編集部ブログ 勝島部屋から

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2013年5月29日 

ミスターバイクBG 6月号を振り返る

- Noah Sellen @ 6:28 PM

マッハ系はねー、誌面でも書きましたが、僕にとってはもう完全にクラシックマシンで、なかなか乗ったり所有したりする対象じゃないのですよ正直。例えばマンクスノートンみたいにね、そりゃもちろん興味もあるし乗ってみたいし所有もしてみたいけれど、でも実際問題、マンクスノートンは所有することは一生ないだろうな。

そんなマッハシリーズの中でも、今までイイナと思ってきたのはラバーマウントのKH。KH400は良いバイクだよ!! スムーズに回るし力もあるし。ブレーキだってソコソコ効くから今の世の中でも不安なく乗れる。KH400と、あとこの時代の2ストではGT380、あとRD400なんかも好きな類。ここら辺はあまり気負わずに乗れると思う。

で、特集の500と750。
これはね、正直、強烈な個性を知らずに育った僕の世代にとってはハードル高い! いや、そうじゃなくてもけっこう高めでしょう(笑)。 バランバランとアイドリングして、ギャァァン!! ギャァァァァン!!! とフケる感じはもう、それだけでお腹いっぱい。走り出さなくても「マジか」とケラケラ笑っちゃう。

以前に乗ったときは「これはちょっと…」と思ったもの。今回乗ったときもその気持ちは大きくは変わってないんだけど(笑)、でも低回転で流すぶんには独特の魅力があることにも気づきました。そう、2ストって回してナンボ、みたいなところがあるでしょ? だからどうしてもパワーバンドを使おうと欲張っちゃう。ところが特に750の方は低回転のトルクが豊富で、回さなくても楽しく走れるんだ。と、いうか、回すと振動が凄すぎて、手がハンドルを握れているのかどうかがわからない。

前にゼンシン製のカスタムに乗らせてもらったときも、まさにこの感じ。あれは確か900ccぐらいまで排気量が上げられていたのだけど、そのおかげで低回転域のトルクが強大になっていて、高回転の超振動ゾーンは使わずに速く走らせることができるという仕様だった。今改めて、マッハで今日的な走りをしたいなら、ああいったカスタムが有効に思えたね。だって高回転はマジで凄いんだもの! 一瞬使うぶんにはいいけれど、使い続けることはまず無理だと思う。

撮影していた現場の近くで、道路工事をしていた人達が休憩していて、こっちの撮影をのぞきに来てくれました。現場の棟梁みたいな推定55~65歳ぐらいの人と、40歳手前みたいな若手の2人。
若手:「おー! マッハ! カッコいい!!」
棟梁:「わはは! なつかしーね!」
若手:「欲しいなぁ。速いんだろうなぁ」
棟梁:「バカ、これアブねーぞ! 止まんねーンだから!」
若手:「でもいいじゃないですかー」
棟梁:「×××、×××××××××××!! ××××××……。××!」(自主規制)

こんなやり取りがありました(笑)
棟梁はきっと、リアルタイムでマッハを知っていたのでしょうね。マッハにまつわるいろんな伝説や武勇伝、そして危ない目や悲劇も知っていたのでしょう。
当時よりは色んな技術が進んで、エンジンもより信頼性を高めることができるだろうし、ブレーキももっと効くようにできるだろうけれど、まーそれでも個性が強くて、ある程度覚悟を強いるマシンだという意味では、僕も棟梁に同意する部分もあるな。

「なんか、旧いバイクってカッコいいし、やっぱマッハだろ!」
という人はちょっと再考してもらって、KH400にした方がいいと思うけど、
「ZもCBも知ってる。個性も味として付き合える。運転も無理しなくなった」
という絶版車上級者は、一度所有してみると面白いバイクだと思います。

(ノア)

2013年5月10日 

ミスターバイクBG 5月号を振り返る その3

- Noah Sellen @ 4:29 PM

僕が担当した車種で、最後はCRM。

 このCRMにはなかなか思い出があって。学生の頃、トライアルをやっていた先輩がCRMの50を持っていて、これをなんだかんだとチューニングして滅法速かった。50ccでこんなに速いか! と驚いたもんです。

 その後、今度は後輩がCRM250のARを購入。借りてツーリングに行ったりもしましたが、速いし燃費も良いし2ストなのに静かだしで大変気に入りました。当時すでにちょっとプレミアでね、けっこう高かったように記憶してます。

 学生の頃よく出入りしていたお店のメカニックさんもCRMに乗っていて、当時ちょっとハマってたエンデューロレースに出ていました。2ストなのにけっこうトルキーで難所をスイスイ走る彼を見て、CRM(そして彼のウデ)に憧れもした。

 今回の特集の「今買うべき」とは、今後値段が高くなることが予想されるから買うべきよ、というニュアンスもあるけれど、CRM-ARについては一時期のプレミアは落ち着いて、反対に今ちょっと値段が落ちてきて買いやすくなっているという状態。でもプレミアじゃなくなってくると大切にする人が減って、そうするとボロボロになっていく車両が増えていくのも事実。だからこそ、今のうちにいいのを買っておきたい!

 今回CRMについてお伺いしたのは「モトショップ ストラーダ」さん。まさに学生の頃に出入りしていたお店そのものです。メカニックさんはかわっていなかったけれど、もうCRMには乗ってなかった。でも話は聞けましたよ。

 CRMはとにかく調子のいいときはめちゃくちゃ良いのに、どこか一つダメになるととたんに全てが狂い始めるそう。だからこそ定期メンテナンスを欠かさない必要がある。ま、2ストはおおむね4ストよりはその傾向が強いからなぁ。

 一番多いのは3万キロぐらい走った車両のピストンやリングの磨耗。これにより吹き抜けがおき始めると、クランクケース内にカーボンが入ってしまい、それによりクランクベアリングに損傷が出てしまうことがあるそう。こうなるともうフルOHですね。吹き抜けが始まってるかを見極めるのは難しいけれど、パワーダウンや煙吐きが増えるのがその症状。さらにチャンバーを外すことができれば、直接ピストンを目視してリングの下にカーボンが付着しているかを確認する方法もある。リングより下が黒くなっていれば吹き抜けてる証拠だから。さらにはシリンダー側面にカーボンが付着して黒くなっていたら、もうそれはアウト。OH前提だそうです。

 あと2ストでありがちな排気デバイスの故障だけれど、これはそうでもないらしい。腰上の整備の時に併せてクリーニングしてあげれば大丈夫でしょうとのこと。NSRと一緒で固着しちゃうとギアのナメや過電流によるPGM損傷になるから気をつけておきたいところではあるけれど。

 ストラーダで最後に付け加えてくれたのは「オイルは必ずホンダ純正を使うこと!!」これはもう鉄則だそうですよ。いらぬトラブルの原因になるし、純正オイルを使っていれば、少なくとも何かあったときにそこを疑わなくて済むわけだから。

 しかし話を聞いた印象では、けっこう大丈夫でしょうという感じ。ARの一つ前の93年型CRMもかなり頑丈で良いバイクだそうです。絶版とはいえそこまで古くないもん。

 CRMの他にもランツァなんかもこの時代の素敵な2ストオフ車。スズキのRMXはちょっとイジルとヤバイぐらいに速くなるというし(メンテも大変らしいけど)、あとカワサキのKDXなんかも絶対楽しい。失われていく2ストオフ車、今こそ乗るべきでしょう!

 

この写真は4ストのピストンだけど、リング周りのカーボンの例です。こうやって上のほうにカーボンがついて黒くなってるぶんにはいいのだけど、リングの下のシリンダー側面が黒くなってると吹き抜けてるってこと。チャンバーを外させてくれる中古車屋さんはなかなかないだろうけれど、個人売買で購入する際や、自分のマシンのチェックとしては有効な方法かもね!

 
(ノア)

2013年5月6日 

ミスターバイクBG 5月号を振り返る その2

- Noah Sellen @ 11:20 AM

そもそもこの特集が企画された会議には僕は都合で出席できなかったんだけど、SRXやCRMもとりあげましょーよ! と後になって申し上げた次第。そりゃ人気車種ばかりでもいいけどさ、あらゆる旧いマシンを楽しみ、敬い、走らせるのがエンスージアズムってもんでしょう。シングルもオフ車もね。

ではSRX。

SRXについては「ハヤシカスタム」さんと「スラクストン」さんにお話を聞いてきました。

いずれでも聞けた話は、やっぱりSRX600ってのは独特の世界があるということ。確かに今、一部の海外車では大排気量シングルってあるけれど、国産車でビッグシングルスポーツって考えられない。しかもSRXはキックの型(2本ショック)はバイアスタイヤでヒラヒラ走る感覚で、セル付の型(モノショック)はラジアルタイヤでグイグイ走る感じと、同じバイクでもモデルごとで性格の違いがあるのが面白い。

いずれの型も部品供給はもう厳しくて、600はピストンリングすら出ないから大切に乗りたいところ。だけどね、部品が出ないって悲観的になる人は多いけれど、じゃ所有車のピストンリングそんなに換える人いる? 実際問題何万キロも乗ってはじめてそういうことを心配し始めてもいいでしょう。買う前からそんなに心配することもないと思う。実際に交換が必要になった時にはデッドストック品がでてきたりすることもあるしね。

取材にあたって実際にSRXのシリンダーを見たけれど、いやー思った以上にでっかいピストン。こんなでかいのが空気で冷やされながらバッコンバッコン上下してるんだから、まーオイル管理は大切だよね。

特にセル付のモデルはオイルタンクがエンジン前方についてるでしょ? そうするとオイル交換の時にオイルポンプにエア噛みしてしまって、潤滑されずに抱きつき症状やシリンダー・ピストンに傷がついたりということがあるみたい。とにかくオイルには気をつけましょうよってことです。

ハヤシカスタムでは400ベースで600のクランクとコンロッドを使った500cc仕様ってのを製作していて、400の回して楽しい感覚と600の大トルクを楽しむ感覚のちょうど中間を作ってる。これは以前にカスタムラボという企画で取り上げて乗ったこともあったけど、いや速い! そのときはCRキャブだったんだけど、今は同じバイクにFCRがついててさらに良くなってるって。
ちなみに純正ピストンやリングは欠品だけれど、ハヤシカスタムではオリジナルの630ccピストンを販売中。リングの供給などもしばらくはお約束できる状態だそう。

スラクストンでは今もSRX用の外装キットなどをラインナップしていて、SRXのお客さんも多いそう。SRと違ってフレームがタンクの下ではなく左右に広がってるから、イメージをがらりと変えるようなカスタムするのは難しいけれど、でも魅力的なバイクだと言っていました。だってそもそもZやCBなど4気筒を乗り回してた店長がシングルに乗って「こりゃ面白い!」と目覚めたのがSRXだったのだもの。スラクストンの出発点バイクみたいなもんです。

今回の取材で特に印象的だったのは、スラクストンで最後に聞けた言葉。
「軽量でセル付で足つきが良くて、かつ味のあるSRXは年齢が高くなっても乗り続けやすいバイク。バイクを降りるその日を遅らせてくれる」
うーん、名言だ。

SRX600のシリンダー。あ、大きさがわかるように何かと並べて撮らなきゃダメじゃん。ごめんなさい。これは抱きつき・焼きつきを起こしたもので、シリンダーには傷が見えるし、上部にはピストンのアルミが溶けてくっついてるのがわかる。オイル管理大事!

 

こちらハヤシカスタムでリビルド中のスイングアーム。純正欠品だけど壊れるところでもない。でもハヤシカスタムでは綺麗にして、レーシングスタンド用のフックつけて、ブレンボなんかをつけるときのトルクロッドのステーをつけて、アルマイトかけてストック。

 

同じくハヤシカスタムで、リアブレーキはR1とかの純正MOSキャリパーをつけるステーをつくってたのだけど、このキャリパーの値段がけっこう高いことから、今度はブレンボキャリパー用のステーも作ってるところ。商品化予定。

 

ツクバで1分1秒まで記録したスラクストンのSRXレーサー。テイストでは4気筒が1分を切れるか!と言っているけれど、シングルレースが盛んだった頃は空冷のシングルでもそういうタイムを出す人達がいっぱいいた。シングルあなどれん!

つづく (ノア)