2013年6月21日 

■ミスターバイクBG 7月号販売中

 

といっても、実はもう1週間経っていますね。
7月号は「忘れていないか? 日本のライダーのための日本のバイク」
ということで、CB550フォアとZ650ザッパーを巻頭に、そのあたりの排気量のバイクを集めてやってみました。
いずれも楽しいバイクで、作る側としては面白かった(興味深かった)わけですが、さーそれを読者の皆様が興味を持っているかといったら、
どーかなー(笑) 現在の絶版車人気の中では、ちょっとマイナーではありますもの。

でも、編集後記を見ればわかるようにスタッフは楽しんだのです。
で、その編集後記に書いたように、ページの都合上当初書きたかった文量をかけなかったので、デザインが決まる前に先行して書いちゃってた原稿をここに載せておきます。誌面とかぶる所もあるけれど、そうでない所もあるかな。

これら中間的なジャストサイズバイク、「いいなぁ」と思えたアナタはよろしかったら読み進んでくださいませ。

(ノア)

       この特集の副題は当初、「ヒゲとゴンゴー」だった(笑)。Z1やCBナナハンがとても人気の車種なのはみんなが知っていること。必ずしも絶版車のファンでなくとも、この2機種及びその兄弟車種は、バイクに乗る人ならば誰でも多かれ少なかれ憧れを抱くことだろう。その一方で今回取り上げた550cc~650ccという、兄弟車ではないが従兄弟車ぐらいの存在のバイクがある。
 人気、という尺度で捉えると他にもっと人気のある絶版車は多いし、このクラスは市場価値的にも「求めやすい」という部類だろう。しかしそんな要素と、バイクのもつ魅力は必ずしもリンクしないのである。僕が今回担当したZ650は、「ザッパー」と呼ばれるほどに高い機動性が評価されたモデルであるし、550フォアもまた「ナナハンよりも軽量でコーナーが楽しい」と評価されていることも知っている。絶版車人気の中であまり目立っているとはいえない2台だが、改めて検証してみようじゃないかというわけである。
 そうそう、なぜヒゲかというと、このクラスの絶版車は渡辺編集長のように口ひげをたくわえるぐらいの年齢&地位(?)の人が、強い思い入れとエンスージアズムで愛でつづけるようなイメージがあったからだ。
僕の「ザッパー」試乗経験は今回が初めてだ。きっと良いのだろうとは思っていたが、乗ってみたらこれが良いなんてモノじゃない。極上だった。
威風堂々とした大型車が好きな人には受けないかもしれないが、見た目にコンパクトな車体は跨ってもコンパクトでありながら窮屈ではなく、Z1などの包容力や許容力をもったまま一回り小柄になった感覚だ。「ザッパー」というイメージからはもう少しアグレッシブなポジションを想像していたが、しかし多くの70年代絶版車がそうであるようにハンドルやステップ、シートとの位置関係など全てが至って「普通」の場所にある。
走り出すと軽量な車体の恩恵はすぐに感じられる。意外にも低回転から十分なトルクを発するエンジンに押し出され、スイスイと加速し、(現車はブレーキが強化されていたこともあって)減速も思いのまま。跨ってコンパクトだった車体は走り出すとさらにコンパクトに感じることができた。Z1と基本を共通とするZ2に比べ、こちらの車体はさすが専用設計。フロントタイヤが近くに感じ、ブレーキングから寝かしこんでいくのもヒラリと軽快だ。まるで前輪が18インチかのようにクルクル曲げることができ、またバンク角が思いのほか深くかなりその気にならないとステップも擦らない。
エンジンもまた、Z2と比べると次世代のものに感じる。カワサキらしい荒っぽさや個性は残っているものの、中回転域までは振動も少なくシューン!と回りとても素直だ。流す走りでは4000回転も回せば十分で、快適なツーリングペースを維持でき、そして5000回転から先は(それなりの振動を伴うのはZ1やZ2と共通だが)小排気量4気筒ならではの回し切る感覚が楽しめる。これぞDOHCの気持ちよさ。650ccという排気量から生み出される、ならではの高揚感である。
大排気量と比べるとパワー不足を不安に思う人もいるかもしれない。しかしアップダウンの激しいワインディングでの撮影中でそう感じることはなかった。後にこのエンジンはFXⅡに、そしてGPZ、ゼファー(ZR7も!)へと長く愛されるものになるわけだが、ザッパーの時点で車体とのバランスを含めて大変完成度が高く、公道での動力性能的にはより大きな兄弟車に劣る場面は考えにくく、そして走らせる楽しみではそれら車種を超えることも多いかと思う。ザッパーの試乗経験は、本当に楽しいものだったのだ!
ちなみにCB550フォアにも少しだけ乗ってみた。こちらはザッパー以上にとにかく小さい! 現代の250ccぐらいの感覚で振り回すことができ面白かった。
これら二台、いわゆるショーオフ(見せびらかし)要素では大排気量に譲るかもしれない。しかし玄人ライダーがヒゲを撫でながら内面のエンスージアズムを満たすには、これ以上のマシン、カテゴリーはないだろう。こりゃ頑張ってヒゲを伸ばすしかなさそうだ。