う~む! 250ccのバイクにすることは決まったけれど。
中古車と新車、どっちがいいんだ?

 その後も色々なバイクに跨らせてもらいましたが、400ccは250ccと比べて重く、僕にはちょっと取り回しづらいように感じました。なにより僕はとにかくたくさん走って、バイクそのものに早く慣れたい! と思っていたので、最初の考え通り250ccにしようと落ち着きました。

 しかし、中古でも30万円くらいは当たり前で、正直“えっ!こんなに高いの!?”という感じでした。

:うーん、結構高いですね。ちょっときびしいかも(笑)。
店長:予算はどれくらいを考えてましたか?

:20万円くらいです。
店長:その辺りの価格の個体もありますが、状態のいいものはなかなか無いですね。たとえ20万円で買えたとしても、どこかに不具合が出た時に部品を買って交換という手間が、初めてバイクに乗る人にはちょっと面倒かもしれません。それに良い状態で価格の安いものはすぐに売れてしまうので、巡り会うのも大変です。自分の欲しいタイプがちょうどいいタイミングで出てくるとも限りませんから。あとはお父さんを説得できるかですね(笑)。

 チラッと父を見たのですが無言でした(笑)。これは相当バイトを頑張らないといけないなあ、なんてことを思いつつ階段を上がっていると、途中に気になるチラシが!

“据え置きクレジット”というもので、新車の一定額を予め最終回に据え置いて残りの金額を分割。これを使えば、自分の好きなバイクに新車で、しかも無理せず乗ることができる!

ドリーム店推奨の認定中古車をネットで見ることが出来る。各部の写真も数多く掲載されていて、そのバイクの状態を知ることが出来る。オンラインでつながっているから、他店の在庫を確認することも可能だ。

:やっぱり中古車より新車の方がいいですか?
店長:特に最初のバイクということであれば、正直なところ新車をオススメします。このローンだと3年後には売ることもできるので、その間にとにかくバイクに慣れて、自分の使い方にあったバイクをじっくり探すことができます。もちろんそのバイクが気に入った! ということであれば、長く大切に乗っていただければ幸いです。

:そもそも、バイクの中古と新車って、正直それほどの価格差はありませんよね?
店長:そうです。それにやっぱり新車というのは気持ちいいですよ! 自分が初めてそのバイクに乗るわけですから!

“とりあえず、安い中古FTRでも……”なんて気持ちで行ったのに、話を聞けば聞くほど迷ってしまい、その場で決めるなんてことなど到底できず、一旦家に帰って考えることに。

 悩みの元は「据え置きクレジット」。新車も選択肢に入ることが分かった途端、選べるバイクの種類が増えてしまったからだ。そこで思い出したのが、白畑店長が言ってくれた「自分の気に入ったバイクに乗りなさい」という一言。気に入ったものであれば愛着も湧き、大切に扱うだろうし何より走っていてたのしいとのこと。
 

カタログを熱心に見る。“バイク選び”の楽しい時間が過ぎる。

カタログを熱心に見る。“バイク選び”の楽しい時間が過ぎる。

カタログを熱心に見る。“バイク選び”の楽しい時間が過ぎる。

 最後まで迷ったのはスポーツタイプのCBR250RとVTR250でした。元々スポーツタイプには憧れがあり、お店で初めて実車を見たときに“ああ、かっこいいなあ”と素直に思ったからです。しかし、CBRは自分には少し前傾姿勢がキツすぎるような気がして、一方VTRに跨ったときの“これだ!”という感覚が忘れられませんでした。
 そして僕はいま、VTRを購入したいと思っています。最初のFTRは何処へ行ったのやら……(笑)。ショップに足を運び、実車を見たり説明を聞くことの大切さを、身をもって痛感しました。

 単気筒と2気筒の違いや据え置きクレジットの事も、ショップに行かなかったら知らないままだったわけで。それに、たとえ試乗はできなくても、跨ってみるだけでも、バイクというのはどんな感じかが、分かるものなんですね。まったく眼中になかったVTRに一目惚れ……なんてことも、跨ってみたからこそでした。

2階にはヘルメットやウエア、ライディングギアが数多く揃えられている。バイクを手に入れたら、やっぱりちゃんとした用品を買わなくっちゃだなぁ……。

 

 ショップには大型バイクも飾ってありました。それを見て、将来は絶対に大型バイクに乗ってやる! という気持ちにもなりました。白畑店長に言われた「自分の気に入ったバイクに乗りなさい!」という言葉が、いまでも妙に心に残っています。

“これでバイクに乗れる!”という実感が少しずつ増してきて嬉しくなってきたのと同時に、不安も大きくなってきました。果たして公道でもちゃんと走れるのか、スムーズな車線変更とか難しそうだし、エンストしちゃったらどうしよう……。

 とにかくたくさん乗って、早く“ライダー”と自信を持って言えるようになりたいです!
(文・“息子”渡辺志門)

 

息子が「バイクを買いたい!」と言っている。
父としてできることは?

1976年(昭和51年)創刊した月刊『ミスター・バイク』の初代編集長である渡辺靖彰。“ボス”と呼ばれていた。モータージャーナリストでもあったし、『ザ・モーターウイークリー』というラジオ番組ではメイン・パーソナリティでもあった。2002年11月11日没。

1976年(昭和51年)創刊した月刊『ミスター・バイク』の初代編集長である渡辺靖彰。“ボス”と呼ばれていた。モータージャーナリストでもあったし、『ザ・モーターウイークリー』というラジオ番組ではメイン・パーソナリティでもあった。2002年11月11日没。

 息子がバイクを購入することになった。

 さて、困ったものである。職業柄、クルマのことならそれが中古車だってたいていのことは分かる。国産車の10万km以上はヤバイけれど、メルセデスなら大丈夫とか、○○は電装系が弱く、○○は燃料系に金がかかるなど。ところがバイクに関しては完全なるド素人である。特に中古車の場合、何km以上がいわゆる過走行なのかとか、新車からの経年変化の許容範囲など、まったく知識がない。知識がないのに知ったかぶりをして、結局後で大恥をかくことだけは、父親としてどうしても避けたいところである。そこで、ミスター・バイクではお馴染みの濱矢文夫さんを紹介していただき、バイク購入のあれこれについて伺った。

「初めてバイクに乗る方へ、お薦めの車種というのは正直言ってありません(笑)。オフロードタイプのほうが運転しやすい、スクーターなら荷物も積める、2ストの250ccは避けたほうがいい、というようなアドバイスは出来ますが、基本的には欲しいと思ったものを購入すればいいと思います」

 どうやら、バイク選びはクルマ以上に自分の気持ちを優先してもいいようだ。

 そうはいっても初めて乗るバイクだし、どうせ倒したり転んだりするだろうし、何より予算の問題もあるので、我が家では中古車を購入することが当たり前というか、自動的に決まっていた。そこで息子が目を付けたのがホンダFTRである。実はBOSS渡辺靖彰が最後に乗っていたバイクがFTRで、息子はその後ろに乗せてもらった経験がある。BOSS亡き後も、FTRは実家のガレージにしばらく置いてあり、自分もたまに乗ったりしていた。いつの間にか息子にとってはバイク=FTRとなり、偶然にもFTRは乗りやすく排気量も250cc以下で価格も手ごろだったので、「FTRがいい」という結論に至ったようだ。BOSSがもしドゥカやBMWやアグスタあたりに乗っていたらと思うと、ちょっと怖い。子供というのは、幼い頃の実体験がその後の生活や判断に大きく影響するということを、あらためて実感した。

 FTRの中古車だと、ネットで検索すれば20万円前後で見つかる。しかしそもそも、最初のバイクは中古でも大丈夫なのだろうか。

「正直なところ、中古のバイクはクルマ以上に安かろう悪かろうです。安いものには安い理由がある。外見はきれいなのに中身はボロボロ、なんて中古バイクも少なくありません。バイクは転倒しますよね。事故車は転倒傷の場所や具合で状態を見極めるのですが、ショップによっては転倒傷を塗装して隠してしまうところもあります。バイクに詳しい人であれば、なんとなくオカシイのは分かるし、買ってからトラブルがあっても対処できるでしょうが、初心者だとそれも難しい。そうなると、中古車ならメーカーの認定中古車がお薦めです」

 確かにおっしゃる通りである。クルマの場合でも、あまり詳しくない人には認定中古車を薦める場合が多い。個体のヒストリーが把握されているし保証もある。バイクも同じだった。

 しかし、クルマと違うところがある。それは価格である。認定中古バイクの価格と新車の価格を比べてみると、250ccクラスだと車種によってはその差が数万円なんてこともある。クルマの認定中古車も確かに割高だが、新車との価格差が数万円ということはまずあり得ない。あとちょっとどうにかすれば新車が手に入るとなると、バイクの場合は射程範囲内に新車も入ってくる。さらにいまではバイクにも、クルマと同じような残価設定ローンがあることも教えていただいた。これを使えば月々数千円の支払いが可能となり、息子のバイト代でもどうにかなる。

 自分は自らバイクを買ったことがない。BOSSがスズキΓを新車で購入し、それを使っていたからだ。当時はRZやVTなどが大ブームとなり「250cc戦争」と揶揄されるような時代だった。そんな時に新車のΓを乗り回していたものだから、友達にはずいぶんとうらやましがられた。でも、いまだから言うけれど、実はΓよりもVTのほうが好きだったし、身銭を切っていないから愛着が湧かなかった。「自分もバイク代は払わなかったのだから、息子にも同じように……」とも一瞬思ったが、今回は新車の残価設定ローンを使い彼に頑張ってもらうことにした。でも保険代くらいは肩代わりしてあげても、親バカとは言われないですよね。(文・“父”渡辺慎太郎)



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