その話題のホンダイズム・マンは本田技術研究所二輪R&Dセンター熊本分室に勤務する横川俊二さん。1998年にゲストエンジニアとしてCBRやCB、VFRなどの開発に参加。2006年には正式に本田技術研究所に入社、CBR、CBのPL(プロジェクトリーダー)を歴任。2010年にはLPL(ラージプロジェクトリーダー)代行としてCBR、CBの開発を担当。そして2013年モデルのCBR600RR開発を手掛けたというCBR人生を歩む技術者だ。

 その横川さんに、6年程前から自分の手掛けるCBRでボンネビルを走ってみたいという思いが生まれ、ついにこのほどその夢を実現、そして見事世界記録も塗り替えることに成功したというのだ。

 日本でもその名はおなじみ最高速チャレンジ「BONNEVILE SPEED WEEK」。Bonneville Salt Flatsを会場に毎年夏に開催されている。ユタ州グレートソルトレイク西部にある塩湖が干上がった路面を一時的に整備して最高速をチャレンジするもので、標高1280mに位置するため約25%もの出力低下や、平均気温38℃に達する高温など気象条件の厳しさでも知られている。

 使用したCBR600RRは、プロダクション650クラスに挑戦ということで、排気量650cc以下(ボア×ストローク変更不可)、保安部品以外の外観パーツの取り外し・変更不可、市販以外の改造パーツの使用を制限、そして市販タイヤ推奨という条件があり、バラストの搭載、リアサスのセットアップ、HRC販売キットのエンジン組み込み、F.I.セッティング、そして主催者供給のE.R.C.レーシング・ガソリンの使用という条件でチャレンジしたという。

 競技は加速、減速区間を含めて片道5マイルのコースで行われ、その内の3箇所に1マイル程の計測区間が置かれ、最も高いスピード区間を記録として残し、これを2回行い平均スピードが記録となるという。で、横川さんとCBR600RRは、1回目172.249mphを記録、2回目はコースが変更されるアクシデントがあったが169.408mphを記録。結局、平均170.828mphという公式レコードで、世界記録を更新した。

 ちなみにこの記録は、65年にわたる「BONNEVILE SPEED WEEK」の歴史でプロダクション650クラス初の170mph超え、そして9年ぶりのこのクラスの記録更新となったという。

 本田宗一郎さんの遺したホンダイズム、未だ健在なり。明るい話題の乏しい二輪社会ですが、二輪の無限の可能性、まだまだ諦めたものじゃない。

“世界記録達成”を報告する「Team CBR600RR」の面々。マシンに跨るのが横川俊二さん。左端が同じ熊本分室の大橋靖洋さん、中央が二輪R&Dセンターの保木政彦さん。使用された2013年モデルのCBR600RRの外見はほとんど市販車状態。タイヤも市販品という。これでかなり滑りやすいといわれる塩の路面で、300km/h近いスピードを出せたということに驚く。 横川さんが持っているのが“認定証”のコピー。2013年8月14日に170.828mphを出したことがしっかりと記録されている。


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