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カワサキ

前後17インチをはきこなす。
それがD-TRACKER Xの魅力。

 D-TRACKER XはKLXをベースに作られたフルサイズの250だ。その3サイズは、2130×795×1125(mm)という全長×全幅×全高と、1420mmのホイールベース、そしてシート高は860mmである。ハンドルバーの幅こそあるが、ボディーは細身という典型的なモタードルックを持つ。

 サスペンションのストロークは前ストローク230mm(φ43mm径インナーチューブの倒立フォーク(圧側16段調整付き)、後205mm(リンク式。リアは伸、圧とも20段階調整とイニシャルプリロードの変更も可能)。D-TRACKER X専用設計のロード向けチューンである。サスペンション同様、ブレーキ周りもロード向けに味付けされており、フロントにφ300mm径という大径ディスクプレートを採用するなど、性能面ではもちろん、モタードらしいスパイスの効いたルックスであることも見逃せない。

 シート高は860mmと低くない。でも痩躯長身であることも、モタードバイク系バイクの必須アイテムだと僕は思う。

 エンジンは基本的にKLXと共通スペックのものを搭載する。その外観も見慣れたKLX、D-TRACKER X系のそれだ。水冷DOHC4バルブ単気筒、燃料供給は電子制御のFI を備えるエンジンは、18kW(24ps)/9000rpm、21 Nm(2.1kg-f/m)/7000rpmを発生させる。スペックもKLX250と共通。かつて闘う4ストを標榜してデビューした当時程のスペック的驚きはないが、全域スムーズトルクを生み出す特性のエンジンに育てられている。

D-TRACKER X。ライダーの身長は183cm。
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軽快なエンジンが醸し出す
心地よい走りの世界。

 跨がると確かにシートの高さを感じる。しかしシートそのものは細身に仕立てられているので、足つき性は悪くない。KLXより幅が少し短く感じるハンドルバーに手を伸ばしたポジションは、肩幅より少し広めに開いて下ろす感じだ。僕の体格(身長183cm)だと座る位置との関係で、肘は自然と曲がったゆったりした感じになる。オフ車的でなんだかやる気が涌いてくるポジションなのだ。

 エンジンは72mm×61.2mmというボア×ストロークをもつ。このクラスではロングストローク系で、その回り方は軽快さがあり、回転の上昇とともにトルクがリニアに増量する4ストらしいもの。パンチとかドラマはないが、十分に速く扱いやすい設定だ。試乗車の走行距離が3桁未満ということで全開は控えたが、いわゆる慣らし領域の6000rpm以下を使っていても十分な走りを楽しめた。市街地ならあえて回さなければそれ以上を使う事もないだろう。

 また、細身でサスストロークが長いという痩躯長身スタイルから連想されるように、低速域での旋回感は切れた前輪に合わせ、クルリと回るタイプで取り回しがとてもラク。ちょっとリーンアウト気味のポジションが取れるライダーなら「なんだこれ!」と口にしてしまうほどUターンも楽だ。

 ここでも高いが細身のシートがライダーの動きを邪魔せず自在感を楽しませる。今回は長距離を走ってないので未確認だがロングでの快適性より市街地、スポーツ向けシートかもしれない。

 大径のぺタルディスクを持ったフロントブレーキのタッチは握り込みとパッドの食いつき感が絶妙。超絶スポーティーではないのだが、雨の市街地でも安心して使えるものではないだろうか。そしてスポーティーに走った時にも速度を落とすことに全く不足はない。110/70-17 、130/70-17というサイズのタイヤは、低速ではフロントタイヤの舵角を中心に旋回し、ペースが乗ると前後がともに寝て行く印象のハンドリングとなる。ペースを上げてリーンウイズでシートに体重を乗せた時、あるいはリーンイン気味に走った時でも、細身のシートはポジションがとても決めやすかった。

 今日は8000rpmまでと決めたが、ペースを上げたとき、エンジンは伸びやかにトルクを出し、高回転域までスムーズさを失わない。距離が進めばさらにスムーズさを増すのだろうが、それでも楽しさは十分。FIになってからKLXのエンジンはトルク感が低回転域から増し、あまりブン回さなくても走りに充実感と頼もしさを両立したユニットだと感心した。

 このエンジン特性とモタードバイクらしいハンドリング。オフ車ベースらしく、左右への切り返し時に直立した瞬間、サスペンションが伸び上がるような挙動がある。ロードバイクよりはフワっとするが、それも味なのだ。しかしストロークのある足が路面を捕らえて離さない。もっと行けるんだ、と思えた時、D-TRACKER Xの虜になるように思う。そこまで使うか使わないかよりも、常に“もっと遊べるよ”と語りかけるD-TRACKER Xの懐深い部分が嬉しい。実用としての移動が常に楽しいライディングになってくれる。

 なるほど、D-TRACKER Xが変化の早いこの時代に定番を張れる理由をあらためて発見したような気がした。

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KLX250をベースに、ロード寄りのデュアルパーパスマシンとして開発され、1998年に登場したD-TRACKER。「スリムな車体に17インチロードタイヤ。パワフルなKLEEN搭載の水冷DOHCエンジンや高い剛性を発揮する倒立フロントフォーク、ペリメターフレームなど、KLX譲りのパフォーマンスで街を駆け抜けるニューウエーブストリートバイク」(カタログより)として根強い人気に支えられてきている。D-TRACKER Xは、2008年4月にD-TRACKERをベースに、よりオンロードでの走行性能を向上させるべく、前後サスペンションに専用セッティングを施し、足つき性も向上、スイングアームにD断面を持つアルミ製を新採用するなどの発展を遂げたモデルだ。2012年3月に発売された’12年モデル、2012年11月発売の’13年モデル、2013年7月発売の’14年モデル、2014年7月発売の’15年モデルとカラー&グラフィックの変遷を経て現行モデルとなっている。現在は「エボニー×キャンディバーントオレンジ」と「エボニー×キャンディライムグリーン」の2色をラインナップ。
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■KAWASAKI D-TRACKER X(JBK-LX250V) 主要諸元

●全長×全高×全幅:2,130×795×1,125mm、ホイールベース:1,420mm、最低地上高:225mm、シート高:860mm、車両重量:138kg、燃料タンク容量:7.7リットル●エンジン種類:水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ、排気量:249cm3、内径×行程:72.0×61.2mm、圧縮比:11.0、最高出力:18kW(24PS)/9,000rpm、最大トルク:21N・m(2.1kgf-m)/7,000rpm、燃料供給方式:フューエルインジェクション、点火方式:CDI、始動方式:セルフ式、潤滑方式:ウェットサンプ式●トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン、クラッチ形式:湿式多板●フレーム形式:セミダブルクレードル、キャスター:25.5°、トレール:73mm●サスペンション:前・φ43mmテレスコピック(倒立)、後・スイングアーム(ユニ・トラック)●ブレーキ:前・φ300mm油圧式シングルグディスク、後・φ240mm油圧式シングルディスク、タイヤ:前・110/70-17M/C 54S、後・130/70-17M/C 62S。メーカー希望小売価格:563,760円。


ストリート・エンデューロ……
と、かっこつけたくなるKLXの出来映え。

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 ブレてない。KLX250で走り回って最初に感じたのがそれだった。かつて、4ストモトクロッサーのようなスタイルで登場したKLX250SRが登場した当時、激戦の250トレールバイククラスのなかでのポジションは、4ストなのに2ストキラーという存在だった。モトクロッサーに4ストエンジンを載せたようなスタイルに興奮した。乗れば速いのだが、嫌なトンがった特性ではなく、アクセルを開け続けたくなる扱いやすい高性能だった。ガンガン攻めてくなる高性能なシャーシも、その走りを援護射撃する。

 そして今日乗った現行モデルは、あのときの興奮を予感させつつ、全体でバイクとしての扱いやすさに磨きがかけられたという印象だった。

 KLX250は、水冷4バルブ単気筒エンジンをカワサキ独自のペリメターフレームに搭載し、フロントに255mmのストロークを持つφ43mmのカートリッジタイプの倒立フォーク、リアには230mmのストロークを持つリンク式サスを装備する。ともに減衰圧の調整が可能で、前は圧側16段階、リアは伸圧とも20段階に調整ができ、イニシャルプリロード設定も可能だ。ボディーアクションを邪魔しない7.7リットル燃料タンクはスリムなKLX250のスタイルの要でもある。また、ラジエターシュラウドの幅も絞られていて、ライディング時に膝廻りに自由度がある点も嬉しい。

 シートは細身に仕立てられ、890mmのシート高をうまくフォローしている。車体の細さもあって足をまっすぐに下ろしやすい。だから136キロの車体を停止時に支える時も不安が少ない。ステップ、ハンドルの位置も適切で、エンデューロバイク、モトクロッサーのようなスポーツマシン的にハンドルバーが少し低めに据えたようなポジションだ。


スムーズなトルク感のエンジン。

 KLX250のエンジンは実にスムーズなトルク特性を持っている。右手をひねり、回転があがるほどにトルクもリニアに増える印象で、開け始めにドカンと来るタイプではく、とても扱いやすい。エンジンに荒々しさは無いが、しっかりとしたパルス感を持ち、アクセルを開ける手とエンジンの回転数上昇がしっかりとリンクするようなタイプだ。メーターにはグラフ式のタコメーターも備わるが、視覚的に見なくてもエンジンを感じることができる。

 フロントに21インチを履くオフ系モデルらしく舗装路のハンドリングも軽快。もちろん切れ込むようなこともない。慣れてくると市街地で多用する左折レベルの低速ターンから細い道でのUターンまで自在に扱えるはずだ。サスストロークのあるバイクらしく市街地レベルでも吸収性が高く乗り心地は引き締まったなかにしっとりとしたものがある。シートは細身でライディング時の体の動きを妨げない。長距離での快適性がちょっと心配だが、KLXの運動性はライダーと一体感を持ったものだけにこの設定は的を得ていると思う。

 ツーリングペースで一般道を走ってみる。左右への切り返しや長いカーブで意のままにラインを選んで走ることができる。ブロックタイヤのゴロゴロ感は少なからずあるが、それでもロードでのグリップ感は十分かつしっかりとした接地感がある。また前後のブレーキも扱いやすいチューニングで初期の食いつき感をマイルドにし、その奥で解りやすく立ち上がるタイプだ。舗装路、そしてダートでの使い勝手も意識したものだけに、尖った部分はなく扱いやすさが印象的だ。

 舗装路を外れダートに入る。舗装路での印象よりもさらに4000rpm〜6000rpmあたりの回転域で、中間域トルクの充実を感じる。ゆったりとしたペースで走っていていも、アクセルに対するレスポンスがしっかりあるので操縦している感がたっぷり楽しめる。シフトの操作感やギアレシオも適切。グリップ特性の良いタイヤに助けられ、楽しい時間を過ごすことが出来た。これから林道やダートを楽しんでみたいけど、と思う向きにもオススメできる。

 全体としてKLX250は最新鋭な部分で武装したバイクではないが、市街地、ツーリング、そしてダートとデュアルパーパス250としてどのエリアでも楽しめるバイクにまとまっている。2灯ライトや回転計を備えたデジタルメーターなど、所有感を満たすディテールも多い。シートが高い、という部分がネガにならないライダーなら、一度試して見ることをオススメする。

(松井 勉)

KLX250。ライダーの身長は183cm。
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カワサキのデュアルパーパスマシン、KLX250シリーズは、1993年に4ストローク・エンデューロマシン、KLX250Rに保安部品をつけて登場したKLX250SRがスタートとなっている。2008年4月に環境対策でフューエルインジェクション採用等のマイナーチェンジを受けて以降は、基本的にはカラー&グラフィック変更のみのイヤーモデルで継続販売されてきている。最近では、2014年7月にカラー&グラフィックの変更が行われ(仕様諸元に変更なし)現在のモデルとなっている。ライムグリーンとエボニー、2色のラインナップ。
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■KAWASAKI KLX250(JBK-LX250S) 主要諸元

●全長×全高×全幅:2,200×820×1,190mm、ホイールベース:1,430mm、最低地上高:285mm、シート高:890mm、車両重量:136kg、燃料タンク容量:7.7リットル●エンジン種類:水冷4ストローク単気筒DOHC4バルブ、排気量:249cm3、内径×行程:72.0×61.2mm、圧縮比:11.0、最高出力:18kW(24PS)/9,000rpm、最大トルク:21N・m(2.1kgf-m)/7,000rpm、燃料供給方式:フューエルインジェクション、点火方式:CDI、始動方式:セルフ式、潤滑方式:ウェットサンプ式●トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン、クラッチ形式:湿式多板●フレーム形式:セミダブルクレードル、キャスター:26°30′、トレール:105mm●サスペンション:前・φ43mmテレスコピック(倒立)、後・スイングアーム(ユニ・トラック)●ブレーキ:前・φ250mm油圧式シングルグディスク、後・φ240mm油圧式シングルディスク、タイヤ:前・3.00-21 51P、後・4.60-18 63P。メーカー希望小売価格:543,240円。


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