スズキのWEBサイトへ

 GSR750 ABSに国内仕様が発売された。国内仕様というだけで「輸出仕様よりパワーがないんでしょ」と頭ごなしに思ってはいけない。この国内仕様は輸出仕様と最高出力がまったく一緒なのである。

 でも、そこでちょっとバイクに詳しい人は「じゃあ加速走行騒音規制やなんやらの音規制でギア比が変わって本来の走りではないんでしょ」と思うかもしれない。ところがどっこい。エンジンに遮音用カバーをつけたりしながら世界一厳しい日本の音規制をクリアし、1速から6速までの変速比、エンジン本来の回転をミッションに伝える時の1次減速比、ミッションからタイヤを動かすところまでの2次減速比までまったく同じ数値のまま。

 それでいて、逆輸入より車体価格は14万円近く安くなっているワケだ。だから実質的な値下げ。ここ最近、海外メーカーも含め大型モデルの日本仕様はスペックダウンすることが多かった。さらっと受け取られるかもしれないけれど、これは画期的でとても凄いことだ。スズキに拍手を送りたい。

 そうまで大げさな表現をするのは理由がある。個人的な話だけど、私はこのバイクが好きだ。この国内仕様に乗ってそれを再認識した。

2010年10月のインターモトで発表されたスズキのミドルクラス“ストリートファイター”GSR750。翌’11年から海外で発売開始され、それまでのGSR600の後継モデルとして好評を博しているモデル。今年の3月からは、いよいよ国内仕様が発売開始された。『斬新なスタイリングと爽快な走りを特長とする新型ロードスポーツバイク』を濱矢文夫に試乗してもらった。
※ライダーの身長は170cm。写真の上でクリックすると大きな写真が見られます。
こちらで動画を見られない方は、YOUTUBEのサイト「http://youtu.be/n9PhuWV_xAU」で直接ご覧ください。 国内導入カラーは、青/白2トーンの「トリトンブルーメタリック/パールグレッシャーホワイト」、「マットブラックメタリックNo.2」(黒)、「パールグレッシャーホワイト」(白)の3色を設定。

 2005年型GSX-R750をベースにしたエンジンは、ネイキッドらしく低中速の厚みを出し扱いやすさを考慮した設定。低回転から必要なトルクを発生する。そこからフラットにパワーを出しながらスムーズな上昇。7千500回転を越えると1段車速の伸び方が速くなり1万回転オーバーまで回る。この回り方が突き抜けるようで気持ちいい。同じストリートファイターカテゴリーのリッターモデルと比べるとパワフルさは負けるが、パワフル故に細心の注意をしながら開けるもどかしさがない。だから積極的にスロットルを開けたくなる。開けると不足のない加速力を持っている。

 野蛮なところは姿を見せず、どの回転数にあっても淀みがない。流行の電気デバイス等は装備していないけれど、制御がきめ細かくて巧み。最近は2気筒、3気筒と魅力的なスポーツエンジンが増えている。しかしこの直列4気筒エンジンを体験すると力強さと滑らかさに、「ああ、4気筒ってやっぱりいいね」と思わせてくれる。

 GSR750 ABSに惹かれる理由は、4気筒だからエンジンが重くて動きが……なんてことがないところ。フットワークは軽くクイック。さっと倒し込めてさっと旋回していく。より排気量の大きいライバルにはない軽快なコーナーリングがある。600ccクラスと変わらない動きながら、ナナハン4気筒のパワーを持つ。正真正銘のいいとこ取り。このバランスが絶妙だ。

 フルアジャスタブルショックユニットではなく、スイングアームが普通の角型タイプ。以前それを嘆く声を聞いたことがある。乗ると分かる、それは杞憂だ。これまで何度か乗って走って、性能的に不満を感じたことがない。今回の試乗でもしかり。減衰がしっかり効いていて乗り心地も含めた走りにレベルの低さなんて感じない。つるしのままで、思わずニタニタしてしまうほどスポーツ走行が楽しい。これで充分。いや充分すぎる。積極的にガンガン回して使えるエンジンと俊敏な運動性能。無理矢理ネガティブな意見を加えるとしたら、もうちょっとハンドル切れ角があるとUターンがさらに楽だと思ったくらいか。

 当たり前だけど、スーパースポーツモデルの方が走りのレベルは高い。それは認める。しかし、このモデルはもっと気軽に快適ながら人馬一体感を感じて走り抜ける爽快感がある。事実として公道では大きく離されない走りが出来るだろう。

 GSR750 ABSはネイキッドスポーツモデルとして、ある意味で理想的なものに仕上がっていると思う。特にワインディングを含め「速く」だけにこだわらず「楽しく」というワードに頷ける人ならこんなに魅力的なモデルはないだろう。
(濱矢文夫)

IMG_0406.jpg
IMG_0198.jpg
エアインテークを備えたフロントマスク。防振性に優れた新型ミラー、マルチリフレクターヘッドランプ(ハイ/ローダブルフィラメント)を採用。ヘッドライト両サイドにはブルーレンズのポジションランプを装備。 金属調のリングをあしらったコンパクトなメーターデザイン。視認性の高いアナログ式タコメーターを採用。大型の液晶パネルにはスピードメーターをはじめ、ギアポジションインジケーター、水温計、燃料計、時計、燃費計、オドメーター、ツイントリップを表示する。輝度調整機能付。LEDインジケーターはニュートラル、ターンシグナル、ハイビーム、油圧、FI、イモビライザーの作動状況を表示。
ベースとなった’05GSX-R750エンジンからの変更点の最大のポイントは、カムプロフィールの変更と吸排気系の見直しにより燃焼効率の向上が図られたこと。徹底したフリクションロスの低減とともに、11,500rpmのレッドゾーンまでのほとんどの回転域で、ベースとなったGSX-R750よりも出力、トルクともに上回る数値を発生している。GSX-R750のレッドゾーン14,500rpmをリミッターを装備して抑え込むことで最高出力の数値を106PSの枠内に収めているという。フレームは専用で開発された。GSX-R750やGSR600と異なり、アルミのツインスパーフレームではなくD字断面を持つスチール製のツインスパーフレーム。このメインフレームに通常の丸断面のチューブラーフレームを組み合わせたコンパクトなフレームとなっている。
足回りにはフロントにφ41mmインナーチューブとゴールドアルマイト処理したアウターチューブを持つカヤバ製の倒立フロントフォーク。リアはプログレッシブリンケージを介してカヤバ製モノショックを作動させる通常のスイングアームタイプ。7段階プリロード調節機構付だ。ブレーキはフロントにφ310mmフルフローティングのデュアル、リアはφ240mmシングルで、電子制御式ABSと組み合わせている。
IMG_0406.jpg
■GSR750 ABS主要諸元
●エンジン:水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ●ボア×ストローク:72.0×46.0mm●総排気量:749cm3●圧縮比:12.3●最高出力: 78kW(106PS)/10,000rpm●最大トルク:78N・m(8.3kg-m)/9,000rpm●オイル容量:3.85リットル●燃料タンク容量:17リットル●燃料供給装置:フューエルインジェクション●変速機:常時噛合式6段リターン●フレーム:スチール製ツインスパー
●全長×全幅×全高:2,110×785×1,060mm●軸距離:1,450mm●シート高:815mm●最低地上高:145mm●重量:213kg●サスペンション:前倒立テレスコピック、後スイングアーム●ブレーキ:前φ310mmダブルディスク、後φ240mmシングルディスク、ABS付●タイヤ:前120/70ZR17 M/C58W、後180/55ZR17 M/C73W

| 『スズキがGSR750 ABSを国内発売開始』の特集ページへ | 新車プロファイル GSR750 ABSのページへ |