MBHCC E-1
 西村 章

MBHCC E-1

スポーツ誌や一般誌、二輪誌はもちろん、マンガ誌や通信社、はては欧州のバイク誌等にも幅広くMotoGP関連記事を寄稿するジャーナリスト。訳書に『バレンティーノ・ロッシ自叙伝』『MotoGPパフォーマンスライディングテクニック』等。第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞と、2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞した『最後の王者 MotoGPライダー・青山博一の軌跡』は小学館から絶賛発売中(1680円)。
twitterアカウントは@akyranishimura

第70回 第11戦 チェコGP ブレーキング・ザ・ロー

 第11戦チェコGPの舞台はブルノ・マサリクサーキット。同国第二の都市ブルノ郊外の、針葉樹が鬱蒼と繁る森林に位置する会場である。ここはシーズン全戦中でも屈指の動員数を誇るが、今年も三日間合計で22万2710人の観客が訪れた。
 昨年のレースは、ダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ・チーム)とホルヘ・ロレンソ(ヤマハ・ファクトリー・レーシング)が熾烈なバトルを展開し、最終ラップの最終コーナーでペドロサが僅差で前に出て勝負を制するじつに印象的なレースだった。今年は、この両選手にマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)が加わり、緊迫感に充ちた展開が続いた。終盤、トップに立ったマルケスがラスト数周で逃げ切りを狙い、ペドロサがそれを許さじと必死に追走するものの、逆転するまでには至らなかった。レースはマルケスが制して4連勝の今季5勝目。ペドロサは2戦連続の2位、ロレンソも前回同様の3位フィニッシュ。もはや勝って当然、という雰囲気になりつつあるマルケスのこの勢い、今後もちょっとやそっとのことでは揺るがないかもしれない。

#93 #26 #99
ケニー・ロバーツの持つルーキー最多勝利数を更新。しかも11戦中10表彰台。まさに、「アンファン・テリブル(恐るべき子供たち)」。 コース特性の違いからか、インディよりも負傷した肩にキツかったとか。決勝は鎮痛剤も使用した効果で、痛みには悩まされなかった。 「2011年の王座防衛時より、今年のほうがよく戦えている」と話す一方、「二度の負傷もあって出遅れたため、防衛は難しいかも」とも。

 一方、このトップスリーから離れて4位フィニッシュとなったのがバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ・ファクトリー・レーシング)。シーズン前半戦の第7戦オランダGPで2年9ヶ月ぶりの優勝を遂げ、その後も連続して3位に入り復活をアピールしつつあったものの、後半戦とっぱしのインディアナポリス〜ブルノはともに4位と、やや足踏み状態が続いている。
 現状の最大の課題は、ブレーキング。シーズン初頭からこの問題を抱えており、レースごとに改善してきてはいるものの、まだ万全というほどの状態ではない、という。第11戦のレースウィークでも、走り出しから連日、この方面が課題であると話しつづけた。
 金曜の初日は午前午後の2回の走行を終えて、トップから0.226秒差の総合4番手。総じてポジティブな一日だった、と話しながらも、ホンダ勢と比較して
「彼らは、コーナーの立ち上がりが自分たちよりも数メートル早い。進入でも、自分たちよりも深くつっこんでいる。この点が、自分やホルヘがホンダ勢と戦うときに苦労するところなんだ。これは電子制御というよりもむしろメカニカルな部分で、車体の改善項目だと自分は思う」
 と語った。
 土曜の走行は、午前のフリープラクティスではトップと0.330差の4番手タイムにつけていたものの、15分間の予選では存分なパフォーマンスを発揮することができず、3列目7番グリッドに沈んでしまった。もちろんこの順位には満足していない様子で、レースペースはいいので決勝はいい走りができると思う、と話す一方で、PPを獲得したカル・クラッチロー(モンスター・ヤマハ Tech3)やチームメイトのロレンソたち、同じヤマハ勢との差異は、やはりブレーキングにあると話した。
「カルやホルヘは自分よりも(マシンを)よくしていって、深くつっこめるようになっている。違いはブレーキングだけなのだが、これが問題。シーズンを通して、仕様違いのフロントフォークに変える等の方法で改善はしてきたけど、まだ100パーセントには至っていない」
 決勝レースは4位。3位のロレンソからのタイム差は約7秒だった。
「最終的にインディよりもいい内容だったと思うけれども、今週のレースウィークの目標はトップスリーに肉迫することだった。レースはよかったし、いいラップタイムも刻めたものの、トップスリーとの差については満足できない。ブレーキングの課題を解決するために、前の2レースとは違ったセッティングを試してみたけれども、このセッティングはあまりいい方向にいかなかった。ブレーキングは、良くなっているのは事実なんだけれども、まだ自分は充分な速さを発揮するまでには至っていない。ホンダの後塵を拝しているわけにはいかないから、ヤマハは全力でがんばってくれているけれども、やるべきことはたくさんある。(減速側に加え)立ち上がりでも、ホンダと比較すると苦戦している。全般的にはよくなっていても、あっち(ホンダ)はもっといいわけだから、まずはセッティングで対応して、将来的にはパーツ投入による改善も必要だと思う」

#46 #35 #19
2戦連続の4位。レース前半のペースアップも大きな課題か。 PPからスタートしたものの、転倒を喫し17位チェッカー。 今回も、ロッシたちとバトル。前回よりひとつあげて5位。

 次戦のイギリスGPは、シルバーストーンサーキット。ドニントンパークにかわり、2010年から当地で開催されているが、ロッシはYZR-M1でこのコースを走るのは今回が初めて(2010年は負傷欠場)となる。シーズン屈指の超高速コースで、懸念の課題をどこまで改善できるのか、要注目である。
 その第12戦は今週末の開催なので、くれぐれもお忘れなきよう。というわけで、次回は(たぶんかなり涼しめの)イギリスからお送りいたします。ではでは。

#7 #30 #99
チャタやトラブル、アクシデント等に悩まされつつ、わずかながらも前進傾向。 キャリア2回目のPPスタートから初優勝を狙ったが、今回も2位フィニッシュ。 チェコ出身3選手の応援旗。フェストランクブラザーズでは、ありません。
#
お約束のおねいさんシリーズチェコGP編。
■第11戦  チェコGP

8月25日 オートモトドラム・ブルノ・サーキット 曇
順位 No. ライダー チーム名 車両

1 #93 Marc Marquez Repsol Honda Team HONDA
2 #26 Dani Pedrosa Repsol Honda Team HONDA
3 #99 Jorge Lorenzo Yamaha Factory Racing YAMAHA
4 #46 Valentino Rossi Yamaha Factory Racing YAMAHA
5 #19 Alvaro Bautista Go & Fun Honda Gresini HONDA
6 #6 Stefan Bradl LCR Honda MotoGP HONDA
7 #4 Andrea Dovizioso Ducati Team DUCATI
8 #69 Nicky Hayden Ducati Team DUCATI
9 #29 Andrea Iannone Pramac Racing Team DUCATI
10 #41 Aleix Espargaro Power Electronics Aspar ART(CRT)
11 #5 Colin Edwards NGM Mobile Forward Racing FTR-Kawasaki(CRT)
12 #51 Michele Pirro Ducati Test Team DUCATI
13 #9 Danilo Petrucci Came IodaRacing Project Ioda-Suter(CRT)
14 #7 青山博一 Avintia Blusens FTR(CRT)
15 #14 Randy De Puniet Power Electronics Aspar ART(CRT)
16 #68 Yonny Hernandez Paul Bird Motorsport ART(CRT)
17 #35 Cal Crutchlow Monster Yamaha Tech 3 YAMAHA
18 #70 Michael Laverty Paul Bird Motorsport PBM(CRT)
19 #17 Karel Abraham Cardion AB Motoracing ART(CRT)
20 #67 Bryan Staring Go & Fun Honda Gresini FTR-HONDA(CRT)
21 #45 Martin Bauer Remus Racing Team S&B-SUTER(CRT)
RT #38 Bradley Smith Monster Yamaha Tech 3 YAMAHA
RT #52 Lukas Pesek Came IodaRacing Project IODA-SUTER(CRT)
RT #71 Claudio Corti NGM Mobile Forward Racing FTR Kawasaki(CRT)
RT #8 Hector Barbera Avintia Blusens FTR(CRT)

■第10戦  インディアナポリスGP

8月18日 インディアナポリス・モータースピードウェイ 晴
順位 No. ライダー チーム名 車両

1 #93 Marc Marquez Repsol Honda Team HONDA
2 #26 Dani Pedrosa Repsol Honda Team HONDA
3 #99 Jorge Lorenzo Yamaha Factory Racing YAMAHA
4 #46 Valentino Rossi Yamaha Factory Racing YAMAHA
5 #35 Cal Crutchlow Monster Yamaha Tech 3 YAMAHA
6 #19 Alvaro Bautista Go & Fun Honda Gresini HONDA
7 #6 Stefan Bradl LCR Honda MotoGP HONDA
8 #38 Bradley Smith Monster Yamaha Tech 3 YAMAHA
9 #69 Nicky Hayden Ducati Team DUCATI
10 #4 Andrea Dovizioso Ducati Team DUCATI
11 #29 Andrea Iannone Pramac Racing Team DUCATI
12 #41 Aleix Espargaro Power Electronics Aspar ART(CRT)
13 #5 Colin Edwards NGM Mobile Forward Racing FTR-Kawasaki(CRT)
14 #71 Claudio Corti NGM Mobile Forward Racing FTR Kawasaki(CRT)
15 #7 青山博一 Avintia Blusens FTR(CRT)
16 #8 Hector Barbera Avintia Blusens FTR(CRT)
17 #9 Danilo Petrucci Came IodaRacing Project Ioda-Suter(CRT)
18 #70 Michael Laverty Paul Bird Motorsport PBM(CRT)
19 #67 Bryan Staring Go & Fun Honda Gresini FTR-HONDA(CRT)
RT #68 Yonny Hernandez Paul Bird Motorsport ART(CRT)
RT #52 Lukas Pesek Came IodaRacing Project IODA-SUTER(CRT)
RT #14 Randy De Puniet Power Electronics Aspar ART(CRT)
RT #79 Blake Young Attack Performance Racing APR(CRT)
※第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞と、2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞した西村 章さんの著書「最後の王者 MotoGPライダー 青山博一の軌跡」(小学館 1680円)は好評発売中。西村さんの発刊記念インタビューも引き続き掲載中です。どうぞご覧ください。

※話題の書籍「IL CAPOLAVORO」の日本語版「バレンティーノ・ロッシ 使命〜最速最強のストーリー〜」(ウィック・ビジュアル・ビューロウ 1995円)は西村さんが翻訳を担当。ヤマハ移籍、常勝、そしてドゥカティへの電撃移籍の舞台裏などバレンティーノ・ロッシファンならずとも必見。好評発売中です。
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