なステージを持つTeatro Linear Ciak Milano(ティアトロ・リナー・チアク・ミラノ)で開催されました。11月に入り、ドゥカティのオフィシャルサイトやSNSでは、この“ドゥカティ・ワールド・プレミア”のライブストリーミングのお知らせがバンバン上がってましたので、見た方も居るかもしれません。まぁ、日本時間では早朝3時スタートだったので……DucatiのWEBサイトなどでは録画映像も見られるので、次のお休みの時などに、ぜひご覧ください。

 昨年はMotoGPやスーパーバイク世界選手権のドゥカティのファクトリーライダーが大挙して登壇し会場を沸かせたのですが、今年はMotoGP第18戦マレーシアGPと開催が重なったこと、またすでに来年の参戦体制が発表されチームを離れるライダーが多くいることもあり、ライダーの登場はなし。ただドゥカティMotoGPチームの監督/ジジ・ダッリーニャが登壇。そしてホルヘ・ロレンソ、アンドレア・ドビツィオーゾ、ダニロ・ペトルッチが衛星回線を繋いでインタビューに答えました。

■パニガーレV4R

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 お待ちかねのニューモデル発表ですが、注目はやはり「パニガーレV4R」ではないでしょうか。ドゥカティが2019年にスーパーバイク世界選手権を戦う、新型998ccのデスモセディチ・ストラダーレRエンジンを搭載するマシンです。この車両にはドゥカティのスーパーバイク選手権ファクトリーライダー/チャズ・デービスがライディングし登場しました。

 エンジンは、昨年発表した1103ccV4エンジンを搭載する「パニガーレV4S」の81mmボアはそのままに、5.1mm短くした48.1mmストロークを採用。エンジンのレブリミットは16500回転。ユーロ4をクリアし最高出力221hp/15250回転、最大トルク112Nm/11500回転を発揮。ミラーとナンバープレートホルダーを取り外し、レーシングエキゾーストを装着すると車重は165kgとなり、234hpを発揮。パワーウェイトレシオは1.42hp/kgになるそうです!! この数字、2003年のロリス・カピロッシがライディングしドゥカティにMotoGP初優勝をもたらした排気量990ccのデスモセディチGP03や、2007年にケーシー・ストーナーがドゥカティにMotoGPの年間タイトルをもたらした排気量800ccのデスモセディチGP07よりもハイパワーであるとも発表されました(GP07は201.4hpだったと!)。

 もうひとつのトピックスはボディデザインでしょう。彫りの深い二眼ヘッドライトはV4Sと同様ながら、スクリーン/ノーズ・フェアリング/スリットの入ったサイドカウルを新たにデザイン。またうわさ通り、ウイングも標準装備。それは2016年のMotoGPマシン/デスモセディチGP16に由来するそうで、会場ではその当時の写真もアップされましたが、それはサイドカウルに上下2つのウイングが装着されていて、その上段ウイングに酷似していました。

 これらカウル&ウイングにより最高速に影響を与えることなくウインドプロテクションを高め、ウイリーを抑えるとともに最高速付近やコーナリング時、さらにはブレーキング時の安定感を高めるそうです。なんと270km/h付近で、フロントに約30kgもの荷重をかけられるという数字まで発表されました。

 カンファレンス終了後もステージに上がることができず、車両を間近で見ることはできませんでしたが、その佇まいは何とも言えない雰囲気でした。

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■ムルティストラーダ950/950S

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 ムルティストラーダ950も新しくなりました。ボッシュ製6軸慣性測定ユニット(6D IMU)とコーナリングABSにくわえ、坂道発進をアシストするビークル・ホールド・コントロール(VHC)、油圧式クラッチを装備。さらに、軽量スイングアームと新設計アロイホイールも採用。アップグレードされたヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)も搭載しています。また新たに加わったSバージョンの「ムルティストラーダ950S」には、新型950をベースに電子制御のドゥカティ・スカイフック・サスペンション(DSS)EVO、ドゥカティ・クイック・シフト(DQS)、LEDヘッドライトに5インチTFTフルカラーディスプレイなども標準装備。

 950はムルティストラーダ・ファミリーの“もりそば”的な、素材の旨さを味わうモデルだと思っていたのですが、それが電子制御テクノロジーを装備し始めるとは……もはや電子制御テクノロジー装備が“素材”というマインドチェンジの旗印なのかもしれません。

■ハイパーモタード

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 エンジンは改良した937ccテスタストレッタ11°。ボッシュ製6軸慣性測定ユニット(6D IMU)とコーナーリングABSに加え、トラクションコントロールやウイリーコントロール、クイックシフトなども加えられました。またボディデザインやライディングポジションを変更。個人的なイメージとしては、いままでドゥカティの中でかなりやんちゃなデザインとパフォーマンス持つハイパーモタードが、やんちゃさはそのままに、経験と年齢を積み重ねてエレガントさと知性をプラスした“ちょい悪オヤジ”になった感じ(←表現がかなり古く、自分で言ってて恥ずかしい)です。

■ディアベル1260

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 7月にイタリア・ミサノで開催された「ドゥカティ・ワールド・ウィーク(WDW)」で、“ブラックボックス”と題してカメラやスマートフォン持ち込みNG&他言無用で限定公開されたのは、この「ディアベル1260」でした。エンジンにテストストレッタDVT1260エンジンを搭載。中低回転域でのトルクが格段にUPするDVT1260エンジンがディアベル用にセットアップされるわけですから、もう想像しただけで膝ガクガクものです。またデザインも進化。フロント周りのボリュームをUPし、逆にリア周りをスリムに。それによってXディアベルに近づいたかなぁ、というイメージです。

■MIG-RRエンデューロ

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 事前に発表があった電動アシスト自転車「MIG-RRエンデューロ/ミグRR」は、BMXのヨーロッパチャンピオンであり、ドゥカティとともにこの「MIG-RRエンデューロ」を開発したイタリアのTheoks Ebikes代表であるステファノ・ミグリニオーニがライディングしながら登場。近くで車両を見ることができなかったので、会場でじっくり見てきます。

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 続いて5日(月)に開催されたヤマハのプレスカンファレンスです。こちらもミラノ近郊の巨大なスタジオ/Super Sutudio+で開催されました。数年前にも一度、同じ場所でプレスカンファレンスが開催されました。

■YAMAHA ── 中長期戦略の鍵として3つのキーワードとは?

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 冒頭には、2018年1月1日からヤマハ発動機の代表取締役に就任した日高祥博氏が登壇。国際モーターサイクルショーで初のプレゼンテーションとなりました。そこで中長期戦略の鍵として3つのキーワードを挙げました。それが「LMW/リーニング・マルチ・ホイール」「ライフタイムリレーションシップ」「EV/エレクトリック・ビークル」でした。

 LMWについては、正確には“ホイールの数に関係なく、ヤマハらしくオープンマインドで研究開発を行い、パーソナルモビリティの世界を切り開いていく”と。その中で我々が見て触れられる現在進行形がLMWのトリシティやNIKENというわけです。後で紹介しますが、プレゼンテーションでは300ccスクーターのプロトタイプが発表されるなど、さらにモデル拡充が図られるのでは、と想像します。そうなると3輪を飛び越えて4輪も?なんて妄想も膨らみますね。

「ライフタイムリレーションシップ」の構築に関しては、ハイクオリティなプロダクトを介してあらゆる年齢/あらゆるカルチャー/あらゆるコミュニティーに対して、あらゆる方向から新しいライフスタイルの提案を行うと。その足がかりとなるのが今年5月発表した、横浜に開設するという「ヤマハモーターアドバンスドテクノロジーセンター」。そこではAIやロボティクス、ITの分野で先進技術を開発。新しい技術やそれを搭載したプロダクトを介して、新しいライフスタイルを構築するそうです。同時にあらゆる先進技術分野における技術者も育てると語っていました。

 EVに関しては、もう説明の必要がないですね。電動アシスト技術と切り離して、EVトライアルバイク/TY-Eコンセプトを例に解説するあたり、コミューターとファンビークルの両輪でEV分野に斬り込んでくるのでは?いや斬り込んで欲しいと感じました。

 ではでは、ヤマハのニューモデルを紹介していきましょう。

■3CT

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 いちおうプロトタイプという発表でしたが、もうコレで出せるんじゃないの?っていうクオリティです。LMW機構のほか、Tilt Lock Assistシステム/要は自立機能が付いているかと思います。女性ライダーがライドインした後、スタンドを立てずにバイクから離れたことから、駐停車時にボタン操作(か何か)でLMW機構をロックすることができ、そのまま自立する、というものです。またエンジンは300ccのブルーコア・エンジンを採用するそうです。

■XMAX IRON MAX

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 現在、欧州におけるヤマハの稼ぎ頭/XMAXのラグジュアリー版といった感じでしょうか。レザーパーツの採用やアルミ製フットレストカバーなど、さまざまな特別装備が特徴です。

■YZF-R25/R3

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 噂があった、Rシリーズの小排気量モデルがモデルチェンジです。「R125」は新デザインのボディ/LEDヘッドライト/新デルタボックスフレームと新しいディテールが続いたのですが、驚いたのはバリアブル・バルブシステムを搭載する新エンジンです。要するに可変バルブを意味しているのですが、それがどういった仕組みなのか、後でじっくり調べたいと思います。「R3」は新デザインと新しいKYB倒立フォークが主なトピックスでしょうか。

 またWSSに参戦するインドネシアのGalang Hendra Pratanaがライディングして登場したのは「R3 GYTR」仕様車。オーリンズ製サスペンションやアクラポビッチ製エキゾースト、ブレンボ製ブレーキディスク、GYTR製エンジンキットの組み込みなどレース・パッケージとなっています。これがなかなか格好良かったのです。

■NIKEN GT

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 やっぱり、コレ出しちゃいますよね的な、NIKENのツーリング仕様車です。プレゼンでは“4シーズンGTイクイップメント”と名付けたハイスクリーン/コンフォートシート/グリップヒーター+12Vアウトレット/25リッター・サイドケース/トップケース用ベース&タンデム用グリップ/メインスタンドというのが主な仕様。パニアケースが装着された後ろ姿は、迫力満点。顔周りもずいぶんと変わりました。

■XSR XTribute

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 その名前と見た目から、説明の必要はありませんね。1981年式XT500のトリビュート・モデルです。装着されているアクラポビッチ製エキゾーストシステムはオプションパーツだそうです。

■TENERE700

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 お待ちかねのテネレ700です。2年前のT7コンセプトから、じっくりと温め、満を持した感じ。昨年のプロトタイプから見た目も変わらず、サプライズこそないものの、やっと出たかという安堵感と、ポテンシャルやフィーリングに対する期待感でいっぱいです。この期待感、怖いですよ。皆の心の暖気ができちゃってますから。それを超える乗り味じゃないと、と思います。ライディングはヤマハのファクトリー・ラリーチームのエイドリアン・ファン・ビファレン。

■R1 GYTR

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 なんとR1/レース仕様車の限定モデルです。うーん、これには驚きました。これでがんがんレースに出ようと思う人は少ないだろうから、ユーザーはかなり限定されますが、世界には少なからずそういった熱いユーザーがいるということです。でも中身はヨダレもの。カラーはR1の20周年を記念した2018鈴鹿8耐スペシャル。GYTRのレーシングパーツ、オーリンズやブレンボ、アクラポビッチのレーシングパーツなどがたっぷり組み込まれ、しかも車両を組み上げるのはヤマハのオフィシャルレーシングチーム。いやー、すごい。ライディング担当したのは8耐でも勝利したマイケル・ファン・デル・マーク。

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 ということで、2日間/2社のカンファレンスをお届けしました。そして僕は今日からが、会場での本番取材です。うーん、すでに疲れてる気がしますが気のせい……だと思います。行ってきます!