夏本番、いかがお過ごしでしょうか。暑い暑いと嘆いても涼しくなりませんが、嘆かなくても涼しくなりません。「熱中症防止のため適度に冷房を使用しましょう」と言われても私の部屋にはクーラーがありません。とぼやいていても、誰か霧ヶ峰を取り付けてくれるはずもなく、「にくいね♡」の杏ちゃんのようなお嫁さんがいるわけでもありません。若林さんの演技もうちょっとなんとかならないものかと困惑顔なのは、杏ちゃんファンではなく、杏ちゃん自身ではないかと思う今日この頃です。私事で恐縮ですが、私は杏ちゃんよりも井森美幸に魅力を感じるので、ひょっとしたら鮒のなれ寿司も好きかもしれません。食べたことないですが。

　さて、夏と言えば冷たいソです。茶色いお上品な電車や、歌いながら踊るおねーさん劇団で有名な某関西私鉄系列の某立喰・ソでこの夏「かき氷そば」という、コロンブスの卵とじ（←意味はおのおの考えてみよう）的ソを発売しました。関東でもぼちぼち見かけるコロンブスの玉子丼（←前同）的発想から生まれた「ポテトそば」を生み出したあの立喰・ソが再びやってくれたのです。
　かき氷そばとはいかなるものか、たぶん貴方が想像するそのまんま。かき氷というからには何かしらシロップが必要ですが、もちろんシロップはそばつゆ。冷やしを謳いながらも、実際にはたいして冷えていないどころか生ぬるかったりする冷ソに、憤懣やるかたなしという貴殿にぴったりのキンキンな、頭が痛くなりそうな冷ソに違いないはず。
　と、ここで驚くのは、実はまだ早い。このかき氷そばには天ぷら添えというメニューもあります。平成キッズのみなさんの「だから？」という困惑した表情を思い浮かべつつ解説するまでもないのですが、ウナギとウメボシ、カニとカキでおなじみ合食禁（=食べ合わせ）の代表格である氷と天ぷら！　この破天荒で挑発的な組み合わせは、合食禁を信仰して止まない昭和生まれにはかなりの刺激です。なんでもかんでもクレームをつける輩も多い昨今ですから「氷と天ぷら、どないやちゅーねん！　食べたらぽんぽん痛くなったやないけ!　おわびに温かいソをだしたらんかぃ。ついでにポテトもや！」と合食禁詐欺が頻発しないことを東方より念ずるばかりです。そんな心配よりもポテト、かき氷に続く第三弾は？　予想しながらわくわくと待ちましょう。
　他にもドカベンやあぶさんでお馴染みのだった今は亡き某球団の親会社である某電鉄会社の立喰・ソも、7月の期間限定ではありましたが名物箸タワーの中に無料券やトッピング券が当たる箸を仕込んでみたり、肉、エビ天、イカ天、かき揚げ、昆布、山菜、梅、きざみ、あげ、玉子と10品も載せた「具が多すぎるそば」（毎日限定50食。500円）を出したりと、関西電鉄系立喰・ソはもりもり元気です。関東電鉄系ソも負けないように頑張っていただければ、停滞気味の日本経済の起爆剤の信管の先のコードに付いた埃くらいの役割は果たせるのではないかと大いに期待しておりますが、東は電鉄系ソ自体が縮小傾向ですから……。

　という明るいんだか暗いんだかの話題があれば、今月もまた悲しいおしらせがあるのが浮き世の定め。最近知ったのですがこの浮き世、浮かれていることかと思ったらその真逆、本来はつらい、はかないの憂き世の意だそうです。50年以上生きていますが、今までこの件で窮地に陥ったことはまったくありませんでした。が、きっとどこかで誰かに「ほんとに言葉知らねえバカだな」と思われたことでしょう。それも今日から立場逆転。もし浮かれ浮き世人間がいたら、差し出がましく注意することなくにやにやします。みなさんご存じのように、私の度量はそうめんより細く、蝉の一生よりもはるかに短いのです。いつものように自分逆自慢で本題からはずれました。すみません。
　

　第46回でお送りした錦糸町。町自体にはいい思い出はないのですが、第46回にはいい思い出があります。今一度お読みになっていただいても一向にかまいませんが、とてつもなくおもしろいとか、キレがあるとか、ためになるとかそういうことは、他回同様一切ございませんのご安心ください。ただ、生放送中に相方をぶん殴って捕まったあの人のことがさらっと書いてあったりしますけど。
　実は第46回をアップした直後、かの坂崎師匠から直々にメールをいただいたのです。以降ことあるごとに、ことなきときも、「ねえねえ師匠、教えて教えて」とおねだりしっぱなし。まさに坂崎師匠にとっては痛恨のミス、私にとっては千載一遇のチャンスをものにしたというわけなのです。
　その46回の下の方に6店の立喰・ソが出ていますが、現在錦糸町に残っている立喰・ソは、旧日本国有鉄道と旧帝都高速度交通営団の駅内の4店舗（1店は写真なし）と、農水省直轄の集金処東館7階（これも写真はなし）に1店舗、そして今は立喰・ソというより呑み屋さんに軸足置いている○源の計6店です。写真のうちの3店は、すでに幻立喰・ソ化です。

　そんな錦糸町で孤軍奮闘していたのが「つるよし」でした。錦糸町駅前、国道14号線を渡る大きな歩道橋（日本初のエスカレーター付き歩道橋で話題になった）に隠れがちなこの立喰・ソ、外から見ると広そうに見えますが、へんな形の店内は意外と広くなかったのです。朝は出勤前のサラリーマン、昼は勤め人、土日ともなれば集金処に有り金すべて預けにやってくる源さんたちで、狭い店内は賑わっておりました。なのに、ああそれなのに、2016年6月30日、幻立喰・ソになってしまいました。閉店のお知らせによれば、最近よく目にする耳にする幻立喰・ソ化のワースト3に入るであろう、契約更新が原因のようです。やる気も気力もあるのに発揮できる場所がないとは、やるせない、せつない、ふんまんやるかたないのないないづくしです。
　ずいぶん昔からあったような気がしていたのですが、オープンは平成16年（2004年）だそうです。ついこの前のような気がするのですが、すでに10年以上も昔の話。高知競馬のハルウララが100連敗を越えて、名物アナ杉本さんが宝塚記念の実況から引退し、三連単の全国発売が始まり、ノーザンテースト世を去ったあの年です。バイクではスマートディオがマイナーチェンジして、スマートディオデラックスに新色が追加され、1000台限定のディオスペシャルカラー、FI+4バルブになったスマートディオZ4、ディオチェスタが出た年といえば、みなさんの脳裏にも鮮やかに当時が蘇ることでしょう。

　これから10年先、錦糸町はどんな町になっているのでしょう。予言者でも予知能力者でもない後期高齢者予備軍の私が確実に言えることはふたつだけ。せっせと集金処にやってくる源さんたちが10だけ齢を重ねているか、三途の川を渡っているか。このいずれかということです。
　三途の川を渡った源さんはもう錦糸町に戻れませんが、つるよしが再び蘇ることを願いつつ、錦糸町からさようなら。