Ninja250リニューアル記念特別企画 温故知新 初代NInja GPZ900R FOREVER
GPZ900RA12インプレッション「時代に流されない。時代にとらわれない」

 ニンジャが登場したのは1984年、限定解除をモノにして一年目の僕は、Z1100GPに乗っていた。ときどきフューエルインジェクション(dfi)の調子が悪くなる以外、音、形、そして重さなど、僕の感性に合っていて、乗る度に嬉しくなった。特に、フルフェイスを被っていても、まるでウォークマンでエンジンの音を聞いているかのような刺激的なサウンドは、今でも忘れられない。

 そんな当時、「市販車世界最速」という惹句で登場したニンジャは気になる存在だった。
 天井に雑誌の付録だったニンジャポスターが貼ってある友達の部屋。床に散らばったバイク雑誌や灰皿やコーラの瓶を布団と一緒に足で押しのけ、寝転がってそれを見上げながら「なんで900なんだろう?」と二人で考えた。
 カワサキ党の彼にもそれは難しい問題だった。ホンダやヤマハ、スズキだってみんな1000か1100だ。どうして今更900なんだろうと。
 その頃、バイト先のガソリンスタンドにもニンジャはやってきた。いつも決まって週末の夜、閉店の30分くらい前にガソリンを入れに来るお得意さんは、ブルーとシルバーの750ニンジャだった。とても速そうに感じた。
 それからしばらくして、友達がライムグリーンの750ニンジャを買う。納車間もないそのニンジャ、たまらず乗せてくれとチョイ乗り。意外にも細いトルク、スムーズで静かなエンジン、強い前傾姿勢。どこか骨っぽいイメージと違っていた。

 
 でも初めて900のニンジャに乗った時、その感覚が間違っていたことに気がつく。フロント16インチのホイールは、僕のフロント19インチのZより遙かに重厚感があった。1100を100km/hで流しているような感覚でもニンジャはもう150km/hだ。メーターが壊れているのかと思ったほど滑らか。
 ブレーキの安定感、コーナーのしっとり感、なにより、飛ばすほど人とバイクが一体化するような感触。経験の浅い当時でさえ、そのスゴさには驚いた。
 でも、世界最速というキャッチフレーズから連想されるエネルギッシュな感じとは裏腹に、ものすごく乗りやすい。じゃじゃ馬的な部分は微塵も感じなかった。
 そんな印象は今回乗った’99モデルのニンジャも同じだ。幸か不幸か仕事で数多くのビッグバイクに接する身に、ニンジャ900の刺激が当時ほど強くないことは否定しない。でも、未だに並のリッターバイク以上の魅力があることもまた事実なのだ。ざっと振り返っても、初期型GSX-R750、VF750FやFZ750よりもニンジャは古株だ。今、交差点でそんなバイクが並んだら、敬意を払いつつも驚くことになるが、ニンジャに古さを感じることはない。
 基本を活かしつつ、タイヤやブレーキ、サスペンションを時代に合わせてレトロフィットしているからだ。




 当時の最高速ホルダーのために用意された心臓は、高速域での安定性を確保するため、低い位置に搭載することを念頭において徹底的にコンパクト設計された。ダイヤモンドフレームを採るのも、その低重心化のためだ。カウルの隙間から見える水冷エンジンは、誇張しないが立派にその存在を主張する。音はやはりウォークマンで聞くようなエンジンサウンドを楽しませてくれる。
 低速からゴリッとしたトルクを生むエンジンは、心地よいメカノイズを発しながら、直線基調の巨体をいとも簡単に押し出す。速度計より小振りな回転計の盤面に刻まれた1万500rpmから始まるレッドゾーンまでの半分も使えば、まず加速に不満が出ることはない。


ニンジャ顔。1984年当時、750が74万8千円で日本の店頭に並んだ。そして1999年、900が79万9千円。事実上値上げナシで手に入る幸せ。

左側にカムチェーンを配置したエンジン。カワサキ初の水冷4バルブエンジンだ。その実力は現代でも十分通用する。

輸出仕様は速度計と回転計の位置がそっくり入れ替わっているというのはおなじみの話。回転計は電圧計にも早変わり。

左右2本出しのサイレンサーはカワサキの得意技でもある黒メッキが施されている。リアブレーキは異径2ポッド。

A12ではインナーチューブプロテクターを装備。キャリパーはトキコ製6ポッドを新たにフューチャーし魅力が増した。

 ワインディングでも、ワイドラジアルタイヤを履きこなす現代のビッグバイクのようなピタっとした安定感はない。しかし、ホールドの仕方をニンジャに合わせれば、かなりの性能を今でも見せる。街中やツーリングアベレージでは逆に、ニンジャの細身のタイヤの方がナチュラルに感じられるほどだ。
 ’99モデルで変更されたブレーキは制動性もさることながら、コントロール性が向上したことも嬉しい。

 
 こうしてニンジャは時代を追い越すことも遅れることもなく、ぴたりと追従している。試乗記風に言えば、時間の流れにリニアなバイクなのだ。だからZZRやZX9Rが登場しても、世界のライダーはニンジャを支持し続けるのだ。




最新のリッターバイクと比べてしまえば確かに「劣る」所はある。だがボク達はニンジャというバイク自体が好きなのだ。

■Ninja250リニューアル記念特別企画 温故知新 初代NInja GPZ900R FOREVER
[VOL.4 GPZ900R大全 その2 A7~A11(1990~1998)]
[VOL.5 GPZ900RA12インプレッション]
[VOL.6 GPZ900R大全 その3 A12~A16(1999~2003)]


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