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BMW R nineT BMW R nineTプロジェクト BMW R nineTプロジェクト

 日本でカスタムした4台のR nineTカスタムマシンが、11月6日~9日までイタリア・ミラノで開催されるEICMA/ミラノショーのBMW Motorradブースに展示されることとなった。これは、驚くべきことだ。BMW Motorradジャパンがスタートさせたこのプロジェクトは日本国内のプロモーションで有り、しかもカスタムバイクという、メーカーが取り扱うには少しばかり勇気が必要な題材を、ドイツ本国が積極的に取り上げたことを意味しているからだ。

 もちろんBMW本国は、R nineTの導入に際しオレンジ色のカウルをまとったコンセプトマシン「Concept 90/コンセプト・ナインティ」をティザーとして使い、昨年のEICMAでR nineTを発表と同時に、ヨーロッパのカスタムビルダーにR nineTのカスタムを依頼した、日本と同様のカスタムプロジェクトを展開してきた。また今年の10月上旬にドイツ・ケルンで開催されたモーターサイクルショー/インターモトで発表された新型ロードスター「R1200R」と「R1200RS」のティザーとしても、その約半年前に開催されたイタリアの歴史あるコンクール・デレガンスの会場で「Concept Roadster/コンセプト・ロードスター」というカスタム・コンセプトモデルを発表した。

 また欧州や北米で開催されている、アートやファッションやライフスタイルを丸め込んだニューウェイブのカスタムショーをBMWは積極的サポートしている。BMWはいま、カスタムシーンを積極的にとりこみ、そこでの存在感を肥大化させているのだ。
 
 これは何を意味しているのか、オートバイの根源的な楽しみ方への回帰や新規市場開拓など、さまざまな要因を想像することが出来るが、ここではもっと興味本位に想像を膨らませてみた。

 ひとつは小排気量クラスへのアプローチだ。かつて単気筒モデルをラインアップしていたこと、また近年の世界市場動向をみると新興国向けの小排気量クラスへの参入は、成長志向の企業としては当然のアプローチだ。しかしプレミアムブランドとしての現在の立ち位置を考えると、色んな意味でショックが大きい。

 もうひとつは電動バイクへのさらなるアプローチだ。すでにヨーロッパで電動スクーター「Cエボリューション」を試験的に導入しているし、四輪部門でもEV「iシリーズ」を積極的に推し進めている。そう考えると、コミューターとしてではなく、MCとしての電動バイクの開発をより進めてもおかしくない。

  いずれにしても、BMWとして大きな舵を切ると考えれば、そのウォーミングアップとして“カスタム”というBMWとしてはなかなかの劇薬だが、オール・バイクユーザーにとっては、比較的受け入れやすいシーンにアプローチしてきたのではないか? BMWほどマーケティングに長けたブランドが、インパクトだけを求めて派手なプロモーションを打つとは思えない。“カスタム”という手法を使い、二輪業界に変わりゆくBMWとしてのファーストインパクトを与え、今後さらなるインパクトが控えているのではないか? そう考えたとき、次なる大きなインパクトは「小排気量」や「EV」かもしれないし、全然違うアプローチかもしれない。そんな荒唐無稽の未来に思いをはせるもまた、バイクの楽しみのひとつだ。

 話をR nineTのカスタムに戻すと、4台のマシンがEICMAでどのような旋風を巻き起こすのか大いに楽しみだし、“カスタム”という手札を持ったBMWが今後、どのようなことを仕掛けてくるのか、楽しみで仕方ない。

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BMW Motorradデザインの責任者であり、R nineTの製品化や日欧カスタムプロジェクトを推し進めた中心人物であるオラ・ステネガルド氏。初代左右非対称のデザインを採用した「S1000RR」は彼の作品だ。彼自身もカスタムビルダーであり、スウェーデンの自宅とミュンヘンにあるBMW本社を行き来しながら、自宅脇に設えたガレージでビンテージハーレーやビンテージトライアンフのカスタムを行っている。

 

CLUBMAN RACER by 46Works

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 46Works/ヨンロク・ワークス代表の中嶋志朗氏は、新たな境地を見いだした。これまでもレーシングマシン的なインナータンク&FRPタンクカバーや外装のスワッピング、オリジナルシート&シートカウルなどの製作を行っていたが、今回は板金加工によるオリジナル外装に着手。いつかこんな日がやってくると、師と仰ぐ板金職人の元に足を運び、その技術を習得していたという。その技術とこれまで試行錯誤してきた車体製作のノウハウを投入し造り上げたのが「CLUBMANRACER/クラブマンレーサー」と名付けたこのマシンだ

 イメージしたのは、カフェレーサーよりも走りを強く意識し、街乗りやワインディングはもちろん、保安部品を外せばサーキットでも高いパフォーマンスを発揮するクラブマンレーサーだったのだ。

 前後サスペンションはオーリンズ製。R nineT用はまだラインナップされていないことから他のBMW用にオリジナルセッティングを施してセット。街乗りのほか、サーキット走行を重ねたときより綿密なセッティングを施せることがチョイスの理由だ。前後ホイールはBito R&D製マグタンを装着している。

 また排気系は、中嶋氏による手曲げチタンエキゾーストパイプにチタンサイレンサーの組み合わせ。あわせて車体右側に突き出るラムエアダクトはチタンパイプを手曲げし、エアクリーナボックスの形状も見直したことで、スタンダードでサーキットを走行したときに感じたトルクの谷を解消できたという。

 タンクなどの外装類やペダル類は、サーキット走行時のライディングポジションを優先して製作。シートレールは取り外し式とし、シートレールの変更でリア周りのポジションが容易に変更できるように考慮されている。
 これらの変更により、車体は30kg近く軽量化。それにより軽快なハンドリングに磨きが掛かっている。
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ヨーロッパ車を中心としたカスタムファクトリー、RitmoSereno/リトモ・セレーノを2001年に起ち上げ、BMWやモトグッツィといったヨーロッパ車のカスタムやレーサー製作を行っていた中嶋氏。2014年リトモ・セレーノから離れ、よりマニアックなカスタムマシンやレーシングマシンを製作するため、たった一人で46Worksを起こした。

●46Works http://46works.net/
 

 

CYCLONE by BRAT STYLE

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 簡単にホイールスピンしてしまうリアホイールが竜巻のようだと「CYCLONE/サイクロン」と名付けられたこのマシン。ブラットスタイルが得意とする“土”の匂いがするダートトラッカースタイルに仕上げられている。

 大きなトピックスはふたつ。水平基調の外装とクラシカルな足回りだ。

 大柄な4バルブフラットツインエンジンを抱くR nineTは、そのエンジンを中心にフロントセクションとリアセクションの2つのトラスフレームを採用している。フューエルタンクとシートによってふたつのフレームをリンクさせているが、ブラットスタイル代表の髙嶺氏は、それらに地面と平行な新しいフレームを追加することで、ステアリングヘッドからテールエンドまでを一直線で結ぶ、クラシックバイクに多く見られた直線基調を生み出した。さらにその上には、小ぶりなティアドロップタンクとトラッカーシートをセット。そのアンダーラインでも地面とのパラレルラインを作り上げることで、近代的な設えのR nineTにオーセンティックなシルエットを与えている。

 またBMWのスーパースポーツモデルS1000RRと同系統のノーマルフロントフォークと前後17インチホイールは、三つ叉類を含めクラシックなセリアーニ製に変更。あわせてフロント19インチ、リア18インチの大径ホイールを装着した。さらに2リーディングのドラムブレーキに変更することで、マシンのサイドシルエットを大きく変えることに成功している。

 この足回りの変更は、髙嶺氏が最後まで悩んだディテール。検証の結果、換装を決意したがそれによりマシンのイメージは大きく変わり、カスタムに着手する前からイメージしていた、ブラットスタイルでカスタムしたクラシックなスタイルのハーレーやトライアンフ、SRやXSといったマシンたちとともに走っても違和感がない“普通のスタイル”を手に入れることが出来た。
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海外には“Brat Style”というカスタムスタイルが存在するほど、代表の髙嶺氏が造る、ストリートに根ざしたカスタムマシンが高く評価されている。このマシンを完成させたあと、髙嶺氏はアメリカに渡り「Brat Style USA」の設立に奔走。現在はカリフォルニア州ロングビーチでオープン準備に追われている。今後は、いままでの拠点である東京・北赤羽とロングビーチから、新しいカスタムマシンを製作し続けていくという。

●ブラットスタイル http://www.bratstyle.com/
 

 

HIGHWAY FIGHTER
by CHERRY’S COMPANY

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 ハーレーを中心に、いままで数多くのカスタムを手掛けてきたノウハウを活かし、このR nineTカスタムも“チェリーズらしい”スタイルに持ち込もうと考えていた代表の黒須氏。しかしスタンダードのR nineTのほか、最新のデバイスや独自のサスペンションシステムなどを採用するBMWの最新モデルにも触れたことで、このプロジェクトをクラシックなスタイルを中心としていた自分たちが得意とするスタイルに持ち込むのをやめ、R nineTに乗ったときに感じた新しさを素直に表現することにしたという。

 そこで生まれたコンセプトが「フューチャー/未来感」だ。板金したアルミ外装でボディを包み込み、その中にはR nineTの空冷フラットツインが収まるのはもちろんのこと、たとえば近未来のBMWが電動ユニットを採用したときにも成立するカタチを作り上げている。

 柔らかな曲線を持つフロントカウル、タンク、アンダーカウル、シートカウルはアルミ製、グリルを持つエンジン前側のカバーのみスチール製とした。ボディを形成するすべてのパーツの面や線を丁寧に繋げることで、ひとつのパーツに見えるよう構成されていることにも注目したい。

 前後ホイールはハーレー用のアルミディッシュを加工して使用。フロント18インチ、リア16インチにサイズ変更されている。またフロントフォークはBMWのスーパースポーツS1000RR用。ローダウン化とともに、そこで幅広いサスペンションセッティングが可能なことからチョイスされている。

 シリンダーヘッドカバーはオリジナルデザインを起こし砂型鋳物で製作した。純正触媒や排気バルブなどもそのまま活かしながら、洋梨型のショートサイレンサーはオリジナルで製作した。
 高速道路を疾走する姿をイメージしたことから「HIGHWAY FIGHTER/ハイウェイ・ファイター」と名付けられ、そこでライダーの気持ちを昂ぶらせるため、ライディングポジションはなかなかの“攻め”のスタイルだ。
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外装類はもちろん、フレームまでも自作し個性豊かなカスタムバイクを多数製作しているチェリーズカンパニー。代表の黒須氏自身はメーカーやジャンル、スタイルにこだわることなく様々なバイクカルチャーやカスタムバイクのディテールを頭の中にストックし、ベースとなるマシンに合わせて、そのストックの中から最適のディテールを緻密に組み合わせていく。R nineTのカスタムをきっかけに、ハーレー以外のマシンも積極的に手掛けていきたいという。

●チェリーズカンパニー http://www.cherryscompany.com/
 

 

BOXER by HIDE MOTORCYCLE

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 唯一のフルカウルマシン、しかもFRPカウルを使ったただひとつのマシンがヒデモーターサイクルの富樫氏が作り上げた「Boxer/ボクサー」だ。ずっと富樫氏の頭の中で温めていたディテールを採用したこのマシンは、1960~70年代のレーシングマシンのオーラを放っている。

 丸みを帯びたカウルは富樫氏がワイヤーを一本一本張りめぐらせ、面構成のベースとなる骨組みを構築。それにウレタンフォームを流し込み、丹念に丁寧に面を作り上げることで、艶めかしいほどのこの曲面が生まれている。タンクに伏せたライダーのヘルメットもスッポリと覆ってしまうスクリーンも、このカウルに合わせてオリジナル製作。カウルとの一体感を生む緻密なラインも、富樫氏がウレタンフォームから削り出した。カウルの左右に飛び出す丸みを帯びたシリンダーヘッドカバーも、ノーマルカバーにパテを盛り“ツルンっ”とした面を起こし砂型鋳物で製作したものだ。

 またタンクやシートは、アルミ板の叩き出し。フレームラインやカウルとのシンクロ具合を計算し尽くし、しかしデザイン画を描くことなく頭の中で構築したカタチを、ハンマーを使い三次元化していく。しかも製作したタンク&シートカウルの表面は、バフ仕上げよりも滑らかで美しい面仕上げが要求される“ヘアライン仕上げ”され、アルミ地の美しいテクスチャーがそのまま、このマシンのビジュアル的キーポイントになっている。そこに描かれたイーグルなどはアーティスト/Nut Art Worksによる作品だ。

 フロントサスペンションは、マシンのポテンシャルを高めるためにS1000RR用に変更。前後ホイールはスタンダードを使用しながらリム部分のみをホワイトペイント。リアサスペンションもスプリング部のみメッキを掛けたスタンダード仕様だ。セパレートハンドルを装着するものの、車体姿勢やシート高はスタンダードとほぼ同じ。それによりR nineT的な軽快さをさらに強める方向でスポーティなライディングを楽しむことが出来る。
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ハーレーを中心に、フルカスタムからコンプリートまで、幅広いカスタムを手掛けるヒデモーターサイクル。スポーツスターを得意とし、そのカスタムの方向性を探るためサーキット走行にも頻繁に出掛けているという。またチョッパーシーンのみならず、MotoGPなど最新のレースシーンもしっかりとキャッチアップし、そこで育まれたアイディアがディテールとなって昇華することも少なくないという。

●ヒデモーターサイクル http://www.hidemo.net/
 
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