2012年4月6日 

■「質感」とは何か

僕が困った時にひくのは講談社の「日本語大辞典」という、厚さ約8センチの百科事典みたいな辞書です。それによると

質感:材質から受ける感じ

え? それだけっすか??

じゃ質感が高いとか質感が低いというのは、本当は「材質から受ける印象が良い(及び悪い)ということなのかな? 

じゃあ僕が「質感高い」と感じるものはなんだろう。

その昔、パーツBGの取材でパウダーコートやさんに行って、その時見たパウダーコートが施されたフレームは「美しい」と思った。あれは「質感高い」だろうな。

スーパーフォア1300がインジェクションになったとき、僕は販売店でバイトしてたんだけど、みんながこぞって注目したのはスイングアームの、リアサスがくっつく部分。それまでの後付のステーが溶接でついてる方式じゃなくて、ステー部分がスイングアームと一体形成になってたんだな。

見比べると確かに「質感高い」と思った。

他にもバイクにまつわる色んな部品や商品を見ては「これは質感高い(美しい)」と思うことも多いし、反対に「これはちょっとチャチイ(質感低い)」と感じることもある。

で、本題ですが。

以前、副編集長安生さんとこの「質感高い・低い」件で議論になったのだけど、なんせ50代も半ばということもあってか「旧いものこそがイイ!」という意識が高い。そりゃ旧いものにも良さがあって、その商品が生まれた背景やその商品が過ごしてきた時代背景を楽しむのは大切ですよ。かつそういった過去を大切にする心が工業製品を大切に、そして日本の技術を誇りに感じるきっかけになると思うし、そんなスピリチュアルともいえる領域を実は強く意識しているのがBGなのです(俺だけか!?)。

だけどね、だからといって最近のものを悪く言うのはいけないよな。

確かそのときは新しめのモデルのプラスチックのフロントフェンダーをつかまえて「質感が低い!!」と切り捨てたんですよ。ちょっと待とうぜ! だって今、フェンダーは基本プラスチックじゃん!! いつの話をしてんですか! と議論というかむしろ口論になりました。

じゃあ「質感高い」とは何かと突き詰めていったら、基準はなくて「自分がどう感じるか」だということにたどり着きました。そりゃそうだよね、カッコいい、かっこ悪いと同じで自分の基準でしかない。

だからプラスチックのフェンダーが当たり前の世代の僕からすれば、そんなの全然「質感低く」ない。だから切り捨てられてムカとしたわけだけど、まぁ安生さんは普段から心ない暴言を吐きまくる人だからあんまり気にしちゃいけない(笑)

安生さんの「質感高い」を色々聞いていった所、結論としては「質感高い=鉄」というだけのことであることに気づきました(笑) 鉄のフェンダーやメッキの部品、アルミ削り出しのなにか…… こういうのがいいんだって。そうかー、じゃ行き着くところハーレーじゃんすか、なんつって話は終わったんですけどね。

その話はまーいーや。

写真は新しいスーパーカブ110のチェーンカバーです。以前のスーパーカブ110はプラスチックのチェーンカバーだったんですね。日本で作るにはその方が低コストだったのだろうし、なんてったって軽いし錆びないし。こりゃいいじゃん、と僕は思ったのだけど、先の一件があってから「鉄じゃないもの=チャチイ」という安生さんの図式が頭に刷り込まれていたので「安生さんにはナイショにしておこう」と思ったのを覚えています。

ところが新しいスーパーカブは鉄に戻ってんじゃん!!  生産が中国に移って、あちらではプラスチックよりも鉄の方が入手及び加工がしやすいとか、安いとかあるんでしょうね。鉄の方がプラスチックよりは再利用率が良さそう、という意味ではいい選択肢だと思う。そもそも軽量さを最重要項目とするバイクでもないし。

でもそんな技術的なことに思いを巡らせるより先に思ったのは

「安生さん喜ぶぞ!(笑)」

だった。

鉄ですよ!どうすか、安生さん。「質感」の方は (笑) 

 

(ノア)