女子力W加入でパワーアップ!? 19時過ぎのWピットで驚愕しつつも無事完走の学生チーム。 2015年チームホンダ学園の鈴鹿8耐参戦記ダイジェスト

●取材・文─阿部正人
●撮影─楠堂亜希・編集部
●取材協力─ホンダ テクニカルカレッジ 関西 http://www.hondacollege.ac.jp/honda_w//

鈴鹿8耐の恒例、学生クルーを教職員がサポートするホンダ テクニカルカレッジ 関西(以下ホンダ学園)のクラブ活動「二輪車整備同好会」の挑戦。今年は新1年生に女子が2名も入部し(なんと!)男ばかりだった学生整備士予備軍にフレッシュなラムエアを吹き込んだのであった。ライダーたちの頑張りも加わり立ち向かった荒れに荒れた炎熱の鈴鹿。クラッシュに巻き込まれることなく、学生諸兄諸姉と教職員のみなさん、これでお疲れかなあ、と思った最後にパニックのあぶら汗。学生メカニックたちには、今年も忘れじの夏に。

草食系男子と肉食系女子、世の中はうまく出来ている!?

「今年は、本番が近づいてからドタバタしまして、この10日間でマシンを整えてなんとか本番にこぎ着けた次第でした。女の子が入って華やかになった? 男子と同じように混じって盛り上がってますね。整備士の世界に、いまの若い世代には、男女差とかは関係ないのでしょうかね」

 教務主任の阪田先生が言えば、長く顧問を務めてきた田崎先生が応える。

「今年の男子は、巷間言われるとおりの草食系男子がますます増えて、昨年よりさらにおとなしくなりましたわ。その分、肉食系女子が増えてるんでしょうな。みなワイワイと仲良くやってエエことです。世の中はよう出来てますわ」


集合写真
今年のチームは12名の学生が参戦。
後方列左から中川幹基君(リアタイヤ担当 一級自動車整備研究科1年生)、伊代住彩乃さん(ヘルパー担当 一級自動車整備研究科1年生)、小山 萌君(リア担当 自動車整備科2年生)、上野智也君(リーダー サイン担当 自動車整備科2年生)、吉永一財君(ガス・会計担当 自動車整備科2年生)、村井智幸君(リア担当 自動車整備科2年生)。
中列左から城元琢壮君(サイン担当 自動車整備科1年生)、伊藤 翼君(サイン担当 自動車整備科1年生)、安住綾乃さん(ストップボード・消火器担当 自動車整備科1年生)、間瀬景介君(ガス担当 自動車整備科2年生)、立原大介君(フロント担当 自動車整備科2年生)、松井佑磨君(フロント・タイヤ管理担当 自動車整備科2年生)。
前列は北口浩二選手(第3ライダー)、清水郁巳選手(第2ライダー)、古澤基樹選手(第1ライダー)。
●写真提供─ホンダテクニカルカレッジ関西
※吉永一財君の吉の士部位は土の旧字体が正しいものですが、表示されないため吉で代用しました。

 ピットの後方、イスやテーブルの置かれる付近は、例年をこえて、ひときわの賑やかさだった。HONDAのエンブレム白いツナギに身を包んだ1年生女子2名がとても目立っている。海外チームのスタッフもが覗きにくるほどであり、二輪車大国の技術者層の幅の厚みにたまげているのだろうか。反面、同じ新入の男子1年生はちょっぴり所在ないかんじで静かに佇んでいる。これは恒例。毎年のことでもありそんな少年たちの姿がまたあどけなくて、学園チームの微笑ましさでもあると痛感する。

 予選終了後のひと息をつく時間でもあり、お茶を飲んだり、スマホをいじったりしている、件(くだん)の新入女子部員に話を聞く。

「もともとお母さんがバイク大好きで、バイク関係の仕事をしてました。小学5年生の時に鈴鹿8耐を見て私も夢中になり、以来、毎年来てますが、今年は遂にこんなカタチで参加できました。将来はレースのメカニックになりたいです」(自動車整備科1年・伊代住彩乃さん)

「私も母の影響で、8歳からバイクが大好きになってしまいました。レースを見に行かへん? と言われて鈴鹿8耐に来たのが中学生の時。この学校のことは高校時代に知りました。大学に行くか、理容系の学校を選ぶか進路に迷いましたが、決心した学校に入れていただき、今日はテンションが上がってます(笑)」(自動車整備科1年・安住綾乃さん)

 安住さんは、数学が苦手ということだが、そこは気合いとノリでこなすしかない。1年生にかかわらず、ピットワーク(ルーティン)で早くもフルフェイスを被っての♯28のストップボードをまかされていた。以前にやったことがあるという体験を買われてのこと。

「最初のうちはマシンもピタっと停まってくれますが、ライダーさんが疲れてくると、ドン! と当たったりすることがあります。きっちり受け止めなくては、ですね」

 ここへ、奇しくも”縁”ともいうべき18番ピット。今年、ホンダ学園28号車は、先に掲載したホンダ熊本製作所・熊本レーシング33号車との相部屋となった。プロとしての模範を示すべく熊本レーシングのスタッフ構成は上が50歳代、下が20歳代。対してホンダ学園も学生と教職員の、等しく父と子の世代構成だが、注目するのは、さらに”母と娘”の関係がバイクとスピードマッチの世界に深く根ざしていること。

 母は強し、だろうか。伊代住さん、安住さんら母の世代が、娘に与えた影響を鑑みるとき、これは昨今のファッションやコスメなどのライフスタイルと近しいものを感じた。

 女子2名を含めての1年生が5名。対して、2年生が7名。昨年はおずおずしていた少年たちは、上野智也君をリーダーにみんなやはり”先輩”らしい顔つきになってきている。積極的に話しかけてくれた立原大介君。ぼぉーっとつっ立っているだけの取材者に、常時、チームとレースの状況を解説してくれた。昨年、ライダーの手袋を乾かしていたヘルパー松井佑磨君は、今年はルーティン要員。炎熱の走路状況を洞察してのタイヤの減りを気に掛けている。

 作業をしている、ちょっぴり逞しくなった少年たちの横顔を見ていると、胸が熱くなる。

「来春には就職します。まだどこか解りませんが、レースをしている会社に入ってみたいです」(リーダー・上野智也君)

「勤め先に、レースのことは考えていません。ただ、社会人になってからクラブ活動での貴重な体験を活かすことが出来ればとは思っています」(自動車整備科2年・松井佑磨君)

 田崎先生の言葉のとおり、世の中は上手く出来ているのかもしれない。鍛えられて、顔つきの締まってきた先輩がいて、元気な女子が参画した賑やかな後輩たちがいて。ホンダ学園「二輪車整備同好会」の課外活動。今年も、澤田校長先生以下、顧問の五月女教頭先生(チーム監督)、阪田先生、田崎先生、大川先生、上田先生ら顧問のサポート。昨年まで顧問の白上先生は学園から異動となったが、休みをとって応援に駆けつけた。熱い責任感の人となりが知れる。学生たちと教職員らとの世代をからめて、凹凸の噛み合ったレーシングチームが、28号車をコースへ送り出す。耐久レースを人生に喩えるならば、まだ人生序盤の若者たちによって。



五月女先生
「女子部員が入り、予選は清水さんが頑張ってくれてと、うかれていてはいけませんね。気持ちを引き締めていこうと思っています」と、本番前にチーム監督の五月女教頭先生は話していたのだが……最後の最後にクライシスを迎えることになるとは。


先生
今年のチームは阪田先生、大川先生、田崎先生、上田先生の各顧問の先生が学生を引っ張る。生徒だけでなく先生のチームワークも重要だ。本番前マシンのトラブルも、チーム一丸での頑張りで乗りきってきた。


女子部員
新1年生は、いつもおとなしくて尻込みがち。そこが少年たちの可愛らしさとも感じていたが、今年は女子の2名が入ってカンフル注入。ピットシェアの熊本レーシングにも、キレイな女性マネージャー2名がいることもあり、なんだか、とても居心地のよかった18番ピットでした。ちなみに4耐で18番ピットを使用していたチーム関係者は、田崎先生の教え子と判明したと同時に、ホンダ熊本製作所・熊本レーシングのスタッフとも顔見知り。同窓会のような雰囲気になったりと、ホンダのレース活動の幅広さを垣間みた。


ピットウォーク
「28番、ホンダ学園です。応援よろしくお願いします!」ピットウォークで通った声でPRするのも恒例。照れが見え隠れする男子を尻目に、女性陣は積極的に声を出し、パンフレットを配る姿は来年のリーダー候補!?


上野キャプテン
今年のリーダーをまかされたことで、昨年より表情が引き締まってきた上野君。仲間達や後輩達に終始気を配っていた(左)。立派な体格をかわれたのか、昨年に続いてガス給油担当の間瀬君。ピットでは笑顔で、レーンではリズムよくガスチャージ。昨年より格段に調子をあげていた。

好調に巡航、苛烈なレース状況をかいくぐって進む学園CBRの実力!

 迎えた決勝当日。エントリー84台。予選をクリアしての出走が70台。そこへ、ひとしずくの雨滴のないガチンコの酷暑となった2015年鈴鹿8時間耐久レース。一点の雲の陰りさえない太陽の照りつき、30度を軽く超える気温と60度近い路面の熱。これらがライダーやメカニックを、”これでもか! これでもか! ”と畳み込むように試し続けた。トップグループでは注目だった元世界GPチャンピオンC・ストーナーも転倒する波乱の中、大きなクラッシュが数珠つなぎのように起きる。その都度、セーフティーカーが割って入ること計6回。選手たちの”ツーリング時間”から再三再四の全開走行への開始と、見る側にとっては耐久レースの真髄とも言うべき、苛烈、尋常でない、正気の沙汰ではない醍醐味を、同じく畳み込むように見せつけてくれた。



いよいよスタートが近づく。泣いても笑っても2015年の8耐はこれっきり。万全を尽くしたマシンを祈るように送り出す。

 ホンダ学園28号車は、古澤基樹選手、北口浩二選手、そして今年新しく加わった清水郁己選手のベテランらしいスピードと抑制の効いたテクニックも相まり、1スティントごとの巡航を予定どおりにクリア。学生メカニックたちは、ピットでのルーティンを無事にこなして、波乱の展開のなかをつなぎ続ける。

 つなぐ、つなげる、つないでいこう。若いみんなが、張り上げる声と視線、息継ぎで互いを確認しあうようなルーティン。お見事。ある意味、相部屋の熊本レーシングのスタッフたちの熟練の手技に、牽引されるような相乗の効果か。学生たちはそつなくこなしていった。取材者は、両チームへの意識と視線に行ったり来たりでいたが、ふと、西日が傾いた時刻に気がついたことがあった。ホンダ学園チームは、まだ、5回しかピットインしてなかったことだ。それとなく学生メカニックに尋ねると、こう応えてくれた。

「クラッシュが多かったのでセーフティーカーの後ろでゆっくり走る時間が長くありました。燃費がすごく伸びて、タイヤも思ったより減ることが無く、ガスもタイヤも持たせることが出来たのです」

 なるほど。セーフティーカーの導入は、コース上での、運と不運はあるにしろ、ある意味レース中での”ブレイクタイム”としての大きなメリットと考えることは出来る。とりわけCBR1000RRは、長く、実績と信頼を重ねてきたスーパーバイク。思想の飛躍を許されるなら、スーパーカブ20台分の排気量を持つ、スーパーバイク界のスーパーカブ的な存在とも言い切れる。各部随所にレーシング用の材料を組み込んだとしても、実験値を蓄積してきた頑健な素性は、転倒さえしなければ、8時間の全開走行ぐらいはいとも簡単にこなせるはず。これはシロウト目にも明らかなこと。

 取材者の熱と爆音にうなされた空想は、そう外れてはいなかった。学園チーム28号車は、なんと23位を走行していたからだ。昨年は28位。これはひょっとしてさらなる上位を!? 陽の落ちかけた6回目のピットを難なくクリア。最終ライダーとなった清水さんを送り出した時、ピット内には拍手がわき起こり、安堵感とさらなる期待が感じられた。清水選手は、終盤に追い上げることのできるスピードを持ったレーサーだった。



清水選手

古澤選手

北口選手
本番近くになって助っ人として加わってくれたライダー清水郁己選手(写真上)が、これまでの古澤基樹選手(写真中)、北口浩二選手(写真下)とは、スタイル、体格、年齢などを含めてタイプの違うレーサーのため、3人ライダーの最大公約数の落としどころを探したそうだ。実質、清水選手は、予選、本番ともに、持てる実力を発揮する。

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ピット
緊張の初回ピットイン。レーンに出るまでは堅さも見られたが、バイクが到着するとけして速いとは言えないが、確実に声をかけ、しっかりと作業をこなす姿に、日頃の練習の成果が垣間見えた。 学生達のルーティンワークを見守る熱き男、元顧問の白上先生(現在はHonda Cars 泉州に勤務) 。「外に出てこそ見えてくることもたくさんあります」と、学園を離れたが古巣の応援に駆けつけていた。

ルーティン最後のピット

ルーティン最後のピット
6回目、ルーティン最後のピットもそつなく無事にこなし、このままフィニッシュかと思われた、が、そうは問屋が卸さないのが耐久レースの怖さであり、観客にとっては一種の醍醐味でもある。

最後の最後でライトが!! 頼む、28号車!!!

 ところが、この直後だった。陽の落ちたピットのなかに衝撃が走る。寝耳に水とは、こういう時の言葉だと思った。凍りついたような学園ピット。そこへ清水選手は帰ってきた。フロントブレーキをかけて、前を激しく揺さぶっている。ライトの点灯が不確かであり、ピットインを命じられたということだった。

 すぐにマシンをピットの中に入れる。テールは点いているように見えるが、確かに明滅の様態。ここへ来て、ここまで来て緊急事態の発生。パニック。えええ、やめて。傍観者にはこんな言葉しか浮かばないのだが……学生たちと先生、慄然とした表情でフロントまわりハーネスなどをチェック。点いた。よかった。飛び出していく清水選手。よかった!

 ところが、ほっとしたのはつかの間。すぐに清水選手が戻ってきたのである。まだ、しっかり点いていないらしい。土壇場に来ての、瀬戸際になった。

 時刻は19時をとうに回っていた。チェッカーは19時30分。ピット内の風が止まった。カウリングが外されて、前部が剥き出しになった28号車。みんなでフロントまわりをいじっている。ツナギを脱いで私服に着替えた古澤選手、北口選手も仰天して飛び出してきていた。なんということであろうか!

 鈴鹿8耐というレースが持つ、幾とおりもの試練、落とし穴。昼の11時30分から全開につぐ全開を繰り返してこさせながら、夕刻は指示のあった時点からライトを点けて走行の規則があるのはご存じのとおり。最後の最後まで無事に来たというのにライトが明滅するだけでも最悪の場合リタイアもある。これが人生だ。耐久レースの真骨頂と言わんばかりだが、なんということであろうか。こういう話は、これまであまたに記事を読んだり、映像を見たりで知ってはいた。それがまさか、目の前で起きようとは!!! 

 学生たちの横顔を凝視することが出来ず、ただ立ち尽くす。一昨年のリタイヤのシーンが頭をよぎった。少年たちはみな泪をしぼりだして、カバーのかけられたマシンを前にしての、苦しい苦しい時間だった……熊本レーシングのスタッフも、心配と困惑の表情で見つめている。

 時計ばかりに目がいく、呆然と立ち尽くす。頼む。完走を。残酷なシーンはやめてくれ。鈴鹿に神がいるのなら……祈るしかない。「風よ、鈴鹿へ」の歌詞をこころで何度も反芻したり。頼む、点いてくれ。この子らのために点いてくれ。もう一度、なんとしてもコースへ飛び出すのだ、CBR1000RRのホンダ学園28号車!!! 頼む! 祈ることしかできない不甲斐なさは毎年のことだが、今年の、この19時過ぎでの動転は、尋常ではない。

 そして、点いた! チーム一丸の修復が鈴鹿の神に届いたのか。とにかく、ライトが点いた。神様、ありがとうございます。ようやっと、おおきく息を吐く。闇の走路へ向かう清水選手と28号車の後ろ姿が、誇らしい。タイムリミットぎりぎりの土壇場。前後ともに、灯りのともったCBR1000RRは、自光の28をきらめかせて、チェッカーへの走路へ旅立ったのだった。よかった!!!! 瞼のまわりのあぶら汗と、おのずと出てきていた瞳からの熱いモノ。鈴鹿8耐は、学生たちのオヤジ世代の中高年をも泣かせる場所。とにかく、とにかく、よかった。


緊急ピット

緊急ピット

緊急ピット

緊急ピット
終盤に入ってからのピットインという緊急事態。チーム一同、この夏のすべての冷や汗、油汗を流したのでないだろうか。

 ホンダ学園「二輪車整備同好会」28号車、予選33番手、決勝を35位でチェッカーフラグを受ける。完走。やった。ぎりぎり、無事の完走だった。

 先生たち、みんな目がウツロ。立っているのがやっとの様相が見てとれた。でも、ようやく笑みも戻ってきていた。

「私が、このまま、もしかしたら……という夢を見てしまったのがいけなかったですね(苦笑)。鈴鹿8耐というのは、最後の最後までなにがあるか解らない。学生たちには、こういった想定外の場面に直面して乗り越えるということは、教えられたのかなとは思います」(五月女教頭先生)

「劇的なことになりましたけど、さっきから私の携帯メールが鳴りっ放してパンクしそうです。見ていてくれた卒業生たちが、相当心配したみたいですわ。とにかく、完走できてよかったです。本日は、本当にありがとうございました」(田崎先生)

 先生たちにとっては、熱いさなか、体内の水分も冷や汗やあぶら汗で放出されて、それこそ倒れてしまうこともおきかねないような状況だっただろう。対して学生たち、若者はみんな元気に応えてくれた。

「最後まで走れてよかったです、ものすごい達成感ですね。鈴鹿8耐はやっぱり最高です。来年も必ず来ます。今日は本当にありがとうございました」(伊代住彩乃さん)

「とても楽しかったです。最後の最後にきて、完走できへんかったらどないしようと思いましたが、よかったです。本当によかったです」(安住綾乃さん)

 1年生女子ふたりは、ライダー用のプールに落とされてずぶ濡れ。学生たちは、無事完走の喜びをレース終了の喧噪のなかで味わっていた。リーダーの上野智也さんが締めくくってくれた。

「23位にいたときに、最後はさらに上へ行けるなと思いました。でも、これがレースという勝負ですね。タラ・レバというのが通用しない。今日は耐久レースのはかり知れぬ奥の深さを知りました。とにかくギリギリで直すことができてよかったです。完走の意味を、改めての喜びとして噛み締めています」

 0(ゼロ)か1(イチ)か、という言葉が思い浮かんだ。

 鈴鹿8耐での、ゼロかイチかは、相当に大きな差だと想う。これは達成感なのだとも想う。8時間にわたり、なんべんも全速全開を繰り返した挙げ句の、辿り着く場所。なんとか生き残ってゴールラインを抜けた者が得る真夏の記憶。ホンダ学園の課外授業にとって、順位などは、もしかしたら重要なことではない気がする。なにが起きようが、なんとしてでも走路へ復帰する。コースへ戻す。全員総力でそれを成し遂げる。

 今年は、終了直前の土壇場にきて、かけがいのない見せ場、そして教育の現場を作ったCBR1000RRの28号車だった。レースという比類のない活動が、人を育て、心身の鍛錬の場所になる。おそらくそこに、老若や、男女もないのかもしれない。レースに魅せられた者たちを寄せる、修険の鈴鹿8耐。打ち上げられた花火のなかで、学生たち、先生たち、必死に走ったライダー諸兄。それを漫然と眺めていた取材者も、おおきな達成感に酔いしれていた。


ホンダ学園

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学生は自動車整備課の場合、在位期間が2年間。課外活動なので毎年、メンバーが入れ替わる。1年生は、下見を兼ねた準備期間。2年生にとっては、悔いを残したくない夏。短いレース活動だが、鈴鹿8耐という、世界選手権でもある大きな舞台への出場は、生涯、忘れ得ぬ体験になるだろう。

#28 Teamホンダ学園 CBR1000RR(2014) Class:EWC Tire:DL
予選33位 2`14.161 決勝35位 187Lap BEST LAP 2`14.874

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