ブースカのスズキVストローム250 ABSサマーツーリング クォーターをなめんなよ! 令和元年(=ゼロ)記念 1泊2日福島県ひと筆書き一周ツーリング パート3:ツーリング2日目(猪苗代湖→相馬→いわき→白河)

●文&撮影—毛野ブースカ
●撮影協力—玉井久義
●取材協力─スズキ http://www1.suzuki.co.jp/motor/

 スズキVストローム250で行く1泊2日福島県ひと筆書き一周ツーリング2日目。夜半は少し雨が降っていたようだが、朝になると上がっていた。今回宿泊した宿は猪苗代湖より少し山側を走る県道7号線から少し入った別荘区域にある「プチホテルあいづ天鏡台温泉」。もともとはペンションだったらしいのだが、現在はオーナーが替わり、ホテルとして経営しているという。内部の造りはペンションそのものなので、通された角部屋はとてもお洒落で過しやすい。晴れた夏の日だったらもっと清々しい朝を迎えられるだろう。
 体調は微妙なまま朝食を食べて(旅行サイトの情報欄には「簡単な朝食」と書いてあったが、ボリュームのあるメニューだった)、午前8時20分に宿を出発。ここまでの走行距離は498km。さすがに燃料系のエンプティーが点灯し始めたので、県道7号線沿いにあるガソリンスタンドで給油。この時点での給油量は13.43リットル。リッター約37キロ走ったことになる。車重の軽いジェベル250XCでも頑張ってリッター31キロくらいだったことを考えると、なかなかの好燃費だ。空になるまで3リットル近く残っているので、満タンで600kmは走れるかもしれない。



プチホテルあいづ天鏡台温泉


洒落な部屋


走行距離は3488km
↖今回お世話になった猪苗代湖近くにある「プチホテルあいづ天鏡台温泉」。瀟洒な建物はまさにペンションそのものだ。

↑アラフィフのオヤジが1人で泊まるにはあまり似つかわしくない木漏れ日が差し込むお洒落な部屋。温泉付きなのでゆったりできる。

←宿を出発する直前の走行距離は3488km。ようやく燃料ゲージがひとつになった。ほぼ500kmは無給油で走れる。

 2日目は猪苗代湖→土湯温泉→福島市→相馬→浪江→いわき→白河→東京というルートで進む。まずは県道7号線から国道115号線に入り、土湯トンネルを目指す。のんびりとした景色を走っていると、徐々に雨が降り始めた。さらに標高が高くなるにつれて霧も出てきた。土湯トンネル手前まで来たら視界はほとんどなく、祈りながら土湯トンネルを通過すると霧は晴れて雨も止んでいた。山の向こうは天気が違うというが、まさにそんな感じだ。そんな中でVストローム250は健気に走ってくれる。こういう天候だとウインドスクリーンがあると助かる。やがて国道115号線は下り坂になり、国道から少し離れたところにある土湯温泉に到着した。

 土湯温泉は福島県福島市土湯温泉町にある福島県を代表する名湯のひとつ。日本でも有数のこけしの里としても知られる。風情のある温泉街の一角に共同浴場「中之湯」がある。ちょうど営業開始時間を過ぎたところだったので、朝風呂ついでに入ることにした。入湯料は500円。建物・館内ともに昨年改築したばかりということもありとても綺麗。浴室はそれほど大きくないが、内風呂が2つ、露天風呂が1つあり、内風呂は熱めの湯が注がれている。お湯は無色透明。柔らかくて肌触りがよく、名湯にふさわしい。源泉を堪能したいならやはり共同浴場がお薦めだ。


走行距離は3488km

「プチホテルあいづ天鏡台温泉」から土湯温泉までは約42km。その間の天気の変わり様はいかにも山らしい。


霧がピークに達した

国道115号線を走り始めると雨が降り出し、土湯トンネルに差し掛かったところで霧がピークに達した。山の天気はおそるべし。


大きなこけしが置かれていた


中之湯
濃霧の土湯トンネルを過ぎると雨や止み、晴れ間も見え始めた。こけしの里らしく、町にかかる橋には大きなこけしが置かれていた。
土湯温泉の共同浴場のひとつである「中之湯」。昨年改装されたばかりということもあり建物も浴室も綺麗だった。

 汗を拭いながら土湯温泉を出発。国道115号線に戻って福島市・相馬市方面に進む。雨がすっかり止み、時折晴れ間が見え、気温も上がってきた。福島市を通過し、途中で見つけた霊山近くを走る林道大霊山線の見晴らし台で一服。林道を走ってあらためて感じたのが、Vストローム250の安定感と操作性の良さ。車重はあって重心が低いせいかカーブでも自然に曲がれる。ヒラリヒラリと走れる。この曲がりやすい感覚はジェベル250XCに似ている。400Xだと、自分がヘタクソなだけかもしれないけれど……こういう林道は緊張してしまう。一方、Vストローム250はリラックスして走れる。高速移動だけではこの良さは体感できなかったかもしれない。



林道大霊山線見晴台
林道大霊山線見晴台からの景色。遠くには高村光太郎の『智恵子抄』に登場する安達太良山や吾妻小富士が見える。

 しばし林道走行を楽しみ、次なる目的地である相馬(そうま)市に向かう。国道115号線を進んで相馬市に入り、まず立ち寄ったのが「相馬神社」と「相馬中村神社」だ。この2つの神社はほぼ同じ敷地内にあるのだが、相馬神社は明治時代にこの地にあった中村城の本丸跡に建立された。一方、相馬中村神社(中村神社)はこの地を治めた18代藩主・相馬義胤によって寛永時代に建立された。相馬中村神社といえば、有名な「野馬追祭」(相馬野馬追)で知られる神社だ。今年の野馬追はこの記事が掲載されたちょっと前(7月27、28、29日)に開催されたばかり。一度は観てみたいお祭のひとつだ。静まりかえった境内は勇壮な野馬追とは対照的。私は神社仏閣に立ち寄ると必ずお守りを購入するのだが、ここでも「左馬の御守」をゲットした。



ここまで走行距離は97km
ここまで走行距離は97km。午前中だけで100km走行したことになる。ここからは国道6号線をひたすら南下していく。


相馬神社


左馬の御守

↑相馬中村神社でゲットした「左馬の御守」。うまを逆さに読むと「まう」となり、「舞い」を連想させることから、左馬は福を招く縁起がよい言葉とされているという。

←相馬神社に隣接する相馬中村神社。勇壮な祭りとして知られる「相馬野馬追」の出陣式が執り行われる場所でもある。
ひっそりと佇む中村城の本丸跡に建立された相馬神社。もともとはお城だったこともあり、周囲が見渡せる小高い場所にある。


相馬中村神社

 相馬神社と相馬中村神社をお参りしたところで、そろそろ昼食の時間だ。実は昨日、ホビージャパン誌やアームズマガジン誌のライターを務める相馬市在住のK氏(この方も生粋のライダー)にお薦めのお店を伺っておいたのだ。K氏の教えに従い、相馬港方面に進んで松川浦に面した場所にあるお食事処「たこ八」に向かった。地元でも有名なお店らしく、多くのお客さんが訪れていた。数あるメニューの中からフラッグシップの「たこ八丼」をチョイス。ボリューム満点でたっぷり海の幸を堪能した。



食事処たこ八


たこ八丼
相馬港近くの松川浦沿いにある相馬市在住のK氏が薦めた「食事処たこ八」で昼食。魚問屋が経営しているということもあり期待できる。 この店の看板メニューである「たこ八丼」(税抜1900円)をチョイス。新鮮な魚介類がたっぷり盛られており大満足の一品。

 お腹を満たしたところで、ここからはいわき市に向けて太平洋沿いの国道6号線をひたすら南下する。南相馬市に入ってから道路沿いに「この先通行禁止」の看板が目立つようになった。やがて浪江町に差し掛かり、浪江駅へ向かう道を通り過ぎて数キロもいかないうちに通行止めとなった。通行止めといっても大掛かりな検問施設があるわけでもなく、警備員がバイクを見つけると制止する感じだ。引き返して浪江駅に向かうと、周囲の建物に人の気配はまったくなくゴーストタウン状態。震災から8年後の現実を目の当たりにした。いったん国道6号線に戻り、国道114号線を浪江インター方面に進み、浪江インターから常磐自動車道に入った。短い区間だが、常磐自動車道からも被災地の現実を垣間見ることができた。次の常磐富岡インターで降りて国道6号線に向かう道路も通行止め。警備員の方に教えてもらったルートを通って国道6号線に出た。



松川浦


JR浪江駅
お店の前に広がる松川浦を望む。青い海と空、広がる雲は夏そのもの。Vストローム250はどんな景色でも溶け込める。 通行禁止区間から少し戻ってJR浪江駅に立ち寄った。どこにでもあるローカル線の駅のように見えるが、町はゴーストタウンと化している。

国道6号線沿いに立てられた通行禁止の看板

帰宅困難区域を示す看板

いわき市寄りの国道6号線沿い
国道6号線沿いに立てられた通行禁止の看板。バイクや原チャリだけではなく軽車輌や歩行者も通行できない。この数百メートルも行かない先でいきなり通行止めになる。 同じ場所に立てられた帰宅困難区域を示す看板。2011年に起きた震災以降のこの地域の現実を現している。 いわき市寄りの国道6号線沿いの富岡町にも同じ看板が立っている。今回は取材のためにこの地域を訪れたが、物見遊山で訪れるのは止めよう。

 当初の懸念材料だった国道6号線の通行禁止区域をクリアし、さらに南下を続ける。雨が降ったり止んだりと天気は不安定。そして約3時間、約125kmを走行していわき市に到着した。いわき市といえばいわき湯本温泉で知られている。疲れた身体を癒そうと、いわき湯本温泉の共同浴場「さはこの湯」に入ることにした。

 「さはこの湯」は2006年に入湯したことがあり、和風造りの立派な建物は変わらない。親切な地元の方に駐車スペースを案内してもらい駐車完了。入湯料は230円。夕方ということもあって館内は賑わっていた。内風呂は「幸福の湯」と「宝の湯」が日替わりで入浴でき、今回は「幸福の湯」だった(前回は宝の湯)。お湯は無色透明で湯温が高く、いかにも歴史ある名湯の共同浴場らしい。「さはこの湯」を出ると時間は午後5時になろうとしていた。白河市までまだまだ距離がある。日が変わる前に東京に着きたい。



266km走破
「さはこの湯」に到着したところで猪苗代湖から266km走破。思っていたよりも距離があり、想定よりも時間が掛かってしまった。

 いわき湯本温泉を出発し、県道14号線を白河市方面に向けて進んだつもりだったが、しばらくしてからこれがミスルートであることが発覚。白河市ではなく須賀川市方面に進んでいたのだ。おまけに雨も降ってきて頭は半分パニック状態。実はこの間、写真を撮ることはおろか休憩もろくにしなかった。そんなライダーをよそにVストローム250は淡々と仕事をこなしてくれる。雨中でも不安はまったくない。しかし、Vストローム250も雨でこんなにずぶ濡れになるとは思わなかっただろうな…。貸し出してくれたスズキさんに申し訳ないと思いながら走り続けた。



ラバーレインブーツ


さはこの湯
雨に降られることを前提に、足周りはWILD WINGのラバーレインブーツ「フラミンゴ」をチョイス。完全防水のラバー成型で、ライディングに適したデザインとなっており、雨が降っても快適だった。 2006年に一度訪れたことがあるいわき湯本温泉の共同浴場「さはこの湯」。出発しようと準備をしていたらアームズマガジンの読者に声を掛けられた。こんなところで声を掛けられるとは思いもよらなかった。

 やがて白河市方面に向かう県道11号線を進み、標識に「白河」の文字が出始めた。思わず「やったー!」とヘルメットの中で叫んだ。そしていわき湯本温泉から走り始めて3時間近く経過し、あたりはすっかり真っ暗になってしまった。国道298号線に合流し、前日に見た風景を思い出しながら白河インターを目指す。そして午後7時30分、ようやく白河インターに到着した。いわき湯本温泉から約120km、猪苗代湖から約380km走破した。こんな大苦行にVストローム250は根を上げずに任務を全うしてくれた。ありがとう!といいたいところだが、東京までは120km近くある。まだまだ終わりではない。白河インターから東北自動車道を走り、自宅に到着したのが午後11時30分を回っていた。なんとか日付が変わる前に帰ることができた。



白河インターに到着


384km
ミスルートをしたせいで休まず走り続けて午後8時前にゴールの白河インターに到着。なんとかミッションを達成した。 猪苗代湖から384km、到着まで約12時間近くかかった。Vストローム250には大変な思いをさせてしまった。

 今回、Vストローム250で走った総走行距離は約1,100km、燃費はおよそリッター37kmだった。250ccとしては車重があるので、長距離の高速走行メインだとちょっと辛いかもしれないが、今回のような国道や県道をメインに走るような使い方なら、タンク容量もあって燃費がいいので実に頼もしい相棒だ。私の場合だが、想像以上にお尻が痛くならなかった。これもツーリングを楽しむための重要なポイントだろう。またキャンプツーリングを楽しむなら、ぜひトップケースやサイドケースを購入したい。充実した装備類・オプション類はきっとツーリングに役立つはずだ。

 かつてジェベル250XCのカタログに「旅仕様」と書いてあったが、Vストローム250はまさにその言葉にふさわしいバイクだ。こんなバイクを作るスズキさんはニクイなあ、そう実感した。短い間だったが思いっきり楽しませてくれたVストローム250、アディオス! また会う日まで!



総走行距離は1095km
結局自宅に到着したのは午後11時30分を過ぎていた。2日間の総走行距離は1095km。なかなかガッツリ走ったツーリングだった。いや〜疲れた…。

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