全日本ちょこちょこっと知っとこ

「オートレーサー益春菜」への道

 いくつかの質問がつづいたあと

「もう・・モトクロスの話は・・・・」

そういうと、わっと泣き出してしまった益春菜ちゃん・・。

第32期オートレース選手候補生の入所式後の個別インタビューでの出来事でした・・。

「昨年末から、チーム監督の佐藤さんよりお話を聞かされてました。自分としては、アメリカに行くと思っていたし、アメリカでレースをしたいとずっと思っていました。ですが、健さん(佐藤監督)に『冷静に先のことを考えよう』といわれて……」

 
 冷静に……それは、これまで努力し続けたレディスモトクロスとの決別でした。



益春菜(ますはるな)1986年10 月20 日生まれ(25歳)5歳からモトクロスを始める。2008~2011年 全日本モトクロス選手権レディスクラスチャンピオン。

 
 春菜ちゃんを小さいころから娘のように面倒みてきて、モトクロスの厳しい現実もよく知っている佐藤監督が、春菜ちゃんのことを真剣に思って言ったことです。

 
「凄く悩みました、モトクロスでは稼げない。オートレースに転向すれば大金が稼げる。モトクロスの業界に対しては、申し訳ない気持ちでいっぱいですが・・・これからはオートレースで活躍して、モトクロスをやってて良かったと思いたいし、モトクロス出身ということをずっとアピールしていきたい」


益春奈ちゃん

 
 最後はしっかりした言葉で締めくくった春菜ちゃんの目は、オートレース選手としての覚悟と未来を目指していました。

 人生の選択というものは、もっと明るく晴れ晴れしいものであってほしいのだけど、誰が25歳の女性にこれだけの荷物を背負わせてしまったのでしょうか……

 4度のレディスチャンピオンに輝き、レディスモトクロスを代表する 選手になり、みんなの憧れでありつづけた益春菜。

 生活のほとんどをモトクロスに捧げ、アメリカのレースに挑戦する夢を捨ててまで、オートレースに転向しなければならなかった現実はあまりに も厳しい。

 モトクロスファンであれば、いつまでもモトクロスの世界で頑張ってほしいと思うものの、レディスモトクロスの抱える問題は大きく、選手としての契約金、賞金も低く、メーカーの保証もない。どれだけ活躍していても、内情はプライベーターの選手と変わらないのが現実だ。夢も大事だけど、お金がなければ何にもならない。

 そのため、春菜ちゃんも料理の専門学校に通って、普通の就職活動も続けていました。

 その就職先が、オートレース。オートレース候補生としての入所後の個別インタビューで見せた涙は、モトクロスが大好きで、今までモトクロス一筋に打ち込んできて、それでもモトクロスと決別をしなければならなかった益春菜の、抑えきれないモトクロス愛があふれだした瞬間でした。


益春奈


入所式では、来賓の方が祝辞のなかで選手たちにいくつか質問をなげかけました


「『バイクが好きだ』というひとは?」


「オートレーサーになれば、大金が稼げると思う?」


 そのような質問にたいして、真っ先に手をまっすぐ上げたのが春菜ちゃんです。


 何の迷いもなく、オートレーサーとして突き進んでいく強い春菜ちゃんがいました。



 レースの業界としては、スターがいなくなるのは本当に寂しい。だけど、春菜ちゃんの人生を切り開く力、チャレンジする勇気を、これからも応援したいと思います

 これから9か月の厳しい合宿の後、試験をクリアすれば晴れてオートレーサーとしてデビューします。春菜ちゃんの努力が、オートレーサーとして花開いて、ファンのみんなに愛され、彼女を取り巻く環境がこれまでよりも豊かになってくれることを願うばかりです。

■励ましのお便りの宛先
〒304-0824 茨 城県下妻市村岡乙159
財団法人JKAオー トレース選手養成所
益 春菜 候補生宛


2年に1度の募集に対し、この32期 候補生募集では794名の応募の中から合格者は20名。 そのうち女子合格者は5名。
岸萌水(全日本モトクロス選手権レディスクラス)
片野利沙(レディスロードレース)
岡谷美由紀(スピードスケート国体選手)
藤本梨恵:特例(ボクシング東洋太平洋スーパーフライ級チャンピオン)
[男子特例合格者]
松本康(スーパーモタード、Moto1チャ ンピオン)
佐藤裕児(全日本ロードレースST600 2009年 ランキング3位)


楠堂亜希 レースカメラマン 楠堂亜希


20代初期にてミスター・バイクに拾われ、好きなことをしているうちにレースカメラマンのポジションを与えられました。
モトクロス、ロードレースをこよなく愛し、愛溢れる写真で楽しさを伝えてまいります。
モトクロ男子 ←これまでモトクロスを長年取材して、選手たちの明るい表情やレースの面白さ、観客との距離の近さ、こんな楽しい競技をもっとたくさんの人に見てもらいたい、それにはまず、選手たちのことをもっと知ってもらいたいと思い、各メーカー、関係各社の協力のもと、モトクロスライダーのプロフィールを紹介したサイトを作りました。見てくださいね。

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