Kawasaki

カワサキ純度を再構築したボディパフォーマンス

 先代のNinja250Rが発売されたのは2008年12月1日。その先代で国道250号線の全線を走った。この道は大阪から瀬戸内海の東側沿岸をなぞり明石工場の南側を抜けて岡山方向へ向かう。250ccで250号線というこじつけに、その母体への帰郷と探訪をかけあわせた旅だったが、ひとつ想いを強くすることがあった。

 250とて貧弱ではない。小柄でなく大仰でなく満たされる見栄えのよさ。必要十分な速力を備え旅の機動を触発する。それは即ち250にしてKawasakiオートバイのイメージを踏襲しているのでないか。

だから。

 あれから僅かの年月でなぜにまた新しい姿を登場させたのか。とても不思議で、いわば「カワサキらしからぬ」という先入観念だったが、しばし眺めてから走り出すと軽くいなされたように払拭された。



Ninja250

 フレームのたくましさ、エンジンの力強さ、ポジションのゆとり、手元にレイアウトされた見やすく斬新な計器たち。これらを組み上げた人たちから「どや?」と言われんばかりにもっといい感じになっている。

 

 見栄えについても、精悍な生き物のような顔つきや持ち上がったテールとのバランスのとれたプロポーション。さらにクラスを越えたようなサイジングを主張していて迫力があるのだ。

 エンジンは水冷4バルブの並列2気筒。とてもオーソドックスな心臓ではあるけれど、中身の刷新がわかりやすい。スロットルのツキやググっと前に出るチカラが体感できるし、それは開けても戻してもの追従の心地よさ。ゆとりあるボディをよくぞここまで推進させたかとうれしくなる。フルモデルチェンジの意義を納得させられるのである。



Ninja250

 おそらくこれが、むかしとった杵柄に時折いれる純度のカンフル。「カワサキらしい」ところであり、既存のファンも望んできたところだろう。ただし、これを意表を衝くようなわずかの期間で行なった。

 いま時代は十年一昔ではなく一年一昔と言う人がいる。かつてカワサキにはどこか頑なでおいそれとは「変えない」「変わらない」という流儀を持っていた。それは魅力のひとつでもあった。しかしこれに逆らったという考えは早計だろう。



Ninja250

 時間はなにも速くなっておらず、あふれる情報の整理ができていないだけでないか。事象のあまりの流速に眼移りして自分自身の趣向さえ曖昧になってくる今日。個々の質実を高めるという基本に立ち返り、変えるものと残すもの。敢えて不易流行と呼ぶがこういう大切なモノを知らしめるにはむしろ時間をかけ過ぎては駄目だ。だから、早々に、新しい息子は飛び出したくなったのかもしれない。

 初代から数えてNinjaの30年。世代のモデルごとに偉大な祖父や父になったNinjaはいた。その存在を時代性を背景に認識し称揚することは大切。でも構築された一家のシチズン(市民意識)を持ち続けながらつねに生まれ変わる向上心を磨いていたい。

「まずオレがそこらを駈けてくる!」
Ninja250を走らせると、新しい息子の主張が伝わってくる。


Ninja250

250造りにも窺える重工業の多様性と同調と

 では、確実に残されているものとはなにか? ここには巷間言われてきたKawasakiイズムとはなにか? と同じ意味がしてくる気がする。 

 男カワサキ、アンチ派の魅力、ライムグリーンを纏うヒール人気、ビッグ車体‥‥枚挙にいとまがないが、なかでひとつ、kawasakiブランドのなかで「バイク」を作り出すという面白さ。異業種にして同窓という懐のひろさ。巨大な構造物を造る会社がいち消費者と触れ合う接点としてのバイク。これは世界的に見ても、きわめて希有で不思議な存在だ。重工業が手がけるクォーターを吟味し洞察できるという魅力は他のどこにもない。


Ninja250

 Ninja250を湾岸の水ぎわに置いて思索してみる。やや偏在した趣向を許されるなら。

 例えば、受ける印象は新橋駅のホームで下りの新幹線を見つめる気持ちに似ている。これからお客を乗せて博多を目指すのぞみ号はゆっくりと街を離れていく。しかし品川駅を出た車体はその後ぐいぐいと速度をあげて西へ西へとひた走るわけだが、その姿をホームから予見する気持ち。これに似た情感がわき起こるNinja250のたたずまいだ。



Ninja250

 川崎重工業のWebページにある製品情報を見ると、新幹線N700系とNinjaは同じページに鎮座している。もっとも新幹線に近しくリンクするのは1000や1400という超高速弾道マシーンが的確だろう。しかし階層を掘り下げていくうちに「新しい息子」の姿を見つけることができる。バイク乗りにほのかな感動が伝わる瞬間。

 なにかが、つながっている。そう感じてしまうグラマーなシルエットと乗車フィール。



Ninja250


誰をも魅了する若いNinja

 Ninja250は、エントリーにうってつけのバイクと思う。同時にカワサキ歴ウン10年の大ベテランにもうってつけのバイクだとも思う。ここにもつながりを感じた。初めての人にはすぐに馴染む。知り尽くした人にも受けいれられて納得も得心もさせる。二律背反をうまく落とし込んだ不思議が詰まっているといえばいいか。



Ninja250



Ninja250

 もっともNinjaという名前の存在。中堅や頭目まで一家一統率は多大なラインナップを展開してきた一族だ。30年目にして今一度のお披露目を若い息子から。重工業の粋と本気に触れられた夜明けになった。


Ninja250

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