山椒は小粒でピリリと辛い 2020年も縁(=猿)起がいい!? ホンダモンキー125 渋温泉&地獄谷野猿公苑ツーリング パート2:ツーリング1日目(埼玉→群馬→長野ルート)

●文&撮影—毛野ブースカ
●撮影協力—玉井久義
●取材協力─Honda http://www.honda.co.jp/motor/

 じっくりモンキー125を見たところでいよいよ1泊2日のツーリングに出発だ。今回、モンキー125でツーリングをするにあたり、テーマはやはりモンキー(=サル)だろうということで、サルにちなんだ場所に向かおうといくつか候補地を挙げてみた。野生のサルが観察できることで有名な高崎山自然公園は大分県とちょっと遠いのでパス。日光さる軍団や河口湖猿まわし劇場なども考えたが、できれば間近で見たい。ということで思いついたのが長野県下高井郡山ノ内町にある「地獄谷野猿公苑」だ。

 「地獄谷野猿公苑」と言えば雪の降る中で温泉に入るサルたち、別名「スノーモンキー」で日本だけではなく世界的にも有名な場所だ。さらにその手前には名湯・渋温泉があり、2005年に訪れた際は宿泊者のみが入湯できる外湯に入れず、いつかリベンジしようと思っていた。これで目的地が決まった。8月なのでスノーモンキーには会えないが、野生のサルに遭遇できればOKだ。渋温泉の宿も確保したところでルートを確認する。モンキー125は排気量125cc以下なので高速道路は走れない。ひたすら一般道を走ることになる。ザッと計算しただけで片道250kmはある。高速道路を使えば2〜3時間ほどだが、6時間以上はかかるだろう。できるだけ主要幹線道路を走ることにして埼玉→群馬→長野ルートと神奈川→山梨→長野ルートを想定。行き帰りどちらで進むかは前日に決めることにした。「このくらい大したことないよ、楽勝〜」とタカをくくっていたが、想像以上の苦行になるとはこの時点ではまったく思わなかった…。

 次なる課題は荷物の運搬方法だ。今回試乗したモンキー125は見れば分かるとおりオプションのリアキャリアが装備されておらず、レインウエアなどのちょっとした荷物が載せられるスペースはまったくない。なので着替えやレインウエア、三脚などすべてバックパックに詰めて背負っていくことになる。普段、400Xに乗る時はトップケースとパニアケースがあるので楽々なこともあり、バックパック選びとパッキングだけでかなりの時間を割いてしまった。リアキャリアはツーリングだけではなくデイリーユースでも役立つはずなので、スタイルにこだわらなければ購入時に装着することをお薦めする。

 ようやく出発準備が整ったが、今年の8月は天候不順の日が多く、ツーリングを予定していた2日間も雨の予報が出てしまった。宿も数週間前から予約したし、仕事の関係もあるので、雨を覚悟で決行することにした。出発当日、幸いにも天気は回復。渋滞を回避するために午前6時00分に自宅を出発。天候を鑑みて「埼玉→群馬→長野ルート」を選択した。まず国道20号線を新宿方面に走り、環八(都道311号線)に突き当たったところで谷原方面に進む。途中、渋滞に遭遇することもなく国道254号線を川越方面に進む。ほどなくして右側に「本田技術研究所四輪R&Dセンター」が見えたので正門前でパチリ。しばらく走ると、今度は左側に「陸上自衛隊広報センター(りっくんランド)」が見えてきた。迷彩服を着て自転車で出勤する隊員さんを見ながら進んでいく。国道463号線を過ぎ、道の中央に設けられた並木を見つつ、緩やかな車の流れの中をモンキー125は快調に進む。



スタート時点での走行距離は1930km


本田技術研究所四輪R&Dセンター
スタート時点での走行距離は1930km。燃料は満タン。この2日間でどこまで走行距離が伸びるのか楽しみだ。 国道254号線沿いにある「本田技術研究所四輪R&Dセンター」の正門前で記念撮影。この後、寄居付近にあるホンダの寄居完成車工場の近くを通った。

 自宅を出発して1時間30分ほどで川越市に到着。川越市と言えば古い町並みや蔵が残ることから「小江戸」と呼ばれる人気スポット。特に国道254号線からほど近いところにある「喜多院」は1200年近い歴史を誇る関東屈指の古刹だ。私もかつて訪れたことがあり、今回も立ち寄ってみることにした。門前に行ってみると、まだ早いせいか人気もなくて駐車場はやっておらず、駐輪スペースもわからなかったので、ちょっとだけ停車して門前だけ撮影した。近くを訪れたらぜひ古い町並みとともに拝観してほしい。

 喜多院をあとにして再び国道254号線を寄居方面に向けて走り出す。通勤時間帯のせいか車が多く、場所によっては渋滞している。そんな中、モンキー125はライダーにストレスを感じさせることなく元気に走る。圏央道・川島インターを過ぎると周囲に田畑が多くなり、長閑な雰囲気が漂い始める。やがて関越自動車道・東松山インターを通過。仕事柄この周辺を訪れることが多く、ちょっと土地勘があるので、都幾(とき)川近くにモンキー125を停めて撮影タイム。和光市や新座市辺りの喧騒を忘れるほど穏やかな時間が流れる。日帰りならこの辺りで遊んで帰りたいところだが、まだまだ先は長い。



喜多院


都幾川
川越市に観光名所である「喜多院」。早朝ということもあり訪れる人はまばらで、駐車場も営業していなかった。 都幾川まで来るとのんびりした空気が流れる。遠くには「白石峠」のある堂平山(どうだいらさん)や秩父の山並みが見える。

 東松山市を過ぎて小川町や嵐山(らんざん)町に入ると、今までほぼ平坦だった道から起伏を伴う道へと変わった。とはいえ、それほど勾配がキツイわけではないので、スロットルを全開にしたり、シフトダウンしなくても車の流れに追従できる。やがて寄居町に入り、秩父方面に向かう国道140号線にぶつかる。去年クロスカブ110で館林方面から走ってきたことを思い出した。今回は秩父方面には向かわずに本庄方面に向かう。

 自宅を出発してから3時間30分を経過。日差しが強まり徐々に暑くなってきた。左側に大きな工場が見えたと思ったら「ガリガリ君」の大きなイラストが目に入ってきた。なんとここは、みんなが大好きなアイスキャンディー「ガリガリ君」を製造している赤城乳業株式会社本庄千本さくら『5S』工場だ。聞くところによれば、この工場の見学は大変人気があり、予約がなかなか取れないという。そう言えばつい数日前もガリガリ君を食べたばかり。こんな暑い日こそガリガリ君をガツッと食べたいところだ。

 国道462号線に差し掛かったところで国道17号線方面に進み、午前10時過ぎに関越自動車道・本庄児玉インター近くのコンビニに到着。ここで撮影に協力してくれる玉井カメラマンと待ち合わせたがなかなか来ない。ようやく1時間後に玉井カメラマンが到着して撮影。しばし撮影した後、昼食を取ろうとコンビニの裏手にあった武蔵野うどんの店に入ったところボリューム、味ともに大満足。おまけにたまねぎの天ぷらがサービスという。男性客がいっぱいいる理由が分かった。腹を満たしたところで、国道17号線方面に向かい、国道17号線を高崎方面に向かう。いよいよ埼玉県から群馬県に突入する。1時間ほどロスしたが、なんとかリカバリーできるだろう。



赤城乳業


武蔵野うどん
国道254号線で発見した「赤城乳業株式会社本庄千本さくら『5S』工場」。建物の玄関ににはガリガリ君の実物大(?)と思われる像が置かれていた。 関越自動車道・本庄児玉インター近くで発見した「武蔵野うどん きやんち児玉店」。写真は肉汁うどん中盛(650円)。なかなかのボリュームと味だった。

 しばらく国道17号線を直進し、高崎市内に入ったところで草津方面に向かう国道406号線に進みたかったが、本来なら国道18号線の安中方面に進んで国道406号線に入るところを完全にスルーしてしまい道に迷ってしまった。しばらくウロウロして国道18号線に出たのはいいものの分岐点は過ぎてしまっていた。とりあえず安中方面に進んでいくと「少林山達磨寺」の看板を発見した。道に迷って焦る気持ちを静めようと立ち寄ってみることにした。少林山達磨寺は縁起だるま発祥の地とされる。高崎のだるま市(七草大祭)は全国的に有名だ。小高い山の上にある本堂には大小様々な縁起だるまが奉納されている。真夏の平日にも関わらず参拝者がひっきりなしに訪れていた。



少林山達磨寺


お守りとおみくじ
高崎だるま市で有名な少林山達磨寺。本堂にはメロンほどの大きさから選挙で使うような巨大なものまでだるまが奉納されていた。よ〜く見ると有名人の名前が書いてあるだるまがある。 神社仏閣を参拝すると必ず欲しくなるのがお守りとおみくじ。今回はだるまらしく「七転八起おみくじ」を引いてみた。

 少林山達磨寺を参拝したところで国道18号線に戻って安中方面に向かい、右側に進めば国道406号線にブチ当るはずと勘を頼りに進むと、ついに国道406号線に出た。これでようやく草津方面に向かうことができた。ツーリングにハプニングはつきものだが、これで終わりではなかった。榛名山を右側に見ながら国道406号線をひたすら進む。標高が上がるにつれて勾配がきつくなってきているが交通量は少なくて道の流れがよく、モンキー125は淡々と仕事をこなす。

 国道406号線をそのまま草津方面に向かえばいいのだが県道58号線を進んでしまい、国道145号線に出た。国道145号線は草津方面に向かう主要道路で車の流れがかなり速い。左側に吾妻川と2020年に完成予定の八ッ場ダムを見ながら草津方面に向かう。途中「道の駅あがつま峡」で一服し、2005年に訪れたダム建設のために廃業する前の川原湯温泉の王湯があった近くを通過。この付近はとても景色がいいが、来年にはダムが完成し、やがて景色が変わっていくのだろう。長野原町を通過して国道292号線が見えたところで右折し、草津方面に向かい、ようやく草津に到着した。ここで給油したところ3.22リットル給油し、走行距離は2147km。出発時は1930kmだったので217kmも走行し、リッター67kmという結果だった。これはなかなかの数値だ。想像以上に燃費がいい。



道の駅あがつま峡


道の駅あがつま峡
↑「道の駅あがつま峡」に停車していたらトンボがミラーに留った。この後、予想外のハプニングが起きるとは思いも寄らなかった。

←「道の駅あがつま峡」近くでは晴れ間も見えていた。ちなみに「道の駅あがつま峡」は日帰り温泉施設(吾妻峡温泉 天狗の湯)も併設されている。

 満タンにしたところで、国道292号線を進んで志賀高原を抜けて渋温泉に向かう。道すがら看板には「オートバイは夕方5時〜翌朝8時まで通行禁止」と書いてあるが時間は午後4時ちょうど。まだ間に合うはずだ。急いで国道292号線を進んでいくと、まるで検問のように誘導員の方が2名立っていた。停車させられて排気量を伝えたところ「このバイクでは通行できません」と告げられた。渋温泉に行きたいと伝えてところ「ここから戻って迂回して行っていただけますか?」と申し訳なさそうに言われた。どうやらここ数日、火山警戒レベルが上がっているらしく、バイクの通行が禁止されているようなのだ。なんてこった!ここまで来てこんなハプニングが起こるとは…。

 仕方ないので国道292号線を引き返して国道406号線を通って嬬恋→菅平高原→須坂→小布施→中野→渋温泉というルートで行くしかない。距離は約100km、2時間以上はかかる。完全にスケジュールが狂ってしまった。午後6時のチェックインには間に合わない。高原地帯を通過するアップダウンのある国道406号線をひたすら走る。今にも雨が降ってきそうなほど空はどんより曇っている。天気がよかったら気持ちいだろうな…。合宿中のラガーマンたちを横目に見ながら、かつてアームズマガジン主催のサバイバルゲーム大会「ASCS」が開催された菅平高原を通過。懐かしさに浸る余裕もなく走る続ける。国道406号線から国道403号線に入り、ようやく中野付近に到着した時は日は完全に落ちていた。渋温泉手前でついに雨がパラついてきたがこのまま突っ走り、午後7時ちょうどに渋温泉になんとか到着した。モンキー125は根を上げることなく今日の任務を全うしてくれた。こんな強行軍になるとはモンキー125も思っていなかっただろう。



通行禁止の看板


菅平高原
国道292号線沿いには時間帯による通行禁止の看板が立てられている。しかし、時間帯に関係なく通行禁止とは思わなかった。ショートカットできずショック…。 やむなく国道406号線を迂回して渋温泉に向かうことに。菅平高原と聞くと私は「ASCS」を思い出す。今から23年前、社会人1年生だった頃、訳も分からずスタッフとして連れて来られた。今となっては懐かしい思い出だ。

 街灯が灯る温泉街をウロウロして今宵の宿である「信州渋温泉 渋白銀屋旅館」を発見。事前に遅れることを伝えて心配していた宿の女将さんとご主人が温かく出迎えてくれた。モンキー125を玄関に置かせてもらい、ひとまず部屋に入る。館内は昔ながらの木造の温泉宿でとても風情がある。言葉遣いが丁寧で親切な美人の女将さんが渋温泉のことをいろいろと説明してくれた。だんだん温泉宿に来た気分になってきた。こんな体験は久々だ。出された麦茶を一気に飲み干して、夕食と外湯巡りに出かけた。

 渋温泉と言えば9つある外湯(それぞれ効能が異なる)が有名で、宿泊者のみに渡される鍵がないと入湯できない仕組みになっている(大湯のみ外来者でも入浴可)。時間は午前6時から午後10時まで。詳しくは時系列で並べた写真を見ていただくとして、もともと外湯はすべて湯温がかなり高く、水で冷まさないと絶対に入れない。直前に入った方がいればラッキーだ。いつもなら全湯入ってしまうのだが、疲れていたのか6湯(初湯は修繕中で入湯不可)入湯したところでギブアップ。残り2湯は翌朝入ることにして宿の内湯(これももちろん源泉掛け流し!)を楽しんだ。汗ばむ身体を冷却しているうちに眠くなってきて早々に寝てしまった。(パート3に続く)



渋温泉に到着


玉川そば
午後7時ちょうどに渋温泉に到着。目印の大提灯の前でパチリ。ハプニングがなければ午後6時には到着できたはず。モンキー125は健気に走ってくれた。 夕食は二番湯の近くにある「玉川そば」で「くるみだれそば大盛」(1180円)をチョイス。ざっくり切られたそばとくるみだれが絶妙にマッチして美味しかった。


外湯の鍵


一番湯
宿泊者のみに手渡される外湯の鍵(湯鍵)と温泉街の地図。外湯は全部で9つ(一番湯の初湯のみ修繕中で入浴不可)あり、温泉街はそれほど大きくないので一晩あれば回れるはず。 一番湯「初湯」は修繕中のため入湯できなかった。2005年に訪れた時はこの初湯に入ろうとしたが鍵がなくて入れなかったのだ。


三番湯


三番湯
まず最初に入ったのが三番湯「綿の湯」。ちょっと白濁しており、切り傷や皮膚病に効能があるという。この湯は冷ましてあり浸かることができた。


二番湯


二番湯
次に入ったのが二番湯「笹の湯」。湿疹や病気の快復時に効能があり、仕上げの湯とも呼ばれている。ここは湯が冷ましてなく、冷ました掛け湯だけに留めた。


九番湯


九番湯
温泉街のほぼ中央にある九番湯「大湯」は渋温泉を代表する名湯。本来なら一番から巡っていき、この大湯で総仕上げ(結願)するらしい。ここは鉄分が豊富な濁り湯で、いかにも温泉らしいお湯だ。


八番湯


八番湯
大湯の近くにある八番湯「神明滝の湯」では地元のおじいちゃんが入ってきて、慣れた手つきでお湯を止めて水を流し、桶で湯船のお湯を少なくして入っていた。「なるほど!こうやって入るのか」と思った。


四番湯


四番湯

四番湯「竹の湯」は慢性痛風に効能があるとされ、ゆっくり入って患部を温めると効果があるという。ここは冷ましてあって湯に浸かることができたが、そろそろ限界が近くなってきた。


五番湯


五番湯

最後に訪れたのが五番湯「松の湯」。神経痛や病気の快復時に効能があるという。最初はいい湯加減だったが、だんだん熱いお湯が満たされてきた。どこも源泉の泉温が高く、手や足を入れるのも難しいほど。


渋白銀屋旅館

今宵の宿である「信州渋温泉 渋白銀屋旅館」で通された部屋。いかにも温泉宿らしい和風な造りはアラフィフ世代にとってどこか懐かしさを感じる。


内湯
宿の内湯に供されるお湯は源泉掛け流し。七番湯「七繰(ななくり)の湯」が近いせいか良く見ると鉄分を含んだ湯花が沈殿しているのがわかる。24時間いつでも入れるのが嬉しい。


総走行距離は2252km
1日目を終わってメーターを見たところ総走行距離は2252km、1日で322km(東京から名古屋近くまで)走ってしまい、今までこれほど一般道を走った経験はなかった。

[パート1へ|パート2|パート3へは近日公開予定です。]