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 FREERIDE 350はKTMのラインアップに並んだ他のオフロードモデルとは違う。一見すると、カラーグラフィックなど変わらないように見える。ちょっと詳しい人ならトライアルタイヤを履いたスマートなスタイルに気づく。そんなもったいぶった前置きするほど変わったものではないと言われそうだけど、実は大きく違う。

 KTMのオフロードモデルでは、常にレースを意識してきた車両を用意してきた。ところが、このFREERIDE 350は、プライオリティーのトップにレースを持ってきていないモデルなのである。公道を走るための制約をクリアしていてナンバープレートが付けられる。クローズドされたコースだけで誰かと1等賞を競うものではなく、幅広いレヴェルの多くのライダーが林道も含めたダートを単純に楽しく走る、ということを主眼に置いて開発されたもの。

こちらで動画を見られない方は、YOUTUBEのサイト「http://youtu.be/emE4ZNAnfic」で直接ご覧ください。 こちらで動画を見られない方は、YOUTUBEのサイト「http://youtu.be/a0EQhleneh0」で直接ご覧ください。

 その違いは跨っただけで伝わってくる。KTMのエンデューロモデル、モトクロスモデルよりずいぶんとシートが低い。シート高=895mm。オンロードモデルの基準で言えば高い数値だけど、オフロードでの走破性を犠牲にしない最低地上高と大きなサスペンションストロークを持つことを考えると「低い!」と言いたくなる。いや、実際に私は跨って思わずそう言った。

 身長170cmで両足のつま先が接地する。これまでの250や350では考えられなかった。オフ上級者になればそれを気にしない人もいるだろうが、私も含めたアベレージライダーの視点からだと、これだけで安心度が上がる。

 他メーカーにも、同じく公道やダートを走れるトレールモデルと言われるものがある。その中にFREERIDE 350よりシート高が低いのが多いのは知っている。それでも「低い!」と言うのは、一般的なトレールモデルはダート走行性能を削って、街中などの舗装路での使い勝手の部分を増やしているから低く出来ているのであって、アスファルト上で使うには耐久性やグリップ力で向いているとは言い難いトライアル競技用タイヤを履いているこれは、舗装路の比重はとても小さい。とにかく不整地で「おもしれー」と言わせたい為の成り立ちだ。

試乗者の身長は170cm。シート高は895mm。従来のKTMオフマシンの常識からすればかなり頑張って低く設定している。オフマシンとして限度があるとはいえ、この程度は足が付いてくれることでかなりの安心感が得られる。(※試乗はクローズドコースでの走行です。ミラー、リアウインカー&ナンバープレート周りを外しています)

 前日夜にまとまって降った雨は上がったが、試乗コースの土の部分は滑りやすく、砂利の部分も一見乾いたように見えて数センチ下は同じ状況。お借りしたバイクだし、自分の技量も判っているので、最初は虎の尾を踏むような気持ちで乗り出したけれど、5分くらいしたらもう気分は既にノリノリ。

 エンデューロモデルよりも大きく切れるハンドルで、幅が狭いところでもクルクル方向を変えられる。350 EXC-Fをベースにしたエンジンは、6速のギア比はそのままながら、前と後ろのスプロケット、二次減速比でショートに振られていて、極低速の粘りが増している。スロットルを開けた時のピックアップは鋭い。そこで予想したより力が出るようなことはない。パワフルに感じながらもあくまでもコントロールはカンタン。ちょんと開けてフロントアップなど造作ない。

 ノリノリになった理由はそれだけでなく、350クラスとしてはものすごく軽い車重もある。空燃料タンクにオイルとか冷却水が入った状態で99.5kg! そりゃあエクスクラメーションマークが付くさね。さらにバッテリーをクランクケース後端のすぐ上に設置して、樹脂製燃料タンクはエンジンに近いというマスの集中化もあり、コーナーや、急な登坂路で振り回しても軽くて心強い。おっとっと、となっても足を出して踏ん張ればなんとかなる。

 大きく、そしてしなやかにストロークする前後のサスペンションは、さすがダートを知り尽くしたKTMというもので、濡れていつもより滑りやすくなっている土の上ながらタイヤが地面を掴んでいる様が手に取るように判る。リアタイヤはしっかりトラクションして車体を横ではなく前に進めてくれる。そんなだから、いつもなら挑戦しようか悩むシチュエーションも、躊躇なくトライでき、そしてさほど苦労せずにクリア。このへんは普通のトレールモデルが「まいりました」と言いたくなるほどの差がある。

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 普通のトレールモデルの名誉のために言っておくと、その分、前述したトライアル競技用タイヤに加えて、燃料タンク容量は5.5Lと小さい。公道走行可なれど、ショート化した二次減速比で高速道路ではエンジンの負担が大きい。「じゃあちょっとツーリングにでも」とはならないし、KTM自身もそれは謳っていない。

 その道にハマり込んだ人達。KTMユーザーの中で大きな割合を占めるコアなエンデューロライダーや、本格的にトライアルをやっている人には、ある意味どっち付かずで、口さがない人はネガティブに言うかもしれない。これまで説明したように、だからその分、ダート走行を始めて間もない人から楽しめる幅の広さを持っている。

 ガソリン抜きで100kgを切る軽さで、大きくハンドルが切れ、シートは低目。349.7ccエンジンは扱いやすい。競う速さは専用モデルに譲るがダートで面白く遊べる。そんなモデルがエンデューロレーサーの250より23万円ほど、350より33万円ほど安い。要約するとこれ。

 今更ながら説明するけれど、私はクロスカントリーレースや草エンデューロレースに出るのを趣味にしている。まあ自慢できるリザルトなんてないが好きだからそれでいい。FREERIDE 350はレースを念頭に置いていない。でも乗っているとこのポテンシャルは私にとって、レースで素晴らしい武器になるんじゃないかと思った。このバイクで出走してみたい。

 公道もOKなのだから、後に、どこからかビッグタンクが登場して、タイヤを公道でも使いやすいものに替えて、ファイナルを少しだけ高速よりにし、家からトコトコと走って日帰り林道なんてのも面白そうだ。可能性を感じたから楽しみ方を限定したくない。個人的な欲を言えば、車検のない250もあったらいいなぁ。
(試乗:濱矢文夫

必要最小限のメーター。メインキーは無い。ステアリングヘッド部分にハンドルロック用のキーシリンダーがあるので、マシンを離れるときはそちらをロック。 クローズドな場所でオフを本格的に楽しみたいケースなどでは、リアのウインカー&ナンバープレート周りがそっくり取り外せる。(※写真をクリックすると、リアを外した状態が見られます)
ブレーキはFORMURA社製で、ホワイトにペイントされたキャリパーに前240mm、後210mmのウェーブディスクを採用。ホイールはGIANT製の超軽量デザインでフロント21インチ、リア18インチ。タイヤは競技仕様のDUNLOP製D803を装備。 燃料タンクは、カバーも兼ねる一体のシート持ち上げるとシート下、フレームに守られるように納められた半透明のプラスチック製の本体が現れる。ガソリン残量も一目で分かる。容量は5.5リットル。燃料インジケーターも備えているので安心だ。この状態でカートリッジ式のエアフィルターも簡単にチェックできる。
KTMとしては、過去に例を見ない、エンデューロレーサーでもなければ、モトクロッサーでもないオフ系マシンの登場だ。常に、レースでの勝利のためのマシン作りをしてきたのがこれまでのKTM。しかしこのマシンは「あらためてオフロードの原点に立ち返り、本当にオフロードバイクの楽しさを追求するために作り上げた」モデルなのだという。
特長としては、(1)このクラスのマシンとしては、99.5kg(半乾燥重量)と極めて軽量、(2)乗りやすく、楽しさが簡単に味わえるキャラクター、(3)驚異の登坂力、(4)スリムで良好な足つき性、(5)低騒音、低公害、(6)最新のデザイン、コンポジットフレーム、(7)ハイエンドなWP製サスペンションの採用、(8)専用にチューニングされたDOHC、350ccエンジン、が上げられている。
一番目の車重、99.5kgだが、CRF250Lの143kg、セロー130kg、WR250Rの132kgなどと比べると、まさに驚異的に軽いのが分かる。その軽量化は、クロモリ鋼のパイプとアルミ製セクションを組み合わせたメインフレーム、そして同様に新設計された単体重量わずか3.2kgのアルミ製スイングアーム、そしてプラスチック製のサブフレームを組み合わせたハイブリッドフレームによるところが大きい。
エンジンは、昨年デビューし大成功を収めた350 EXC-Fのパワーユニットをベースに、このフリーライド専用のセッティングを施したもの。その他、クランクケースをダイキャスト製に(EXC-Fでは砂型鋳造だった)、キックを廃止することでシャフト、ギア、アームを省略、スチール製バルブトレイン、Formura製油圧クラッチ、専用のエンジンマネージメントシステム、シフトレバー、ドライブスプロケット、エンジンのスイングアームマウント形状、インナープライマリーカバーの変更などが行われている。こちらのエンジン単体でも合計1.2kgの軽量化を実現した。
新設計のエキゾーストは、エンジンの真下から車体の中央を通るエキゾーストパイプに、キャタライザーを装備するマフラーの2本出しとしている。6速のギアボックスも、フリーライドのエンジンキャラクターに合わせて専用設計が行われたという。ファイナルギアは48:11と超ショートに設定されており、フリーライドの驚異的走破力に貢献している。
前後サスはWP製が採用された。フロントはインナーチューブ径φ43mmの倒立式で、CNC削り出し加工が施されたトリプルクランプでホールドされる。ストロークは250mm。高剛性かつ極めて高レベルな追従性と、絶妙なダンピング特性を持つ。リアも新規に開発されたWP製PDFショックアブソーバーを採用。260mmのホイールトラベルを持ち、リンクレスならではの軽量さ、メンテナンスの容易さをもちつつ確実な走破性も実現している。低速、高速両域での圧側ダンパーが調整可能だ。
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■KTM FREERIDE 350主要諸元■
●全長×全幅×全高:-×-×-mm、ホイールベース1,418±10mm、最低地上高:325mm、シート高:895mm、車両重量:99.5kg(半乾燥)、燃料タンク容量:5.5L●水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ、排気量:349.7cc、ボア×ストローク:88×57.5mm、圧縮比:12.3、燃料供給装置:ケーヒン電子制御フューエルインジェクション、点火方式:-、始動方式:セル、潤滑方式:オイル圧送式、最高出力:-kW/-rpm、最大トルク:-N・m(-kgf・m)/-rpm、常時噛合式6段リターン、1速=14:32、2速=16:26、3速=20:25、4速=22:23、5速=25:22、6速=26:20、一次減速比=24:73、二次減速比=11:48●フレーム形式:クロームモリブデン鋼×アルミニウムコンポジットフレーム、サスペンション前:φ43mmWP倒立フォーク、ストローク250mm、後:スイングアーム、WP-PDSショックアブソーバー、ストローク260mm、キャスター/トレール:-°/-mm、ブレーキ前:φ240mmシングルディスク、後:φ210mmシングルディスク、タイヤ前:2.75-21、後:4.00-18●価格:840,000円


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