幻立喰・ソ

第96回「夢見るシャンソン人形町」

 
 メロディはみんな知っているのに、最初の部分しか歌えない歌の大将格といえば「夢見るシャンソン人形」(もちろん日本語バージョンの方)。原題は「Poupée de cire, poupée de son」(フランス語です。発音? わっかりますぇ〜ん←フランソワーズ・モレシャン調で)。グーグル翻訳したら「ワックスの人形、彼女の人形」だそうです。ワックスの人形? 
 それも気になりますが、そもそもシャンソン人形ってどんな人形なんでしょう。1965年に日本盤が発売されて以降、「シャンソンってフランスじゃん。だからそんな感じの人形っしょ」と、曖昧なまま認知されているのはいかにも日本的(たぶん)。だから私がシャンソン人形の真相を解明するかと思えば、そんなこともなく、ただの人形つながりで東京都中央区人形町へ。
 
 人形町交差点付近にはF士そば人形町店(東京メトロ日比谷線人形町駅から約69m、以下同)、K諸そば人形町駅前店(約150m)、すこし離れてY太郎人形町2丁目店(約290m)の三大立喰・ソチェーンをはじめとして、じわじわ店舗が増えているS助人形町店(約140m)に、シブイ店構えのKうち(約160m)。水天宮方面にはFそば(約250m)、R文そば人形町店(約300m)と(現役店は当コラムのあってないルール通り一部伏せ字ですが、写真を見れば一目瞭然……なおざりではなく、おざなりです)半径300m以内に名店がひしめく二百三高地か関ヶ原か、はたまた日本人には知られていないけれど、実はとてつもない大激戦のペリューとまではさすがに言えませんが、結構な立喰・ソ激戦地帯です。人形町とはいえ、シャンソン人形が夢見みる甘い町ではないのです。甘酒横丁はありますが。

 そんな群雄割拠のど真ん中、しかも大将格F士そばの真っ正面に2016年の夏頃、はせ川は突然出現したのです。突然といっても一夜で出来たわけではなく、通りかかった私が突然気がついたというだけの話です。
 それが突然ハンバーグ屋さんになっていました。これまた久しぶりに人形町を訪れた私が、突然発見したというだけです。残念ながらはせ川は、2018年3月31日限りで幻立喰・ソになってしまったそうです。



はせ川あと


富士そば


小諸


ゆでたろう


そば助


きうち


福そば


六文
はせ川の後に入ったハンバーグ屋から振り返れば、交差点を挟んでF士そば。西にK諸、東はY太郎。東南にはS助、南へ下ればKうち、Fそば、R文と名店がひしめく、夢見るような人形町。(2013年〜2018年月撮影)

 
 はせ川は、石臼による自家製麺、女性一人でも入れる落ち着いた雰囲気で24時間営業。しかも呑むこともできました。雰囲気からして、これまた三大チェーンに迫る勢いのS峨谷系かと思ったら全く違いました。後に入ったハンバーグ屋ははせ川と同系列のようですから、ひょっとしたら人形町交差点という地の利を生かしたアンテナショップ的な役割だったのかも知れません。



はせ川


はせ川
現役時代のはせ川。わかめ入れ放題。そばも天ぷらもクオリティ高かったのに……ちなみに、千葉の船橋駅前に出来たKは名前は違えども系列のようです。どうりで雰囲気がそっくりでした。(2010年11月撮影)

 
 これを書いている今日はお盆真っ盛り。個人系立喰・ソはお盆休みなので、おとなしくお墓参りに行って、仏壇に手を合わせるのが、日本の正しい夏です。
 私もお墓参りに行ってきました。で、ふと思ってしまったのです。それぞれの宗教宗派によっても異なるのでしょうが、日本では、一般的に死んだらあの世へと旅立つわけです。だから三途の川の渡し賃の六文銭とか持たされるんです。ということは普段はあの世にいるわけです。お盆とかお彼岸は現世に帰省してくるのですが、帰省先はお墓ではなく自宅の仏壇でしょう。ということは、お墓に遺骨は保管されているけれど、ご先祖様の魂は不在? では、いったいなにに手を合わせているんだろうか? などと、罰当たりなことを思いながらも、大汗かいてヤブ蚊にさされながら、お墓掃除をしてお参りすれば、なんとなく肩の荷が降りますから、それでいいのだ。
 
 シャンソン人形から入って、人形町を経由して唐突にお墓。いったいなんの話かといえば、もちろん立喰・ソです。墓地の中に立喰・ソはたぶんありません。これがほんとの、「はかない立喰・ソ」。おあとがよろしいようで……許してください。才能の夏枯れです。夏枯れ? すいませんいつもどおり曖昧に終了。

●幻立喰NEWS2018 
黄色から赤色に変身

向かい合っているのに東武伊勢崎線は牛田駅で、京成本線は関屋駅と駅名が違うというややこしい両駅の間にあった富士三屋は、2018年1月いっぱいで幻立喰・ソになってしまいました。昭和の私鉄駅前立喰・ソテイストあふれるすんばらしいお店で、立地条件もよかったし、おかあさんも優しかったしでファンも多かったのに。その後どうなったのか、先日行ってみました。そしたらなんと黄色い富士三屋が真っ赤な雑賀屋(さいかや)という立喰・ソになっておりました。地元の立ち飲み屋さんのようですが、看板やのれんにあるように立喰・ソもやっています。これはうれしい! すでに3杯食べたあとで残念ながら食べられませんでしたが、朝6時から夜24時と営業時間も長いし、呑めるし、近いうちに行かねばなりません。



富士三屋


さいがや
京成関屋駅から幻立喰・ソになってしまった黄色い富士三屋を見る(左・2018年1月撮影)。牛田駅から真っ赤な新店の雑賀屋を見る(右・2018年8月撮影)。

バソ
バ☆ソ
日本全国立ち喰いそば全店制覇を目論むただの立ち喰いそば人。やっと1200店以上のデータを収集したものの、ただ行って食べるだけ。立ち喰いそば博物館設立を目論むも、先立つものも腕も知識も人脈もない。しょうがないので立ち喰いそば店そのものになることを夢見るも「妖怪・立ち喰いそば屋人間」になってしまうのであっさりと断念。なので世間的には13本くらいネジもナットもたりない人。心配事はそばアレルギー。


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