KTM JAPAN
Kiskaのデザイナー、Craig Dentが基本デザインを担当しているKTMの新世代新車群。390 DUKEは(125 DUKE、200 DUKEも)「light fun agile compact affordable」をキーワードにデザインされた。スタイリングのベースとなったといえるマシンがあるという。それはKiskaがかつてデザインした690 DUKE STUNTだという。 こちらで動画が見られない方、もっと大きな映像で楽しみたい方は、YOUTUBEのサイト「http://youtu.be/TTy0vt_2TUM」で直接ご覧ください。

 排気量が小さい小柄な車体に、それよりも大きな排気量のパワフルなエンジンを積んでしまう。昔から、バイク好きはそれを想像してワクワクしてきた。しかし、実際はマッドサイエンティスト的な大幅な改造によってしか現実にはならないもので、バイクメーカーがそれを具体化したことはほとんどなかった。

 KTMはそれをまさにやってのけた。390 DUKEの車体は125/200 DUKEと基本は同じなのである。この事実だけで、もうたまらない。前々からKTMの開発にいる人は生粋のバイク好きだと思ってきた。その根拠はこれまで乗る機会のあった多くのモデルから感じられた。走っていると「こうすると面白いよね、ね」ってメッセージが伝わってくる瞬間がある。バイク好きの心を良くわかっているメーカーのひとつだ。

 390 DUKEに跨ると、当たり前なんだが、コンパクトさにあらためて驚いた。ホントに小さく細い。身長170cmで両足のかかとベッタリまであと少しという抜群に良好な足着き。375ccのエンジンは単気筒だから、当然ながら細くて、シートに座っているとシュラウドをかねた燃料タンクに隠れて見えない。エキゾーストパイプは一部凹ましてまでクロモリトレリスフレームの内側にレイアウトされているから足は触れない。よくぞここに収めましたって感じだ。

 始動させると、ポロポロポロという200と似たところのある排気音。意外なほど静かで耳に優しい。KTMの単気筒エンジンというと、レースユースを前提にした玄人好みのパワフルさと思いがちだけど、このエンジンの低回転は拍子抜けするくらい扱いやすい。車体とライダーを前に進める充分なトルクはあるけれど、のけぞるように強くはない。

 KTMのモトクロスモデルやエンデューロモデルにある同じ水冷DOHC4バルブ単気筒エンジンの350は、低回転から力強く、どこからでもグイグイと前に押し出していく。390DUKEはそれらとはちょっと違う。低回転はおとなしい。だから、スロットルを開け閉めした時の挙動が穏やかでビギナーでも怖がらずに乗れるだろう。

 なんてったって、車体は125/200譲りだから、着座位置からトップブリッジまでの距離が短く、幅のあるパイプUPハンドルは腕に負担がかからないよう手前に気持ち絞られていてお腹と拳が近い。ハンドルの切れ角もちゃんとあって、軽いし、足は地面に届くしで、狭い場所でも躊躇なくさっと倒しこんで小さくUターンも簡単。

 エンジンは6千500回転、7千回転付近からが本領だ。ぐっと力強さが増して、リミットだった1万回転付近までスムーズに回り速度の伸びに拍車がかかった。ワインディングでは早めのギアチェンジをせずに、その伸びのある高回転を維持してスロットルを開けながら走るのが気持ちよかった。

 試乗車はおろしたてホヤホヤの新車で、乗る前の走行距離は数十キロ。だから最初は前後サスペンション、特にフロントがまだスムーズに動かず積極的に乗り切れずにいた。しかし、距離が伸びるにしたがって角が取れだんだんいい塩梅に。このバイクが持つエネルギーを制御するには充分な性能のブレーキ。コーナーでの倒しこみは単気筒らしい身軽さ。旋回中の安定感は高く、クルッと向きが変わってコーナーを脱出できた。オン・ザ・ラインというより、どのラインでも選べる自由な動きが可能。一般的な400クラスのモデルより確実にフットワークは軽い。これが390 DUKEのツボ。

 車の後ろについてのクルージングでは5速キープでもこなせる。感嘆するような低速はないけれど、2千回転をちょっと切るくらいからでもギアを落とさずトコトコと加速できるフレキシビリティがある。飛ばさずに、力を抜いて走るのも苦にならない。とにかくパワフルに、というセッティングでないのは、幅広い技量と嗜好のライダーがストリートでのいろいろなシチュエーションで使うことを考慮してのことだろうと納得した。

 この走りとオリジナリティ溢れるルックスで、メーカー希望小売価格 54万9000円はバーゲンプラスじゃないか。いろいろな難題、障害が出てきただろうが、面白いと思いつきそれを実際にカタチにした情熱が伝わってくる。390 DUKEは同クラスにこれまであったロードスポーツモデル、モタードモデル、デュアルパーパスモデルに似たものがない魅力を持った楽しいスポーツバイクだ。

(試乗:濱矢文夫)

ライダーの身長は170cm。軽量な車体と絞り込んだシート形状によって標準的な日本人ライダーにも安心感のもてる足着き性。
弟分のDUKE 125/200との最大の違いであるエンジンを除けば、サス周りが大きな変更点に。前後にWP製のハイパフォーマンスサスペンションを採用。フロントにはRC8 Rと同じインナーチューブ径φ43mmの倒立フォーク、リアにはプリロード調整機能付モノショックを採用、390 DUKE専用のセッティングが施されている。ブレーキはキャンセルが可能なBosch製9MB2チャンネルABSを採用。ブレンボ製300mmフロントディスクにはラジアルマウントキャリパーを組み合わせている。 水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブエンジンの重量はわずか36kg。オレンジにパウダーコーティングされた超軽量トレリスフレームに搭載。DLCコーティングされたロッカーアーム、4バルブヘッド、鍛造ピストン、ニカジルコーティングされたシリンダー、一体成形エアボックス、乾式エアフィルター、Bosch EFIシステム、ステンレス・エグゾーストシステム、エグゾースト一体型触媒コンバーター、外部サーモスタットハウジングなどを採用。
顔つきは弟分の125/250たちと共通。グラフィックの違いで独自の存在感を演出。 スーパーバイクのRC8 Rに比べても遜色のないメーター周り。デジタル表示のマルチファンクション・ダッシュボードは、KTMオレンジに光るバックライト付。バーグラフタイプのタコメーターやアベレージの燃料計算機能などを搭載。 スリムな車体幅とシート高800mmに抑えられた前後分割式のシート、そして絞り込まれたシート形状などにより良好な足つき性を実現している。11リットル入りの燃料タンクはニーグリップしやすい形状を採用、スポーツライディングに貢献。
■KTM 390 DUKE 主要諸元
■全長×全幅×全高:2,152×844×1,193mm■ホイールベース:1,367±15mm■最低地上高:170mm■シート高:800mm■燃料消費率:-km/L(60km/h定地走行テスト値)■最小回転半径:-m■車両重量:約139kg■燃料タンク容量:約11 L■エンジン種類:水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ■総排気量:375cm3 ■ボア×ストローク:80×60mm■圧縮比:12.6■燃料供給装置:ボッシュ電子制御FI ■点火方式:-■始動方式:セル式■最高出力:32kw[44PS]/9,500rpm■最大トルク:35N・m/7,250rpm■変速機形式:常時噛合式6段リターン■フレーム形式:クロームモリブデン鋼トレリスフレーム■ブレーキ(前/後):油圧式ディスク/油圧式ディスク■タイヤ(前/後):110/70R17/150/60R17■車体色:ホワイト■メーカー希望小売価格:549,000円
ミドル&ミニクラスDUKE3兄弟。125 DUKE、200 DUKE、そして390 DUKE。この3車種で基本的に共通のベースフレームを採用している。ただし390 DUKEの誕生に合わせて、125/200のフレームにも改良が加えられたという。

390 DUKEにも当然あります“パワー・パーツ”。こちらはカスタマイズコンセプトモデル。アクラポビッチスリップオン、86,625円、クラッシュバー、19,530円、ウェーブブレーキディスク、28,350円、エルゴシート、17,745円、ハンドガード、14,385円などを装着。



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