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ヤマハ

 二輪免許、と言っても原付免許を取得した16歳の頃。同じく原付免許を取得した同級生が乗ってきたのが、彼の親父さんの黒いRX50 Special(キャストホイール仕様)だった。今で言えば「クルーザー」モデルだが、当時は「アメリカン」モデルと呼ばれ、ライダーの手前まで伸びたハンドルによって、原付とは思えない立派な車格を感じた覚えがある。ゆったりとしたライディングポジションとは裏腹に、搭載されるエンジンは7馬力もある2ストロークで、ある回転数を境にいきなり加速を始める2スト特有のトルク特性を初めて味わったのもRX50だった。多感な年頃に覚えたものは生涯忘れないと言うが、私にとってクルーザー・モデルと言えばヤマハ、というイメージが頭の中に植えつけられた。実際、ヤマハはXS Specialあたりから始まり、現在のスター・シリーズに至るまで数々のヒット作を放ち、クルーザー市場を牽引してきたと言える。

 ここに紹介するドラッグスター(DS)250もヒット作の1つ。ビラーゴ250から後を継ぎ、すでに15年近いロングセラー・モデルとなる。ヤマハはSRのように1車種を長く大切にするメーカーだ。

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 DS250に跨り、ハンドルに備わるチョークレバーの存在で、このバイクがキャブレター車であることに気づく。知らぬ間に日本のバイクは電子制御F.I.が当たり前となってしまった昨今、ナンバー付車両のキャブ車は他にホンダCB223/FTRやエイプ100くらい。ヤマハでは唯一の存在だ。別にキャブレターが時代遅れのメカと言っているワケではない。しっかりと排出ガス規制をクリアしているのだから全く不都合はない。おそらく、F.I.とは異なるフィーリングを楽しめる最後の車両になるのでは? そういう点で、DS250はとても希少な存在だ。参考までに、DS250は現在、国内4メーカーの250ccクラス唯一のクルーザー・モデルでもある。

 私はクルーザー・タイプのバイクに乗る機会はそう多くない。久々に乗ると最初、250ccとは言え その手足を前に投げ出す特有のライディング・ポジションに違和感があるが、しばらくすると慣れ、自ずと操縦の特性も体得している。ハンドルを左右いずれかロックするまで切ると外側の腕が伸び、小柄な女性にとっては不安になりがちだが、DS250はそんな人に合わせたハンドルとグリップ、シートがオプションで用意されている。

 同クラスのロードスポーツ・モデルと較べると、寸法的には大きめだが重量自体は重くなく、取り回しもラク。さらに低重心で足着きがいいので安心感がある。大きなキャスター角(寝たフロントフォーク)に乗り慣れていないと最初は戸惑いを感じるかもしれないが、こちらもすぐに慣れる。さらに時間が経てば大きなキャスター角度&ロングホイールベースの直進安定性の良さを実感し、その快適さは病みつきに。ピカッピカにメッキが施されたヘッドライトケースに映る流れ行く景色がとてもいい感じだ。

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 エンジンは、スロットルの開度に合わせて最適な点火時期制御を行なってくれるスロットルポジションセンサー付きキャブレターを1基備える空冷Vツインだ。感じとしては”スルスルスル”という適度な鼓動を伴う回転フィールがだんだん心地よくなっていくエンジンで、ユーミンじゃないが”優しさに包まれ”ているよう。ビラーゴ時代から受け継がれる伝統あるユニットは旧態化したイメージがあったが、想像は裏切られた。その味わい深いフィーリングはDS250最大のチャームポイントとも言えるかもしれない。スロットルやクラッチも軽いので、女性にとっても扱い易いだろう。

 ロー&ロングのゆったりとしたポジションのクルーザー・モデルに乗ると気分は一新。非日常感が味わえる。一方で250ccクラスなので毎日の足としてもオススメだ。

 毎年全国3ヶ所で同時開催されているスター・ミーティング(2014年のスターミーティングのレポートはコチラ→http://www.m-bike.sakura.ne.jp/?p=75786)に多くのオーナーが足を運んでいることからもわかる通り、DSには根強い人気があり、確固たるブランド・イメージを確立。そのファミリーの根底を支えているDS250はDSワールド、さらにはクルーザー・ライフの”入口”として、これからもラインナップに欠かせない1台、と言えるだろう。

 尚、DS250に2015年モデルの新色として「マットグレーメタリック3」(マットグレー)を設定。なめし革調の風合いを持つシート表皮を採用した専用鞍型シートも装備し、1月20日より発売されている。

(試乗:高橋二朗)

ドラッグスター250クラシックエディション。ライダーの身長は173cm。
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2000年の春に登場した軽二輪版ドラッグスター。ドラッグスター・シリーズの末弟として、それまでのビラーゴ250を発展させたモデルで、400や1100とイメージを共有する本格的なロー&ロング・スタイルを採用している。その後のマイナーチェンジにより、エキゾーストの取り回しの変更など、一部変更を受けてきているが、基本的には登場した当時のままのスタイリングを踏襲している息の長いモデルだ。

2008年5月に、ハンドル形状および左右レバー形状の変更、ホワイト&ブラウンカラーのメーター、酸化還元触媒を採用した新型2-1タイプマフラー、ブラックとブラウンのツートーンシート(ブラックを除く)などを採用。その後は、2010年12月にブラック系のエンジンをシルバーからブラックに変更、タンクのピンストライプ等のグラフィック変更が行われた。

2012年3月には、“レトロ感とクオリティを調和”というキーワードで、クラシカルなカラーリングなどを施した“CLASSIC EDITION”が追加設定された。ニューホワイトという新色のホワイトボディがベースで、ツートーンカラーの燃料タンクおよび前後フェンダー、サイドカバー、ホワイトの塗装を施したエアクリーナーボックス、エンボス加工による「Drag Star」のロゴが入ったブラウンのシートなどを採用していた。

ドラッグスター250の特長としては、全てにオーソドックスというキーワードがピッタリで、操作しやすいブレーキ&クラッチレバー設計を始め、自然な乗車姿勢がとれるハンドル&グリップ位置、扱いやすい空冷Vツインエンジン、エアインダクションシステム、スロットルポジションセンサー、酸化還元触媒をなど装備。なめし革調の風合いのシート表皮を採用した鞍型シート、ロー&ロングを具現化するダブルクレードルフレームを採用している。
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●ドラッグスター250 主要諸元

■型式:JBK-VG05J■全長×全幅×全高:2,320×935×1,070mm■ホイールベース:1,530mm■最低地上高:150mm■シート高:670mm■車両重量:160kg■燃料消費率:51.0km/L(60km/h定地走行テスト値)■最小回転半径:2.9m■エンジン種類:空冷4ストロークSOHC2バルブV型2気筒■総排気量:248cm3■ボア×ストローク:49.0×66.0mm■圧縮比:10.0■最高出力:15kW(20PS)/8,000rpm■最大トルク:19N・m(1.9kgf・m)/6,000rpm■燃料供給:キャブレター■始動方式:セルフ式■点火方式:TCI(トランジスタ式)■燃料タンク容量:11L■変速機形式:常時噛合式5段/リターン式■タイヤ(前×後):80/100-18M/C 47P×130/90-15M/C 66P■ブレーキ(前×後):油圧式シングルディスク×機械式リーディング・トレーリング(ドラム)■懸架方式(前×後):テレスコピック×スイングアーム■フレーム形式:ダブルクレードル■車体色:ディープレッドメタリックK(レッド)、ブラックメタリックX(ブラック)、ニューホワイト(ホワイト/ブルー)■メーカー希望小売価格(消費税8%込み):594,000円(クラシックエディションは615,600円)


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