幻立喰・ソ

第76回「お品書きの謎を解くフリをして、くどくどと説く」


お品書き

 
 まずは、上の写真をご覧下さい。
 特になんてことのない、どこの立喰・ソにもありそうなお品書きですね。さっそく上から順に見ていきましょうか。え? フレンドリーぶってるが、なんでそんなことにつきあうんだ? なるほど。でもね、こんな駄コラムをわざわざ読みに来てしまったんだからしょうがないですよ。間違って来た人も、すべてをあきらめて読み続けてください。

 まずはどこにでもあるかと思えば、価格設定が高めの立喰・ソ(観光地、施設内などにありがち)にはなかったりする「かけそば290円」。大都市圏視点だとやや高めに感じますが、まずまず妥当な価格でしょう。
 次の「月見そば320円」。かけ290円に、下から3つ目にある生たまご30円を落とした価格です。一見何の問題もないようですが、立喰・ソにおいて月見そばとは呼ばず、玉子そば、または、設定自体がなく、かけそばに生たまごのトッピングというパターンもよく見かけます。特に老舗系には多いように感じます(あくまで個人の意見です)。とはいえ、問題にして騒ぎ立てることでもありません。



びっくりそば


えきめんや三浦海岸店
耳なし芳市状態の多彩なメニューに、まずはびっくりな老舗中の老舗だった亀戸のびっくりそば(左 第39回参照)は、玉子そばの表記(2011年8月撮影)。奇跡の復活も一度だけだった(第56回参照)、えきめんや三浦海岸店(右)も玉子そば表記。ちなみに各店の「クセが強すぎるんじゃ!」でおなじみ(だった→改装前の話)えきめんやの場合(2011年1月調査時点)、月見組が品川、川崎、鶴見、弘明寺。玉子組は横浜、追浜、新逗子、横須賀中央、北久里浜、久里浜、三浦海岸。お品書きになし(トッピングとしては存在)組が金沢文庫という見事なバラバラっぷりで魅せてくれました。

 
 その次は覆い隠されたメニューです。気になりますが、メニューの改廃は特に珍しいことではありません。たぬきそば330円あたりが隠れてそうな気配ですが、邪推はやめましょう。「ご自由に空想してお楽しみください」という心にくい演出やもしれませんから。
 お次は「山菜そば360円」。大都市圏では珍し系メニューの一類ですが、山国日本としてみれば、特段珍しくもない準レギュラーメンバーです。お品書きの下に貼ってあるステッカーを見れば、納得の一品でしょう。



万葉そば


想い出そば
珍しいトッピングはいろいろありますが、店名を冠したソもリスペクトを込め一度は試しておきたいものです。左はつい先日長い歴史に幕を下ろした千葉駅菜の花そば(よくよく調べたら旧湾岸そばが菜の花そば千葉駅西口店となってブランドは健在のようです)の前身、万葉軒時代の万葉そば(2003年12月撮影)。右は思い出になってしまった、青梅駅の想い出そばの想い出そば(2005年4月撮影)です。得てして品名と内容に特に関連性がないのが最大の特徴でしょうか。

 
 次の「きつねそば360円」も、キツネの肉が入っていれば超珍品ですが、100パーセントお揚げさんでしょう。下から2番目のきつね70円も同様に、FOX MEATが出てくるわけではありません(間違いなく)。「そんなこと、おまえごときにくだくだ言われんでも解っておるわ!」と憤懣やるかたない貴方の姿がまぶたに浮かびますが、初来日の外国人観光客にみなさんに向けて“Fox, if directly translated into English. Rest assured you are not eating fox meat. It comes with deep fried bean curd.”、(第57回参照)と、イルカやクジラみたいな問題にならないようにかどうかまでは定かではありませんが、深い配慮している立喰・ソもあるくらいですから、これくらいは辛抱してください(何かを)。

 きつねの次は大定番の「てんぷらそば390円」。「てんぷらそば」または「かき揚げそば」と表記は立喰・ソによって異なりますが、十中八九いわゆるかき揚げタイプです。かなり激しく間違っても、エビ天2本にキス天にハスとイモ天ということはまずありません。これもトッピング+かけそばという正しい価格、最下段を見ればわかりま……ん? あれあれれ? 「てんぷら」ではなく「かき揚げ」です。と言うことは、てんぷらそばに搭載されるのは、いわゆるかき揚げではなく、他の天ぷらということでしょうか? 隠されたとなりの部分にも目を奪われますが、まずこの問題にシロクロつけなくてはいけません。が、とにかく先に進みます。



豊しま秋葉原店


日本亭
立喰・ソにおける「てんぷらそば」と「かき揚げそば」の問題ですが、天ぷらラインアップがかき揚げしかない場合は、天ぷらそば。天ぷらがいろいろある場合は、天ぷらの一種類としてかき揚げそばと表記されることが多いようです。が、そう言い切れないのはみなさんご存じのとおり。要は主の胸先三寸で決まるのです。左は坂崎師匠が司法試験勉強中の女性店員に誘惑されたことで有名な(第70回参照)豊しま秋葉原店の天ぷらそば(2002年4月撮影)。右はある意味日替わりかき揚げだった(第22回参照)日本亭のかき揚げそば(2002年7月撮影)。どちらも今では食べられません。

 と、その前に、なぜか山菜だけトッピング設定がありません。「てんぷらそばに山菜をトッピングしたいのに、もうプンプン(さとう珠緒風に)」という方もいらっしゃるでしょうに、なんて意地悪でしょう。
 いえいえそうではありません。賢いみなさんならとっととお気づきと思いますが、山菜そばにかき揚げをトッピングすればいいだけのことです。きつねもたまごも同様ですからご安心ください。唯一不可能な組み合わせは、どんだけ山菜好きなんだよな、山菜そばに山菜トッピングのみ。ですが、先に記したように、てんぷら=かき揚げという大前提です。もし、てんぷらそばの天ぷらとトッピングのかき揚げが別物だった場合、てんぷらと山菜の組み合わせは永遠に不可です。いや、てんぷらそばと山菜そばを注文して合体させればいいのか。いったいなんの心配をしているのかよくわからなくってきました。



内藤新宿


おこのみそば
トッピング問題といえば、忘れられない内藤新宿そば(左)のダブルスタンダード問題(第21回参照)←大袈裟(2011年5月撮影)。そしてトッピングにより人間性を試されたのが(第1回参照)右の品川駅東海道線下りホームにあったおこのみそば(2006年7月撮影)。

 と、横道にそれたところでラストの「天玉そば420円」。一般店ではあまり目にしないメニューですが、立喰・ソではこれも定番です。てんぷらそば390円+生たまご30円=420円。複合メニューでも単品でもまったくブレのない設定です(お得感がないともいう)。ですが、天玉そばの天も玉も単品設定はありません。ほら、よーくメニューをご覧下さい。オールひらがな表記の「てんぷら」や「かき揚げ」はあるのに漢字表記の「天(ぷら)」はないでしょ。同様に生たまごはあっても「玉(子)」がありません。かけそばにトッピングのかき揚げと生たまごを載せれば、天玉そばと同じソが供されるのか、それともてんぷらそばとは異なったソなのか。異なったソであれば誰もが納得ですが、たぶんというか、間違いなくどちらでも同じソが出てくるでしょう。同じソなのに名前が違う。これっておかしくないですか?

「おかしいのは、おまえの頭だよ……」もう、そろそろ怒りを通り越し呆れ声が聞こえてきます。が、空耳でしょう。さらに「そんな揚げ足取りをするのなら、月見と生たまごはどうするんだよ」という、あちゃ〜、あえて避けていたのに、痛いところ突かれちゃったなぁ……にはこう応えます。
「揚げ足? ああ、ゲソ天のことですね。おいしいですよねゲソ天。一由にはミニゲソ60円、ゲソ110円、ジャンボゲソ140円と予算とおなかの具合に合わせて選択出来て、まこと嬉しい限りです」と。



ゲソ寿司


ゲソいなり
24時間年中無休バリバリの現役店ですが、話題だらけで伏せ字に出来ない日暮里の一由。最近のイチオシゲソはゲソいなり(右)です。センセーショナルなデビューを飾ったゲソ寿司(左)がいなりの衣を纏って進化、いわばゲソ寿司がピ○チュウなら、ゲソいなりはラ○チュウ。でもピカ○ュウとライ○ュウじゃ人気ダンチだなぁ。まあ、細かいことはともかく、さあ、みんなでゲソいなりゲッソだぜ!(2016年10月撮影)。

 こんな戯れ言を綴っている間にも、否応なし待ったなしに、幻立喰・ソは増加の一途。なのにそれなのに、取材不足(という名の取材力の欠如)で、書くに書けない(どあほうAT○Kの楽しい変換→角煮賭けない)今日この頃、ゆえにメニュー一つで一回分をでっち上げるという、荒技をご披露させていただいた次第です。

 最後はもう一度話をお品書きに戻します。
 一番気になる最下段右に隠されたメニューですが、次回はその謎をとことん追求していきたいと思います(思うだけです)。 

●立喰・ソNEWS 2016
ソはウより高級品なのか、それとも単なるいやがらせ??

某新T高速道路の某PAのフードコート。立喰・ソは見当たりません。しょうがないのでウがウリの某店に行き、お品書きを見たらびっくりぎょうてん。「かけうどん290円 かけそば490円」ええええええええ! 四国ではソがウより高いのはよくあることですが、200円アップ! 200円も高いソを味わうのも一興ですが、490円あれば一由で、ジャンボゲソにゲソいなりを食べてもおつりがきますから、ウでお茶を濁しました。それはともかく、調理を担当していたおっちゃん、注文しても顔は上げない返事はしない、どんぶりの扱いもぞんざいと無愛想の特盛でそちらに興味が轢かれました(惹かれるの誤変換ではなく)。心も財布も小さい私ですが、宝くじが当たったら、無愛想特盛で世界一まずそうに感じるであろう490円のかけそばにチャレンジしてみたいものです。



Kうどん


ゆう庵
西に行けばウ文化ですから、ソが高くなることも理解しております。左は熊本駅のKうどんで50円増し(現役店です。期待していなかったのですが、ソもおいしかったです)。右は幻立喰・ソになってしまった四国は伊予西条のゆう庵でこちらは20円増し(2013年6月撮影)。このように許容範囲は50円くらいまでではないかと思いますが、みなさまはいかがお考えでしょうか。「嫌なら喰うな!」が正解ですかね。

●臨時速報!立喰・ソNEWS 2016
本八戸、まさかの復活!! 

前回幻立喰・ソになってしまいましたと宣言してしまった本八戸のつきだ亭。だってWEBサイトのフロアガイドから店名が消されていたんだから(2016年11月29日現在も)、そう思ってもしょうがないですよね。ね、ね……でね、今年最後の大人の休日パスで跡地視察に行ったら、びっくりぎょうてん。なんと営業しているではありませんか! そのかわりもう一軒のほうは……詳細は次回、というわけで、本八戸のさくらの百貨店にお越しの際はぜひご賞味を。



つきだ亭


つきだ亭
現役店ですがご紹介させていただきます。だって前回の間違いはきちんと正しておくのが道理です。それに復活はめでたいことですから。11月10日から再開したそうです。でっかいかき揚げは自家製です。「前と同じ店なんですよ」とおっしゃっていましたが、トッピングは変わったみたいです。前を知らないのでよくわかりませんが。

バソ
バ☆ソ
日本全国立ち喰いそば全店制覇を目論む立ち喰いそば人。やっと1000店以上のデータを収集したものの、ただ行って食べるだけで、たいして役に立たない。立ち喰いそば屋経営を目論むも、先立つものも腕も知識も人望もなく断念。で、立ち喰いそば屋を経営ではなく、立ち喰いそば屋そのものになろうとしたが「妖怪・立ち喰いそば屋人間」になってしまうので泣く泣く断念。世間的には3本くらいネジがたりない人と評価されている。一番の心配事はそばアレルギーになったらどうしよう……。


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